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第1話 音楽室のピアノ
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きずな小学校の七ふしぎ__その一。
だれもいない音楽室のピアノがひとりでに鳴る。
「……って話なんだ。どう? 面白いだろ?」
放課後の図書室で、あたしの目の前には、昨日の帰り道に話しかけてきた男の子__玲央くんがいた。ちょっと背が高くて、いたずら好きそうな顔をしてる。そして、今日もキラキラしてる。
すごく楽しそうに七ふしぎのことを教えてくれるんだけど、オカルト好きなのかな?
「いや、でもそれって……風とか、猫とか、そういうのじゃないの?」
「甘いなー灯子ちゃん。ちゃんと記録が残ってるんだよ。新聞とか、昔の学級日誌に」
そう言って、玲央くんは一冊のノートを持ってきた。中には「音楽室にて 夜八時四十三分 ピアノが三音鳴る。音楽室の中は無人で、ドアもしまっていた」と書かれている。
「それ、誰が書いたの?」
「ぼくの兄ちゃん。元・七ふしぎ探偵団だった人」
「七ふしぎ探偵団?」
「七ふしぎを調べてた探偵団だよ。三年くらい前まで活動してたんだ。でも……七つ目のふしぎを調べようとしたところで、団は解散したんだって」
——七つ目のふしぎ。
それは、誰も知らない、誰も触れられない最後の謎らしい。
あたしの胸がドキンと鳴った。
……それをぜんぶ解いたら、ほんとに願いごとが叶うのかな。
その日の夜。
「ねぇ、本当に行くの……?」
「行くんだよ。いいじゃん、探検みたいでワクワクするでしょ?」
午後七時過ぎ。あたしたちは、こっそり学校に戻ってきていた。
学校のまわりは静かで、灯りもまばら。
あたしたちが居るのは、昨日あたしが音楽室のピアノの音を聞いた階段。
「もしバレたら……先生に怒られるよ……」
「怒られる前に、証拠をつかもう!」
玲央くんは、ポケットからスマホとボイスレコーダーを取り出した。やる気満々すぎる。
誘われるままに、学校に戻ってきた私も似たようなものかもしれないんだけど……いざ校舎に入ろうってなると、「大丈夫なのかな?」って不安になっちゃう。
それに、中は当然なんだけど薄暗くて、なんだか怖い。昼間とは違う雰囲気なの。
でも、玲央くんは全く気にならないみたいで、迷う感じもなく扉を引いた。
あれ、でも戸締まりしてるんじゃないの?
「……鍵、開いてるの?」
「帰る前に開けてはおいたんだ」
用意周到な玲央くんだった。
「入ろう」
——ギィ……。
古いドアが、ゆっくりと開いた。
月明かりが、部屋の中をうすく照らしている。
グランドピアノが、静かに、けれど威圧するようにたたずんでいた。
「……ここが、あの噂の音楽室……」
心臓がドキドキして、手のひらが汗でびっしょり。
ピアノに近づいて、ふたりでじっと音を待った。
一分、二分、五分——何も起きない。
やっぱり、ただの噂だったんじゃ……。
そのとき——。
ポーン……
「っ!!」
指なんて、置いてない。
風もない。
なのにピアノの一番高い鍵盤が、ひとりでに押された。
「な、なに今の……!?」
「録音できたかな……」
玲央くんがボイスレコーダーを確認しているあいだも、あたしの頭の中は真っ白だった。
目の前のピアノは、静かにそこにあるだけ。
そのとき。
ピアノの譜面台に、何かが置いてあるのに気づいた。さっきまで、何もなかったと思うんだけど、気が付かなかっただけなのかな?
「……ノート?」
古びた五線譜のノートには、うすく文字が書かれていた。
“はじまりの音を 聞いた子へ”
“七つめの扉は きみを待っている”
ゾクリと背中をなでられたような感覚。
玲央くんはそれを読んで、顔を輝かせた。
いやいや、輝かせるところじゃないよ。
「七つめの、扉……」
「これ……誰が書いたのかな……? さっきまでここになかったよね。わあっ、やっぱり七ふしぎは存在するんだ!」
玲央くんは興奮気味。
それに、やっぱりこのノートは突然現れたみたい。
ただの噂じゃない。
この学校には、ほんとうに“なにか”がある——!
