この赤茶髪の魔女、金貨六枚の価値。

ゼリオニック

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1-2 金貨の裏側 金色の少女と赤茶色の魔女

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 セリアという少女の物語は、こう始まる。彼女はただの養子縁組の姪で、薬剤師の女性ロアの元で育った。
 ロアはマリナ女神を信仰する人で、セリアのおばあちゃんにあたる。優しくて働き者の女性で、薬草と魔法を組み合わせて、疲れ知らずにさまざまな治療薬を作り続けていた。

「お薬作りって楽しいのよ。それに、助けると温かいお礼が返ってくるわ」

 セリアは、そんな優しくて称賛に値する言葉を、決して忘れなかった。

 でも、魔法の才能が全くないセリアは、時々自分を卑下してしまう。薬草の調合は学んだけど、魔法の力を加えないと、薬は奇跡を起こせない。ただの普通の傷薬で、塗ったり飲んだりし続けるだけだ。

 だから、おばあちゃんの助手でしかない。おばあちゃんが続けられなくなったら、他所に頼むしかない。そんな不安が、セリアの心の奥にくすぶっていた。

 だが、予想外の出来事がセリアに訪れる。

 ある日、おばあちゃんに品物を届ける途中、豪華な馬車を引く馬が暴れ出した。馬車から落ちた少年を、セリアは商品の薬を三本も使って治療した。

 助けのおかげで、少年は重傷から逃れた。青あざは残ったけど、命は無事だ。

 感謝されたけど、セリアは薬屋の主人にどう説明しようかと心配になった。

 主人も少し不機嫌だったけど、軽く叱るだけ。「ロアさんに育てられたセリアなら、今回だけは許すよ」

 そして、セリアを帰宅させ、後日差額を返せと念を押した。
 でも、彼女は知らなかった。あの出来事を、誰かの視線がじっと見つめていて、金色の淡い光を放つ彼女の髪に、即座に魅了されていたことを。

 セリアにとっては最悪の日だった。でも、誰が想像しただろうか。翌朝、王家の馬車が家の前に停まり、大勢の要人が現れるなんて。

 セリアは、おばあちゃんの調合室が取り上げられるんじゃないかと怖がった。おばあちゃんは言っていた。貴族には正当な権利があって、この調合室を没収できる。彼らは土地の所有者で、私たちを守ってくれているんだから。

 それでもセリアには不公平に感じた。
 だから、毛布の下に隠れて動こうとしない。すると、ドアが開いた。

「あなたがセリア?」

 高貴さを湛えた優しい声が響く。蜜を飲んだ鳥のさえずりのように、美しい。
 セリアはゆっくり毛布をめくり、銀色の髪を短く整えた男性を見つけた。瞳は冬の湖面のような淡い青。
 高貴な男性の顔を見て、セリアは怖がってまた毛布をかぶった。一度、毒蛇の美しい声に誘われた小鳥は、もう信じられない。
 だから、毛布の巣に隠れる。

「セリアじゃないです! 絶対にセリアじゃないんです!!!」

 くぐもった声でも、彼にははっきり聞こえた。高貴な男性は楽しげに笑い、自己紹介した。

「私はルシアン・デ・ミラン。アリアアルデル王国の第二王子だ」

 ルシアン王子は返事を待たず、小さな体を毛布ごと抱き上げ、お姫様抱っこした。抱かれたお姫様は必死に暴れたけど、王子の強い力には敵わない。

「え、えっと…王子殿下…」

「ロアさんと話した通りだよ。僕はこの子を連れて、ランドール学院でしっかり教育する。工房のことは、約束通り薬剤師を送るよ」

 言い終えると、古い毛布に包まれたお姫様は、王家の豪華馬車に乗り、ランドール王立学院へ直行した。

 そして今、セリアは『もらいすぎたもの』に戸惑っている。どう扱えばいいのか。ランドール学院の生活は、十日ちょっとで吐血しそうなくらい過酷だ。

 セリアの知識は、読み書きと計算、薬草のことだけ。でも、平民クラスは残酷。王朝の歴史、貴族の名簿、知らない学問。数年かける知識を、短期間で叩き込まれる。

 しかも『特別な人』だから、貴族の息子娘たちに嫌われる。結局、セリアの部屋は小さな…一人部屋。そこにいるはずだった。

 ある午後、授業がなく、王子は生徒会業務で茶卓に連れて行けなかった。セリアはようやく息抜き。昼食後、疲れて横になり、夕暮れ時に目覚めた。
 部屋に誰かがいる。
 夕風が白い薄いカーテンを揺らし、少女が静かに本を読んでいる。

「ごめんね、起こしちゃった?」

 その少女は少し年上。高さはセリアより上だけど、栄養たっぷりの貴族令嬢みたいな体型じゃない。
 赤茶色の髪を丁寧に三つ編みにし、大きな眼鏡で顔を隠す。きれいだけど、庭園の花みたいな華やかさじゃない。大木みたいな感じ。

「私はアニア。冒険者よ。あなたは?」

「え…あなたは…冒険者?」

 セリアは恐る恐る聞いた。目の人の仕草と、木々を渡る風みたいな響く声が、高貴すぎる。
 セリアは怖い。この人が王子が『送った』人なんじゃないか。
 すると、彼女は答えた。

