享楽忘種

行木しずく

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お隣さんと

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二十四時間いつでもゴミ捨て可能なのってやっぱり便利だなぁとは思いつつ、一階まで捨てに行くのが面倒だなぁなんて感じてしまうから、人間というのはワガママだ。
ふわぁ、と欠伸をしながらのたのたと部屋へ戻っていると、家の隣の玄関が空いて、中からボサボサ髪の男がふらふらと出てきた。
……あれ、お隣さんか。
普段のお隣さんはスーツが人間になったらこんな感じだろうな、と思わせるくらいにかっちりぴっちりしてる印象なんだけど、今日が祝日のせいなのか、隙だらけの格好に少しだけ微笑んでしまう。
見えているかはわからないがちょっと会釈して、自宅のドアノブに手をかける。

「え、あ、もしかして君、隣に住んでる人ですか!?」

鍵を取り出す前に、ボサボサ髪のお隣さんに腕を掴まれた。

「え、あ、はい、そうですけど……」
「あ、すいません思わず……あ、隣に住んでる林です」

いまどき珍しく『林 仁はやし ひとし』ってフルネームで表札出てるから知ってます。とは言わずににこりと微笑みを返すと、相手もはは……と笑いかけてすぐその笑みを引っ込めた。

「あの、ちょっとだけお時間いいですか」
「え、はい」

頷いてみせると、お隣さん――仁さんは辺りをキョロキョロして「流石に外では……」と言いながら、彼の家に引っ張りこまれる。

「あの、君は……弟さん?」
「あ、そうです。兄と一緒に住んでます」
「そっか……」

彼は言いにくそうに唸って、顔をあげる。

「たぶん、お兄さんの方だと思うんですけど」
「はぁ」

え、もしかしてご近所付き合いに問題があった!? それはマズイ。俺もハラハラしながら続きを待つ。

「あの、その……恋人さんと、仲良いのはいいことだと、思うんですけど、その、……玄関先でヤるのは、あー……流石に、き、聞こえて、くるので、やめていただけると、あの、ハイ……」
「……」
「部屋の壁は厚いし、き、聞こえたこと、ないんですけど! ちょっとね、あの……ね……はは……」
「……それ、最近ですかね……」
「……はい……」

お互いに気まずさに押し黙る。
なんというか、最近兄ちゃん彼女いないし、玄関先でヤってたっていうの心当たりしかないし、たぶん仁さん聞いたのそれ、俺の声ですねぇ……!
居た堪れないとは思いつつ、好奇心が抑えられない。

「……その、声、どんな感じ、でしたか」
「え゛、」

ちらりと見上げると、彼は真っ赤な顔をして俺から視線を逸らしたまま口元をモゴモゴさせている。

「どう、でしたか?」
「ぅ、その…………正直俺好みの声でエロくて大変興奮し、だから! やめていただけると! 助かります!!」
「……その声の主が俺だって言ったら、どうします?」
「へ?」

よほど予想外だったのだろう、ぽかんとした表情でこちらを見るお隣さんと目が合う。いつも思ってたけど、この人も涼やかな感じのイケメンだなぁ。

「最近兄ちゃんと玄関先でヤってたっていうの心当たりしかないんで、たぶん仁さんが言ってるエロい声、俺だと思うんですよね。どうです? 直接ご自身の耳で聞いてみません?」
「いやあの弟くん、」
「俺、成海って言います」
「な、成海くん! 自分のことは大事にすべきだと思いますけど!?」
「やだなぁ大事にしてますよ? 自分の感情をめちゃくちゃ大事に優先してますとも」

あわあわしている彼の両手を取って、耳元にちゅ、と唇を触れさせる。

「俺ずっと、仁さんがイケメンだからセックスしたいなぁって、思ってたんです♡」

見開かれた瞳に映る俺が淫蕩に舌なめずりしている。
仁さんが観念したように肩から力を抜いたので、俺はその薄い唇にキスをした。

*****

「お、俺、男性とシたことないんだけど……」
「大丈夫ですよ」

流石に玄関先でヤるのは嫌だと言われたので部屋に上がり込む。まぁ、玄関先でヤるの止めろって苦言を呈して食われることになったんだから玄関先は嫌ですよねそりゃそうです。
どうしてだか妙に我慢が効かなくて、仁さんをさっさとベッドに転がしてちゅ、ちゅ、とキスを落とす。

