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二章
◇迷走◇
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ドックン――ドックン――――。緊張で脈が倍速になっている。
その理由は、目の前にいる黒髪の美しい青年のせいであろう――――。
「そうですね。中々発想は良いと思われます。成人式を利用するのは目の付け所が素晴らしいです」
「ありがとうございます!」
普段から褒められることが少ないのもあるけど、岩鏡さんに褒められて殊更嬉しく思った。
「記念品案も捨てがたいのですが、これはやはり難しいでしょう。確実性に欠けます」
「あぁ……そうですよね」
やっぱり思った通り、記念品は却下された。
何となく予想はしていたけど、ハッキリと言われるとお腹にパンチを一発食らったようなダメージを受ける。
肩を落としている私に、岩鏡さんは少し間をおいてからアドバイスをしてくれた。
「もっと大胆な考えでも良いとは、思います。一番理想的なのは、本人たちに精神的ダメージを与えることですので」
「精神的……ダメージ」
「はい」
何となく岩鏡さんが言わんとしていることは伝わってくるけど、じゃぁそれを具体化するとしたら言われたら、私の浅知恵では想像力に限界がある。
「大胆って……どんなことでしょうか」
つい岩鏡さんに救いを求めてしまったが、「お任せします」とあっさり断られた。
経験値と教養の足りない自分が、情けない。せめて文献とか何か調べられないだろうか。
「図書館……行っては、駄目ですか?」
「調べることを具体化しないと、図書館で資料探すのも難しいと思われますが」
「……はぁ」
これも一瞬にして、打ち砕かれた。
両手で頭を抱えていると、岩鏡さんはソファーから立ち上がり「他の方の案を確認に行ってきます」と端的に伝え、部屋から出ていこうとした。
「あ、あの……」
「シスル様、如何されましたか?」
ドアの前までいった岩鏡さんは、顔だけこっちに向けて一応気にかけてくれた。
「また、ご相談してもいいでしょうか?」
「はい、ご報告は受けないと準備も出来ませんので」
「すみません……」
そう簡単には、いかないよね。遊びじゃないんだもん。
岩鏡さんにこんなにダメ出しされて、ちゃんと成功する作戦が考えられるか自信がなくなる。『W』のためにも、絶対結果を出したい。
俯いて黙り込んでいると、岩鏡さんは哀れに思ってくれたのか、少しだけこっちに戻ってきてくれた。
「仇を討つのは『W』の敵ですが、その相手をシスル様の仇と思えば良いかと。シスル様なら、苦しめた連中にどんな報復をしたいですか?」
「私を苦しめた……アイツらに?」
「はい……『W』様の恨みを晴らすと同時に、シスル様の恨みも晴らさないと……蟠りが残るかと思いますが」
「は……い」
「では、失礼致します。作戦手段が決まったら、またご連絡して下さい」
そう告げると岩鏡さんは、一礼して他の人の所へ行ってしまった――――。
一人ポツンと、取り残さる。
多分、岩鏡さん的に、かなりヒントをくれたんだと思う。アイディアを教えるのは簡単なのだろう。
でもこれは私が『W』の復讐を請け負ったんだ。だから私が自分ごとにして、復讐を成し遂げなければ意味がないということだ。
それが『交換復讐』の醍醐味の一つなのかもしれない――――。
アイツらには、他の人が復讐してくれるけど、私は手を下せない。
だから代わりに『W』の対象者で、恨みを晴らす――――としたら、どうする?
一番苦しめたいのは『西村巽』。例えるなら、最初に私を無視し始めたあの子。
でもあいつは女子だ。西村たちは男って立場で、『W』に辛い傷を負わせている。そこは流石に状況は違う――――。
じゃぁ『W』の気持ちになってみるんだ。
想像しか出来ないけど、『W』が複数の男子生徒にされたこと――――具体的には記されてなかったけど、考えるだけで背筋が凍りそうだ。
「これ……確認しておいた方がいいのかな……」
敢えて被害内容の詳細が伏せられているなら、知らない方がいいってことなのだろうか?
