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未定
39.無双ゲームは気持ちいい
しおりを挟む高1のゴールデンウィーク
⚫︎⚫︎⚫︎
ナンパ野郎を軽く小突いた帰り道。
近道をしようと廃工場の敷地内を通る。
すると、廃工場の中から騒ぎ声が聞こえて来た。
「まさか、また不良共が何かしているのか?」
この廃工場では偶に不良が屯している事があり、一般の人には避けられている場所となっている。
いつもなら無視して帰るが、今日はナンパ野郎に絡まれてストレスが溜まっている。もしかしたらストレスの発散が出来る状況になっているかもしれないので首を突っ込むに行きたい。
それに、ナンパ野郎共には、また女と間違えられたしな。
「チッ!」
どうせなら、アイツらを簡単には気絶させず、もう少し八つ当たりでもしとけば良かったな。
あと忠告もな。俺と似ているからと言って妹の春に何かしようものなら、俺がどう言う態度を取るかもじっくりと教えてやっといた方が良かったか?
まあ、春もあれでそこそこ強いので、その辺のチンピラ風情に負けるとは思えないけどね。
そんな事よりも今は溜まったストレスを発散出来るかもしれない騒ぎを見て行ってみよう。
騒ぎに介入するかはそれから決める。
廃工場と言っても建物は取り壊されている訳ではなく、見た目は唯の使われなくなった倉庫といった状態だった。
工場内には殆ど何も無い。唯建物が建っているだけで中はかなり広く開けている。
工場の正面に移動して、少し開いてる貨物用の扉から中を覗いてみると。
そこには女が2人にその女の連れらしき男とその他大勢が居た。
男女3人組とその他大勢が対立しているように見える。
まあ、3対多数ではなく、男1人とその他大勢の戦いに発展しそうな雰囲気だった。
「その他大勢は雰囲気的に不良だな」
まだ喧嘩?は始まってないが、どう言った経緯でこんな事になっているかは分からないな。
途切れ途切れに聞こえてくる「女の前でカッコつけてんじゃねー」とか「調子に乗んな」「お前は女を置いていけばいいんだよ」みたいな事を不良たちが罵る様に言っている事から、大体の状況が理解出来たけどな。
連れの男がその不良たちの要求を断った事から、この廃工場に連れてこられ、男はこれからリンチされて女2人はどっかに連れて行かれるって訳ね。
不良側の何人かは既に怪我をしている処を見ると、1回返り討ちに遭い、今度はお仲間を呼んで再度挑戦か。
どうする。助けるべきか?
もし余計なお節介だったら、気不味くなりそうだな。
男は不良数十人相手に余裕そうな態度だ。不良の言葉も腕を組んだままシカトしている。
ここで俺が出しゃばるのは少し様子を見てからでも遅くはなさそうだ。
女2人も、特に連れの男を心配する様子は無く、黙って見守っているようだ。
そんな態度の痺れを切らしたのか、不良共は男に襲い掛かる。
ーーー
「つよ…」
この男の人、無茶苦茶強いんですけど!
ヤバイなコイツ。明らかに戦い慣れている人間の立ち回りだ。
多分俺でも正面から戦ったら負けると思う。
森とか地形も影響する戦いで、ルール無用の何でもありじゃないと俺でも勝負にならないかもしれない。
数十人の不良相手に余裕の立ち回りで次々と相手を制圧していっている。
不良は廃工場にあった角材や鉄パイプなどの武器を使っているが、男は武器相手が慣れている様に間合いを完全に把握していて擦りさえしていない。
その上、相手が武器を持っているのにも拘らず、骨折などの怪我をしないよう手加減もしているみたいだった。
俺なら武器を持ち出した奴には容赦しないんだけどな。確実に相手の骨の2、3本は折りにいく。
「出番無しか」
「え?」
おっと、声を出してしまい、無双している彼の連れに気づかれてしまった。
挨拶でもしておくか。不良と勘違いされて攻撃されても困るからな。
「えっと、こんにちは?」
「「こんにちは?」」
無双している彼には無視されたけど彼女達は挨拶を返してくれた。
まあ、こんな状況にいきなり現れて挨拶をしてきたら、普通警戒されて当たり前だよな。
「ああ、別に怪しい者じゃない。この廃工場から騒ぎ声が聞こえてきたから見に来ただけだよ」
怪しいものじゃないとか、初めて言った。
「そうですか? 危ないので早く帰った方が良いですよ」
彼女の1人がそう言ってくれた、よく見ると2人とも無双している彼に顔がよく似ている。
「あはは、一応危なそうだったら助け入ろうと思ってきたんだけど、まあ大丈夫そうだな。それとあの戦っている彼って君達のお兄さんだったりする?」
「あ、はい。私は美月で、隣のこの子が妹の咲良といいます」
「へ~妹さん達か。俺も名乗った方がいいのかな? 俺の名前は佐々木光希、通りすがりの高校生だな」
「オレ?」「コウキ?」
「あれ? もしかしなくても、また女と間違えられてる?」
「「え⁉︎」す、すみません!」
2人が驚いて頭を下げる。
不良の仲間だと思われなかったのは、見た目が女に見えるからか。
姉の美月さんは普通に対応してくれるけど、妹さんの方は反応はあるけど無口みたいだ。
「気にしてないから頭を上げて」
「はい」
「それにしても君たちのお兄さん強いね」
「兄はウチの道場でも、師範代クラスですから当然ですよ」
「家が道場なのか。そこの師範代なら道理で強い訳だ」
「ん」
妹さん達と会話をしている間に、どうやら戦いは終わったようだ。
不良共は全員地面に転がり、意識を失っている様だった。
相性に彼女らの兄は傷一つ無さそうな様子でこちらに戻ってきた。
「佐々木? どうしてお前がここに居るんだ」
あれ~お兄さんの方は俺の事知っているみたいなんだけど、誰だ?
彼の顔をよく見ると。
「ああ!同じクラスの佐久間! 全然気づかなかったわ。唯のオタクだと思っていたけど、こんなに強かったのかよ」
「唯のオタクって、別にグッズ集めをしている訳ではないんだけどな。それよりどうしてここにいるんだ?」
「ん、俺は買い物の帰り。工場内が少し騒がしかったから何と無く覗いてみたこの状況に遭遇してな」
「そうか。じゃあ、黙っといてくれないか、不良の相手をしていた事」
「ああ、分かっている。俺も偶に不良とかを相手する事もあるからな」
「助かる」
俺と佐久間が同じクラスだと分かって話していると、佐久間の妹が話に入ってきた。
「兄さんのクラスメイトでしたか。兄がいつもお世話になっています」
「さっきまで忘れていたけどね。じゃあ佐久間、俺はもう帰るから」
特にする事も無いし、佐久間達にも予定があるだろう。
「わかった。また学校でな、佐々木」
「ああ。美月さんと咲良さんもな」
「はい、佐々木さん」「ん」
簡単な挨拶を済ませ家に帰る。
ゴールデンウィークが終わり、佐久間と高校で再会した。
今日の出来事がきっかけとなり、それからは運動神経が良い事やアニメ、漫画などの共通点から話が合い、クラスで一緒に過ごすようになった。
まあ、佐久間は道場の事があり、俺は俺で1人遊びをしていたので休日に遊ぶような事は少なかったけどな。
応援ありがとうございます!
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