永遠の愛を手に入れよう

トマトマル

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一章

妹と喋ってみよう 1

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────────────────────────────…………

すーすーとローザの上から気持ち良さそうな寝息が聞こえ始めた。

暖かい風が吹いては、リリーの白金の髪の毛が揺れる。

ローザはリリーを起こさないようにゆっくりと起き上がった。
リリーの膝を腕で支えて、もう片方の手は背中に持っていき、向かい合わせにして赤子を抱くように持ち上げる。

(6.2キロも体重が減ってる・・・、睡眠薬を何度も服用してるみたいだし、髪の毛も誰かに切られた・・・??)

ローザは何ヶ月ぶりに出会った、主の変貌に驚いた。
リリーが弱っているのを承知で近衛隊の合宿に行ったのはやはり間違えだったか。
だが、今後の事を考えれば、参加必至のものだった。

(───とは言えど、痛ましい変化だな)


「これからは、絶対にお傍を離れたりなどしませんよ、リリー様」

そっと囁き、ローザはリリーの柔らかい髪を撫でながら、庭園から出ようと足を動かす。

リリーの真っ白の顔をじっと見つめていると、
閉じられたリリーの長い睫毛が涙で濡れて光に反射しては、キラキラと輝いている事に気付いた。
ローザは両手が塞がっているからと、心の内で言い訳をして、リリーの目元をぺろりと舐める。
しょっぱいはずの涙は、とても甘かった。

(可愛い、可愛い、可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い)

「────はァ、たまんない」

早く、リリー様の部屋に行こう。
そして、付きっきりでお世話をしよう。きっと疲れも吹き飛ぶだろう。







回廊を早足で歩いていると、誰かが叫んでいる声がした。
何やら少女が衛兵に文句を言っている様で、キィキィとした高音の声が耳に残って頭に響く。

派手なピンク色の栄華を極めたようなドレスを着た少女が衛兵五人を相手に突っかかていた。

(どこかの高位貴族か・・・?随分と偉そうだな)

どちらにしても、わざわざトラブルの元へリリー様がいるのに自ら行くわけがない。
触らぬ神に祟りなしとは、こう言う状況で使うものだろう。
ローザは違う道へ行こうとした。


「今すぐ、リリーを探しなさい!!!さもなくお前達の家族を全員晒し首にするわよ!!!!」

(リリー様を探しているのか・・・!?)

咄嗟に足を止めて、聞き耳を立てた。

「あのクソ女!!わたくしにぶつかっておいて、謝り一つで済ませようとするなんて・・・!!
信じられないですわ!!!」


(クソ女はお前の方だろ・・・。ここで殺しておくか・・・?)

ローザは黒い隊服の袖から、暗器を音もなく取り出した。

「うぅっ・・・んぅ」

その時、リリーが小さく唸った。

ローザは少し苦しそうな息をするリリーを見て、気を取り直した。

(リリー様がいるのに殺しなんてできない。そもそもリリー様がこんなに苦しそうなのに・・・私情に駆られたな・・・)

ローザはリリーを侮辱されて、冷静さを失っていたのだ。
あの少女が何者かも知らないのに殺そうとするなんて、普段からクレーバーなローザには信じられない事だった。
ローザは、ただ機械的に人を殺す事はあったが、今までこんなにも殺意溢れた事はなかった。

(やっぱり、こんな感情を教えてくれるのはリリー様だけだ・・・)

ローザは嬉しさを隠しきれないように笑い、少女がいる回廊を避けて、静かに階段を上った。

(あのクソ女をどうにかしないとな・・・)

「フェネア、あの女を調べておけ」

ローザが一言命じると、空間が揺らいで壁から真っ黒のモヤが現れた。
モヤからは、真っ赤な目をした何かがリリーをじっと見つめている。

「リリー様を見るなよ、契約解除してもいいんだよ?」

「すまないね、あまりにも珍しいもんだったからな。ところで、例の女なら俺が食べても良いか?」

しゃがれた声がモヤから響く。聞いた者全てがゾッとするような、悪魔の声だ。
ローザは平然として答えた。

「俺は、調べろとしか命じてない」

「はっ、直ぐに殺さないとは、お前にも慈悲ってモンが備わったようだな」

「さっさと行動に移せよ、フェネア」

「ハイハイわかったよ。まったく、俺みたいな上位悪魔をこき使うのはお前ぐらいだぜ?」

そう言い残すと、また空間が揺らいで、何も無かったように黒いモヤが消えた。







────────────────────────────…………

ローザはリリーをベッドにそっと下ろすと、甲斐甲斐しく看病の準備を始めた。
リリーは苦しそうにうなされて、顔が青ざめ、息も浅くなってしまっている。

(治癒魔法を使っても良いけど・・・)

