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第1章 安住の地を求めて

第13話 お隣さんが出来ました

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 「キュイ! キュキュイ! キュキュキュイ!」

 テンの声で目が覚める。だがテンがいないなと周りを見渡すと、壁を蹴りながら洞窟を駆け回っていた。もしかして命を結合したから元気が有り余っているのか?まあ元気に越した事はないか。

 「おはよう。今から肉を焼くから待っててな。」

 「キュイ!」


 
 そうして準備をした後、洞窟から出る。今日は森の雰囲気は元に戻っているな。この様子だとあの大蜘蛛もなんとか回復したのだろう。

 昨日は肉を大蜘蛛まで何度も運んでいたためそれで1日が過ぎてしまった。今日は昨日できなかった果物と植物の採集をしよう。

 動物が食べていた果物やキノコを集める。なかには紫色の、明らかに毒を持っていますよというキノコもあるが、動物達ご食べていたからきっと食べれるのだろう。

 他にも薬草を集める。調合する技術は無いが錬金術でポーションにする事は出来る。魔力切れを起こした時などの非常時に持っておきたい。

 持ってきたカバンがいっぱいになってきたので一旦帰ろうときた時、ふと前方から感じたことのない気配を感じた。

 「キューキュー」

 木の上から偵察していたテンも感じたようだ。

 最初はあちらの気配がフラフラとしていたが、やがてこちらに1直線に近づいてくる。

 相手もこちらを捉えたようだ。逃げる事はできるだろうが、相手の情報は持っておきたいためまだ様子見する。

 ふと相手の気配が大きくなった。ん?この気配は昨日の大蜘蛛か?

 もしかして昨日の僕を真似て、敵意がない事をアピールする為に気配を敢えて出したのだろうか。だとしたらこのままで大丈夫だろう。

 姿を現したのはやはり大蜘蛛だった。そしてこちらとの距離が10メートルほどの所でその場に座った。ふむ、どうしたのだろうか。

 大蜘蛛を観察するが昨日よりも命の光が強くなっているし元気になったのだろう。

 わざわざ僕を探していたようだけどまだご飯が足りないとか?

 採った果物をみせる。お?ちょっと物欲しげな視線を送ったかな?しょうがない。自分達の為に取ったのだがあげてやろう。一応水魔法で洗って、

 「シャ!」

 「キュ!?」

 うわっ、びっくりした。僕が水魔法を使った瞬間大蜘蛛が勢いよく立ち上がった。すぐにその場に座ったが視線は下に落ちた水に固定されている。

 なるほどな。きっと水を探していたんだな。そこで僕の気配を感じ取ったから水がもらえるかもと思ったのかもしれない。

 こちらに敵意はないようだし大蜘蛛へと近づく。口元の鎌は1メートル程の長さでギザギザとしており、こんなもので挟まれたらひとたまりもないだろう。

 8つある目も1つ1つが別の場所を見れるようだしどんな些細な動きでも逃さなそうだ。教わらないだろうと思いつつもやはり恐ろしいな。

 手を伸ばせば届く距離まで来た。大蜘蛛は動こうとはしない。

 水球を生成し口元へと運んでやる。水球を生成した時からソワソワし始め、口元運ぶと勢いよく飲み始めた。

 こうしてみると愛嬌があるな。テンもお腹が空いている時はガムシャラに肉にかぶりついていたからな。

 「キュ!?」

 

 水を飲み終え満足したようなので帰ろうとすると、大蜘蛛も後ろをついてくる。

 「どうした?ついてきたいのか?」

 「シャァ」

 なんとなく付いてきたそうな意志を感じた。まあ分かる。こいつの状況を考えるに、食事と水をくれる存在が近くにいるとありがたいのだろう。

 水場はここから10分程の場所とそんなに遠くない。それなのに見つける事が出来ていないのならこいつの本来住んでた場所はこの辺りではないのだろう。

 それがどういった理由なのかはわからない。大蜘蛛より強い生物が現れたのか、それとも巣を持たず転々と移動してるなかでたまたまこんな状況になったのか。

 まあ1度助けた仲だ。それくらいはしてやるさ。


 「ここが僕らの拠点だけど大蜘蛛はどうする?」

 「シャア」

 キョロキョロと周囲を見た後、周りより大きな木の上に登っていった。

 まさかこの森で初めて仲良くするのが大蜘蛛とはな。

 母様にも「困っているものがいたなら助けなさい」と言われたけど、まさか大蜘蛛とは驚くだろう。

 ちょっと不思議な生き物と、ちょっと不思議なお隣さんと僕のこれから。どうなっていくのだろうか。
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