滅亡の畔

藤見暁良

文字の大きさ
15 / 22
二章

◇幸福◇

しおりを挟む
 いつになく脳細胞を酷使したからか、甘いものが無性に食べたくなってしまい、調達しにストアに向かう。
 他の階には移動は出来ないが、自分専用のコンビニもどきがあるのは、かなり嬉しい。このプロジェクトに参加しなければ、こんな格別な扱いされることはなかった。
 地元では近くのコンビニで同級生に会うかと思うと、怖くて行けなかったくらいだった。

 制約はあるけど、人権は守られているよね――――。
 復讐の『交換』を組織的にやってしまうなんて、常識的にあり得ないことかもしれないが、自分と同じく苦しい思いをしている人には、希望を与えてくれるプロジェクトだとすら思う

『復讐』なんて正しくない――――。
 そういう人はいると思う。

 でもさ――――
 学校が何か解決してくれる訳じゃない。
 守ってくれる家族はいるかもしれないが、虐めをしてくる敵を完全には潰せない。
 下手すると、家族だって敵になる。
 そんな厳しい現実だから、自殺だって絶えないんだ――――。

「この世は『因果応報』か……本当にそう思いたい」
 そんなこと考えている内に、専用ストアに到着した。
 ストアはまるでコンビニが一軒入っているみたいに、本格的な品ぞろえで大抵のものがそろっていた。
 これが他の三人が居る階にも設置されているのかと思うと、凄いとしか言いようがない。
「一体、どんな組織なんだろ……」
 聞けないけど、どうにも気になってしまう。

 一先ずストアの中をグルっと回り、物色をしてみた。
 日持ちしないものは注文するシステムになっていけど、おにぎり、パスタ、唐揚げなどは冷凍食品でも構わない。
 地元では見かけない商品もあって、つい食べてみたくなってしまう。
「夢の国みたい……」
 コンビニもどきでも、こんなに違う。今までどれだけ閉鎖されて空間に自分を押し込めていたのだろう。

「もっと自由に……なりたいな」
 住む場所が変わってもアイツらが好き勝手にいきている限り、本当の『自由』は手に入っていないのと同じだ。
 アイツらの呪縛・・から、解き放たれたい――――。
 だからこそ、このプロジェクトは絶対に成功さなければいけないんだ。。

「よし。部屋に戻って、もっと凄い計画を企てなきゃ」
 用意されていたカゴの中にプリンとチョコ、スナック菓子と簡単に摘まめそうなおかずを急いで放り込んで、清算する。清算は商品のバーコードとカードキーを読み込ませれば終了だ。
 ハイテクなシステムに内心ドキドキしつつ、ここまで環境を整えられている代償の大きさも実感させられる。
 成功するまで、何回かチャンスを貰えるのかな?
 調達したものをビニール袋に移し替えながら、まだ始まっていない復讐の保険を気にしてしまった。

 駄目だ――――きっとそんな甘い考えじゃ、決意が鈍るし、成功しない。
 刺し違えるくらいの覚悟で、挑まないと――――。

 絨毯が敷き詰められた廊下を歩いて、部屋に戻っていく。振動で、ビニール袋が軽く揺れる。
 平和だ――――こだけ切り取ったら。
 この鳥籠から出れば、世間は辛いことばかり。

 それでもどうして、生きていかないといけないんだろう?
 そもそもなんで、生まれてこなきゃいけないんだろう?

 いつかは絶対に、死んじゃう・・・・・のに――――。


「あ……しまった」
 ぼんやりして歩いていたら、ドアの前を通り過ぎて壁にぶつかりそうになった。
 しっかりしなきゃ! 取り合えずプリンでも食べて落ち着こう。
 改めてドアの前まで移動し、部屋に入る。ビニール袋をテーブルに置き、ティーカップを取りに行く。お茶は日本茶から紅茶、珈琲まで銘柄も充実していた。
 プリンなら、紅茶か珈琲かな。
 お高そうな茶葉の缶もあるけど、簡単にティーバッグで淹れることにする。蒸らし方とか詳しくないし、不味く淹れてしまったら茶葉が勿体ない。
 貧乏性な性分はこういうときも、働いてしまっていた。


「ん~! 美味しい!」
 プリンは予想以上の美味しさだった。特に選んだ訳でもなく、目に付いたものをカゴの中に入れただけだったのに、大当たりだ。いや多分、どれも美味しいのだろう。
 メーカーを見てみたら、聞いたこともない名前だ。有名店なのかな?
 今度、岩鏡さんに聞いてみよう。他にも種類があったら、お取り寄せしてもらおうかな。
 私はまるで学生気分で、ウキウキしていた。浮かれている――――。

 例えこのプリンの味さえも一時の幻だとしても、今まで奪われていた幸福感を与えてくれたことが凄く嬉しい――――。
 こんな細やかな幸せさえも、望むことが叶わなかったんだから。

「可哀そうに……プリンの美味しさを二度と味わうことが出来なくなるのね……」

 背中に得体のしれないものがうねるように這い上がっていき、ゾクゾクと寒気に近い感覚が広がっていく。
 ――――頭の中が真っ白だ。

 ――――とても気持ちがいい――――。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者の幼馴染?それが何か?

仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた 「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」 目の前にいる私の事はガン無視である 「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」 リカルドにそう言われたマリサは 「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」 ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・ 「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」 「そんな!リカルド酷い!」 マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している  この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」 「まってくれタバサ!誤解なんだ」 リカルドを置いて、タバサは席を立った

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

【完結】私が愛されるのを見ていなさい

芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定) 公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。 絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。 ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。 完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。  立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】 積み上がった伏線の回収目前!! 夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。 長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。 待っていたのは、凍てつく絶望。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。 「夫は愛人と生きればいい。  今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」 それでも私は誓う―― 「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」 歪で、完全な幸福――それとも、破滅。 “石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

処理中です...