多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

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ChapterⅧ:FinalZone

No125.Flying wildly

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 開けた道際で戦う者達に対して、こちらは前進しながら奇襲を仕掛けてくる敵に対処した。
 いや、俺達にとっては“飛び込む獲物”に過ぎなかった。

 「やはり数だけはレベルが違うな…。」

 すると、建物の屋上からバールを振るう六人ほどの敵が飛び降りて来た。
 しかし、撫戯がワイヤーを投げ、奴らは着地する前に絡まって宙吊りとなった。

 「選びな、裏切ってこっちを手伝うか、死ぬか。」

 撫戯はそう問い詰めるが、奴らは何とか抜け出そうと悶えた。刹那、撫戯はワイヤーを弾いて敵を切り刻んだ。

 「それは敵意があると解釈していいな?」

 「撫戯。何遊んでんだ。……お前の敵は道端の連中以上だろう。」

 「だったな。」

 兄上がそう言うと、撫戯はワイヤーを回収し前進した。
 兄上は妙に冷静な様子だった。大人の余裕とでも言うべきか。いや、内心は俺達とさほど変わらないのだろう。
 まだ序章も序章。まばたき一つ許されない任務に、大勢の仲間を巻き込んだ。組織全体がプライドを持ってこの地に赴いた。
 そこから来る緊張感が、伝わってきた。

 「兄上……行くぞ。」

 「タイムリミットは不明。一秒も無駄に出来ないな。」

 そう言い残すと、兄上は地を蹴ってアスリートも仰天なフィジカルで開けた道路を駆けた。
 それだけじゃない。あの動きの中で的確に敵を撃ち抜いて、ピンチな味方陣営のフォローをしている。兄上が最強である説明は不要。見れば分かる程の怪物だった。

 「はぁ……置いて行かれる訳にはいかないな。」

 身体の準備を整え直し、俺も“久々”に助走をつけて本気で標的地に向かった。







 取り囲んで襲撃してきた敵を不協和音ボムで蹴散らし、第一波を乗り越えた時、耳が張り裂けるような重低音とともに、近くにあった建物が倒れてきた。

 「愁!」

 「大丈夫。」

 建物の近くにいた愁であったが、咄嗟に爆弾で倒壊する建物に穴を開け、回避したようだ。
 
 「無事か!」

 「北西。」

 「ッ!」

 愁にそう言われその方向を見ると、弾が飛んできていた。俺は身を捻りギリギリで回避した。
 すると、銃弾が直撃したコンクリートはかなり抉れた。その凹みの中心に銃弾が着いていた。

 「対物……か…?」

 明らかに対人用の銃では無い。もし回避出来ていなかったらと思うと、ゾッとする。
 俺の耳は優れているが、今回は音がでかすぎて逆に方角を識別出来なかった。裏目に出た弱点を補ってくれた愁には感謝しかない。

 「旋梨。」

 「ああ分かってる。あいつだよな。」

 愁の指差す方向。そのビルの上には光が反射して輝く重量級のライフルを持った女の姿があった。
 その女は横顔でこちらに狙いを定め、対物ライフルを発砲した。
 しかし、姿を捉えられているため、回避するのは容易だった。

 「降りて来い。決着着かないぜ、それじゃあ。」

 そう言い放つと、女は要望通り足場であるビルを撃ち抜き倒壊させて、着地してきた。
 豪快な着地と共に瓦礫が飛び散ってくるが、俺達は自分の武器で破壊して対処した。

 「随分と派手に暴れるんだな……!」

 「音階と虛霧かな?結構相性の悪い相手かもな~。」

 女がそう独り言を言っている最中、隙かさず愁はミストを張るが、重低音と共に霧は晴れた。
 対物ライフルの発射の勢いで相殺したようだ。

 「でもー、私「蝶帝」が全部壊しちゃうから。……無力なベイビー達には何も出来ないだろうね♪」

 「ッ!」

 刹那、蝶帝は丁度上を通過していた飛行機に対し対物ライフルを放った。
 左翼が大破し、傾いてこちらに墜落を始めた。

 「愁!」

 「了解。」

 流石に助けられない。そして自身の身の危険も感じたため、ひとまずあれを回避する事に専念する事にした。
 ああ、いつしかの日に言われた“ヒーロー”なんて言葉は俺には似合わない。人間の限界に触れているのだ。







 後衛から援護する形で進行していた俺達であったが、思いもよらない所から急襲を受けた。
 
 「莉緒菜!後ろのガラスから!」

 「ッ!わぁっ!」

 ガラスを突き破りドローンがタレットを連射し始めるが、莉緒菜はそれを打ち壊した。
 しかし、忠告をした彩良の背後からもドローンが迫る。

 「屈め彩良!」

 「はいっ!」

 俺はそう叫び、ナイフを投げてドローンを撃墜させた。

 「ありがとう絆。」

 「感謝は後だ。……それよりさっさと姿を現しやがれ。この前と違って居るのは気付いてるぞ。」

 そう言いながら建物のガラスにナイフを投げると、そいつは姿を現した。

 「おやおや気が付いていましたかぁ……。こんばんは、Orderの皆様ぁ!」  

 「柊司令の件、あんたなんだろ?」

 「流石に分かりますよねぇ。」

 「……殺す。」

 先手を取るべく俺は高速で動き、背後からナイフを刺そうとしたが、ドローンがスタンガンを突き出して行く手を阻んだため、横に逃れてナイフを投げた。
 しかし、ドローンがナイフの予測線に動き、受け止めた。

 「コントローラーも無しでどうやってやがる……。身体でも改造してるのか。」 
 
 「それは少し違いますねぇ。まぁ、原理が分かったとて私が不利になる事も無いので説明しましょうかぁ。そのドローンは私の思考を読み取り自発的に動く人工知能が搭載されております。機体はある程度の傷なら自動で修復されます。…さてさて皆様勝てますかねぇ……!」

 現時点でも計八機のドローンが浮いている。恐らく、まだ数機あるはずだ。
 厄介なのは奴らが成すフォーメーション。器用にすばしっこく動くドローンに対処するのは難しい。
 ……愚問だったな。

 「……Order舐めんな!紅月……励領絆の本気、味わいな。彼女らも手練れだぞ?」

 「確かにOrderは強い。ただ……技術の成す意思無き連携に勝てるとでも?……コードネーム:蝙蝠、貴方が本名を名乗るなら私も挙げましょう。五十嵐 翔いがらし  しょうの技術の結晶をご覧あれ!」

 そう名乗ると、蝙蝠はゴーグルを装着して、建物の中へと逃げて行った。
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