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「料理長!もう夕食の仕込みは始めてらっしゃいますか?」
「お嬢様!
いえ、夕食の仕込みはこれからですが?」
「あぁ、良かったわ!
夕食について少し相談があるのだけれど、聞いてくれるかしら?」
「えぇ、どのようなご相談でしょうか?」
沢山の食材が積み上げられた調理場に入るのを躊躇してしまって、扉を少しだけ開けてから顔だけをヒョコっと入れてみました。
料理長と目が合ったのでそのまま話しかけてみると、料理人達が目を瞬かせて驚いてるわ。
ごめんなさい...けれど、まだ仕込みが始まっていなくて一安心ね。
「料理長、実はね?
ファビエルが声を出せるようになったの!」
「ファビエル坊ちゃまが、声を出したんですか?!」
「えぇ、まだ″ん″と″う″しか発してはいないけれど、こちらが聞くと″うん″って言葉を話しましたのよ!」
「それは目出度いことですね!
では、夕食を少し豪華にしましょうか...勿論、デザートはファビエル坊ちゃまのお好きなフルフルにしましょう!」
「ありがとう、突然のことで申し訳ないのですけれどお願いするわ!」
この体勢はちょっと辛いから、扉を普通に開かせてもらいましょう。
つい、嬉しさが隠せずに少し大きめの声が出てしまったのが恥ずかしいけれど、ファビエルのことを報告すると、皆も凄く喜んでくれたのよ。
お願いするまでもなく、私が考えていたことを諸々を料理長から提案してくれて、そんな些細なことも嬉しいわ。
「そうですか、ファビエル坊ちゃまが声を出したんですか...良かったですねぇ。」
「えぇ、本当に嬉しいわ!」
「お嬢様も男性への恐怖心を多少克服なさりましたし、ようございました。」
「料理長にも迷惑をかけたわよね...ありがとう。」
「そんな!
お嬢様から迷惑などかけられておりませんよ。
ですが、きっかけであるファビエル坊ちゃまには感謝しませんと。」
えぇ、そうね...ファビエルがいたからこそ、少しだけだけども克服できたんだものね。
未婚の料理長や料理人達と、こうして話せるようになるなんて思ってもみなかったわ。
あれは、大好きなフルフルをまた食べたくて、1人で調理場へと突撃したファビエルを追い掛けてきたことが始まりだったのよね...。
料理長がファビエルを安全な所で保護しつつ優しく諭してもくれていて、声の出せないファビエルの要望をきちんと探ってくれて、本当に安心したのを覚えているわ。
次の日のデザートには、ファビエルの要望通りにフルフルが出たのよね。
そして、ファビエルが大好きなのだからと週に1度はフルフルが出るようにもなったの。
その時に、キビキビと働く男の人達を見てしまったのにも関わらず、少し気分は悪かったけれども蕁麻疹が出なかったのに驚いたわ!
料理長とは話すことも普通に出来ていてかなり不思議だったわね。
幼子といえども男であるファビエルの存在が、私の中の苦手意識を緩和していたからかもしれないって、主治医には言われたのよ。
だから、ファビエル同伴で少しずつ試していって、今ではファビエルがいなくても話せるようになりました。
ただ、触ることが出来るのは一部のみで...殆どの男性がまだ無理なんだけどね。
「お嬢様、フルフルは何味にしましょうか?」
「うーん、この時期ならマローとシャキニが美味しいわよね?」
「はい、マローは買い付けないと無いですが、シャキニなら保管庫にあるので直ぐに作れますよ。」
「それならシャキニにしましょう。」
「かしこまりました。」
料理長とどの果物で作るのかを相談していたら、料理長の後ろでソワソワしながら聞いていたデザート担当のムフスさんが、嬉しそうに保管庫の方に軽やかなステップを踏みながら向かっていきましたね。
さて、ここにいては皆さんの邪魔になるだろうから、部屋に帰りましょうか。
*
「お嬢様!
