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8-1. (思い出せないほど、抱いていいよな?)※
しおりを挟む「あ、ロンスカだ」
「普段着ないから」
「なんで? 会社でも着れそうだけど」
(ふーちゃんって、こんな可愛かったっけ……?)
楓羽は平日もスカートだけど、オフィスカジュアルの範囲内でおしゃれができる内勤の事務なのに、落ち着いた色のスーツに近いタイトなものを着ていることが多い。それもあって、真面目で大人しく見えるのは間違いない。
「裾を気にしなきゃいけないから」
「ああ、そういう」
会社で着ているものと同系色ではあるものの、フレアの利いたスカートなだけで、プライベートで会っている感じがする。ローヒールのショートブーツにブルゾンコートのカジュアルさが、ボブヘアの楓羽によく似合っている。
楓羽は、自分の見え方、いや、見せ方を知っている。大人しく見えるけど、肉食系。聞こえは悪いけど、ある意味騙すように、アプリで出会った男と関係を持ってきた。
「ぜんくんも、スーツじゃない」
「仕事終わりじゃないからね」
特別ファッションに関して何か努力しているつもりはないけど、女の子の隣に立って恥ずかしくないくらいの格好はしようとは思っている。チノパンにオーバーサイズの襟シャツ、ダウンジャケットを合わせているから、シルエット的には多少ゆるっとしている。
ちなみに、スーツは基本、ネイビーかグレーのセットアップに、ライトブルーのワイシャツを合わせている。細く見えるから、「似合ってる」とか「かっこいい」とか言われてもあまり好意的には受け取れない。社名の入ったアウターはあっても、作業着がないのが残念だ。
初めて、会社帰りではない昼間に、楓羽と出掛ける約束をした。月曜が祝日の三連休で、金・土で泊まるのをパス、土曜に朝から会うことにした。つまり、土・日で泊まる。日曜は一日中密着して、延泊して月曜の朝に解散するのかもしれない。ふたりとも、月曜に予定を入れていなかったから。
◇
駅でトイレを済ませ、戻ったオレが見たのは、楓羽と知らない男だった。楓羽よりも背が高く、オレと同じくらいだろうか。何かしらスポーツをやっていたのは間違いない体格で、楓羽が待ってくれていると知らなければ、すっぽり隠れて見つけられなかった。
「……ふーちゃん?」
「なんや、マジなんかい。楽しみいやあ」
「余計なお世話」
短髪を整髪料で逆立て、いかにも雄らしい顔をした男が、わざわざオレを一瞥してから楓羽に手を振って去っていく。男が角を曲がって見えなくなってから、楓羽に向き直った。
「……誰?」
「前に関係あった人。今日約束してた人にドタキャンされて、どうしようかって歩いてたら見つけたみたい。たまたまひとりだったし。指輪見せたのに『ウソやろ?』って離れてくれなくて」
「そう」
あれが、楓羽の過去の男のひとりだ。あいつとは、何をどんな風にしたのだろう。メラっと湧く黒い感情には、蓋をしたいのに。
「怒った?」
「いや……、まあ、怒ったといえば怒ってるけど、ふーちゃんにじゃない。想定してなかった自分にムカつく。街中だしそういう相手に会うことだってあるって、考えとけばよかった」
「なかなかないよ、みんな隠したい関係だし」
淡々と話す楓羽に、手だけでは気持ちが落ち着かず、腰を引き寄せて歩く。
「ぜんくん?」
「嫌?」
「ううん、大丈夫」
楓羽が、笑った。オレの反応が何を意味しているか、つまり他の男と話してほしくないと思ったのを、感じ取ってくれたのだろうか。 楽しそうで何よりだけど、オレの気分は晴れなかった。楓羽は、顔を合わせれば世間話ができるくらいに、過去の男を覚えている。
(思い出せないほど、抱いていいよな?)
