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一章
お誕生プレゼントを貰おう
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彼女が五歳の誕生日を向かえる一日前だった。
王室に呼び出されたのである。
(ととさまからの、およびだしなんて、めずらしいですわ)
従者に連れられ、早足で王室に向かった。
お城の外では、お姫様の誕生日を祝う、祭りの準備が行われていた。
「よく来たな。我が愛しの娘、リリーよ」
ノックして入ると、随分ご機嫌そうな小太りの男が立っていた。
「ととさまも、ごそうけんそうでなによりです。」
恭しくお辞儀をしたリリーは、穏やかに微笑んだ。
「そのような難しい言葉をその歳で使えるなんて、わしの鼻も高いものじゃ」
ホホっと笑い、席に着いた。
「さて、今日、リリーを呼び出したのはだな・・・お主に誕生日プレゼントを渡そうと思っての事じゃ」
「ほんとうですか!?うれしいです!」
そう言いながら、リリーは内心冷め切っていた。それだけでわざわざ、呼び出したのか、と。誕生日プレゼントなんて貰わなくても、欲しいものはほとんど手に入る。
「うむ。では、連れて参れ」
使用人に呼びかけ、連れてこられたのは、リリーよりも少し身長の高い、少年だった。
真っ黒な長い髪の毛で表情は隠され、質素な服装に首元は頑丈そうな鉄でできた首輪をつけていて、長い鎖が垂れている。
「え・・・」
「リリーは絵本に出てくる、王子様が大好きだと聞いてな、ドリエに取り寄せてもらったのじゃ」
(ちがう。りりーがすきなのは『永遠の愛』ですわ)
戸惑いながらも、上手く言葉を返そうと父に尋ねた。
「どなたですの?このおかたは」
「これに名前なんぞ無いが、美しい顔じゃったぞ?正に王子様の様な顔じゃ。体の調子もなかなか良かっ・・・オホン、まぁ、素晴らしい奴隷じゃぞ?」
「けんこうであることはなによりですが・・・どれい、とは・・・?」
「リリーには奴隷はまだ早かったかの?奴隷とは自分のために何でもしてくれるモノじゃ」
そんな事を聞きたかったのではない。この国の奴隷制度ぐらい知っている。
ヴァルドレア王国では奴隷制度が認められていて、この制度のおかげで繁栄してきたと言っても過言ではなかった。
とは言っても、奴隷を買えるのは貴族ぐらいなのだが。
この少年は、父の弟であり、国の宰相であるドリエ叔父様が取り寄せたと言った。
ドリエは、たいへん高慢ちきな性格で、潔癖症であった。
奴隷は不潔と考えており、周囲の人間は歴史ある大貴族や神官などで固めている。
リリーが聞きたかったのは正にその事である。
その叔父がわざわざ取り寄せたとあらば、果たして、目の前の少年はただの奴隷なのか?
(もしかしたら、こうきないちぞくではないの・・・???)
「リリーにムチを渡そう。上手く調教しなさい」
そう言って渡されたムチをリリーはじっと見つめた。
(りりーにこのむちで、としのかわらないようなこどもをたたけというの・・・!?)
多分、リリーは優しい少女とはかけ離れた性格であろう。
その代わり、高貴な性格で責任感は人より強かった。
(むりよ!!どれいなんて!りりーのてにおえないですわ!!)
「あの、ととさま・・・このはなし、ありがたいのですが・・・」
リリーは確かに断ろうとした。断ろうとしたのだ。
しかし、少年と目が合ってしまった。
長い黒髪から覗く、目は猫のように切れ長の瞳孔で、透き通った金色の目だった。
その時、少年を自分に重ねてしまった。リリーの目も金色だった。
同情してしまった。立場が違えば、リリーが奴隷だったかもしれない。
「このおくりもの、ありがたく、ちょうだいいたしますわ」
咄嗟に言い直して、少年の手を掴んで、こちらに優しく引っ張った。
少年は目を見開いたかと思うと、こちらを恐る恐る見上げてきた。
「りりーについてきて」
どうやら言葉は理解できるようで、こくりと頷きリリーの手をぎゅっと繋ぎ返した。
「こら!!リリー!!奴隷の直接、触る時は足と決まっておる!こちらへおいで!!
奴隷の扱い方を一から教えてやろう!!」
王室に父の怒鳴り声が響いた。
だが、リリーは一切動じる様子も見せず、再びお辞儀をした。
「ととさまからのおくりもの、たいせつにいたしますわ。
どれいのあつかいかたとやらは、またつぎのきかいに・・・」
そう言い放つやいなや、足早に王室を立ち去った。
すると、従者が遅れながらも小走りで走ってきた。
「王の言う通りでございます!その卑しきモノをどうかお離し下さい!姫様まで穢れてしまいます!!」
リリーはなぜか、従者の言いぶりにイラついた。
(じぶんのことじゃないのに・・・なぜこんなにも、いらだつのかしら?)
