【完結】森の中の白雪姫

佐倉穂波

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きのこ料理

 小人たちの家は、大きな木の根もとに作られた、まるい扉のかわいらしいおうちでした。
 こぢんまりとしていて、壁にはどんぐりや木の実が飾られており、森の香りがほんのりと漂っています。

「それじゃあ、きのこ焼くぞー! ガンガン焼くぞー!」

「えっと……焼くだけなの?」

「うん! 焼くだけ! 簡単でおいしいんだ!」

 思わずくすりと笑ったブランシュは、小人たちにたずねました。

「よかったら、わたしに料理をさせてくれないかしら?」

「え? 君が? しかもあんた、すごくいいとこの子でしょ? 料理できるの?」

「ええ、お料理はできるの。料理人さんに教えてもらっていたから」

「ええ……ホント?」

 少し心配そうな表情を浮かべながらも、小人たちはブランシュにまな板を手渡しました。

 ブランシュは、小さく切ったきのこに森のハーブをくわえ、手際よくスープを作っていきます。
 大きなお鍋でぐつぐつと煮こむと、森の中いっぱいに、おいしそうな香りがふわりと広がりました。

「できたわ。どうぞ、召しあがれ」

 レンゲのかわりに木のスプーンですくって口に運んだ小人たちは──

「おおおおおおいしーーーーい!!」
「スープにこんな味が!? 信じられん!」

 と、大よろこびです。
 にぎやかに笑いあう小人たちの声を聞きながら、ブランシュもようやく、ほんの少しだけ心をほぐすことができました。

「ねぇ、ブランシュ。君、行くところないんでしょ? だったら、ここで一緒に暮らさない?」

「え……?」

「だって、きのこ見分けられて、料理も上手なんて最高だよ! ライだってきっと……」

 ちょうどそのときでした。

「ただいまー……って、あれ? 誰?」

 ドアの向こうから入ってきたのは、背が高くてすらりとした青年でした。
 茶色の髪に、深い緑の目。ブランシュを見るなり、彼は目をまるくしました。

「女の子……? こんな森の奥に、どうして?」

 小人たちが事情を説明すると、青年──ライは、少しむずかしい顔をしました。

「……気持ちは分かるけど、若い女の子が男の中に混ざって暮らすなんて、よくないと思うな。世間の目もあるし……」

「……そう、ですよね……」

 ブランシュがうつむきかけた、そのとき──

「えっ、このスープ……君が作ったの?」

 ライは、ふたを開けた鍋からスープをすくい、一口飲みました。
 そして、目を見開きます。

「……おいしい。正直、小人たちの“焼くだけ料理”にはちょっと飽きてたところなんだ」

 ふっと笑ったライは、少し照れたようにこう言いました。

「あ、あの! 私、お料理しますので、少しの間だけこの家に泊めてもらえないですか?」
 
「うーん……わかったよ」

 ライは腕を組んで少し悩んでいましたが、ブランシュを泊めてくれることに同意してくれました。

 その言葉に、小人たちは「やったー!」と大はしゃぎ。
 ブランシュも、うれしそうに目を細めました。

 こうして──
 森の中での、小さな新しい暮らしが、はじまったのです。
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