皐月 禅の混乱

垣崎 奏

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6-1.(昔からずっと、好きだったんだ)※

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 昼休みに限らず絡んでくるようになった佐藤先輩が鬱陶しくて、オレは今日も酒を飲んだ。ホテルに行く前の腹ごしらえだから、楓羽が付き合ってくれているのも分かっているけど、その迷惑さを聞いてほしかった。

 こっちの地域に来てからはずっと、恋人は作っていない。「慣れてから……」と断っていたのもあって、「そろそろ向き合ってほしい」と直球で言われた。面倒すぎて、社内では無口で大人しい楓羽に全部、酒の力も借りて洗いざらいしゃべった。先週のような失態は犯さない。それでも多少すっきりと、気分はいい。


 ◇


「ぜんくん、お待たせ」
「わ……、そんな勃たせて。期待してんだね」
「んっ」

 バラエティストアで避妊具と一緒に買った、光沢のあるエナメル素材のランジェリーを、楓羽はまた素直に着てくれた。前回のレースとは違って透けてはいないものの、その安さから想像した通り、生地は薄めでパッドもなく、ぷっくりと楓羽の突起が主張している。

 いつもと同じように隣に座った楓羽を引き寄せ、キスをしながら、膨らみに触れた。


 ◇


「ねえ、ふーちゃん。横から溢れてるの、分かる? これ、浸透しないから」
「んんっ」

 ショーツの端からシーツのタオルへと、愛液が垂れている。指で掬って舐めると、楓羽は見たくないのか顔をしかめた。ほぼ毎回、オレの下半身を舐めて濁液を飲んでいるくせに、自分がされるのは嫌らしい。クロッチを弄ってみれば、やはり分かるほどに芯も大きくなっていた。

「あっ、ん、ぜんくんっ」
「気持ちいいね」
「んん、脱ぎたい、気持ち悪い」
「んー、もうちょっと見ていたいかな」

 楓羽は、少しくらい焦らす方が結果的によく果てる。前回のこともあって、いつもよりちょっと意地悪をしたい気分だった。


 ◇


 浴室での二回戦を終え、裸のままベッドに寝転んだ。今日は酒の量を抑えたからか、先週のように楓羽に攻められることはなく、立って後ろから身体を重ねただけだった。

(だけ、ではないか)

 元交際相手たちと比べれば、恐ろしいほど性生活は充実している。楓羽と再会していなければ、また別の女性と適当に付き合って、ベッドで引かれて別れるのを繰り返していただろう。

 楓羽は、何を考えているか読ませてくれない。リアルでは見た目通り大人しく過ごして、この本性を隠している。こんな痴女なのを知っている男は、オレの他にもネット上にたくさんいる。オレが手のひらで踊らされるほど、楓羽の経験と余裕を見せつけられる。

「ぜんくんは、ランジェリーが好きだね」
「……そうだね」
「いや、照れるの今更……」
「うん、そうだね」
「他に、したいことないの」

 楓羽からの質問なんて、珍しいと思った。オレから楓羽に様子を尋ねることの方が、圧倒的に多い気がする。

「逆に聞く。どんなことしてきたの。オレとじゃ物足りないんじゃない?」
「思ってない」
「そんなことないでしょ。ねえ、歴代の男には、どう触られたの」
「ぜんくんっ……」
「上書きしたい。キスみたく、教えて」
「…………」
「ねえ、ふーちゃん」

 楓羽の困り顔を見ながら、頬をむにむにと摘んだ。ちょっと嫌そうに眉間に皺を寄せるのも可愛くて、もう、認めるしかなかった。

(昔からずっと、好きだったんだ)

 そうでも理由をつけないと、あんな風に攻められてもなお、楓羽と身体を重ねたいと思う自分に、こんなにも楓羽を独り占めしたいと思う気持ちに、納得できなかった。あんな発破、楓羽なら乗ってくれる誘いだと分かっていても、素面なら言わなかっただろう。

 元交際相手に向けるよりもずっと強くて重い感情が、楓羽には溢れる。離したくないし、離れてほしくない。「振られても普通に見える」とか「ショックとか無さそう」とか「次もすぐ見つかるだろ」とか言われ、実際のところ、代わる代わる近づいて来る女性を基本的には拒まなかったし、その通りで特に否定もせず、恋愛に関してはのらりくらり流されてきた。

 やっと、あの佐藤先輩を嫌悪する自分にも理由がつけられる。初めて、告白することになりそうだけど、そんな気持ち、オレのことをただのセフレだと思っている楓羽には伝わってほしくない。そもそも、楓羽がオレに恋愛感情を持つのか、話を聞く限りは疑問も残る。

 誤魔化すように、主導のキスをする。楓羽に教えられたものではあるけど、この先の行為を意識させるくらいはできるようになった。だんだんと熱くなる身体を、より密着させる。

「ここは、どう弄られた? これは気持ちいい?」
「んっ!」
「これは?」
「あっ、ぜんくん……」

 突起を倒す、摘むだけではなく、手のひらや五本の指全部で擦ってあげる。掠るほどでも、楓羽は声を聴かせてくれる。今までの刺激よりも不規則に、左右で違う動きをすれば、楓羽の甘い声は漏れ続ける。白い肌は上気して、薄いピンク色を纏う。オレが、滾る要素しかない。

「どれも、いいの?」
「んん、きもちいっ」

 舌でも捏ねてあげれば、腰が跳ねる。男の身体で押さえつけてしまえば、何も問題はない。楓羽は、オレの欲しい反応をくれるし、受け入れてもくれる。少しくらい過去の男が気になったところで、きっとあしらわれる。

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