「りりーがしたいことは、りりーがすべてせきにんをもつわ。だから、よけいなくちをはさまないでね」
従者にそう言って、自室に逃げ込んだ。
「姫様!!!!」
「はいってこないで!!」
ドアを閉めて、鍵を付けた。
その時、後悔はしていなかった。
ただ、一瞬の同情が後の彼女を苦しめたとしても・・・。
王室に呼び出されたのである。
(ととさまからの、およびだしなんて、めずらしいですわ)
従者に連れられ、早足で王室に向かった。
お城の外では、お姫様の誕生日を祝う、祭りの準備が行われていた。
「よく来たな。我が愛しの娘、リリーよ」
ノックして入ると、随分ご機嫌そうな小太りの男が立っていた。
「ととさまも、ごそうけんそうでなによりです。」
恭しくお辞儀をしたリリーは、穏やかに微笑んだ。
「そのような難しい言葉をその歳で使えるなんて、わしの鼻も高いものじゃ」
ホホっと笑い、席に着いた。
「さて、今日、リリーを呼び出したのはだな・・・お主に誕生日プレゼントを渡そうと思っての事じゃ」
「ほんとうですか!?うれしいです!」
そう言いながら、リリーは内心冷め切っていた。それだけでわざわざ、呼び出したのか、と。誕生日プレゼントなんて貰わなくても、欲しいものはほとんど手に入る。
「うむ。では、連れて参れ」
使用人に呼びかけ、連れてこられたのは、リリーよりも少し身長の高い、少年だった。
真っ黒な長い髪の毛で表情は隠され、質素な服装に首元は頑丈そうな鉄でできた首輪をつけていて、長い鎖が垂れている。
「え・・・」
「リリーは絵本に出てくる、王子様が大好きだと聞いてな、ドリエに取り寄せてもらったのじゃ」
(ちがう。りりーがすきなのは『永遠の愛』ですわ)
戸惑いながらも、上手く言葉を返そうと父に尋ねた。
「どなたですの?このおかたは」
「これに名前なんぞ無いが、美しい顔じゃったぞ?正に王子様の様な顔じゃ。体の調子もなかなか良かっ・・・オホン、まぁ、素晴らしい奴隷じゃぞ?」
「けんこうであることはなによりですが・・・どれい、とは・・・?」
「リリーには奴隷はまだ早かったかの?奴隷とは自分のために何でもしてくれるモノじゃ」
そんな事を聞きたかったのではない。この国の奴隷制度ぐらい知っている。
ヴァルドレア王国では奴隷制度が認められていて、この制度のおかげで繁栄してきたと言っても過言ではなかった。
とは言っても、奴隷を買えるのは貴族ぐらいなのだが。
この少年は、父の弟であり、国の宰相であるドリエ叔父様が取り寄せたと言った。
ドリエは、たいへん高慢ちきな性格で、潔癖症であった。
奴隷は不潔と考えており、周囲の人間は歴史ある大貴族や神官などで固めている。
リリーが聞きたかったのは正にその事である。
その叔父がわざわざ取り寄せたとあらば、果たして、目の前の少年はただの奴隷なのか?
(もしかしたら、こうきないちぞくではないの・・・???)
「リリーにムチを渡そう。上手く調教しなさい」
そう言って渡されたムチをリリーはじっと見つめた。
(りりーにこのむちで、としのかわらないようなこどもをたたけというの・・・!?)
多分、リリーは優しい少女とはかけ離れた性格であろう。
その代わり、高貴な性格で責任感は人より強かった。
(むりよ!!どれいなんて!りりーのてにおえないですわ!!)
「あの、ととさま・・・このはなし、ありがたいのですが・・・」
リリーは確かに断ろうとした。断ろうとしたのだ。
しかし、少年と目が合ってしまった。
長い黒髪から覗く、目は猫のように切れ長の瞳孔で、透き通った金色の目だった。
その時、少年を自分に重ねてしまった。リリーの目も金色だった。
同情してしまった。立場が違えば、リリーが奴隷だったかもしれない。
「このおくりもの、ありがたく、ちょうだいいたしますわ」
咄嗟に言い直して、少年の手を掴んで、こちらに優しく引っ張った。
少年は目を見開いたかと思うと、こちらを恐る恐る見上げてきた。
「りりーについてきて」
どうやら言葉は理解できるようで、こくりと頷きリリーの手をぎゅっと繋ぎ返した。
「こら!!リリー!!奴隷の直接、触る時は足と決まっておる!こちらへおいで!!
奴隷の扱い方を一から教えてやろう!!」
王室に父の怒鳴り声が響いた。
だが、リリーは一切動じる様子も見せず、再びお辞儀をした。
「ととさまからのおくりもの、たいせつにいたしますわ。
どれいのあつかいかたとやらは、またつぎのきかいに・・・」
そう言い放つやいなや、足早に王室を立ち去った。
すると、従者が遅れながらも小走りで走ってきた。
「王の言う通りでございます!その卑しきモノをどうかお離し下さい!姫様まで穢れてしまいます!!」
リリーはなぜか、従者の言いぶりにイラついた。
(じぶんのことじゃないのに・・・なぜこんなにも、いらだつのかしら?)
「りりーがしたいことは、りりーがすべてせきにんをもつわ。だから、よけいなくちをはさまないでね」
従者にそう言って、自室に逃げ込んだ。
「姫様!!!!」
「はいってこないで!!」
ドアを閉めて、鍵を付けた。
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ただ、一瞬の同情が後の彼女を苦しめたとしても・・・。
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