それとも『W』が、話せなかったのかもしれない。私も正直、聞く勇気が持てない――――。
暗い気持ちになってきて思考が停止しそうになるので、視点を変えることにする。
『W』が住んでいた場所は、土地柄的に因習が深そうな地域だ。自分の地元も、結構因習が根深かった――――。
徒党を組んで弱い立場を邪険にするのも、地域全体にあったかもしれない。
だからうちの両親は、出来の悪い私より、常に目立っていたお兄ちゃんを盾にして、自分たちの保身を保っていた――――。
そう思うと、お兄ちゃんも可哀そうに思えてくるが、あの人自身、偉そうに自分を誇示していたから、やっぱり同情する必要はないな。
あれ――なんかちょっと引っ掛かる――――私が虐められたのって、お兄ちゃんが絡んでいるんじゃない?
確かあの子にも、兄がいたよね。お兄ちゃんと同級生じゃなかった? もしあの子のお兄さんがうちの兄の悪口とか言ってたとしたら――――いや、多分言ってっただろう。
兄は性格が悪い。
『W』のことを考えていた筈なのに、いつの間にか私の兄のことになっていた。気持ちを切り替えて再度作戦を練り直す。
さっき岩鏡さんは、『大胆なこと』でも良いと言っていた。
大事故に思わすくらいのこととかだろうか? 対象者たちが集まっている所へ、ダンプカー突っ込ませるとか――――。
必要なものは全て準備してくれるのもあって、つい大胆なことまで発想してしまう。
人生の門出に、不幸なことが起きたら忘れられない記憶になるけど、この案はいまいちな気がする。
もっと――精神的に一生消えない傷を負わせたい――――。
『潰し合い』とかさせてみるとか?
廃墟に連れて行って、バトルゲームを繰り広げさせる。
映画であるような殺し合うまでいかなくても、極限になれば人間不信に陥らせることが出来るかもしれない。
「駄目だ、きっと準備が色々掛かる」
巧妙じゃなくてもいい――――。
もっとシンプルで、それでいて確実な復讐をとかないだろうか。
考え始めてみると、思いのほか難しいものだった。
もし科学者とか医者とか特化専門分野の知識があれば、より完全な計画が思いついただろうに――――私はただの田舎の小娘でしかない。
こんなに頭を働かせたのは久しぶりだ。何か凄く、疲れてしまった――――。
その理由は、目の前にいる黒髪の美しい青年のせいであろう――――。
「そうですね。中々発想は良いと思われます。成人式を利用するのは目の付け所が素晴らしいです」
「ありがとうございます!」
普段から褒められることが少ないのもあるけど、岩鏡さんに褒められて殊更嬉しく思った。
「記念品案も捨てがたいのですが、これはやはり難しいでしょう。確実性に欠けます」
「あぁ……そうですよね」
やっぱり思った通り、記念品は却下された。
何となく予想はしていたけど、ハッキリと言われるとお腹にパンチを一発食らったようなダメージを受ける。
肩を落としている私に、岩鏡さんは少し間をおいてからアドバイスをしてくれた。
「もっと大胆な考えでも良いとは、思います。一番理想的なのは、本人たちに精神的ダメージを与えることですので」
「精神的……ダメージ」
「はい」
何となく岩鏡さんが言わんとしていることは伝わってくるけど、じゃぁそれを具体化するとしたら言われたら、私の浅知恵では想像力に限界がある。
「大胆って……どんなことでしょうか」
つい岩鏡さんに救いを求めてしまったが、「お任せします」とあっさり断られた。
経験値と教養の足りない自分が、情けない。せめて文献とか何か調べられないだろうか。
「図書館……行っては、駄目ですか?」
「調べることを具体化しないと、図書館で資料探すのも難しいと思われますが」
「……はぁ」
これも一瞬にして、打ち砕かれた。
両手で頭を抱えていると、岩鏡さんはソファーから立ち上がり「他の方の案を確認に行ってきます」と端的に伝え、部屋から出ていこうとした。
「あ、あの……」
「シスル様、如何されましたか?」
ドアの前までいった岩鏡さんは、顔だけこっちに向けて一応気にかけてくれた。
「また、ご相談してもいいでしょうか?」
「はい、ご報告は受けないと準備も出来ませんので」
「すみません……」
