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58.『高い城』攻防戦 二日目 午後(5) 魔弾の射手
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バルガスと共に右翼へ駆けつけ、中央と右翼の境となる頑丈な扉を抜けると、凄惨な状況だった。
鼻を突く血の匂い。物が焼けこげる匂い。
霞がかかったようにうっすらとだが広がっている煙。
多くの兵隊さんが、攻撃用の狭間にはりつき。
敵に弓を放ち続け、あるいは登って来たのを槍で叩き落すのに必死。
少々の怪我でも持ち場から離れず、包帯に血の染みを広げながら戦っている兵隊さんもいる。
床のあちこちに大きな血しぶきが模様のように飛び散っている。
あちこちで重傷者がうめき、消されていない小さな火の手があがっている。
補給班が補給をしながら濡らした布をかぶせて火を消して回っているけど、油で燃え上がる火はなかなか消えない。
次々と放り込まれてくるのを周りに燃え広がらないようにするので精一杯な様子だ。
オレはすでに消し止められて転がっている筒を拾い上げた。
「これか……」
腕くらいの太さの木材を切断し、くりぬき、口に布が貼ってある簡単なものだ。
口の近くに火をつける短い縄がまきつけてある。
火壺のように砕けてすぐ火はつかないが、消火に手間取れば筒に燃え移り、油がしみ込んだ布は派手に燃え上がり、布が破れれば中の油が漏れて引火する。
軽装な敵は油など大して持っていないはずだが……いや、水をふもとから運ばせる時、同時にか。
「こりゃ、長くはもちませんぜ」
バルガスの言葉にオレはうなずく。
来てよかった。
主塔の屋上で見ているだけだったら、あの手を使う決断が遅くなってしまっただろう。
オレに気づいた兵隊さん達が、
「若親分! こんなあぶねぇところにわざわざ!」
「閣下だ! 閣下が自ら来てくださった!」
負傷している兵隊さんまでが、オレの姿を見て歓呼の声をあげる。
オレなんか何も出来ないのに。
この人たちのほうがよほど戦っているし、戦えるのに。
「みなさん! ここまでよくもちこたえてくださってありがとうございました!」
兵隊さんの誰かが返してくれる。
「閣下と同じですよ! 仕事をしてるだけです!」
そうすると次々と声があがった。
「少々きつすぎる仕事!」「若親分ならあとでたっぷり特別給金をはずんでくれるさ!」
笑い声が起きた。
オレはグッとして胸がつまりそうになってしまう。でも、なんとか続ける。
「敵が退いたタイミングで、右翼から撤収して、仕掛けを実行します! それまでもうひと頑張りよろしくお願いします!」
今までの流れからすると、そろそろ敵は、一旦退くはず――
「ぐあっ」
耳に苦鳴が飛び込んで来た。
反射的に声の方を見ると、左肩に矢が突き刺さった兵隊さんが苦しそうにうずくまっている。
バロンさんだった。
いつも、寸分の隙も無いシャレものなのに、汗まみれでひどい有様だ。
すぐ前には、射出狭間――矢を放つためのスリット――がある。
狭間の外側のはばは手のひら一つ分、内側は二つ分と言ったところ。
その間から矢が飛び込んで来たのだ。
敵から大歓声があがっている。
オレのすぐわきを、医療班班長のチャックさんが駆けていく。
「まだ俺は撃てる! ぐっ」
バロンさんはチャックさんを手を払おうとしたが、痛みに呻いた。
チャックさんは、バロンさんを手早く診察し。
「駄目だよ。処置しないと腕が使えなくなるよ。お。運がいいなお前さんは、貫通してる」
バロンさんに刺さった弓は、明らかに他の弓と違った。
銀色に光る金属製の矢。特製の矢だ。
「バルガス。もしかしてこの矢」
「まちがねぇ。帝国親衛隊のですぜ」
狙撃に特化した精鋭部隊にのみ配給されるという矢。
ということは、この射手は、マイクさんを倒した矢と同じ人間か。
ついさっき敵からあがった大歓声は。
向こうの射手がバロンさんとの撃ち合いで勝ったことでか!
