9 / 22
二章
◇主◇
しおりを挟む
『N』――――ドア記されたアルファベットの一文字。
この文字は何を意味するのだろう――――?
文字をじっと見詰めていると、男性が横からドアノブに手を掛けた。
「どうぞ。皆さんお揃いです」
「は、い……」
心臓が飛び出そうな程の緊張で、喉が詰まる。
カチャ――ドアが軽く音を立てる。
いよいよ未知の扉が開く――――。
部屋の中は、さっきの更衣室みたいに薄暗い。部屋全体には暗幕が掛けられ、照明は数か所に置かれたスタンドタイプの電灯だけだった。
覆面越しに視線を泳がすと、私と同じように黒装束の姿をした人物が三名いる。その三名はもう席に着いていた。
ドックゥン! ――――心臓が大きく脈打つ。
この三人は『仲間』? それとも――――。
「どうぞ。シスル様もお座り下さい」
立ち尽くしている私に、男性は席に着くよう促してきた。
「へぇ~。あんた、シスルってコードネームなの」
「ひっ!」
席に座ろうとしたら二人のうちの一人が話しかけてきたので、驚いて悲鳴を上げてしまう。私の反応に、話しかけてきた人物はケラケラと笑い出した。
「そんなに驚かなくてもいいじゃない~」
「あ……すみません……」
顔が見えないけど、いつもの癖で反射的に頭を下げると、またその人は楽しそうに笑い出す。
「フリティ様、勝手な会話は謹んで下さい」
「は~い。飼い犬くん、厳しい~」
暗くて様子がよく見えないけど、この冷静沈着な男性に向かって、『飼い犬』呼ばわりすることに衝撃を覚える。
「シスル様」
椅子に座るよう、男性が小さな声で促す。
「あ、はい。ありがとうございます」
まだ心臓がドキドキする――――。バイト先以外の女子と話したが久々だったのもあるかもしれない。初対面でもこんな風に気さくに話してくる人っているんだ。
荒ぶる脈拍を落ち着かせるようと手を胸元に当てながら、ゆっくりと席に着いた。
私の着席を確認すると男性は上座の方に移動し、一旦深々と一礼をする。長身でスタイルが良いのもあるが、綺麗なストレートの長い黒髪がサラサラと流れ落ちる様がとても美しく感じた。
男性の美しさに一瞬気が緩んだが、それは直ぐに緊張に変わる。
「皆様、お集りになりましたので、これから主がいらっしゃいます。プロジェクトの説明は全て主が致しますので、静かに拝聴して下さい。質問などありましたら後程その時間を設けます」
『飼い犬』呼ばわりされた男性が言わんとしていることは、「主が話している間は黙っていろ」とのことだろう。今まで纏っていた硬質な空気とは違って、殺気すら感じる気がした。
そんなに大事な『主』なんだ――――。
ちょっと複雑な気持ちを胸に過らせていると、暗幕が揺れ奥から人が現れた。
『主』のご登場だ――――。
「っ……」
意外な主の姿に、度肝を抜かれる。この人物が――――。
「皆さんごきげんよう」
――――『主』!
私たちの前に現れた『主』は、明らかに私よりずっと年下の『少女』だった――――。
まるで人形なような整った顔立ち。瞳もパッチリと大きい。軽く波打った柔らかそうな髪が、とても可愛らしかった。
服装は私たちと同じく真っ黒だけど、ゴシックロリータと言うのだろうか、フリルや豪華な装飾が施されていて、黒子の自分とは比べ物にならない。
主は私たちを一回り見渡すと、ニッコリと極上の笑みを湛えた。
「お待たせしました。皆さんここでの生活は気に入って頂けそうかしら?」
『主』――――少女の問いかけに、答えるべきか分からない。勝手に言葉を発して良いものだろうか? そんな疑問よりも驚きの余りに、言葉が出ない。さっき馴れ馴れしく話し掛けてきた『フリティ』さんでさえも、覆面越しに驚いている様子が伺えるくらいだ。
「まぁ、何かあったら気軽にこの岩鏡に言ってちょうだい」
主がそう言うと、あの美しい男性が私たちに軽く会釈をした。
『イワカガミ』さんて言うんだ。やっと名前が知れた。珍しい名前だな――――。
「因みに岩鏡もコードネームです。ここでは皆さんの素性は基本極秘です」
なんだ、イワカガミさんの名前もコードネームなのか。でもこれからはコードネームで呼べる。それだけでもちょっと気が楽になった。
それにしても誰の素性も極秘って、これから一緒にプロジェクトを遂行するのに、お互いのことを知らなくていいのいだろうか?あのフリティさんなら、秘密と言っても色々聞いてきそうな気がしそうなんだけど――――。
「ただし……プロジェクトを実行してい頂く際には、一部個人情報を開示します」
疑問に思っていた矢先に、主から説明が入った。
「では……これからプロジェクトの説明を致します」
主は再度美しい顔に、妖艶な微笑みを浮かべた――――。
この文字は何を意味するのだろう――――?