ローザはリリーの額に手を当てて軽い魔法をかけた。
柔い紫の光が放たれて、そのまま光はリリー額に吸い込まれるように入っていく。

「いい夢を、リリー様・・・」

ローザが囁けば、リリーは険しかった表情を少しだけ緩めて、また気持ち良さそうに寝息を立てた。

ローザは安心したように、息をついた。
間もなくして、呆れたようにもう一度深いため息をした。

そして、虚空を見つめて

「少し、遅いんじゃないか?フェネア・・・」

そのローザの声を合図に黒いモヤが揺らぎ空間から現れた。

「おいおい、どう考えても超特急だろ」

ローザはフェネアからリリーを隠すようにベッドに座り、足を組んだ。

「で、情報は?」

「ハハっ、お礼もなしかよ『さっさと話せよ』」

ローザはいつの間にか、黒いモヤに鋭い刃の暗器を突きつけていた。

「────ま、まあ良い。話してやるよ」

「最初からそうしてね?」

ローザはニコッと笑って、突きつけていた手を下ろして暗器をマジックのように、手からどこかへしまった。

「あの少女は、ヴァルデリア王国の第二皇女だとよ。
前の王妃が亡くなって二ヶ月経ってすぐ隣国の公爵令嬢と結婚したが、その女まさかのまさか、連れ子が居たんだってよ!!ハハハっ、面白いなぁ!!!」

ヴァルデリア王国では再婚は認められているが、貴族との結婚や王族となればもちろん、連れ子や養子はあまり・・・いや、かなり良しとはされない。

(───結婚を急いだか・・・それだとしても既婚者の上、連れ子持ちと結婚とは・・・)

「どうやらこの結婚はわざと早めて、現王妃の身の上を理解しての結婚らしいぜ」

「は?わざと??」

「そうそう、なんでも''リリー様に寂しい思いをさせない為''、だってよぉ!!!」

愉快でたまらないとでも言いたいのか、フェネアの声が笑いで震えている。
その態度とは相反するように、ローザは無表情を徹している。

「お前はよぉ、その子と居る時以外は表情筋死んでんじゃねえの?」

「一応、お前にも愛想笑いはしてるけど?リリー様は特別だから」

「そんなに大切そうにしてるのに、なんでさっきは治癒魔法使わなかったんだ?お前の専門分野じゃねーか?」

フェネアが問うと、ローザは目を伏せてベッドで静かに寝息を立てるリリーを見つめた。
そして、頬を優しく撫で上げる。

「治癒魔法で治してしまったら、俺が看病できない・・・」

「!!!」

赤い瞳孔を目一杯に開いたフェネアは本当に信じられない思いでローザを見つめた。
この少年にも人間みたいな独占欲があるのか、と。

「・・・・・・お前、そんな感情持ってたんだなぁ?悪魔の付け入る隙が増えるぜ?」

「悪魔に唆される程、お前達を信用なんてしてない」

「ハハっ、やっぱりお前はれっきとした暗殺者だぜ」

「リリー様の前で物騒なこと言わないでくれる?潰すよ?」

「いやいや、お前もなかなか物騒だぜ」




「・・・フェネア」

にこやか(仮)に喋っていた二人がいきなり真剣な表情に戻った。

「誰かこっちに来てるなぁ?」

「ああ、ほんと邪魔だよ」

「俺は陰に隠れて見とくぜ!修羅場だといいなぁ!!!」

「後で腹かっさばくよ」










バタァーーーーーン!!!!

「お姉様!!お話がありますの!!!」













────────────────────────────────✍︎

遅くなりました。

なんか悪魔出てきました。
悪魔とローザの関係性は不明ですが、基本的にローザが主権を握っているようですね。
全然、先のことを考えてないので、ごちゃごちゃしてきてるかもです( ٥_٥ )

リリー達が大人になったら、登場人物プロフィールも更新したいです。


次回の更新は年明けです!!

皆さん良いお年を┏○ペコッ

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