バロンさんは、チャックさんを振り払い、自分の配置に戻ろうとする。
「マイクのヤツの仇は俺が、あいつを好きにさせると――」
また近くから呻き声が聞こえた。
矢を放っていた兵隊さんの眉間に矢が刺さっていた。
あの矢だった。
バロンさんを退けたので、目標を変えたらしい。
そう気づいた時には、さらにもうひとりが肩に矢を受けていた。
ふたりとも大会の上位者だった。
あの射手、今まではマイクさん、バロンさんと撃ち合ってたから他の兵隊さんは狙撃してこなかった。
だが、ふたりを倒し自由になった今、弓手を次々と狙ってくる。
こちらには余剰の戦力も替えの兵隊さんもいない。
そして、マイクさんもバロンさんもいない今、あいつを手一杯にさせられる打ち手はいない。
「医者のいうことは聞くもんだ」
「俺はまだ放てる! あいつとは決着を――」
「そうかもしれんな。少しはな。だが、あんたが撃てる間にあいつを倒せるのかね?」
「……やらなきゃならないんだ!」
オレは決断した。
「予定を変更して、すぐ次の段階に取り掛かります! ですから、みなさん狭間にあまり姿をさらさないようにしてください!」
だけど、誰も狭間から離れようとしない。
オレの方をちらっと見て、すまなそうに頭をさげると、再び矢を放ちだす人もいる。
「みなさん!」
「だめだ若親分。そういうわけにゃいかねぇぜ」
「だけど、もうすぐ敵は退くはず――」
「向こうは意気上がり、こっちは押され気味。それを見逃す敵さんじゃあありませんぜ」
敵の鬨の声が大きくなる。
こちらの矢の密度が衰えてきたのを見透かして、城壁へ肉薄して来たのだ。
狭間から幾つもの火筒が投げ込まれ、それを懸命に投げ返す兵隊さん達。
今から退いても、仕掛けを作動させる前に、敵が右翼へ入り込んできてしまう。
一旦入り込まれれば、中央と右翼の間の大扉を閉鎖しても、力づくで破られる。
そうなれば白兵戦だ。
数の力で一気に押し切られてしまう。
たったひとりの名手が、オレの立てた計画を崩壊させようとしている。
このままでは、右翼を単に放棄する結末になってしまう。
左翼と中央の兵隊さんを右翼に回して、矢の密度をあげれば……。
いや、だめだ、左翼と中央だって人数を避けるほどは余裕がない。
あの射手を殺さなければならない。
少なくとも、自由に撃たせ続けてはならない。
だが、どうやって?
マイクさんもバロンさんも倒された今、あの射手に脅威を与えられる兵隊さんはいな――
「ヒース! じゃなくて司令官閣下! 義勇兵をお連れしました!」
「!」
振り返ると、マリーがいた。
新しい軍服を着て、背中に矢と火壺の入った箱を背負っている。
その隣に――
「マカベイさん!」
弓矢大会第一位をさらっていった尖がり帽子のマカベイさんがいた。
「あたしが司令官閣下の命令を遂行すべく倉庫へ服を取りに行ったら。受付の人に呼ばれて、この人が」
「民間人を先頭に巻き込むわけには……」
「義勇兵登録と状況説明は済ませてあるから!」
そういうと、マリーは補給のために駆け出して行ってしまった。
マカベイさんは口を開いた。
「話は聞いた。いい猪を納めに来たついでだ。射手が必要なのだろう?」
「!」
確かに、マカベイさんならあいつと撃ち合えるかもしれない。
だけど、負けるかもしれない。
それではダメなのだ。
あれは倒さなければ。
あの魔弾の射手は倒さねばならない。
そうすれば敵の士気は一時的にでも下がる。
仕掛けを発動させる時間が生まれる。
だが、奴は囲いに護られている。
そこから引きずりださなければ。
何か、身を乗り出してでも、狙うべき存在がいなければ――