文字をじっと見詰めていると、男性が横からドアノブに手を掛けた。
「どうぞ。皆さんお揃いです」
「は、い……」
心臓が飛び出そうな程の緊張で、喉が詰まる。
カチャ――ドアが軽く音を立てる。
いよいよ未知の扉が開く――――。
部屋の中は、さっきの更衣室みたいに薄暗い。部屋全体には暗幕が掛けられ、照明は数か所に置かれたスタンドタイプの電灯だけだった。
覆面越しに視線を泳がすと、私と同じように黒装束の姿をした人物が三名いる。その三名はもう席に着いていた。
ドックゥン! ――――心臓が大きく脈打つ。
この三人は『仲間』? それとも――――。
「どうぞ。シスル様もお座り下さい」
立ち尽くしている私に、男性は席に着くよう促してきた。
「へぇ~。あんた、シスルってコードネームなの」
「ひっ!」
席に座ろうとしたら二人のうちの一人が話しかけてきたので、驚いて悲鳴を上げてしまう。私の反応に、話しかけてきた人物はケラケラと笑い出した。
「そんなに驚かなくてもいいじゃない~」
「あ……すみません……」
顔が見えないけど、いつもの癖で反射的に頭を下げると、またその人は楽しそうに笑い出す。
「フリティ様、勝手な会話は謹んで下さい」
「は~い。飼い犬くん、厳しい~」
暗くて様子がよく見えないけど、この冷静沈着な男性に向かって、『飼い犬』呼ばわりすることに衝撃を覚える。
「シスル様」
椅子に座るよう、男性が小さな声で促す。
「あ、はい。ありがとうございます」
まだ心臓がドキドキする――――。バイト先以外の女子と話したが久々だったのもあるかもしれない。初対面でもこんな風に気さくに話してくる人っているんだ。
荒ぶる脈拍を落ち着かせるようと手を胸元に当てながら、ゆっくりと席に着いた。
私の着席を確認すると男性は上座の方に移動し、一旦深々と一礼をする。長身でスタイルが良いのもあるが、綺麗なストレートの長い黒髪がサラサラと流れ落ちる様がとても美しく感じた。
男性の美しさに一瞬気が緩んだが、それは直ぐに緊張に変わる。
「皆様、お集りになりましたので、これから主がいらっしゃいます。プロジェクトの説明は全て主が致しますので、静かに拝聴して下さい。質問などありましたら後程その時間を設けます」
『飼い犬』呼ばわりされた男性が言わんとしていることは、「主が話している間は黙っていろ」とのことだろう。今まで纏っていた硬質な空気とは違って、殺気すら感じる気がした。
そんなに大事な『主』なんだ――――。
ちょっと複雑な気持ちを胸に過らせていると、暗幕が揺れ奥から人が現れた。
『主』のご登場だ――――。
「っ……」
意外な主の姿に、度肝を抜かれる。この人物が――――。
「皆さんごきげんよう」
――――『主』!
私たちの前に現れた『主』は、明らかに私よりずっと年下の『少女』だった――――。
まるで人形なような整った顔立ち。瞳もパッチリと大きい。軽く波打った柔らかそうな髪が、とても可愛らしかった。
服装は私たちと同じく真っ黒だけど、ゴシックロリータと言うのだろうか、フリルや豪華な装飾が施されていて、黒子の自分とは比べ物にならない。
主は私たちを一回り見渡すと、ニッコリと極上の笑みを湛えた。
「お待たせしました。皆さんここでの生活は気に入って頂けそうかしら?」
『主』――――少女の問いかけに、答えるべきか分からない。勝手に言葉を発して良いものだろうか? そんな疑問よりも驚きの余りに、言葉が出ない。さっき馴れ馴れしく話し掛けてきた『フリティ』さんでさえも、覆面越しに驚いている様子が伺えるくらいだ。
「まぁ、何かあったら気軽にこの岩鏡に言ってちょうだい」
主がそう言うと、あの美しい男性が私たちに軽く会釈をした。
『イワカガミ』さんて言うんだ。やっと名前が知れた。珍しい名前だな――――。
「因みに岩鏡もコードネームです。ここでは皆さんの素性は基本極秘です」
なんだ、イワカガミさんの名前もコードネームなのか。でもこれからはコードネームで呼べる。それだけでもちょっと気が楽になった。
それにしても誰の素性も極秘って、これから一緒にプロジェクトを遂行するのに、お互いのことを知らなくていいのいだろうか?あのフリティさんなら、秘密と言っても色々聞いてきそうな気がしそうなんだけど――――。
「ただし……プロジェクトを実行してい頂く際には、一部個人情報を開示します」
疑問に思っていた矢先に、主から説明が入った。
「では……これからプロジェクトの説明を致します」
主は再度美しい顔に、妖艶な微笑みを浮かべた――――。
0
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
【完結】私が愛されるのを見ていなさい
芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定)
公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。
絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。
ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。
完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。
立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】
積み上がった伏線の回収目前!!
夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。
長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。
待っていたのは、凍てつく絶望。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。
「夫は愛人と生きればいい。
今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」
それでも私は誓う――
「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」
歪で、完全な幸福――それとも、破滅。
“石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる