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42話 お試し期間1
しおりを挟む「私は問題ない、それでいこう」
「それで決まりだな。俺の名前は四ノ宮翔だ。君は?」
「私は、如月芽依。めいって呼んで」
「じゃあめいって呼ぶな。俺のことはかけるって呼んでくれ」
「分かった、翔」
「おう、じゃあ行くか。よろしくな芽依」
「うん、よろしく翔」
俺と芽依は、六層へと進み出した。
「お試しって、どこまで?」
歩き出して少し経ち、芽依がそんなことを言ってきた。
「そうだな。俺は今日、10層まで行こうと思っているから、そこまででどうだ?」
「問題ない」
「そうか、芽依は門限とかはあるのか?見た感じ高校生だろ?」
芽依は黒のショートカットで顔はまだ幼さを残してはいるが、かわいいというよりも綺麗と呼べる容姿をしている。けして、見た目でパーティを組もうとしているわけではない。背丈は160㎝くらいだ。見た目の幼さから、高校生くらいだと予想した俺は、芽依にそう聞いた。
「そう、だけど門限はない。うち、放任主義だから。それに親は共働きで夜遅くまで帰ってこない」
「そうか、でも遅くならないようにするか」
「、、ありがとう」
俺の言葉に、芽依が小さくお礼を言ってきた。
「どーも」
そんな話をしていると、目の前にゴブリンが3体出てきた。
「どうする?俺がやるか?」
芽依の実力が分からなかったため、俺は芽依に聞く。
「ううん、翔に私の実力を見せるために、私がやる」
そう言うと、芽依は背に背負う大きな大剣を抜く。
「いく」
短くそう言うと同時に、芽依は低い体勢でゴブリンとの距離を詰める。その速さは、反転を使った時の俺の速さ以上かと思うほどだ。
(あんな大きな大剣を持っているのに、凄い速さだな)
あっという間にゴブリンとの距離を詰めた芽依は、横に大剣を一閃する。
近くに集まっていたゴブリンは、たった一閃したことで全てが胴体と頭を離され、命を散らした。
(芽依の実力は相当のものだな。今の俺よりもステータスは上か?これでまだレベル1とは、末恐ろしいな)
そんなことを考えていると、芽依は魔石を拾って帰ってきた。
「ただいま。私の戦い、どうだった?」
「凄かった。それにその大剣の切れ味も凄まじいな。芽依のSTRも凄いんだろうが」
「ありがとう、私とパーティーを組む気になった?」
「それはまた別だ。それにお試しは十層を攻略するまでと言っただろ?」
「残念」
芽依はそう言って、すこし残念そうな顔をした。それだけ今の戦いは自信があったんだろうか?
「まぁ、今の戦いでパーティーを組む未来がぐっと近づいたのは確かだ」
俺がそう芽依に言うと、芽依は嬉しそうに笑った。俺はそれに一瞬目を惹かれたが、すぐに気を持ち直し、芽依に声をかける。
「次行くぞ」
「うん」
歩き出して少しして、すぐに俺のセンサーに素早く接近してくる魔物が引っかかった。
「この速さ、ウルフか」
センサーに引っかかった方向を見ると、ウルフが3頭こちらに向かって来ていた。芽依の方を見ると、とっくにそちらの方を向いていた。
(心眼の効果か?)
「これは俺に行かせてくれ」
「いいよ」
俺と芽依は短いやり取りで、ウルフ戦は俺に任せてもらえる事になった。
「よし行くぞ。速い敵は、こちらから距離を詰めてやる」
「ッ!」
「ッガル!」
まだ少し遠い場所にいるウルフに向かって、反転(跳)で距離を詰める。後ろの方で息を飲む雰囲気を感じたが、それは思考の外に出す。
急に距離を詰めてきた俺に対して、ウルフ達は戸惑った雰囲気を出し、俺に対して攻撃を仕掛けるために急停止をしようとした。しかし、それなりのスピードを出していたため、すぐに急停止など出来るはずもなく、体勢を崩す。
「速さが命のウルフも、こうなると型なしだな」
体勢を崩したウルフは隙だらけなため、2匹を素早く仕留める。
「ガル!!」
俺が2匹を仕留めている隙に、体勢を整えたウルフは、俺に向かって口を大きく開けることで攻撃を仕掛けてきた。
「1匹しかいないウルフなんて怖くないな」
ウルフの怖いところは、速さと多数のウルフによって行われる連携攻撃だ。体勢を整えたといっても、速さの乗っていない攻撃と、連携でない直線的な攻撃は、俺にとっては全く脅威ではない。
(反転(付与))
俺は、ウルフが攻撃してくる直線的な攻撃の戦場から少し体をずらすと、ウルフは俺の横すれすれを通る、、はずだった。
「キャンッ!」
俺の横を通ろうとしていたウルフは、何かに弾かれたように、横に飛んでいった。
「なんでだ?」
その突然のことに驚いたが、突然弾かれたウルフが受け身を取れるはずもなく、地面に転がったウルフは隙だらけだ。そんなウルフに素早くとどめを刺す。
「、、、あっ!俺、反転(鎧)を使用しているままだった!」
なぜ今のことが起こったのかについて考えていた俺は、その理由が反転(鎧)である事に気がついた。
「反転?」
考え込んでいたため、芽依が近づいてきている事に、俺は気がついていなかった。
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