多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

文字の大きさ
39 / 150
Chapter Ⅳ:Stealth

No39.Exclusion

しおりを挟む
 すると、映人が声を発した。

 「撹乱が効いている様子が無い。違和感を感じて調べてみたら……溶け込む内通者がいるようだ。しかもプレデスタンス上層部の情報も度々抜かれている。構成員まではバラされてないらしいが。」

 「君がハッカーである事はバレてないんだよな?」

 「ああ。」

 甘採は銃弾を映人に対して投げた。

 「そいつの排除が先決だ。あちらに流されなければ成り済ませる。」

 「任せておけ。」

 そう言うと映人はパソコンの前に座り、サイレンスのサーバーを漁り始めた。

 「俺ちょっと席外すわ。」

 撫戯は何処かに行ってしまった。

 「で、作戦はどうなってる?」

 「正直な話、真っ向から挑んでも白薔薇と紅月に全て壊されるだけ。なら内部から狂わせれば良い。そうだな……「ステルス作戦」と言ったとこ。」

 「なるほど……。ま、気長にいくか。」

 「だな。焦る必要すら無い。」

 会話を終え、二人も解散していった。








 旋梨と波瑠のドキドキデートの翌日、俺は昨日の件でテントへと向かっていった。
 それは偶然だった。偶然助けた人が今会うべき人物の関係者だったのだ。

 「やはり貴方でしたか。歪君。」
 
 その場所に行くと、既にその人物は待っていた。

 「お久しぶりです。種田さん。」

 彼は「種田」。二個上の先輩で、暗殺者関係では無いが、撫戯の友人だった。

 「まずお礼を言わせて下さい。昨日はうちのアイドルを救ってくださりありがとうございました。」

 昨日はあの場所でイベントをやっていたらしく、そのプログラムの一つにライブがあったらしい。ちなみに、真依はあのステージで単独ギターしたらしい。

 「いえいえ。半分趣味なんで。」

 「そうでしたね。ところで、貴方が僕を呼ぶという事は、何かあったんですね。」

 言っていいものなのか。彼は暗殺者関係者では無いものの、俺達の正体を承知の上で仲良くしていた。一般人である彼が情報を持つという事は、つまり消される可能性が高まるという事。

 「躊躇ってますか?安心してください。僕も半端な覚悟で人生生きてないですから。」

 そう言われてはっとした。彼は実際、芸能界に携わっていても、平穏に生きられている。

 「……単刀直入に言う。撫戯がLeviathan堕ちした。」

 すると、種田は分かりきっていたようで哀愁のある表情を浮かべた。

 「貴方がわざわざ僕を呼ぶって事は撫戯関連だと思っていました。この混乱した社会情勢ならあの界隈に彼が戻っても不思議ではありませんでしたし。」

 「報復には気をつけろよ。後、苦しいと思うけど、撫戯に関与していた過去をあまり公表しないでほしい。これは彼のためであり、種田さんのためでもあります。」

 「……承知しました。上層部の様子は伺った方が良いかな?」

 「ああ。特に「四季 恋音」のマネージャーは監視必須。彼をこれ以上汚さないためにも。」

 「はい。あ、僕からも話したい事があるんですけど良いですか?」

 「ああ。」

 種田からの用件なんて心当たりが無い。そもそも、異常気象の年はまだ一緒に居たが、サイレンスも政府に雇われてはいなかった。

 「貴方の曖昧な記憶について…偶然耳にしましてね。ちょっと詳細な話は本当に消されてしまうかもなので話せないですけど……。」

 そう言うと、彼は俺の耳に近づいた。

 『薔羨さん……貴方の記憶を呼び起こすキーです。』

 「待て。それはどうい……」

 「あ、時間です。またお会いしましょうね。」

 そう言って逃げるように種田は行ってしまった。
 薔羨……聞き覚えのある名前だが、霧が振り払えない。だが、この曖昧な記憶の中に含まれる人物である事は間違いないのだろう。







 無法地帯で情報屋を営む男「本井」。山田にサイレンスの事を流したあの共犯者だ。彼は今日も特大スクープを求めて歩き回っていた。

 「止まれ。」

 スコープで覗かれている事を察した本井は、護身の銃も全て投げ捨て、手を挙げた。

 「いい子だ。」

 視線の方向から、映人が姿を現した。

 「何故分かった。」

 「逆探知させてもらった。すると、お前は確かに奴らにこちらの情報を流していたが、逆に山田にも奴らの情報を流したな?……何が目的だ。」

 「単なる二重スパイさ。この分裂した日常を変えたいと思っただけ。」

 「言いたい事はそれだけか?」

 「……。プレデスタンスに干渉した時点で、消されるのは覚悟していた。」

 刹那、本井は頭から血を流して倒れた。

 「排除完了。」

 映人は冷酷な視線を本井の亡き骸に落とし、その場を立ち去った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...