いえ、夕食の仕込みはこれからですが?」
「あぁ、良かったわ!
夕食について少し相談があるのだけれど、聞いてくれるかしら?」
「えぇ、どのようなご相談でしょうか?」
沢山の食材が積み上げられた調理場に入るのを躊躇してしまって、扉を少しだけ開けてから顔だけをヒョコっと入れてみました。
料理長と目が合ったのでそのまま話しかけてみると、料理人達が目を瞬かせて驚いてるわ。
ごめんなさい...けれど、まだ仕込みが始まっていなくて一安心ね。
「料理長、実はね?
ファビエルが声を出せるようになったの!」
「ファビエル坊ちゃまが、声を出したんですか?!」
「えぇ、まだ″ん″と″う″しか発してはいないけれど、こちらが聞くと″うん″って言葉を話しましたのよ!」
「それは目出度いことですね!
では、夕食を少し豪華にしましょうか...勿論、デザートはファビエル坊ちゃまのお好きなフルフルにしましょう!」
「ありがとう、突然のことで申し訳ないのですけれどお願いするわ!」
この体勢はちょっと辛いから、扉を普通に開かせてもらいましょう。
つい、嬉しさが隠せずに少し大きめの声が出てしまったのが恥ずかしいけれど、ファビエルのことを報告すると、皆も凄く喜んでくれたのよ。
お願いするまでもなく、私が考えていたことを諸々を料理長から提案してくれて、そんな些細なことも嬉しいわ。
「そうですか、ファビエル坊ちゃまが声を出したんですか...良かったですねぇ。」
「えぇ、本当に嬉しいわ!」
「お嬢様も男性への恐怖心を多少克服なさりましたし、ようございました。」
「料理長にも迷惑をかけたわよね...ありがとう。」
「そんな!
お嬢様から迷惑などかけられておりませんよ。
ですが、きっかけであるファビエル坊ちゃまには感謝しませんと。」
えぇ、そうね...ファビエルがいたからこそ、少しだけだけども克服できたんだものね。
未婚の料理長や料理人達と、こうして話せるようになるなんて思ってもみなかったわ。
あれは、大好きなフルフルをまた食べたくて、1人で調理場へと突撃したファビエルを追い掛けてきたことが始まりだったのよね...。
料理長がファビエルを安全な所で保護しつつ優しく諭してもくれていて、声の出せないファビエルの要望をきちんと探ってくれて、本当に安心したのを覚えているわ。
次の日のデザートには、ファビエルの要望通りにフルフルが出たのよね。
そして、ファビエルが大好きなのだからと週に1度はフルフルが出るようにもなったの。
その時に、キビキビと働く男の人達を見てしまったのにも関わらず、少し気分は悪かったけれども蕁麻疹が出なかったのに驚いたわ!
料理長とは話すことも普通に出来ていてかなり不思議だったわね。
幼子といえども男であるファビエルの存在が、私の中の苦手意識を緩和していたからかもしれないって、主治医には言われたのよ。
だから、ファビエル同伴で少しずつ試していって、今ではファビエルがいなくても話せるようになりました。
ただ、触ることが出来るのは一部のみで...殆どの男性がまだ無理なんだけどね。
「お嬢様、フルフルは何味にしましょうか?」
「うーん、この時期ならマローとシャキニが美味しいわよね?」
「はい、マローは買い付けないと無いですが、シャキニなら保管庫にあるので直ぐに作れますよ。」
「それならシャキニにしましょう。」
「かしこまりました。」
料理長とどの果物で作るのかを相談していたら、料理長の後ろでソワソワしながら聞いていたデザート担当のムフスさんが、嬉しそうに保管庫の方に軽やかなステップを踏みながら向かっていきましたね。
さて、ここにいては皆さんの邪魔になるだろうから、部屋に帰りましょうか。
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