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しおりを挟む指輪を渡した翌週、楓羽はちゃんと男除けの意味を理解して、社内でも着け続けてくれた。当然、オレも同じタイミングで着け始めたし、関わりの深い設計部と営業部ではあっという間に広がった。
軽く、パニックが起こったと言ってもいい。特に営業事務の女性陣は明らかに業務効率を落として、男性部長から叱責を受ける社員が複数出る事態にまで発展したと、楓羽が言っていた。設計部の男性陣の鋭い目も、心なしかオレに向いている気がする。
(ふーちゃんもオレも、アイドルでも何でもないんだけど……)
溜息を吐きながら入った午後の休憩室には、先客がいた。
「お前、やるなあ」
「何がですか」
谷先輩は、オレがここに来る時間を狙って合わせてくる。
「辰巳さんだよ、いつの間に?」
「『間に合ってる』って、ずっと言ってたでしょう」
「お前から、仕掛けたのか?」
「そうだと言えば?」
「うわ、ガチだ。あの皐月が!」
「まあ、そんなリアクションになるでしょうね」
オレは楓羽に再会するまで、女性に関して来る者拒まず、去る者追わずだった。谷先輩も当然、それを知っている。
「……悪いんだが」
「え、何ですか? この流れで?」
急に、先輩の顔が曇った。いつも明るくて、テンションの高い谷先輩なのに。
「佐藤がうるさいんだよ、オレ同期でさ……」
「あの佐藤さんですか……?」
「そ、有名だろ? 今度やる同期会に、ふたり連れて来いって」
「ふたり?」
「お前と、辰巳さん」
「は?」
フリーズしている間に、先輩はオレの肩を叩いて休憩室を出て行った。
断る連絡を入れたとしても、谷先輩が振り解けないレベルの佐藤先輩を止められる人は、思い当たらない。そもそも、同期会に後輩カップルを誘う意図も分からない。たまに、こういう常識の通用しない人がいる。
ゆっくり深呼吸をしながら自席へ戻ると、案の定、適当な用件をこじつけて設計部のフロアに来ていた佐藤先輩から、直々に誘われた。楓羽は、あまり気にしないと思う。それでもはっきりと、ただし言葉はやんわりと、佐藤先輩の誘いを断った。
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