だれもいない音楽室のピアノがひとりでに鳴る。
「……って話なんだ。どう? 面白いだろ?」
放課後の図書室で、あたしの目の前には、昨日の帰り道に話しかけてきた男の子__玲央くんがいた。ちょっと背が高くて、いたずら好きそうな顔をしてる。そして、今日もキラキラしてる。
すごく楽しそうに七ふしぎのことを教えてくれるんだけど、オカルト好きなのかな?
「いや、でもそれって……風とか、猫とか、そういうのじゃないの?」
「甘いなー灯子ちゃん。ちゃんと記録が残ってるんだよ。新聞とか、昔の学級日誌に」
そう言って、玲央くんは一冊のノートを持ってきた。中には「音楽室にて 夜八時四十三分 ピアノが三音鳴る。音楽室の中は無人で、ドアもしまっていた」と書かれている。
「それ、誰が書いたの?」
「ぼくの兄ちゃん。元・七ふしぎ探偵団だった人」
「七ふしぎ探偵団?」
「七ふしぎを調べてた探偵団だよ。三年くらい前まで活動してたんだ。でも……七つ目のふしぎを調べようとしたところで、団は解散したんだって」
——七つ目のふしぎ。
それは、誰も知らない、誰も触れられない最後の謎らしい。
あたしの胸がドキンと鳴った。
……それをぜんぶ解いたら、ほんとに願いごとが叶うのかな。
その日の夜。
「ねぇ、本当に行くの……?」
「行くんだよ。いいじゃん、探検みたいでワクワクするでしょ?」
午後七時過ぎ。あたしたちは、こっそり学校に戻ってきていた。
学校のまわりは静かで、灯りもまばら。
あたしたちが居るのは、昨日あたしが音楽室のピアノの音を聞いた階段。
「もしバレたら……先生に怒られるよ……」
「怒られる前に、証拠をつかもう!」
玲央くんは、ポケットからスマホとボイスレコーダーを取り出した。やる気満々すぎる。
誘われるままに、学校に戻ってきた私も似たようなものかもしれないんだけど……いざ校舎に入ろうってなると、「大丈夫なのかな?」って不安になっちゃう。
それに、中は当然なんだけど薄暗くて、なんだか怖い。昼間とは違う雰囲気なの。
でも、玲央くんは全く気にならないみたいで、迷う感じもなく扉を引いた。
あれ、でも戸締まりしてるんじゃないの?
「……鍵、開いてるの?」
「帰る前に開けてはおいたんだ」
用意周到な玲央くんだった。
「入ろう」
——ギィ……。
古いドアが、ゆっくりと開いた。
月明かりが、部屋の中をうすく照らしている。
グランドピアノが、静かに、けれど威圧するようにたたずんでいた。
「……ここが、あの噂の音楽室……」
心臓がドキドキして、手のひらが汗でびっしょり。
ピアノに近づいて、ふたりでじっと音を待った。
一分、二分、五分——何も起きない。
やっぱり、ただの噂だったんじゃ……。
そのとき——。
ポーン……
「っ!!」
指なんて、置いてない。
風もない。
なのにピアノの一番高い鍵盤が、ひとりでに押された。
「な、なに今の……!?」
「録音できたかな……」
玲央くんがボイスレコーダーを確認しているあいだも、あたしの頭の中は真っ白だった。
目の前のピアノは、静かにそこにあるだけ。
そのとき。
ピアノの譜面台に、何かが置いてあるのに気づいた。さっきまで、何もなかったと思うんだけど、気が付かなかっただけなのかな?
「……ノート?」
古びた五線譜のノートには、うすく文字が書かれていた。
“はじまりの音を 聞いた子へ”
“七つめの扉は きみを待っている”
ゾクリと背中をなでられたような感覚。
玲央くんはそれを読んで、顔を輝かせた。
いやいや、輝かせるところじゃないよ。
「七つめの、扉……」
「これ……誰が書いたのかな……? さっきまでここになかったよね。わあっ、やっぱり七ふしぎは存在するんだ!」
玲央くんは興奮気味。
それに、やっぱりこのノートは突然現れたみたい。
ただの噂じゃない。
この学校には、ほんとうに“なにか”がある——!
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