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Chapter Ⅳ:Stealth
No40.Heart is a fetter
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俺はLeviathan拠点から数時間移動し、Enter拠点「元・仙台国家秘密研究区域」に訪れていた。
Leviathan拠点は中部地方にあるが、黄牙さん繋がりの優秀なエンジニアが自動型ジェット機の量産に成功しているので、関東のすり抜けは余裕だ。
奴らは完全に包囲されているのだ。
「よぉ黒薔薇さん。」
「お前はいつも唐突だ。讐鈴。」
黒薔薇さんは今日もモニターに向かって日本全土の監視に勤しんでいた。
「今関東と情報戦やってるんですよ。歪と紅月を奇襲するためです。黒薔薇さんの方はどうっすか?」
「さっさと歪には真実を知ってほしいものだ。あいつが居れば即戦力。目的を果たすのに必要な資料を見つけやすくなる。」
「……葵さんの状態は大丈夫なのか?」
「今はな。……俺は家出した事を今頃悔しんでる。」
黒薔薇さんの言葉には共感しかない。紅月や音階は歪から抜け落ちた過去を知っているのに、彼はその場におらず、後から調べるうちに発覚したのだ。
しかし、歪は彼を鮮明には覚えていない。成熟した脳で共に過ごした時間が短すぎたのだ。
「讐鈴こそ平気か?」
今度は黒薔薇さんから安否を問われた。
「なぁに余裕さ。早かれ遅かれ、関係者の虐殺は決定事項。」
「俺はお前がそんな物騒な思考回路になった事が哀しい。俺は腐っても、お前は真っ当な社会に復帰できたのに…。」
「何言ってるんすか?どうせ今の日本は荒れまくっている。最早政府は国民の事を考えていない。なら、我々も従わない。大体、俺も黒薔薇さんも政府に対して尋常じゃないほどの怒りがある。奴らのしてきた事を倍にして返すだけだ。」
手遅れかもしれない。俺はホストで培った知識と仲間からの信頼でプレデスタンスを束ねてきた。だが、こいつは異端中の異端だ。
人間としての道徳心と倫理感を捨て、目的達成のためなら手段を選ばないボットと化した。
だが、こいつはEnterとLeviathanに対しては真っ当な心を捨てていない。俺達だけは全滅してはいけない。こいつの心の拠り所が無くなる時、讐鈴撫戯は人間で無くなる。
……まず、政府がやらかした時点で日本は全員が報われるハッピーエンドにはならなかったのかもしれない。
黒薔薇さんは急に黙り込む。俺は何か失言をしてしまったのだろうか。……そんな事は無い。全部“あいつら”が悪い。
「じゃあ俺はこの辺で……。」
そう言い残して、俺は中部に戻る支度を始めた。
「お?撫戯じゃん。久しい。」
後ろから肩を叩かれ、フレッシュな声が聞こえた。
彼は「慰思 要」。Enterのムードメーカーであり、心理学者志望だった。元々一般家庭だったが、色々あって黒薔薇さんと絡んでいる。
「そうだな。でも今日はこれで……。」
「そっか。……自分を見失う事は罪だって覚えときな。俺らは味方だからさ。敵だと思っている奴にも君の味方はいるはずさ。」
そんな事を要さんは言うが、俺は頭の片隅にしか置いていない。ジェット機に乗り込み、去って行った。
廃倉庫。人の命を奪った事に何の感情も抱いていない様子で映人は帰還し、サーバーを漁り始めた。
「貴井。ちょっとお話いいか。」
すると、同じく帰還した撫戯が声を掛けた。
「どうした?」
「ちょっと提案があってな……。」
映人は撫戯の話を聞いた。
話を聞き終えると、映人は不敵な笑みを浮かべた。
「お前、Leviathanらしい思考になってきたじゃないか。」
「そんなそんな。最初からですよ。ただ我慢する事を辞めただけ。」
すると、映人は対象のサーバーを変え、一瞬で侵入に成功した。
「暗殺者が派手に動く事自体が間違いだ。俺と情報戦で壊してやろう。撫戯。」
「おう。滲襲先輩と矢匿には俺から連絡しておく。」
二人は握手して、それぞれ動き始めた。
とある芸能事務所。そこの看板と大勢のスタッフが話し合っていた。
「はい。分かりました。次の公演は一大イベントです。頑張ってください。四季さん。」
「はい、分かりました!精一杯頑張らせて頂きます!」
関東地方では超人気アイドル四季恋音の大規模ライブが控えており、歓喜に包まれていた。
しかし、今回はただのライブにはならなそうだ。
「来週末に行われる四季恋音のライブをジャックするだと?」
「そうだ。」
