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13.仮面舞踏会 後 ◇ ※
しおりを挟むハンフリーが贈ったドレスにコルセットだ。脱がせることなど簡単で、早々に薄着になったオリヴィアを持ち上げ、ベッドに下ろした。オリヴィアは声を上げることも恥ずかしがることもなく、ただハンフリーにされるがままだ。
頬や額にキスを落とし、耳や首筋にも唇と舌を這わせる。
(本当に何も、意識されてないんだな……)
オリヴィアがハンフリーを、恋情的な意味で男として見ていないのは、認めたくなかった。
ティールームや湖へピクニックに行ったことも、オリヴィアにはデートと思われていない。贈り物も、間者としての物を除けば、オリヴィアが初めてだった。特に未婚の異性同士なら特別な意味を持つことを、オリヴィアは知らないのかもしれない。
オリヴィアには、全て第二王子の自己満足だと思われている可能性すらある。ハンフリーだけが、舞い上がっていた。
第二王子として、婚約者を決めるよう兄から圧が掛かっている。この仮面舞踏会もひとつ、その仕事として選んだはずだ。
客室がそういうことをするための部屋で、ほんの少しの明かりを残して落とされていて助かった。今の瞳を、オリヴィアには見られたくない。変色があっても、絶対に濃すぎる。
唇を奪うのは、オリヴィアが感情を向けてくれてからにしたい。それほどに想っていることが、いつになれば伝わるだろうか。
押し倒したオリヴィアの肌は陶器のように白く、滑らかで、あたたかい。素肌で感じたくて、ハンフリーも礼服を脱いだ。下半身に関しては、緩める程度に留める。オリヴィアを、怖がらせたいわけではない。
「んっ……」
綺麗な薄い桃色の頂きに、舌を這わせる。それぞれの膨らみに手を添え、ほどよい大きさのそれを揉み込んでいく。
ゆっくり高めてあげたいのは山々だが、ここは仮面舞踏会の客室で、翌朝まで居られる部屋ではなく、そんなに時間を掛けてはいられない。
処女をこんな風にもらうのを決めたのはハンフリーに違いないが、どこかでオリヴィアが抵抗して、断ってほしい気持ちもあった。すぐに婚約が叶わないとしても、オリヴィアからも何かしらの前向きな気持ちを向けられていると、信じたかった。
(はあ……)
両の突起が固くなって上を向いたところで、ハンフリーは上体を起こし、オリヴィアの最後の下着を取り払った。
「あっ……」
さすがに抵抗感があったのか、オリヴィアから小さく声が漏れた。頬は上気して見え、呼吸も荒い。高まっているのは確かだろう。少し力の入った足を開かせ腕で固定し、手でそっと、割れ目を広げる。
(これが、オリヴィアの……)
誰の手もついていない、まっさらで、興奮しているのだろう、こちらも綺麗な桃色の蜜壷が、てらてらと光っている。
「んんっ!」
「ごめん、痛かった?」
「いいえ…」
オリヴィアの芯は、まだ目立ってはいなかった。唇を寄せ吸ってみたが、オリヴィアに痛みはないらしい。きっと、経験のない刺激に驚いただけだろう。
割れ目にも流れるほどに、たっぷりと唾液を絡ませた舌の先端で、小さな蕾を優しくゆっくりとなぞり、ちろちろと舐める。上半身と同じように、少し大きく固くなってきたところで、蜜口に指を這わせ、指先を少し差し入れてみる。
(やっぱり、狭い……。痛いだろうな)
ハンフリーに抱かれてもいいと思ってくれてはいるが、慕っているわけではないオリヴィアの興奮は、きっと足りていない。初夜なら、一晩中時間を掛けて、翌朝まで溶かしに溶かしてあげられるのに。
(オリヴィアの近くには、侯爵とメイナードがいる。あのふたりには、絶対にさせたくない)
「んっ……」
指をさらに押し進めてみても、オリヴィアの声は大して響かない。仮面舞踏会の客室で、部屋の外に人がいる状況でもある。都合がいいと言えばいいが、甘く声を上げる姿もいつか見てみたいと思うのは、男の性だろうか。
くちゅくちゅと音を鳴らし、指を増やすが、二本が精一杯、三本は入らない。オリヴィアは処女で、指の届かない奥へ貫く時に、痛みがあることに変わりはない。
(ないほうが、いいに決まってるけど……)
オリヴィアの家族、プレスコット侯爵と嫡男ならきっと、処女も区別なく抱くのだろう。
色に関するあのふたりの噂は、度を越えている。潜めておけばよいものを、自分がどれだけモテるのか、自慢として言いふらしているため、オリヴィアに対してもいい噂はない。
婚約破棄の一件もあり、プレスコット侯爵家は娘もしくは妹を性欲処理に使っているとか、全く色を誘わない首の詰まったドレスも、その下にある所有痕や噛み痕を隠すためだとか、様々酷く言われるようになってしまった。
婚約者がいないため、社交に出ないオリヴィアには届かないのが、救いだろうか。
「っ……」
ハンフリーが滾った自身を取り出し、割れ目に滑らせる。舐めて唾液を足してもやはり濡れが甘いし、指で触れた限り蜜壷の中も狭かったが、この状況で行為をする以上、ある程度は仕方ない。
ハンフリーの得意な、立場を利用した割り切りだ。
(……ごめんね)