◇
「あっ、あっ、ぜんんっ!」
「気持ちいいね」
「あっ、んんっ」
奥まで突いて、ギリギリまで引き抜いて、また勢いよく奥を目指す。とっくに蕩けた楓羽は、オレを搾り取ろうと絡みついてくる。
(ここ、当たるけど……)
「んあああっ!」
「ふっ……」
腰を支え更に押し込めば、楓羽の絶叫を聴ける。呼吸が荒れて苦しそうだから、最奥では大きくは動かない。ぐりぐりと押し付けるか、とんとんとノックをするくらいだ。最後に吐き出すのための、とっておきでもある。
「はあっ……、めっちゃ気持ちいい」
「っ……、ぜん……、あ、まだだめっ」
「気持ちいいから、止まれないよ」
耳元で伝えてあげれば、楓羽の内部はさらにきゅっと締まってくる。いつもなら少し待って休憩させてあげるけど、さっと抜いて、すぐ避妊具をつけ直す。楓羽は無理矢理気味が好きだし、なんとなく、今日の楓羽は耐えてくれる気がした。
オレの記憶が確かなら、来週は生理で入れることはできない、抜いてもらって添い寝してもらうことになる日だ。逆に言えば、今日は楓羽が一番敏感なタイミングで、達したがる。
ひたすら律動を繰り返した後、ふとオレが心配すると、「ふふっ」と笑われる。楓羽が言うには、気にしなくてもいいらしい。オレからすれば、そうはいかない。
今のオレと楓羽は、恋人同士だ。確かに、楓羽と身体を重ねることは前から続いているけど、気遣うことを止めるわけではない。オレの下半身が、人並みよりも大きいのは変わらない。むしろ、さらに質量を増して凶悪化しているかもしれない。
回数を重ねるうちに、気づいたことがある。楓羽が、言葉を叫んでいるうちはまだ余裕があって、好きに動いても感じてくれる。楓羽が果てた後は腰を止めず、ゆるゆると刺激してやると身体の震えが長引いて、快感が続くらしい。
嬌声が言葉にならなくなってくると、手足から力が抜け、オレのなすがまま、半分気を失っているような状態になる。楓羽は激しく犯されるのが好きだと分かっていても、意識のない楓羽を犯すほどの趣味はない。
抽送を止め、耳や首筋、突起を舐めて休憩していれば、やがて楓羽の目が開く。
「……平気?」
返事は大概、首に回された手とキスで返ってくる。そのまま抱き込んで、もう一度出るまで動いた。
◇
「ふーちゃん、ここ当たるの分かる?」
「ん、んっ」
「この先、まだ入れれるかな」
「おく?」
「うん、入れていい?」
「うん……?」
構えた楓羽の腰の下に、膝を滑り込ませる。いつもとは先端の当たる位置が変わって、また違った楓羽が見れるだろう。
「あっ、ああああっ!」
「逃げないで」
楓羽の絶叫にはとっくに慣れて、相当に嫌がらなければ止めることはない。律動はせず、ただ最奥へと当て直した。もともと最奥には当たっていたはずで、体勢を変えるために発破をかけただけだ。
「はあ……、大丈夫そう?」
「んあっ、んんんっ」
「動くから、ほんとにだめなら叩いて」
「ん、んああっ」
(……やば、エロ)
楓羽の顔も声も、枕をぎゅっと握った手さえも、オレを本気にしかさせない。絡みついてくるのが気持ちよすぎて、感覚がおかしくなる。最奥を突くと宣言したことで、より締まっている気がする。
「あっ、んんっ、うあっ、あっ」
「っ……」
「ああ、あっまって、ぜんんっ」
「ごめん、むり」
「んん、あっ、あああっ!」
楓羽の身体は、オレを受け入れてくれる。もう、誰にも渡したくなかった。だからこそ、ここまで突いて楓羽を気持ちよくできるオレを、絶対に身体へ覚えさせる必要がある。他の男が、楓羽の目に入らなくなるように。
◇
「っ、ごめ、入れすぎた」
「うう……」
オレが快感を追うと、最後の一突き手前でも奥に入ってしまうようになってきた。ネットの知識でしかないが、楓羽の子宮が降りてきて、濁液を受け入れるための入口が開いて、差し込みやすくなるらしい。
(本当かは、知らんけど)
転職に合わせて引っ越した地域の方言が思い当たるくらいには、理性が残っているのに、どうしてこんなに酷く、ずっと抱いていたくなるのだろう。楓羽はとっくに言葉を出さず、オレの律動に合わせて声を漏らすだけだ。溶けて力の入らない楓羽の、口から零れた唾液を舐め取った。
「ふーちゃん」
「んん……」
「……止めようか?」
「……っ、やだ、わたしだけなのはやあ!」
いつも、そうだ。限界だと思って、オレが止めようとすると、意識が飛びかかっていても戻ってきて、楓羽は全力で嫌がる。
(こんなに、辛そうなのに……)
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