赤字国家に召喚されたので、まずは売却から始めます──でも断られたので価値を爆上げして帝国に頭を下げさせることにしました【TOP3入り感謝】

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第四部:帝国との第二戦

第七節:公都への帰還

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 自由都市での騒乱が収束して数日後。
 加賀谷たちは、公都へと戻ってきた。
 
 公都の門が見えたとき、加賀谷はようやく深く息を吐いた。
 馬を駆って先導するランカ・バルザは、振り向きもせずに声を張る。

「あと少しだ、気張れ。ミロ、お前、顔色わりぃぞ!」

「だ、大丈夫ですっ……っ、もうすぐ……」

 馬上でぐらつくミロを、ノアがそっと支える。無言のまま、涼しい顔で。

 加賀谷は一行を見渡しながら、ふと空を仰いだ。春の空は白く、穏やかだった。

 門の前では、すでに兵士たちが整列して待っていた。中央に立つのはガロウ。公国兵士長として、堂々と構えている。

「閣下。お戻りを、心より歓迎します」

「……留守を任せて、すまなかった」

「いえ。公都は健在です。閣下が、戻る場所として」

 簡潔なやり取りだが、その裏には確かな信頼があった。

 ランカが馬を下り、加賀谷に顎で合図する。

「……あんたに伝言だ。ヴァルド様からさ」

「聞こう」

「南方の《レーナ連邦》。今なら話が通じる。帝国が牙を剥く前に、囲いを打てってさ。タイミングは、今しかねぇ」

 加賀谷は頷いた。
 帝国の圧力が高まる中、動ける相手とは早期に手を結ぶ必要がある。
 やるべきことは、山ほどある。

 一行が謁見の間に入ると、そこには政務机に埋もれたリィナ・ミティアの姿があった。肩には何枚もの文書が乗りかけており、髪もどこか乱れている。

「……ようやく帰ってきたんですね」

「だいぶ、お疲れのようだな」

「ええ、政務を一週間一人で回したら、肩も首も寿命を迎えそうです」

 ミロが遠慮がちに申し出る。

「あの、もし私でお役に立てることがあれば……」

「ありがとう、でもその前に──まずは全員、風呂! それから、ごはん!」

 ノアが珍しくこくんと頷いた。ガロウは微笑を浮かべる。

 加賀谷はその光景にわずかに口元を緩め、静かに言葉を継いだ。

「……休んでる暇はないかもしれんが、少しだけ骨を休めてくれ。
 こっちは、次の囲い込みを急がなきゃいけない」

 リィナは山のような書類を脇へ追いやり、天を仰いでひとつため息をついた。

「……じゃあ、一時間だけ“お姫様”やっても、許されます?」

「一時間経ったら、閣下として働いてくれ」

「うぐっ」

 そんな軽口の応酬の中、公都に、ほんの少しだけ春のぬくもりが戻っていた。


――同刻・北方 民族連合国家フォルニア・王城会議室
 豪雪を冠した山々に囲まれた北の国。
 その中核をなす三国連合、通称《ノースアライアンス》の首都・フォルニアでは、雪解け前の戦略会議が行われていた。

 「――つまり、帝国は南の交易圏に目を向けており、この北方など後回しだと?」

 「そうだ。あの中央集権国家に、我らのような山岳連邦は攻めづらい。補給も、道も、兵の数も、な」

 「それに、万が一攻めてきたとしても、我々の三万の兵で迎え撃てば……」

 その言葉が終わる前に、ひとりの使者が会議室へと飛び込んだ。

 「し、失礼します! ――帝国軍が、侵攻を開始しました!」

 「なに……? 数は?」

 「……五百。わずか、五百名です」

 重苦しい沈黙が流れた。

 誰もが耳を疑い、そして――鼻で笑った。

 「五百だと? 我らを、なめおったか」

 「そうだな。これは……逆に好機かもしれんな。我が国の正義と誇りを帝都に知らしめてやれ」

 会議の空気はすぐに“迎撃の士気”へと変わった。
 彼らはまだ知らなかった。

 “帝国三将”のひとり、《蒼雷将ヴェルグラード》が率いていることも。

 そして、その背後に立つ異様な青年――異世界から召喚された策士、
 **「サレヴァン」**の名を。

――帝国軍・前線陣地 移動式指揮車両
 丘の上に設けられた簡易戦略室。
 雪を踏みしめ、帝国の将校たちが地図を広げていた。

 「敵の士気は高く、兵力差も十倍以上……ですが、予想通り、分散配置です」

 「よし。では、例の手順通りに。雷撃斥候部隊で通信線を破壊。陽動をかけて、中央突破。遊撃は後衛を掃除していけ」

 そう命令を飛ばす青年は、異国の顔立ちをしていた。

 整った容貌に異様な眼光。まるで冷たい星をそのまま埋め込んだような、感情の読めない瞳。

 帝国が次元転移により召喚した異邦の戦術家。
 その名は――サレヴァン・クローディアス。

 「ここは“点取りゲーム”だ。命は駒、将は点。
 連合を構成する三国の首脳、全員を落とせ。そしたら今日の得点は満点だ」

 言葉の軽さに、重々しい命令が宿っていた。

 将校たちの表情が引き締まる。

 「――全軍、前進開始」

 帝国は覇道を遂げるためにその矛を容赦なく突き付けた。





◆あとがき◆
毎日 夜21時に5話ずつ更新予定です!
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今後も読みやすく、テンポよく、そして楽しい。
そんな物語を目指して更新していきますので、引き続きよろしくお願いいたします!
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