「うん、冒険者で、あなたと同じ平民よ。さあ、怖がらないで。友達になろう」

 セリアの金色の髪が淡く輝く。王子が送った人でも、この人の『友達』という言葉を、奇妙に信じたくなる。

「私はセリアです。セリアは薬剤師の姪です」

「よろしくね」

「こちらこそ」

 ドアを叩く音。二人同時に視線を向ける。

「セリアお嬢様、アニア様。お夕食の時間です」

 メイドの声。平板で無感情。仕事のプレッシャーか、同じ階級を侍る不満か。
 セリアの顔が曇る。行きたくないけど、生きるため。食べ物は必要。行かなきゃ叱られる、嫌だ。
 新友達アニアは、落ち込むセリアを見て、小さな鳥みたいだと思い、冒険者らしく軽く笑う。

「一緒にいきましょう」

「でもセリア…」

 アニアは手を引き、迷子の子に微笑むみたいに。

「さあ、一緒なら大丈夫」

 アニアはセリアの手を引いて出る。
 二人の前は大食堂。長いテーブルが並ぶ。寮は三階なのに、広すぎる。

「ほら、王子の操り人形が来た」

 アニアの緑の制服とセリアの白い制服が入ると、囁きが即座に。

「今回はもう一人増えたわ」

「平民がこんなところにいるなんて」

 アニアは前を向くけど、目で音の主をチラ見。気づかれないように。
 これが場違い者の常。貴族でも平民でも。アニアは昔の自分と重ねる。
 小さな友達が恥ずかしさを堪え、涙目で歯を食いしばるのを見て。
 解決は簡単。

「よし、セリア。あそこから食事を取ろう」

 アニアは指差し、セリアの肩を軽く叩いて注意を引く。大きなテーブルにトレイを取り、厨房へ。
 ここでは、生徒は座って待つ。使用人が取る。でもセリアとアニアは平民。誰もいない。王子の使用人を待てば、もっと陰口。

「パン二つ、スープ、ハムをお願いします」

 アニアは丁寧に。シェフは文句なく盛る。アニアはトレイを受け、セリアを探す。

「さっきみたいにやって」

「あ…はい」

 セリアは恐る恐るトレイを取り、厨房へ。

「えっと…パン二つ、スープ、ハムをお願いします」

 同じく受け取り、友達に合流。

「ほら、簡単でしょ」

 アニアの囁きに、セリアはほっと胸を撫で下ろす。もしかして、王子に感謝かも。アニアを送ってくれた。

「でも…セリア…ここに座るの怖い…」

 アニアはまた微笑む。周りの不快な声が続くから。

「平民だけがそんなことするのよ」

「ほんと、王子がいないと平民に戻るわ」

「特別だって言っても、ずっとじゃないわよね」

 アニアは少し身を屈め、セリアの耳元で囁く。

「じゃあ、ここに座らなくていいわよ」

 言い終え、ドア近くのテーブルへ。自分のトレイを置き、一手で胸に当て、もう一方でスカートをつまみ、自然に頭を下げてトレイを持って出る。
 セリアは慌ててトレイを置き、ぎこちなく真似して逃げる。後ろの陰口など無視。
 二人は部屋に戻り、ドア前でトレイ持ち。アニアは軽く首を振り、ノブがガチャリと回り、ドアが開く。セリアは驚愕。

「アニア、これ魔法みたい!!!!」

「え? 変なこと言うわね、セリア。ここ『ランドール王立魔法学院』でしょ?」

 それだけ言い、通り抜ける。セリアも入り、ドアが閉まる。二人は部屋で食事。
 時間が経ち、食堂にグループが入る。銀髪の青年、白い制服に濃紺のコート。高貴さを示す。
 特別席へ行き、探す。彼の操り人形を。従者五人(男四女一)が堂々と座る。
 生徒会執行部、ルシアン・デ・ミラン第二王子率いる。アリアアルデル王国の。

「今日、俺のセリアはどこだ?」

 苛立った声。生徒会業務は重い。慰めがなければ、完璧な気分を保てない。

「ご主人様、ご存知でしょう。王子がいないと、セリアはどんな食事になるか」

「俺のせいか、レナ書記」

 王子は皮肉っぽく。でもレナ・ローゼンは動じず、燃える赤髪を振り、誘うような視線を返す。

「いいえ、ご主人様。お迎えに行くべき。でもこの時間、彼女はもう先に行ったかも」

『先に行く』は悪い意味。セリアが屈辱を背負って部屋に戻る。
 王子は自分の行動がセリアに悪いと知る。特に陰口。でも、金色の魔法みたいな髪と可愛さに抗えない。誰も聞かない。

「よし、迎えに行く」

 立ち上がるが、使用人が即座に。

「ルシアン殿下、セリアお嬢様と緑の制服の生徒さんが、食事を受け取りお帰りになりました」

「何? 緑の制服がここに入れるはずないだろ?」

 大声じゃないが、怖い声。使用人は少し震える。でも公共の場で詰問は、王子の自制に反する。

「わかった。それは後で。今、俺たちに食事を」

「は、はい」

 使用人はぎこちなく答え、上席の者たちに急ぐ。
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第1話が出た後、すぐに続きの回を書き始めたのは、自分でも何に突き動かされたのか分かりません。 
ですが、とりあえず書き上げました。 
もしこの物語を気に入っていただけたら、ぜひ感想やご意見をいただけると励みになります。

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