「んっ!!」
「は……」
指で解したところ、半分ほどはまだ、滑らかに入ったはずだ。あたたかく、きゅうきゅうとハンフリーを締め付けてくる。
少し腰を引いてみたが、律動できるほど余裕はない。全てを入れ切らないと、意味がない。オリヴィアの腰を掴んで、最奥を狙って一気に突き上げた。
「ああ……っ!」
「痛いよね、ごめんね」
ぎゅっと閉じられた目尻から流れる涙を、舌で掬い取って消してしまう。締め付けをいなすために、オリヴィアをぎゅっと抱き締め、頭を撫でる。
「息を止めないで、ゆっくり吐いて」
呼吸をするために開いた唇を、奪いたくなる。親指でそっと触れると、オリヴィアの目が開いた。閉じさせるように、眉間へキスを落とし、ゆっくりと腰を揺らし始める。
「んっ……、んっ」
オリヴィアの蜜壷は狭いが、徐々にハンフリーの形に慣れ、全く動けないことはなくなってくるはずだ。
上体を起こし、親指を蕾に当てながら、ゆっくり大きく抽送し始める。オリヴィアの声が、耐えるものから甘いものへと変わってくる。ずちゅっと、結合部からも準備の整った音がする。
「少し、強めるよ」
「ん、あっ」
オリヴィアを見下ろしながら、片手で太腿を、もう片方で伸ばされたオリヴィアの両手首を下腹部の辺りで押さえる。膨らみが強調され、ハンフリーの動きに合わせ、たゆんと揺れる。
「あっ、あっ、……んん」
「何か、来そう?」
「んあっ、分かんな……」
「は……」
(思ったより、早いな……っ)
どうやら、オリヴィアは声を我慢しているわけではなく、戸惑っているらしい。快感は徐々に拾えているようで、蜜壷が締まってくるのも感じられるが、このままではハンフリーが先に達してしまう。
「んあっ」
誤魔化すように再び上体を倒し、オリヴィアの少し汗ばんだ首元を舐めると、高めの声が聞こえた。嬌声が少しずつ漏れてきても、口元を隠そうともしない。ただ、ハンフリーから与えられる快感に、身体の力を抜き任せているだけだ。
本当に、意識されていない。処女を家族に奪われなければ、本当に誰でもよかったのだろう。
オリヴィアにとってハンフリーは高位で、たまたま何度も会ったことがあるから抵抗が薄く、ハンフリーになら抱かれてもいいと思えただけなのだ。
ハンフリーは、オリヴィアの腰を握った。むにっとした柔らかい感触をいつまでも味わっていたいが、そうも言っていられない。最奥を目指し、勢いよく反らすように打ち付けると、結合部からはぱちゅっと音が鳴る。
(……いって、オリヴィア。次にするのはだいぶ先になるけど、どうか、僕の形を覚えていて)
「ん、んんっ!」
「っ……」
辛うじてオリヴィアが先に達して、蜜壷がきゅっと締まり、ハンフリーを搾り取ろうとしてくる。すっと引き抜いて、少し赤みを帯びた肌に吐き出した。
表情を確認しようとオリヴィアの顔を見ると、息は上がっているものの、しっかりとした目線がハンフリーを追っていた。目を合わせてから頬に触れ、額にキスを落とした。
「ありがとう。ちゃんと、送り届けるから」
「……はい」
用意されていたタオルを絞り、オリヴィアを撫でた後、ハンフリーも身体を整えた。鏡を見て、髪色と瞳の色が落ちていないことも確認する。
水差しには飲料水が用意されている。見た目には何も入っていない。一口飲んで、即効性がないことも確認した。
ハンフリーが選びそうな客室は、レナルドかサミュエルが先回りしてくれているため、遅効性のものも含まれていないと思っていい。礼服に入れておいた、避妊薬を垂らす。
「汲みたてじゃないけど、少し飲んでおいて。強い運動と同じだから」
「お気遣い、ありがとうございます」
水を渡すと、単なる水分補給だと思ったのだろうオリヴィアは、素直にゆっくりと、ハンフリーが汲んだグラス半分の水を飲み干した。空いたグラスを受け取りつつ立たせ、下着やコルセットを着けていく。
「何か、思うことはある?」
「あ、あの……、ありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとう。君の望みでもあったし、僕の望みでもあった。ここでの出来事は、僕たちだけの秘密だよ。ああ、お互い、使用人にはバレるけど」
「……そうですね」
ハンフリーの読みはやはり、当たっているようだ。マーサも分かっていて、主人であるオリヴィアを送り出したのだ。
婚約関係にもないのに処女を奪ったことに対して謝りたいが、ここで謝罪をすれば、きっとオリヴィアは気に病むのだろう。特に、客室に入ってからのオリヴィアはらしくなく積極的だった。その誘いが、ハンフリーにも都合がよかったため、乗ったのだ。
「他に、何か考えていることは?」
「……着付けられるのですね」
「ああ……、僕が選んだものだからね。誰かを呼ばなきゃいけなかったら、誘ってない」
顔を隠す仮面を確認し、オリヴィアに片手を預けてもらって客室を出た。レナルドとサミュエルが、ついてくるのが分かる。ホールに戻ることはせず、真っ直ぐ馬車へ向かった。
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