路地裏のカフェは、もこもこ尽くし

藤見暁良

文字の大きさ
15 / 40
第三章 もっこもこカフェメンバー!

お疲れ様ディナー

しおりを挟む
「ありがとうございましにゃ~!」
「またのお越しをお待ちしておりますわん!」
「楽しかったぴょん!」
「気を付けて帰るのみゃ~!」
「バナナ食べるっき~!」
 最後の予約客が帰るのを全員で見送る。そんなもこもこカフェのメンバーにお客さんは満面の笑顔で手を振り返していた。
 そんな皆の姿を微笑ましく感じながら眺めている――――俺は、閉店まで結局残ってしまっているのだった。

 看板を『close』 にしてドアを閉める。――――キィィィ、パッタン。
「はぁぁぁ――――! 今日も忙しかったみゃ~!」
「仕事の後の一杯が飲みたいにゃ~!」
 ドアが閉まった途端、床に崩れ落ちるもこもこが数人。さっきまでのパーフェクト接客の姿なんて微塵もなくなっている。
 まるで本能のままに寝っ転がっている動物そのものだ。美男美女モードで見たら、だらしないだろうけど、本来の姿で見れたら物凄く和む光景なんだろうな~。
「おい、みっともないわん。衣裳が汚れるわんよ」
「お茶淹れて貰ってくるっぴゃ」
「バナナジュースも欲しいっき~」
「はいはいぴょ~ん」
 一応、『人間』らしさを保って居るもこもこもいるようだ。それにしてもタルトも言った『一杯』が普通にお茶でちょっとホッとした。これが『駆け付け一杯のビール』とかだったら、ただの化け猫だ!
 
「お待たせ~。夕飯も食べちゃいましょ~」
 お茶を用意してくれたマカロンちゃんと一緒に、ステラさんが食事も運んできてくれた。近付いて来るに連れて、めちゃめちゃ良い香りが漂ってくる。
 匂いだけで口の中に唾液が湧き上がってくるが、俺はもう帰らないとだ――――。
「ステラさん、俺そろそろ……」
「勿論食べていきますよね? 今日の感想も聞かせて頂かないと」
 ステラさんはニッコリと天使の微笑みを浮かべるが、言っていることはスパルタコーチ系なのは気のせいでしょうか??
 確かにお昼過ぎからずっといるし、途中でキッチンで余ったお菓子とか摘まませて貰っていたけど、お腹は凄く空いている。正直、物凄く食べたい。
 美味しそうな料理をトレーに載せて、微笑むステラさんが燦然と輝いて見える――――けど眩しさよりも、不安が勝る。
「いやでも……皆さんお仕事後で、ゆっくりされたいだろうから……」
 『また後日』で逃げ切ろうとした時、
「いいから早く座れ!」
 野太い声が頭上から叩きつけられた。
「ひぃっ!」 
 更に――――
「座るでちゅ!」
「アツアツが美味しいでちゅ!」
 下からもダブル攻撃が襲ってくる。
「腹減ったにゃ~! 先に食っちゃうにゃ~」
「うふふ、タルトだって待っていますよ」
 上のバウムに、下の双子――全面の天使に、後輩にはにゃんこたち。
多分きっと、逃げられない――――。
「では……お言葉に甘えて……頂きます」
「はい、召し上がれ」
 俺が観念して椅子に腰を下ろすと、もこもこメンバーが優しく微笑んでくれた。
「たく、優柔不にゃんで面倒な奴にゃん!」
 ――――約一匹を除いてな!

「では、今日もいっぱい幸せのもこもこをお疲れ様でした~」
「お疲れ様でしたみゃ~」
「頂きますぴょん」
「今日もお疲れ様わん」
「バナナジュースっきぃ~」
「今日もう頑張ったな」
「頑張ったっちゅ!」
「でも楽しいでっちゅ!」
 二手に分かれたテーブルから、和気藹々とした声が湧き上がる。さっき床に倒れ込んでいたのが嘘みたいに元気になっていた。
「やっぱりバウムさんの料理は旨いにゃ~」
 なんだかんだ悪態ついても接客では一番忙しかったタルトも、一気にご満悦の様子でほくほくの笑顔だ。
 もこもこたちの笑顔を見ていたら、少しずつ気が緩んできて――――ぎゅるるるぅ~!
 俺の胃袋も、気が緩んだ。
「あっ!」
「凄い音だにゃ」
「ふふふ、長時間お待たせしちゃいましたものね。お代わりありますので、いっぱい食べてくださいね」
「あははは……ありがとうございます」
 俺は恥ずかしさに顔を真っ赤になるのを感じながら、用意された夕飯を口に運んだ。
 ――――瞬間、口の中が一瞬にして夢心地になる。さっきのクリームシチューの時と同じ感覚だ。
あぁ、バウムさんの料理は、本当に――――
「美味しいぃぃぃ!」

 体中に広がっていく感動のまま、喉の奥から叫んでいた。
 今まで生きてきて、こんな衝動きっと初めてだ――――。


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

後宮なりきり夫婦録

石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」 「はあ……?」 雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。 あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。 空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。 かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。 影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。 サイトより転載になります。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

元恋人が届けた、断りたい縁談

待鳥園子
恋愛
シュトルム辺境伯の末娘ソフィに隣国の帝国第二皇子から届けられた『縁談』の使者は、なんと元恋人のジョサイアだった。 手紙ひとつで別れることになったソフィは、素直になれずジョサイアから逃げ回る。 「私に届けなければ、彼は帝国に帰ることが出来ない」 そう思いようやく書状を受け取ろうと決意したソフィに、ジョサイアは何かを言い掛けて!?

王子様への置き手紙

あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯ 小説家になろうにも掲載しています。

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します

冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

処理中です...