「お前な……本当に社会の歯車に戻りかけたのか?」
「金の事しか頭に無い連中に人生めちゃくちゃにされておいて、こんな時代に黙ってると思うか?」
「お前、Leviathanらしい思考になってきたじゃないか。」
どうやら、波乱の一週間になりそうだ。
Leviathan拠点は中部地方にあるが、黄牙さん繋がりの優秀なエンジニアが自動型ジェット機の量産に成功しているので、関東のすり抜けは余裕だ。
奴らは完全に包囲されているのだ。
「よぉ黒薔薇さん。」
「お前はいつも唐突だ。讐鈴。」
黒薔薇さんは今日もモニターに向かって日本全土の監視に勤しんでいた。
「今関東と情報戦やってるんですよ。歪と紅月を奇襲するためです。黒薔薇さんの方はどうっすか?」
「さっさと歪には真実を知ってほしいものだ。あいつが居れば即戦力。目的を果たすのに必要な資料を見つけやすくなる。」
「……葵さんの状態は大丈夫なのか?」
「今はな。……俺は家出した事を今頃悔しんでる。」
黒薔薇さんの言葉には共感しかない。紅月や音階は歪から抜け落ちた過去を知っているのに、彼はその場におらず、後から調べるうちに発覚したのだ。
しかし、歪は彼を鮮明には覚えていない。成熟した脳で共に過ごした時間が短すぎたのだ。
「讐鈴こそ平気か?」
今度は黒薔薇さんから安否を問われた。
「なぁに余裕さ。早かれ遅かれ、関係者の虐殺は決定事項。」
「俺はお前がそんな物騒な思考回路になった事が哀しい。俺は腐っても、お前は真っ当な社会に復帰できたのに…。」
「何言ってるんすか?どうせ今の日本は荒れまくっている。最早政府は国民の事を考えていない。なら、我々も従わない。大体、俺も黒薔薇さんも政府に対して尋常じゃないほどの怒りがある。奴らのしてきた事を倍にして返すだけだ。」
手遅れかもしれない。俺はホストで培った知識と仲間からの信頼でプレデスタンスを束ねてきた。だが、こいつは異端中の異端だ。
人間としての道徳心と倫理感を捨て、目的達成のためなら手段を選ばないボットと化した。
だが、こいつはEnterとLeviathanに対しては真っ当な心を捨てていない。俺達だけは全滅してはいけない。こいつの心の拠り所が無くなる時、讐鈴撫戯は人間で無くなる。
……まず、政府がやらかした時点で日本は全員が報われるハッピーエンドにはならなかったのかもしれない。
黒薔薇さんは急に黙り込む。俺は何か失言をしてしまったのだろうか。……そんな事は無い。全部“あいつら”が悪い。
「じゃあ俺はこの辺で……。」
そう言い残して、俺は中部に戻る支度を始めた。
「お?撫戯じゃん。久しい。」
後ろから肩を叩かれ、フレッシュな声が聞こえた。
彼は「慰思 要」。Enterのムードメーカーであり、心理学者志望だった。元々一般家庭だったが、色々あって黒薔薇さんと絡んでいる。
「そうだな。でも今日はこれで……。」
「そっか。……自分を見失う事は罪だって覚えときな。俺らは味方だからさ。敵だと思っている奴にも君の味方はいるはずさ。」
そんな事を要さんは言うが、俺は頭の片隅にしか置いていない。ジェット機に乗り込み、去って行った。
廃倉庫。人の命を奪った事に何の感情も抱いていない様子で映人は帰還し、サーバーを漁り始めた。
「貴井。ちょっとお話いいか。」
すると、同じく帰還した撫戯が声を掛けた。
「どうした?」
「ちょっと提案があってな……。」
映人は撫戯の話を聞いた。
話を聞き終えると、映人は不敵な笑みを浮かべた。
「お前、Leviathanらしい思考になってきたじゃないか。」
「そんなそんな。最初からですよ。ただ我慢する事を辞めただけ。」
すると、映人は対象のサーバーを変え、一瞬で侵入に成功した。
「暗殺者が派手に動く事自体が間違いだ。俺と情報戦で壊してやろう。撫戯。」
「おう。滲襲先輩と矢匿には俺から連絡しておく。」
二人は握手して、それぞれ動き始めた。
とある芸能事務所。そこの看板と大勢のスタッフが話し合っていた。
「はい。分かりました。次の公演は一大イベントです。頑張ってください。四季さん。」
「はい、分かりました!精一杯頑張らせて頂きます!」
関東地方では超人気アイドル四季恋音の大規模ライブが控えており、歓喜に包まれていた。
しかし、今回はただのライブにはならなそうだ。
「来週末に行われる四季恋音のライブをジャックするだと?」
「そうだ。」
「お前な……本当に社会の歯車に戻りかけたのか?」
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