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呪いのスキル
29.人前で全力は恥ずかしい
しおりを挟むポーションをこの動かない体でどうにかして飲まないと。
「はぁ~やりたくない」
実は1つだけ思い付いている事がある。
でも、その~あまり使いたくない手なんだよな。切り札と言うか何と言うか。
例えば物語だと、使えば強いけどその反動で自分も傷ついてしまうみたいな感じで、戦いの終盤に負けそうになった時だけに使い、相手にギリギリで競り勝つと言ったような奥の手に分類される手段だ。
勿論、そのあと後日談として入院生活になるけどね。
そんな切り札や奥の手と言えるものを今ポーションを飲む為だけに初めて使うなんて、少し恥ずかしかった。
もっとそれに相応しい所で使ってみたかった。
まあ、これ以外の方法なんて思いつかないから、選択肢は無いけどな。
少し意識がボーッとしてきたな。早くしないと本当に死ぬ。
「しょうがない。本気ってやつを出してみますか」
空間把握能力の出力を上げ精度を高める。
いつもならそんな事しなくても良いけど、今回は体がボロボロなので上手く制御しないとポーションを飲む前に俺の体が使い物にならなくなる。
そして、人間が無意識にセーブしている肉体のリミッターを天眼で外す!
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
所謂、火事場の馬鹿力と呼ばれるものだ。
動く。ちゃんと動ける。
少しずつ体を動かして上体を起こしていく。
体を動かすに従って、精度を高めた天眼で自分の体が急速に壊れているのが分かる。
それでも動ける事には変わりない。
俺の体が完全に壊れる前にポーションを取り出して飲めば良いだけの事だ。
頑張って座った体勢になり、吹き飛ばされた時にぶつかった壁に背中を預けた。
次に腰に付いたマジックポーチを外して正面に持ってくる。
「あと少し」
マジックポーチのファスナーを開けてポーションを取り出す。
そして、手に取ったポーションの瓶の栓を摘んで開けようと力を入れているが開かない。
多分、筋肉もズタズタになっているから、これ以上力が入らないんだ。
また手詰まりになった。リミッターを戻して一旦休憩するか。
リミッターを戻すと、ズッシリとした重みが身体全体に掛かり動けない状態に戻る。
どうやって瓶を開ければいい?
瓶を上から落としてみて、偶然割れたり栓が外れるなんて事に期待してみるか。
駄目元でも試してみるか。
再度リミッターを外して、マジックポーチを腕の上がる限界まで持っていく。
マジックポーチをひっくり返して、ポーションの瓶を全部出すように念じた。
ポーションの瓶はマジックポーチの中から次々と地面へ向けて落ちていった。
しかし、ダンジョン産の瓶は思ったより丈夫な様で、落とした衝撃で割れたり栓が外れるなんて事は起きないかった。
その代わり落ちてきた瓶が地面で跳ねて俺に当たって、少しHPが減った気がする。
【名前:佐々木光希
性別:男
年齢:16
職業:学生
lv:24
スキル:鑑定偽装Ⅹ P
振動魔法Ⅱ A 7/100(10kHz、1/10EP)
エクストラスキル:天眼 AP (10000EP)
HP: 428/7950
EP: 425/5428+5000 】
おお、かなり効いている。やはり瀕死のこの体にはリミッターを外すなんて荒技は負担が大きかった様だな。
まあ、瓶のダメージや出血も原因ではあると思うけど。
そうだ。これがあるじゃないか。
ステータスを見ていて気づいた。これまで全く何の役に立たなかった振動魔法があるじゃないか。
高速でポーションの栓を振動させれば、瓶と栓の間に隙間が出来やすくなり弱い力でも栓を抜ける筈だ。
振動魔法を栓に100EPで掛ける。それから栓を摘んで力を入れると、今度は簡単に栓を抜くことが出来た。
何とか体が完全に壊れ切る前にここまで辿り着けたな。
切り札をこんな場面で使った後に、次は魔法を初めて役立てるのがこんな事だとはな。
まあ、そのお陰で命を繋げそうだった。
【名前:回復ポーション
状態:良
効果:小 】
回復ポーションで効果は小。出来れば中か大が良かったが、あるだけ良いか。飲んでみる。
「ガアァァァ!!!」
痛いッ!凄く痛いんですがッ!言葉にならないくらいにッ!
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いッ!
全身に耐え難い激痛が走る。
辛うじて繋がっていた神経が少し治った事によって、麻痺していた感覚が戻っり激痛を感じる。
天眼で見てみると筋肉、皮膚、血管などを中心に治ってきていた。
効果が弱いのか、骨は多少治って、神経に至ってはほんの少しだけしか治っていない。
今も体中が激痛で辛いが、どんどんポーションの瓶を開けて飲んでいく。
筋肉も治ってきた事で、少しは力が戻ってポーションの栓が抜けるかと思ったけど、やってみると今度は激痛で手に力が入らないみたいだ。
そんな訳で、また振動魔法でポーションの瓶を開ける。
300EPを使い、回復、EP、体力ポーションを1つずつ開けていき、全部飲む。
【名前:佐々木光希
性別:男
年齢:16
職業:学生
lv:24
スキル:鑑定偽装Ⅹ P
振動魔法Ⅱ A 7/100(10kHz、1/10EP)
エクストラスキル:天眼 AP (10000EP)
HP: 774/7950
EP: 427/5428+5000 】
良し。ちゃんと回復出来ているな。
EP全快でHPも回復してきている。
体力ポーションを飲んだお陰か、少し体が軽くなった様な気もする。
多分この体力とはスタミナの事だろう。体力が回復して疲れが取れたのか。
でも、今もリミッターを外している所為か、HPが継続的に減っていっている。
そして、また少し神経が治ったお陰か、激痛が酷くなり声すらも出せなくなった。
俺は痛みに耐性がある訳じゃないので、普通に意識が飛びそうな程痛い。
涙目になりながら歯を食い縛り、体を動かしていく。
400EPで回復2本、EPと体力を一本ずつポーション開けて飲むを繰り返していく。
これを5セット繰り返した頃には、もうこれ以上治らなくなった。
【名前:佐々木光希
性別:男
年齢:16
職業:学生
lv:24
スキル:鑑定偽装Ⅹ P
振動魔法Ⅱ A 9/100(10kHz、1/10EP)
エクストラスキル:天眼 AP (10000EP)
HP: 3985/7950
EP: 427/5428+5000 】
HPは4000以上上がらないみたいで、身体の傷も筋肉はほぼ治ったが、骨は綺麗に折れた処は治ったが複雑に砕けた処はあまり治らなかった。
神経の方も一応繋がってはいるが、今にも切れそうな処から、治る様子がない。
効果が小のポーションでは、この辺りが限界のようだ。
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