好液者の少年

垣崎 奏

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10.快感 1※

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「吸血前にキスされるの、好きだ」
「他のところにもしていいか?」
「うん」


 吸血されてからのレンは、頬や額は挨拶代わりに毎日、吸血する・しないに関わらず、オスカーのキスを受けていた。オスカーの気分が乗っている時は上半身を狙われ、耳や鎖骨、風呂上がりであれば肩回りや背中にも落とされる。

 首元を狙われると、満足気に吸血されるし、レンも返す。レンが吸血鬼になったからこそ、オスカーは手加減しない。レンの血液を飲みたいという欲を、我慢しなくなった。

 普段、穏やかなオスカーが、吸血する時だけは、獲物を狙うような獰猛な目に変わる。その目で見られるとゾクゾクと熱が背中に走り、レン自身は勃ってしまう。


「あっ…、ちょ、オスカー」
「うん? なんだ?」


 シャワーの後、隣に座って映画でも見ようとしていたが、オスカーが首元を吸血した後、耳にキスを落とし、そのまま舌でレンの耳を弄び始めた。


「耳、だめだ…、なんか、変になる」
「なってもいいが?」
「んっ…」


 今までは、ただちゅっとキスをするだけだったのだ。こんな風に、舐められることはなかった。

 レンが耳に気を取られている間、オスカーの手は上半身から下半身に伸びていた。レンの内腿から中心へと滑らせる。


「っ、そこはだめっ!」
「何故だ、こんなに硬くして、辛いだろう?」


 逃れようと体勢を崩してラグの上へ滑り落ちたレンを、軽々持ち上げたオスカーがソファへ戻す。容赦なく、オスカーはレンの真横に座った。


「吸血する度に気づいてはいたが…」
「んんっ…、あっ、だめ…」


 服の上から、オスカーの大きな手がレンの上半身に戻り、そっと腹を撫でまわした後、胸を弄ぶ。ただ触れられているだけだと思ったレンは、だんだんとその頂きの感覚がおかしくなるのを自覚した。じんじんと熱を持って、過敏に、さらに下半身にまで響くのだ。


「レン、他人の前でこういう姿を晒すのは初めてか?」


 オスカーの問いかけに、レンは必死に頷いた。だから、止めて欲しいと訴えていたつもりだった。


「そうか…、一度、出すといい。楽になるから」
「ん、オス、カー…」


 そうじゃないとレンは首を振るも、オスカーは手を止めない。吸血されたばかりで、互いに身体は火照ったまま。レンは、とっくに身体に力が入らなくなっているのも分かっていた。

 レンはオスカーに後ろから抱えられ、胸の突起を弄られ続けている。いつの間にか、背もたれがソファではなくオスカーの大きな身体になっていた。その利き手はレン自身を取り出し、包み込み、先端から滲み出た先走るものを馴染ませつつ上下に動かしている。


「んん…、ん、んっ……」
「…20そこらが、俺に勝てるわけがない。我慢しても無駄だ」
「んあっ、オスカーっ…!」


 オスカーの息がレンの耳をくすぐる。その低い声が、頭に響く。さすが260年も生きている吸血鬼の手の動きは、レンをさらに無抵抗へ導く。止めて欲しいと思っているが、もちろん続けて欲しいとも。

 オスカーの言う通り、人に勃った自身を見せるのは初めてで、レンは人に触れられる感覚に慣れず背中を預けたまま、腰を動かしていた。それが、レンの腰に当たったオスカー自身を刺激しているとは、気付いていない。


「…あまり、腰を振るな」
「うごい、ちゃうんだっ」


 翻弄されるがまま、恥ずかしさのあまり涙を流してオスカーの愛撫に感じるレンは、自分でもどうなっているのかよく分かっていなかった。変な声も止められず、身体が反応してしまう。

 オスカーはそんなレンの頬に口を寄せ涙を舐め取りつつ、手を止めるつもりはなかった。レンを吸血すると、どうしようもなく滾ってしまうのだから。


「ん…、オス、カー…、も、だめっ」
「ああ」
「んっ、あっ…、んんっ!」


 レンが腰を反って果て、オスカーはレンが落ちないように支えつつ、その手で受け止めた。放出の波が治った後、レンが目を瞑って身体をオスカーに預けているのをいいことに、オスカーは手に吐き出されたレンの濁液を舐め取った。涙もそうだが、レンのものなら美味く感じるのだ。

 オスカーによってソファに寝かせられたレンは、緩くやってくる刺激で目を覚ました。オスカーを目で探し、自分の下半身をぼんやりと眺めていたが、やがて何をされているのかを理解した。


「……えっ?」
「また勃ってきてるな、袋も重い」
「あ…っ、え?」


 オスカーが、レン自身を舐めとっていた。付け根から先端に向けて、ゆっくりと形を味わっている。当然、オスカーはやりたいからしている。レンの感情が伴うのを待つよりも、レンとの行為を先に進めたい本能が表に出て来てしまう。


「…擦ってもいいか」
「え…?」
「俺の準備はできている」


 オスカーは、戸惑ったレンを見つつ、自身を取り出した。レンが初めて見たオスカー自身は、それはそれは立派なもので、生まれつきの吸血鬼である体格の良さも相まって、レンを身震いさせる。


「入れはしない。怖いか?」
「…ううん」


 レンは基本的に素直だが、見抜けないほどオスカーは盲目ではない。実際は怖さもあるだろうが、オスカーと同じく、本能には勝てないのだ。

 手すりと背もたれ、どちらにも寄りかかるレンに、オスカーが近寄った。2本、大きく反り返ったものを合わせてから、オスカーが手で包み、動かしていく。


「…レン、平気か?」
「だめっ…、んっ、すぐ、出そっ」


 オスカーがソファに膝をつき上半身を倒すと、レンが抱きついてくる。レンがオスカーの首を噛んだし、オスカーも見えた首筋を舐め、また噛んだ。レンの身体は素直に震え、オスカーの身体に這わせるように足を引き寄せてしまう。


「まだ果てるな」
「むり、ああっ…?」


 オスカーも感じてはいるが、レンほど自身の欲に向き合った時間が短くない。レンよりは、快感から来る反応を表に出さずに済む。


「ん、どうした?」
「…いったと思った、けど…?」


 レン自身はまだ硬く、しっかりとオスカーに握られ、オスカーの刺激を受けている。それなら、今の感覚は何だ。初めてオスカーに噛まれた時以外、いつもは勃つだけだったのに、今は果てた感じがした。今の状況もあって、絶対に果てたと思った。


「ああ、噛んだ瞬間か。パートナーとなら、あり得る。感情が乗ってるから」
「感情…?」
「俺にはどうされてもいいと、感情も本能も明け渡している証拠だ」
「んんっ!」


 オスカーがまた、首筋を舐めてくる。噛まれれば、レンの背中にはビリビリと快感が走り、目の前はチカチカと点滅、放出したような感覚になる。全身が、沸騰してるみたいに熱く、オスカーがどこに触れても身体を反ってしまう。


「わっ、ああっ、ん、…オスカーっ!」
「レン、一緒に」
「んっ、あ、も、あっ、んん!」


 ひとりでする時よりも感じたのは確かで、二度も放出することなんてなかったレンは、疲れ切っていた。


「レン、目を閉じて。ゆっくり休むといい」


 その声に甘え、レンは自身を隠すことすらせず、眠りについた。
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