永遠の愛を手に入れよう

トマトマル

文字の大きさ
3 / 19
一章

お誕生プレゼントを貰おう

しおりを挟む
彼女が五歳の誕生日を向かえる一日前だった。

王室に呼び出されたのである。

(ととさまからの、およびだしなんて、めずらしいですわ)

従者に連れられ、早足で王室に向かった。

お城の外では、お姫様の誕生日を祝う、祭りの準備が行われていた。






「よく来たな。我が愛しの娘、リリーよ」

ノックして入ると、随分ご機嫌そうな小太りの男が立っていた。

「ととさまも、ごそうけんそうでなによりです。」

恭しくお辞儀をしたリリーは、穏やかに微笑んだ。

「そのような難しい言葉をその歳で使えるなんて、わしの鼻も高いものじゃ」

ホホっと笑い、席に着いた。

「さて、今日、リリーを呼び出したのはだな・・・お主に誕生日プレゼントを渡そうと思っての事じゃ」

「ほんとうですか!?うれしいです!」

そう言いながら、リリーは内心冷め切っていた。それだけでわざわざ、呼び出したのか、と。誕生日プレゼントなんて貰わなくても、欲しいものはほとんど手に入る。

「うむ。では、連れて参れ」

使用人に呼びかけ、連れてこられたのは、リリーよりも少し身長の高い、少年だった。
真っ黒な長い髪の毛で表情は隠され、質素な服装に首元は頑丈そうな鉄でできた首輪をつけていて、長い鎖が垂れている。

「え・・・」

「リリーは絵本に出てくる、王子様が大好きだと聞いてな、ドリエに取り寄せてもらったのじゃ」

(ちがう。りりーがすきなのは『永遠の愛』ですわ)
戸惑いながらも、上手く言葉を返そうと父に尋ねた。

「どなたですの?このおかたは」

「これに名前なんぞ無いが、美しい顔じゃったぞ?正に王子様の様な顔じゃ。体の調子もなかなか良かっ・・・オホン、まぁ、素晴らしい奴隷じゃぞ?」

「けんこうであることはなによりですが・・・どれい、とは・・・?」

「リリーには奴隷はまだ早かったかの?奴隷とは自分のために何でもしてくれるモノじゃ」

そんな事を聞きたかったのではない。この国の奴隷制度ぐらい知っている。
ヴァルドレア王国では奴隷制度が認められていて、この制度のおかげで繁栄してきたと言っても過言ではなかった。
とは言っても、奴隷を買えるのは貴族ぐらいなのだが。

この少年は、父の弟であり、国の宰相であるドリエ叔父様が取り寄せたと言った。
ドリエは、たいへん高慢ちきな性格で、潔癖症であった。
奴隷は不潔と考えており、周囲の人間は歴史ある大貴族や神官などで固めている。
リリーが聞きたかったのは正にその事である。
その叔父がわざわざ取り寄せたとあらば、果たして、目の前の少年はただの奴隷なのか?

(もしかしたら、こうきないちぞくではないの・・・???)


「リリーにムチを渡そう。上手く調教しなさい」

そう言って渡されたムチをリリーはじっと見つめた。

(りりーにこのむちで、としのかわらないようなこどもをたたけというの・・・!?)

多分、リリーは優しい少女とはかけ離れた性格であろう。
その代わり、高貴な性格で責任感は人より強かった。

(むりよ!!どれいなんて!りりーのてにおえないですわ!!)

「あの、ととさま・・・このはなし、ありがたいのですが・・・」

リリーは確かに断ろうとした。断ろうとしたのだ。

しかし、少年と目が合ってしまった。
長い黒髪から覗く、目は猫のように切れ長の瞳孔で、透き通った金色の目だった。

その時、少年を自分に重ねてしまった。リリーの目も金色だった。
同情してしまった。立場が違えば、リリーが奴隷だったかもしれない。



「このおくりもの、ありがたく、ちょうだいいたしますわ」

咄嗟に言い直して、少年の手を掴んで、こちらに優しく引っ張った。

少年は目を見開いたかと思うと、こちらを恐る恐る見上げてきた。


「りりーについてきて」

どうやら言葉は理解できるようで、こくりと頷きリリーの手をぎゅっと繋ぎ返した。

「こら!!リリー!!奴隷の直接、触る時は足と決まっておる!こちらへおいで!!
奴隷の扱い方を一から教えてやろう!!」

王室に父の怒鳴り声が響いた。

だが、リリーは一切動じる様子も見せず、再びお辞儀をした。

「ととさまからのおくりもの、たいせつにいたしますわ。
どれいのあつかいかたとやらは、またつぎのきかいに・・・」

そう言い放つやいなや、足早に王室を立ち去った。


すると、従者が遅れながらも小走りで走ってきた。

「王の言う通りでございます!その卑しきモノをどうかお離し下さい!姫様まで穢れてしまいます!!」

リリーはなぜか、従者の言いぶりにイラついた。

(じぶんのことじゃないのに・・・なぜこんなにも、いらだつのかしら?)

「りりーがしたいことは、りりーがすべてせきにんをもつわ。だから、よけいなくちをはさまないでね」

従者にそう言って、自室に逃げ込んだ。

「姫様!!!!」

「はいってこないで!!」


ドアを閉めて、鍵を付けた。













その時、後悔はしていなかった。

ただ、一瞬の同情がのちの彼女を苦しめたとしても・・・。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】小さなマリーは僕の物

miniko
恋愛
マリーは小柄で胸元も寂しい自分の容姿にコンプレックスを抱いていた。 彼女の子供の頃からの婚約者は、容姿端麗、性格も良く、とても大事にしてくれる完璧な人。 しかし、周囲からの圧力もあり、自分は彼に不釣り合いだと感じて、婚約解消を目指す。 ※マリー視点とアラン視点、同じ内容を交互に書く予定です。(最終話はマリー視点のみ)

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

処理中です...