なんだいるじゃないか。
鼻を突く血の匂い。物が焼けこげる匂い。
霞がかかったようにうっすらとだが広がっている煙。
多くの兵隊さんが、攻撃用の狭間にはりつき。
敵に弓を放ち続け、あるいは登って来たのを槍で叩き落すのに必死。
少々の怪我でも持ち場から離れず、包帯に血の染みを広げながら戦っている兵隊さんもいる。
床のあちこちに大きな血しぶきが模様のように飛び散っている。
あちこちで重傷者がうめき、消されていない小さな火の手があがっている。
補給班が補給をしながら濡らした布をかぶせて火を消して回っているけど、油で燃え上がる火はなかなか消えない。
次々と放り込まれてくるのを周りに燃え広がらないようにするので精一杯な様子だ。
オレはすでに消し止められて転がっている筒を拾い上げた。
「これか……」
腕くらいの太さの木材を切断し、くりぬき、口に布が貼ってある簡単なものだ。
口の近くに火をつける短い縄がまきつけてある。
火壺のように砕けてすぐ火はつかないが、消火に手間取れば筒に燃え移り、油がしみ込んだ布は派手に燃え上がり、布が破れれば中の油が漏れて引火する。
軽装な敵は油など大して持っていないはずだが……いや、水をふもとから運ばせる時、同時にか。
「こりゃ、長くはもちませんぜ」
バルガスの言葉にオレはうなずく。
来てよかった。
主塔の屋上で見ているだけだったら、あの手を使う決断が遅くなってしまっただろう。
オレに気づいた兵隊さん達が、
「若親分! こんなあぶねぇところにわざわざ!」
「閣下だ! 閣下が自ら来てくださった!」
負傷している兵隊さんまでが、オレの姿を見て歓呼の声をあげる。
オレなんか何も出来ないのに。
この人たちのほうがよほど戦っているし、戦えるのに。
「みなさん! ここまでよくもちこたえてくださってありがとうございました!」
兵隊さんの誰かが返してくれる。
「閣下と同じですよ! 仕事をしてるだけです!」
そうすると次々と声があがった。
「少々きつすぎる仕事!」「若親分ならあとでたっぷり特別給金をはずんでくれるさ!」
笑い声が起きた。
オレはグッとして胸がつまりそうになってしまう。でも、なんとか続ける。
「敵が退いたタイミングで、右翼から撤収して、仕掛けを実行します! それまでもうひと頑張りよろしくお願いします!」
今までの流れからすると、そろそろ敵は、一旦退くはず――
「ぐあっ」
耳に苦鳴が飛び込んで来た。
反射的に声の方を見ると、左肩に矢が突き刺さった兵隊さんが苦しそうにうずくまっている。
バロンさんだった。
いつも、寸分の隙も無いシャレものなのに、汗まみれでひどい有様だ。
すぐ前には、射出狭間――矢を放つためのスリット――がある。
狭間の外側のはばは手のひら一つ分、内側は二つ分と言ったところ。
その間から矢が飛び込んで来たのだ。
敵から大歓声があがっている。
オレのすぐわきを、医療班班長のチャックさんが駆けていく。
「まだ俺は撃てる! ぐっ」
バロンさんはチャックさんを手を払おうとしたが、痛みに呻いた。
チャックさんは、バロンさんを手早く診察し。
「駄目だよ。処置しないと腕が使えなくなるよ。お。運がいいなお前さんは、貫通してる」
バロンさんに刺さった弓は、明らかに他の弓と違った。
銀色に光る金属製の矢。特製の矢だ。
「バルガス。もしかしてこの矢」
「まちがねぇ。帝国親衛隊のですぜ」
狙撃に特化した精鋭部隊にのみ配給されるという矢。
ということは、この射手は、マイクさんを倒した矢と同じ人間か。
ついさっき敵からあがった大歓声は。
向こうの射手がバロンさんとの撃ち合いで勝ったことでか!
