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お兄様の結婚式

20[回想]

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「あ、あの...」

「ん?どうした?」

「ノーブルの妹は、2人おりまして...多分、上の12歳の妹の方だと思います。
もう1人は身体が弱くて、まだ3歳と幼いので...。」

「そうか、もしかしたら、2人共の可能性もあるな...。」

「はい、ノーブル達は、諸事情ありまして親より放置されていたらしく...妹2人と3人でノーブルの稼ぎで暮らしております。」

「育児放棄か...。」

兄妹3人で慎ましく暮らしているのだな。
そうなると、仕事を盾にされている可能性もあるか...平民とはいえ幹部の扱いだからな。
王立騎士団での稼ぎは冒険者をするよりも安定しているが、まだ新人なのならば3人での生活はちとキツいだろう...今、仕事が無くなるとかなり辛くなるだろうな。
はぁ、ああいう下衆は本当に胸糞悪いな...ノーブルとやらも、その妹達もこちらで保護しよう。

「親の居所は知っているか?」

「あ、はい。
ここから馬車で3日程の町に住んでいると、ノーブルと同じ町出身の者が言っていました。
確か...ノーブルの上に兄が2人と姉が3人いるとも聞きました。」

「かなりの子沢山だな...。」

それだけ子供がいれば、余程の高給取りでもなければ全ての子供の面倒を見ることは難しいか...産むだけ産んで、放置するとはな。
しかし、コイツ、ノーブルのことについて意外と詳しく知っているなぁ...何故だ?

「その......あちらの方ではノーブルの事情は有名らしくて...。
他の者から聞いた話ですが、上の5人とは母親が違うらしく、ノーブルと直ぐ下の妹は所謂愛人の子供らしいです。
一番下の妹は、近所の花街で作った子供らしいですよ。
ノーブルはよく、
『うちの父親は、離縁しようとしていたのに親族に邪魔されて出来なかったとか言っていた。
俺達の存在によって母親の尻に敷かれてるんだと、俺達を殴りながら酒を飲んでたよ。』
と言ってました。」

「ほう、父親による家庭内暴力か...。
幼い妹達を連れて、ここまで逃げてきたのか。」

「その、ノーブル本人は自分の身の上を話したことは無いです。
ノーブルと同じ町出身の奴...えっと、名前はマリスというんですけど、そいつが騎士団の入団試験があることを知って、ノーブルを誘って試験を受けたそうなんです。
2人共合格して入団が決まってから、マリスも手伝って諸々の準備を整えて、妹達も一緒に連れて逃げてきたんだそうです。」

「ほぅ、ノーブルには頼れる友がいるようだな。」

逃げるのは友人が助けてくれたのか...だが、友人には相談出来ていないのかもしれないな。
早急に調べさせよう。

「ノーブルの下の妹が、
『大きくなったらマリス兄と結婚するのー!』
と言っているとかで、2人はよくじゃれてましたー。
あ、僕はマシューと言いますですー。」

牢の中だというのに、ほのぼのとした雰囲気を醸し出すマシューと名乗った男は、

「下の妹ちゃんが、凄く可愛いんですよー。」

なんて、頬を朱に染めてデレデレしている。
コイツ、幼女趣味の変態か?

「あ、あの、マシューは、離れて暮らしている自分の姪っ子と重ねてるだけですので、そんなに怪しまないであげてください。」

「凄く冷たい目で見られてたー。
僕、変態さんじゃないですよー?」

「すみません。
マシューに話させると、緊張感が無くなりますので、黙っているようにとお願いしていたのですが...。」

「あぁ、それは構わない。
マシューもノーブル兄妹を心配していたのだろう?」

「はい!勿論ですー!
話し方がユルいとはよく言われますー。
これは幼少の頃よりの癖なので、ご了承いただきたいのですー。」

疑ってしまって悪いことをしたな。
さて、ここにいる新人達の罪はほぼほぼ無いものと考えられるから、なるべく軽い処罰に出来るようにも含めて、早めに調査をしようか...。

「では、諸々の調査を行ってから処罰を言い渡すので、ここで待っているように。」

「「「はい!」」」

ビシッと敬礼で見送られたのだが...マシューのユルさはどうにもならないのだろうな。
ふんわりとした灰色の猫っ毛で、優しげな茶色の垂れ目には、見る者をホッと安心させる効果があったように感じる。
戦わせるよりも、医務室勤務とかが合っていそうだな。
あのユルい話し方は、患者達に安らぎを与えるだろう。





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