両親?弟妹?知りませんけど?

神谷 絵馬

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1 : ハジマリ

ハジマリ3

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ふと目が覚めたら、既に何処かへと向かう乗り物の中で、さっきの大人に優しくしっかりと抱かれてたわー。
周りが気になってモゾモゾとしてたら、さっきの大人が私が起きたことに気付いてくれたみたい。

「あ、メイア、起きたのかな?
うーん、覚えているかな?
さっき自己紹介はしたんだけど、君のお母さんの弟で、君の叔父であるシュゼフです。
今は、これから一緒に住む僕の家に向かうために馬車に乗ってて、お隣の国に行かなきゃいけないから少し時間がかかるんだけど...ゆっくり旅を楽しもうね。」

抱いてる大人は、シュゼフって言うらしい...あの時は、名前を聞く前に出ていっちゃったからねぇ。
さて、シュゼフに受けた軽い説明によると、これは近隣の町に行く乗り合い馬車の中らしい。
そこから次は街に行って、町に行って町街町街町?あれ?町町町街だったっけ?
まぁ、細かいことはいいや!
隣国との国境のある街まで行くらしい。

「君を引き取るとは決めたものの、隣国では他国の者の戸籍を取得するのが大変だったんだ。
1年もかかってしまって、ごめんね...。」

頭を撫でてくるシュゼフさんが言うことを脳内変換すると、ワタシがシュゼフさんの姪で、姪を引き取る為に叔父が用意した隣国の身分証を用いて隣国へと渡るっていう設定らしい。
シュゼフさんが用意した身分証って、多分偽造だよね?
隣国へと渡るのに、偽造された身分証でも大丈夫なのかな?って心配になるよね。

「んーん...?
いっちょ、うれちぃでしゅ。
[一緒、嬉しいです。]」

そんな感じでシュゼフさんの説明を受けていたら、なんだか周囲の人達から暖かい目で見られてるなぁーと、ついついキョロキョロしてしまった。

「あぁ、皆さんには僕たちの旅のことを話してあるんだ。」

どうやら、眠る幼女を抱いていることを不審に思われたシュゼフさんは、この馬車の馭者さんによる質問攻めにあったらしくて、その時にこの子は自分の姪のメイアだと説明したらしい。
シュゼフさんにより偽られた私の境遇は、両親を事故で亡くして父方の親族に引き取られるも、その親族には子供が5人もいたことから育てるのが大変に感じ始めて、母方の唯一の親族である自分に引き取れないかと打診があった...ということらしい。
で、自分は隣国に住んでいるので、手続きなどがあって1年半かけてやっと迎えに来れましたという感じ。
胸元を握り締めて安心したようにぐっすりと眠っているし、私が3歳と幼かったからか、馭者さんも乗客の皆様もなんとか納得してくれたらしい。
隣に座っていた奥様は目を潤ませて、
『自分はまた作れるから...それに、これからどんどん寒くなるわ。
どうか、メイちゃんの為に使って。』
と、今私を包んでいる暖かい膝掛けをくれたんだって。
話を聞いたので、隣の奥様にちゃんとお礼を言わなければ。

「ひじゃかきぇ、ありぁとぅごじゃいましゅ!
[膝掛け、ありがとうございます!]」

「まだ幼いのに、お礼が言えて偉いわ。
きっと、父方の親族の方々も大切に育てていらしたのね...。」

「はい。
この子を幸せにすることが義兄や姉への弔いであり、義兄の親族への謝意であると考えています。」

人になにかをして貰ったからお礼を言う。
そんな当たり前のことをしただけなのに、頭をナデナデしてもらって誉められました。
元両親からは、褒められたりナデナデされたりなんてしてもらった記憶とかないわー。
皆様ほのぼのとした顔をしてて、完全に信じてもらえたみたい。
シュゼフさんの説明中に起きなくて良かったー。

「それにしても、大人でさえ隣国までは遠い。
ましてや、幼い子供を連れていてはなにかと大変だろう。」

「冒険者ギルドのある街に行ったら、冒険者ギルドの出している乗り合い馬車を探してみると良い。
護衛には手練れの冒険者が就くから一般の乗客は火の番をしなくて良いし、幼い子供や女性は優先的に馬車の中で寝させてくれる。
野営をすることもあるが、安心だぞ。」

「それは知らなかったです。
冒険者ギルドを見付けたら、是非探してみます。」

ホッとしていたら、私達の座るベンチの向かい側の端に座っている人達が話しかけてきて、なんとも有益な情報をくれた。
最初に話しかけてきたのが、スキンヘッドで左頬と額の右の辺りにばっくり切り裂かれた感じの傷がある、鮮やかな緑の瞳をした30代くらいの男の人。
もう1人は濃いめの茶髪で、前髪はセンター分けで襟足をちょこんとヒモで結んでて、右耳の下のエラの辺りから鎖骨辺りまで大きな傷痕が一直線に残ってる男の人。
瞳の色は分からない...うん、漫画とかドラマとかで良く見る、ちょっと胡散臭い商人とかにいそうな糸目を初めて見ました。
あんなに細くて、本当に目が見えてるのか不思議だよね。





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