【完結】きずな小学校七ふしぎ探偵団

佐倉穂波

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第7話 旧校舎の鏡

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第6話 旧校舎の鏡
 きずな小学校の七ふしぎ——その六。
 旧校舎の階段にある鏡。その前に立つと、鏡の中の自分が“違う動き”をする。
 

「ちょっと怖すぎじゃない!?」

 玲央くんが持ってきた学校新聞の切り抜きを読んで、あたしは思わず大きな声を出しちゃった。
 だって、心霊番組とかで鏡に幽霊が映り込んでる写真とか動画とかあるよね。あれ、怖くない?
 今までの七ふしぎは、声だったり匂いだったりで、あんまり怖いって感じの話じゃなかったのに……鏡に映ってる自分が、他の動きをしてるって想像しただけで、あたしは怖いよ。

 新聞の写真には、階段の踊り場に大きな姿見の鏡が写っている。

「え~、でも気になるよね。七つ目の七ふしぎまであと少しだし。もちろん調べるよね」

 玲央くんは調べる気満々だ。

「そうね。ここまで来たら調べるしかないんじゃないかしら」

 以外にも柚月ちゃんもノリノリだった。

 でも、確かにここまで調べてやめるのは、もったいない気は、あたしもする……怖いけど。

「それに、怖いとは限らないわよ。みて灯子ちゃん、新聞の続きには『この鏡に映るのは未来の自分』って書いてあるわ。きっと、“違う動きをする”って書いたのは新聞を作った子が印象を強くするために書いたのよ」
 柚月ちゃんが、あたしを安心させるように新聞を指さして説明してくれた。

 柚月ちゃんって、はじめは苦手な子って思ってたのに、仲良くなってみるとすごくいい子。

「本当だ『未来の自分』って書いてある。そっか……なら、あまり怖くないのかな」

 ふしぎな体験をしすぎて、怖いのがマヒしちゃったのかな?

「よし、じゃあ今日の放課後いってみよう」

「さっそく今日なの?」

「思い立ったら吉日って言うじゃん」
 この前授業で教えてもらったことわざを玲央くんが「こういう場面で使うんでしょ?」って得意げに言った。

❊❊❊❊❊


 その日の放課後、三人で取り壊しが決まってる旧校舎の前に立っていた。
 窓ガラスはところどころ割れて、木の枠はすっかり色あせている。
 風が吹くたびに、きしむような音が響いてて、怖い感じを出してる。

「『未来の自分が映る鏡』かぁ……どんな自分が映るんだろう?」
 
「未来かぁ……やっぱ、スポーツ選手とか憧れるよなぁ」

「私は、幼稚園の先生になりたいわ」

 将来の夢……あたしは、まだ考えたことなかったなぁ。

「柚月ちゃんが幼稚園の先生になったら、小さい子たち怖くて泣いちゃいそうじゃない?」

「な、なによ! 玲央くんだって、得意なスポーツないくせにスポーツ選手だなんて変じゃない!」

「夢なんだから、良いじゃん!」

 玲央くんと柚月ちゃんがケンカになっちゃった。
 あたしは二人のケンカを止めようと思ったけど、こういう時ってどんな声をかけたらよいの?

 あたしが迷ってる間に、柚月ちゃんが「フンッ」と怒って先に歩いて言っちゃった。

「もう。玲央くん……あんなこと言ったら柚月ちゃん怒るよ」

「あっちだって、失礼なこと言った」

 確かに柚月ちゃんも玲央くんに「変」って言ったけど……。


「きゃっ!」
 廊下を曲がった方から、メキッって何かが壊れる音と柚月ちゃんの悲鳴が聞こえた。
 玲央くんとあたしは慌てて柚月ちゃんの声がした方に走った。

「柚月ちゃん! どうしたの!」

「あ、足が挟まっちゃって……」

 柚月ちゃんは、階段を降りてる途中で、傷んだ板を踏んでしまったみたいで、足首が板に挟まってた。

 必死に引っぱっても抜けない。
 柚月ちゃんの顔が不安そうに歪んだ。

「どうしよう、抜けなかったら……」

「大丈夫だよ!絶対たすけるから。俺が押すから、灯子ちゃんはそっちをお願い……せーの」

 玲央くんの掛け声に合わせて、あたしは床の板を押した。

 ミシミシって音を立てて、柚月ちゃんの足が挟まってるところに少し隙間ができた。

「よし、もう一回!」
「せーのっ!」

 ぐっ、と力をこめると、さらに隙間がひろがって、柚月ちゃんの足が抜けた。

「やったー!!!」

 三人はその場にへたりこみ、思わず顔を見合わせて笑った。

「ごめんなさい、玲央くん。さっきは言いすぎたわ」
 柚月ちゃんが小さくつぶやくように玲央くんに謝った。

「俺こそ、ごめん……」
 玲央くんも、柚月ちゃんから目をそらしながらだけど、謝った。

 二人が仲直りして、あたしは安心。

 で、前を向いて、あることに気がついた。

「……あれ?」

 アタシは目をこすった。
 階段の踊り場にある大きな姿見。

 あたしと玲央くんと柚月ちゃんが映ってる。

 でも、そこに映っていたのは、今のあたしたちじゃなかった。
 
 中学校の制服を着てる。

 鏡の中のあたしたちは、三人で笑い合ってた。

「これ、私たち?」
「へー、悪くないな」
「うん。きっと、これからも一緒ってことだよ」

 旧校舎の静けさの中、三人の声がほのかに響いた。

『未来の自分』イコール大人って思ってたから、想像してたのとは違うけど、中学生の自分も『未来の自分』だもんね。

 それに、中学生になっても玲央くんや柚月ちゃんと仲良くしてるって思ったら、すごく嬉しかった。
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