そう簡単には、いかないよね。遊びじゃないんだもん。
岩鏡さんにこんなにダメ出しされて、ちゃんと成功する作戦が考えられるか自信がなくなる。『W』のためにも、絶対結果を出したい。
俯いて黙り込んでいると、岩鏡さんは哀れに思ってくれたのか、少しだけこっちに戻ってきてくれた。
「仇を討つのは『W』の敵ですが、その相手をシスル様の仇と思えば良いかと。シスル様なら、苦しめた連中にどんな報復をしたいですか?」
「私を苦しめた……アイツらに?」
「はい……『W』様の恨みを晴らすと同時に、シスル様の恨みも晴らさないと……蟠りが残るかと思いますが」
「は……い」
「では、失礼致します。作戦手段が決まったら、またご連絡して下さい」
そう告げると岩鏡さんは、一礼して他の人の所へ行ってしまった――――。
一人ポツンと、取り残さる。
多分、岩鏡さん的に、かなりヒントをくれたんだと思う。アイディアを教えるのは簡単なのだろう。
でもこれは私が『W』の復讐を請け負ったんだ。だから私が自分ごとにして、復讐を成し遂げなければ意味がないということだ。
それが『交換復讐』の醍醐味の一つなのかもしれない――――。
アイツらには、他の人が復讐してくれるけど、私は手を下せない。
だから代わりに『W』の対象者で、恨みを晴らす――――としたら、どうする?
一番苦しめたいのは『西村巽』。例えるなら、最初に私を無視し始めたあの子。
でもあいつは女子だ。西村たちは男って立場で、『W』に辛い傷を負わせている。そこは流石に状況は違う――――。
じゃぁ『W』の気持ちになってみるんだ。
想像しか出来ないけど、『W』が複数の男子生徒にされたこと――――具体的には記されてなかったけど、考えるだけで背筋が凍りそうだ。
「これ……確認しておいた方がいいのかな……」
敢えて被害内容の詳細が伏せられているなら、知らない方がいいってことなのだろうか?
それとも『W』が、話せなかったのかもしれない。私も正直、聞く勇気が持てない――――。
暗い気持ちになってきて思考が停止しそうになるので、視点を変えることにする。
『W』が住んでいた場所は、土地柄的に因習が深そうな地域だ。自分の地元も、結構因習が根深かった――――。
徒党を組んで弱い立場を邪険にするのも、地域全体にあったかもしれない。
だからうちの両親は、出来の悪い私より、常に目立っていたお兄ちゃんを盾にして、自分たちの保身を保っていた――――。
そう思うと、お兄ちゃんも可哀そうに思えてくるが、あの人自身、偉そうに自分を誇示していたから、やっぱり同情する必要はないな。
あれ――なんかちょっと引っ掛かる――――私が虐められたのって、お兄ちゃんが絡んでいるんじゃない?
確かあの子にも、兄がいたよね。お兄ちゃんと同級生じゃなかった? もしあの子のお兄さんがうちの兄の悪口とか言ってたとしたら――――いや、多分言ってっただろう。
兄は性格が悪い。
『W』のことを考えていた筈なのに、いつの間にか私の兄のことになっていた。気持ちを切り替えて再度作戦を練り直す。
さっき岩鏡さんは、『大胆なこと』でも良いと言っていた。
大事故に思わすくらいのこととかだろうか? 対象者たちが集まっている所へ、ダンプカー突っ込ませるとか――――。
必要なものは全て準備してくれるのもあって、つい大胆なことまで発想してしまう。
人生の門出に、不幸なことが起きたら忘れられない記憶になるけど、この案はいまいちな気がする。
もっと――精神的に一生消えない傷を負わせたい――――。
『潰し合い』とかさせてみるとか?
廃墟に連れて行って、バトルゲームを繰り広げさせる。
映画であるような殺し合うまでいかなくても、極限になれば人間不信に陥らせることが出来るかもしれない。
「駄目だ、きっと準備が色々掛かる」
巧妙じゃなくてもいい――――。
もっとシンプルで、それでいて確実な復讐をとかないだろうか。
考え始めてみると、思いのほか難しいものだった。
もし科学者とか医者とか特化専門分野の知識があれば、より完全な計画が思いついただろうに――――私はただの田舎の小娘でしかない。
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