「俺がぜーんぶやりますから、仁さんはとにかく気持ちよくなってくれればいいんですよ♡」
「な……」

ちょっと困ったような顔を早くぐだぐだに乱してやりたくて、何か言おうとした口を塞いで股間に手を伸ばす。
すりすりとゆっくり撫で回しているうちに、苦しげな声が漏れてくる。

「な、るみくん、その……」

撫で回している指を軽く引いて赤い顔してる仁さんすごい可愛い。年上の男性相手に覚える感情ではない気がするんだけどものすごく可愛い。
スウェットとトランクスを一緒に引き摺り下ろせば、既にしっかりと立ち上がって先走りまで垂れている。

「さ、最近忙しくてあまり抜いたりしてなかったものであの……すみません」
「なんで謝るんですか。仁さん、案外面白い人ですね……」

思わず生唾を飲んだ俺をどう思ったのか、おたおたとよくわからない言い訳のようなものを並び立てる仁さんに笑ってしまう。
ちゅ、と肉棒の先端にキスを落とすと、また仁さんが慌て始める。

「ちょ、成海くんッ」
「んー? あ、もしかして仁さん、あんまり舐めたりされるの好きじゃないですか?」
「す、……き、ですが……」
「じゃあ問題ないですね!」

にっこり微笑むと、彼は泣きそうな顔でこちらを見る。なんでだ。でもその顔もめちゃくちゃ可愛い。
もう仁さんの反応なんて気にせず、唾液をたっぷりと絡めて裏スジを舐め上げれば、引き攣るような吐息が漏れる。

「ふ、ぅう゛ッ、なる、みくッ♡」
「……んふふぅ♡」

わざとらしくじゅるじゅると音を立てながら思い切り頬を凹ませて追い立てれば、すぐに口いっぱいに青臭くて苦い味が広がった。

「あ、ごめ、ごめんね成海くん! ティッシュ……」
「んー……」

立ち上がろうとする彼を押し留めて、目の前でぐちゅぐちゅと口の中を掻き回す。一度口を開いて、俺の唾液と彼の精液が混ざり合ってどろどろになった液体を見せてあげてから、喉を鳴らしつつゆっくりゆっくり嚥下して、空っぽになった口内を見せつける。

「濃くて美味しいね、仁さんの♡」
「ぅ、あ、エロ……」

遠慮がちだった仁さんの瞳がようやく仄暗く揺れるのを見て、俺はさっさとズボンとトランクスを脱ぎ去って、入れっぱなしのアナルプラグを引っこ抜く。
今日はたまたま白っぽいローションを使って入れたんだけど、それが中から垂れてくるのを仁さんがじっとりと見ているのを感じて、我ながら良い仕事をしたと内心笑った。

「ねぇ仁さん、こうやって中から溢れてきちゃうくらい、お腹いっぱい注いでほしいな……♡」
「……ッ」

すり、と竿を撫でれば、さっき精液を吐き出したばかりとは思えないほどガチガチに固くなっていた。
半身を起こした彼の肩に手を置いて、狙いがズレないように手を添えて、躊躇いなく飲み込んでいく。

「ふ、くぅッ♡んんぅ♡♡」
「ッ、なる、みく、」

出来うる限りゆっくり焦らしながら彼の形を意識しつつ押し込んでいこうとしたのも束の間、彼の手で無理やりどすん、と座らされて悲鳴が漏れた。

「ンひ、あ゛ぁ゛、ッ♡♡」
「成海くん、あ゛ー、ヤバい……きもちぃ……」

奥をゴツゴツ刺激してくる衝撃を必死に逃しつつ呼吸を整えていると、仁さんが甘えるように頭をすり寄せて来たので思わず笑みが零れた。
どうしよう。さっきから仁さんが可愛すぎてきゅんきゅんする。

「ひ、としさ、ッ♡かわい……♡あ゛ッ♡♡」

堪らなくなって頭を撫でてあげると、捩じ込んだ肉棒が更に大きくなってイイところが擦られた。

「と、年下の男の子に、甘やかされてる……ッ」
「んぅ゛♡いや、ですかぁ?♡♡」
「困る……はぁ♡しあわせ、すぎてッ、ダメになりそう……」
「いいんですよぉ♡お゛ッ♡♡もぉっとダメになって、ぇ゛♡♡」

