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しおりを挟む時間は少し戻って、フローレンスとアーネストが大広間から退出し、パーティーの準備をしている頃。
フローレンスの挨拶に同席していた第四王子エリストンは、そのまま国王と王妃の目の前に膝をついた。
(敵国、セイントーヌの元王女、さすがの美貌。まとめられるほどに綺麗に伸ばされた金髪に、緑の瞳だった)
王子でありながら、王家からは王子扱いを受けていないエリストンは、フローレンスの見張りとして、身の回りの世話をしたいと国王に申し出るために、この姿勢を取っている。
「……やはり、母親が母親なら子も子ね。尽くすことがお好きなようで。私の子たちとは違いますわ」
「僕にできることは、それくらいですから、王妃様」
エリストンと王妃の間には、血の繋がりがなく、庶子なのだ。父親である国王と王妃の間には嫡子が三人もいる。エリストンは、王家にとっては要らない王子だ。
「間違っても、手を出すなよ。お前は、純血じゃないんだ」
「承知しております、父上」
「立場を弁え、逸脱するな。それが守れるなら、好きにしろ」
「ご配慮に感謝いたします」
許可が出たことに、エリストンは安堵した。これで、少なくとも昼間は傍にいられる。夜は、明け渡すしかないだろう。異母兄たちが、飽きてくれるまで。
◇
初日の今日は、アーネストが形式上フローレンスと行動を共にしていた。おそらく、パーティーが終わる夜まで、名ばかりのエスコートは続く。
その間、エリストンは、イライジャとウィズダムが寝室に戻った元王女に何をするつもりか、話しているのを盗み聞いた。
(予想はできていた。ロリーガスの伝統でもあるし……。ただ、それでも今の世界の常識とはかけ離れている)
フローレンスの寝室の隣室、軽い給仕ができる部屋をエリストンの私室として使えるように、手筈を整えた。夜の間は異母兄たちがべったり離れないはずで、側仕えとして部屋に入れるとすれば、夜中になるだろうか。
◇
隣の部屋で情事が終わるのを、兄王子たちが自室に戻るのを、ただ待っていた。
(終戦の条件としてやってきた敵国の元王女だからといって、この扱いが許されるわけじゃない。伝統なんて、なくなればいい)
エリストンは、フローレンスの寝支度を手伝い、キルトを隔ててフローレンスの横で眠る。
飲ませているのは、避妊薬と鎮痛薬だ。飲ませ続けていれば、フローレンスは妊娠しない。おそらくほぼ毎日、兄のうちの誰かはフローレンスの寝室にやってくる。そうなれば、鎮痛薬も必要になることは明白だった。
薬自体は、王家である以上皆が持っている。本来、本妻との間に子がいれば、庶子は必要ない。もしいればむしろ、王位継承をややこしくさせる。愛人がいること自体はおかしくないが、エリストンのような王家の血を引く庶子は居てはならないし、嫡子である王子が三人もいる状態なら、できてしまっても公表されないもの。
国王と王妃の間には三人も王子がいて、その数年後にエリストンは生まれている。久々の国王の子で、見た目が王家では珍しかったこともあり公表したらしいが、いい手だったとは思えない。結果、エリストンは肩身の狭い生活を強いられている。
◇
フローレンスが目を覚ますと、カーテンは閉められたままで、時間は分からない。サイドテーブルには、水差しと手拭が置かれていた。
身体を起こすと、下腹部や腰がズキズキと痛む。昨日のことを、嫌でも思い出してしまう。
目が覚めるのを待っていたのだろう、コンコンとノックされ、ベッドから見える隣室との通路に、人が立っていた。白銀髪で青い瞳、あの王子が冷ややかにフローレンスを見ている。目を合わせると、何の感情も乗っていない声で、話し始めた。
「本来、侍女が来るところだけど、君は人質のような立場だから、僕が側仕えになった」
「……はい」
(側仕え? 何故、王子が…? 身分は王族でしょう?)
ロリーガス王国に来てから混乱し続けているフローレンスとしては、聞き入れるしかない。
彼が、ベッドに近づいて膝をついて、フローレンスへの敬意を示す。昨日は、誰もしてくれなかったのに。
「庶子だから、こんな扱いをされているけど……、一応、公には第四王子って呼ばれてる、エリストンだ」
伸ばされた手のひらに、フローレンスは自分の指を重ねた。挨拶として、手の甲にキスを落とされる。庶子なのは、見た目でも昨日の大広間での様子を見ても分かっていた。
(こんな扱いとは…? 側仕えであること?)
「気楽に、接してくれたらいい。僕は、王家であって王家ではないから」
「…はい、エリストン様」
「周りに誰もいなければ、敬称はいらないよ。愛称で呼んでくれてもいいくらい。君も僕も、この国に味方はいないから」
「……」
身体も心もダメージを受けているフローレンスだが、なんとなく、エリストンが近くにいてくれるなら、もう少し頑張ってみようかと思えた。
この人は、嫡子が三人もいる国には居場所がない。フローレンスの利用価値は世継ぎを産むことで、その後にエリストンと同じ道を辿るのは、想像できた。
「身体はどう? 痛いところは?」
「あ、いえ、問題ありません」
「そう? 一応、昨日も飲んでもらった薬を置いておくね。何か食べられそう?」
「…はい」
「持ってくるから、イスに移動しておいて。着替えは自分でできる?」
「コルセットがなければ」
「ここで、コルセットをつけることはないと思うよ」
「分かりました。身支度を整えておきます」
「うん、よろしく」
(雰囲気が、柔らかくなった…?)
痛みに耐えつつゆっくりとした動作で着替えを済ませ、フローレンスはエリストンの指示通りにイスに座った。昨日のパーティーとは違って、普通の座面のあるイスだ。
エリストンが運んできたのは粥で、猿轡を噛みすぎたことで口周りが痛いフローレンスを思ってのものだと、はっとした。大きく口を開けなくても、滑らせることができる。
「口に合うといいんだけど。あ、毒とか入ってないからね」
エリストンは、匙でさっとかき混ぜた後、自分の手に粥を乗せ、口に入れた。それを見せられて手をつけない選択を、フローレンスは取れなかった。
◇
王太子を含む三人の王子からの責めは、夜にしか行われず、日によってひとりずつだったりまとめてだったり、人数はまちまちだった。共通して、フローレンスの意思は関係なく、ただ王子が満たされるかどうかだけの行為だ。
終われば、エリストンが呼ばれる。エリストンは、朦朧とするフローレンスに薬を飲ませ、身体を拭いて、シーツを替えて、キルトを隔てて隣で眠る。
たびたび開催される夜会に、フローレンスは出席しないが、着飾りはさせられた。その間に行われる、アーネストの友人貴族の遊びには、参加させられるから。
拘束され、せっかく着たドレスを破られ、指や舌で遊ばれた後、王子たちに引き渡される。
パーティー出席時や外出時には、側仕えの第四王子エリストンによって貞操帯をつけられる。だからフローレンスの蕾やナカは王子三兄弟のものだが、その前に乳首や耳をたくさん責められ、身体全体が敏感になってしまう。
繰り返される行為に、フローレンスの意思に反して、身体は反応するようになった。貞操帯の端から、漏れてしまうのだ。城の寝室に戻ってから、それを確認しつつ貞操帯の鍵を開ける王子たちの行為は、日を追うごとに激しくなった。
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