バロンさんは、チャックさんを振り払い、自分の配置に戻ろうとする。
「マイクのヤツの仇は俺が、あいつを好きにさせると――」
また近くから呻き声が聞こえた。
矢を放っていた兵隊さんの眉間に矢が刺さっていた。
あの矢だった。
バロンさんを退けたので、目標を変えたらしい。
そう気づいた時には、さらにもうひとりが肩に矢を受けていた。
ふたりとも大会の上位者だった。
あの射手、今まではマイクさん、バロンさんと撃ち合ってたから他の兵隊さんは狙撃してこなかった。
だが、ふたりを倒し自由になった今、弓手を次々と狙ってくる。
こちらには余剰の戦力も替えの兵隊さんもいない。
そして、マイクさんもバロンさんもいない今、あいつを手一杯にさせられる打ち手はいない。
「医者のいうことは聞くもんだ」
「俺はまだ放てる! あいつとは決着を――」
「そうかもしれんな。少しはな。だが、あんたが撃てる間にあいつを倒せるのかね?」
「……やらなきゃならないんだ!」
オレは決断した。
「予定を変更して、すぐ次の段階に取り掛かります! ですから、みなさん狭間にあまり姿をさらさないようにしてください!」
だけど、誰も狭間から離れようとしない。
オレの方をちらっと見て、すまなそうに頭をさげると、再び矢を放ちだす人もいる。
「みなさん!」
「だめだ若親分。そういうわけにゃいかねぇぜ」
「だけど、もうすぐ敵は退くはず――」
「向こうは意気上がり、こっちは押され気味。それを見逃す敵さんじゃあありませんぜ」
敵の鬨の声が大きくなる。
こちらの矢の密度が衰えてきたのを見透かして、城壁へ肉薄して来たのだ。
狭間から幾つもの火筒が投げ込まれ、それを懸命に投げ返す兵隊さん達。
今から退いても、仕掛けを作動させる前に、敵が右翼へ入り込んできてしまう。
一旦入り込まれれば、中央と右翼の間の大扉を閉鎖しても、力づくで破られる。
そうなれば白兵戦だ。
数の力で一気に押し切られてしまう。
たったひとりの名手が、オレの立てた計画を崩壊させようとしている。
このままでは、右翼を単に放棄する結末になってしまう。
左翼と中央の兵隊さんを右翼に回して、矢の密度をあげれば……。
いや、だめだ、左翼と中央だって人数を避けるほどは余裕がない。
あの射手を殺さなければならない。
少なくとも、自由に撃たせ続けてはならない。
だが、どうやって?
マイクさんもバロンさんも倒された今、あの射手に脅威を与えられる兵隊さんはいな――
「ヒース! じゃなくて司令官閣下! 義勇兵をお連れしました!」
「!」
振り返ると、マリーがいた。
新しい軍服を着て、背中に矢と火壺の入った箱を背負っている。
その隣に――
「マカベイさん!」
弓矢大会第一位をさらっていった尖がり帽子のマカベイさんがいた。
「あたしが司令官閣下の命令を遂行すべく倉庫へ服を取りに行ったら。受付の人に呼ばれて、この人が」
「民間人を先頭に巻き込むわけには……」
「義勇兵登録と状況説明は済ませてあるから!」
そういうと、マリーは補給のために駆け出して行ってしまった。
マカベイさんは口を開いた。
「話は聞いた。いい猪を納めに来たついでだ。射手が必要なのだろう?」
「!」
確かに、マカベイさんならあいつと撃ち合えるかもしれない。
だけど、負けるかもしれない。
それではダメなのだ。
あれは倒さなければ。
あの魔弾の射手は倒さねばならない。
そうすれば敵の士気は一時的にでも下がる。
仕掛けを発動させる時間が生まれる。
だが、奴は囲いに護られている。
そこから引きずりださなければ。
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なんだいるじゃないか。
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