とろんとした目のまま、下からずんずんと腰を突き上げてくる姿があまりにもエロくて、俺の口元が勝手に弛んだ。張り出した喉仏に舌を這わせると彼が甘く啼くので、俺はどんどん調子に乗ってしまう。
頬に、鼻先に、ちゅっちゅっと軽いリップ音をさせながら唇を触れさせて、もっともっと仁さんを甘やかしてやる。

「ぐ、ゔぅ゛ッ、ダメ、だって、なるみ、くん……」
「んふふッ、ん♡ダメぇ? あ゛ぅ♡♡こんなにきもちーのに、ダメなこと、ひぅ゛♡ないれすよぉ♡♡」

つん、と立っている乳首をTシャツの上からぺろぺろと舐め吸い付けば、仁さんの瞳に張っていた涙がぱちっと弾けて零れ落ちた。
何をやっても気持ちよさそうに啼きながら俺のナカを攻めたてる仁さんが可愛くて仕方ない。

「ダメ、それダメッ♡成海くん、でちゃう、からぁッ♡」
「がまん、ぅ゛♡しない、でッ♡熱くて、濃いザーメンッ♡ナカ、ぃ゛ゔッ♡♡らして♡♡♡」

仁さんの背中に腕を回し、耳元で囁きながら精液を搾り取るために大きく腰を振れば、ばぢゅん♡ばぢゅん♡と下品な水音混じりに肌がぶつかり合う音が部屋中に響いて、脳が沸騰しそうだ。

「ほら♡はやく、ッ♡濃いぃの、らして♡♡すっきりしよーね♡びゅー♡びゅー♡ッて♡♡」
「ふぅ゛、ぅ゛あ゛ッ♡」

息を荒げ、ガクガクと震えながらも俺にしがみつく姿に、めちゃくちゃ興奮してしまう。

「イ、くッ! なる、くんのナカで、イくッ♡」
「ひぁ、あ゛♡ぁはッ♡あ゛ぢゅいの、キた♡♡あ゛、あ゛ぁッ♡」

どくどくと熱い飛沫が胎内で弾ける。どろりと粘っこい精液が肉壁にぐしぐしと擦り付けられて、俺は快感に酔いしれる。
しばらく中にたっぷりと出されている感覚を味わってから、どうにか腰を上げて肉棒を引き抜いた。

「ふぁ……お腹いっぱい……♡」

ぐったりとベッドに沈み込んだ仁さんの腹の上に座って、ぼんやりとしている彼の頭に手を伸ばしてわしゃわしゃと髪をかき混ぜていると、意識がはっきりしてきたのか、気遣わしげに視線が投げかけられた。

「成海くん、身体大丈夫……?」
「ぜーんぜん平気ですよ。このまま続けてヤってもいいくらいですね♡」
「俺が無理だわ……」
「そうでもなさそうですけど?」

後ろ手に玉を軽く揉んでみれば、まだまだずっしりとした重みがある。本当にだいぶ貯めてたんだろうなぁ……と思うと、自然と舌なめずりしてしまう。
そんな俺を見たからか、仁さんがごくりと喉を鳴らした。ふ、と笑ってみせると、彼は慌てて首を振る。

「疲れきった中間管理職の体力の無さをナメないでほしい」
「そんなこと堂々と言い切られましても……あ、そうだ」

気遣わしげな視線が胡乱げに様子を伺う色に変わる。

「俺が空っぽになるまでお口でシてあげますよ♡」
「いや、なんかそれは!」
「それは?」
「そ、れは……」

うろうろうろうろと視線が宙を彷徨う。
じー、と見つめていると、観念したように真っ赤な顔で「なんか……もったいない……」とか細い声でぽつりと零した。たぶん、それを聞いた俺の顔は会心の笑みを浮かべていたことだろう。

「そういえば、感想聞いてなかったですよね」
「へぁ?」

胸と胸をくっつけるようにして腹這いになりつつ、仁さんの耳元に唇を寄せる。

「俺の『声』、どーでした? やっぱり好みだった?」
「あ」

完全に忘れてたのであろう間抜けな声が漏れ聞こえて、俺はくつくつと笑いが抑え切れない。

「じゃあ次はゆっくりシましょうか。いっぱい啼かせてくださいね♡」

困ったように視線を彷徨わせるも、俺の太ももをするすると撫でている手のひらの熱は雄弁だった。
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