12 / 33
第1部 目指せゲームオーバー!
第12話 初めての武器屋(後編)
しおりを挟む
リフレの説明は簡潔だったが、それでも「どういうことだよ」とツッコまざるを得なかった。
ケアレ氏は凄腕の鍛冶職人で、彼の造る武器はそのほとんどは、元魔王も認める超一級品。
だが、10パーセントの確率でハズレがいる。
いや、パチンコかよ。
店の看板が【Carele's Smith Shop】ではなく【Carele Smith Shop】になっていたのも、発生率10%の凡ミスってことか。
職人が看板をミスるんじゃあねぇ。
「フッ、情報が古いぞリフレ。それはお前がこの村を出たときの話じゃ、ワシも成長するんじゃよ」
パチンコジジイから、自信満々に訂正が入った。
どうやらもう凡ミス癖は克服したらしい……。
「今では19回に1回に減っておる」
「そもそもミスをなくしてくれねぇかなぁ!!」
あとどうせ19回まで行ったなら20回まで行ってほしい。
ドルーオも困惑しているのか、何とも言えない表情で固まっている。
200年近い年月を生きても、さすがにこんな特殊すぎる職人を見るのは初めてなのだろう。
「安心しろ、元々は金細工の一級工匠だったんじゃ。刀身の出来なら、鍛冶一筋の職人にも負けんわ」
「ごめん、論点そこじゃねぇんだわ」
「確かに、刀身にはわずかな歪みも欠けも見られない。研ぎの具合いを見るに、切れ味も申し分ないだろう」
「だからドルーオも、論点そこじゃないんだって」
短時間にツッコミ連発して疲れたわ。
現状ツッコミどころがないのはリフレくらいか。
「……じゃあドルーオ、オレの武器を選んでもらっていいか?」
「む、そうだったな」
「忘れてたんかい……」
チラリと視線を向けると、少し退いた場所からリフレが微笑みを向けていた。
どちらかと言うと、ドタバタを見守って楽しむタイプのようだ。
隣では天の声が我関せず状態で武器を見ている。
助け船出してくれよ。
「ふむ……カイトはあまり運動能力が高くなさそうだから、近接武器ではなく魔道具の方がいいか……どんなものが好みだ?」
「え?」
不意にドルーオに訊ねられ、答えに詰まる。
まず魔道具が何かを知らないし、どんなものが好みかと訊かれても、少し悩んでしまう。
自分の設定とかマル秘ノートにまとめてる中二病なら、即決できるのかねぇ。
とりあえず天の声に質問する。
「魔道具って多分、魔法の使用をサポートする道具のことだよな?」
「なんで知ってるの……? そうだよ。広い意味では、普通の刀剣も魔道具に入るね」
「そうなの?」
「刀身に魔法を纏わせる《魔纏》って技があってね」
「へー。まぁ近接とかできる気しないからナシとして、魔道具には種類とかあるの?」
「杖の形した杖型と、手に直接装備する手袋型と、弓矢とかスリングショットの形した弓矢型の3つ。まぁこの3種類で性能に違いとかないけど」
「ないのかよ」
「どれも魔法の射程距離と狙いやすさを補助してくれるけど、そこに差とかないよ」
「あれよ」
あれこれ考えた末に、オレは答えを出した。
「……無くしたり盗まれたりするの怖いから、そういうのがないといいなー」
やれ変身に必要なアイテムを奪われた魔法少女だの、杖を強奪された魔法使いだの、そういった類をオレは何度か見てきた。
フィクションなら大抵その後も何やかんやあって上手いこと展開が進むことが多いが……悲しいかな、いざ自分が魔道具を紛失しても上手く立ち回れるという自信はない。
「ふむ、であれば……これだな」
そんな言葉と共に、オレの前に白銀の籠手がずいっと差し出された。
さっき天の声が言っていた手袋型の魔道具の1つか。
手の甲の部分に、魔法の発射口と思しき穴が空いている。
「これなら紛失や盗難の心配はない。手に持って狙う必要もないから、魔道具なしで魔法を使っている今の感覚そのままで使えるだろう」
流れるような説明に思わず聞き入っていると、ケアレ氏の声が耳に入ってきた。
「ほう、お主は見る目があるな。それはワシがこれまでに造った武器の中でも、2番目の出来のものじゃ」
「2番目?」
「1番はどんな武器なんだ?」
オレとドルーオがそう訊ねた瞬間、ケアレ氏の目が輝いた。
いや、目と言うか顔がキラキラしてる。
「ワシの職人人生で最高の出来を誇るのは、1月ほど前に造った《魔剣ストリーク》じゃ。雷の魔力を宿した、尋常でない硬さの狼の爪を……」
「ド、ドルーオさん、天の声さん! お2人も何か、予備の武器とか買った方がいいんじゃないですか!? これからの旅で何があるか分かりませんし! その方がいいですよ!」
いきなりリフレが大声で申し出た。
突然の奇行に困惑しつつも、2人はすぐに応じた。
「あ、あぁ……確かに、不測の事態に備えておいて損はないな……」
「そ、そうだね……」
「そうですよ!」
驚いているオレ達に、リフレはうんざりしたような表情で耳打ちした。
「ケアレさん、魔剣ストリークの話になると長いんです……」
「じゃあ、あそこで止めて正解だったか……」
「ありがとなリフレ……」
しかしオレは、内心ではストリークなる魔剣が気になっていた。
魔剣などロマンの塊だ、当然気になる。
だが、すぐにオレは知ることになる。
それがどんな魔剣か、その身をもって、嫌というほど。
その持ち主とオレは、同じ場所を目指しているのだから。
(つづく)
ケアレ氏は凄腕の鍛冶職人で、彼の造る武器はそのほとんどは、元魔王も認める超一級品。
だが、10パーセントの確率でハズレがいる。
いや、パチンコかよ。
店の看板が【Carele's Smith Shop】ではなく【Carele Smith Shop】になっていたのも、発生率10%の凡ミスってことか。
職人が看板をミスるんじゃあねぇ。
「フッ、情報が古いぞリフレ。それはお前がこの村を出たときの話じゃ、ワシも成長するんじゃよ」
パチンコジジイから、自信満々に訂正が入った。
どうやらもう凡ミス癖は克服したらしい……。
「今では19回に1回に減っておる」
「そもそもミスをなくしてくれねぇかなぁ!!」
あとどうせ19回まで行ったなら20回まで行ってほしい。
ドルーオも困惑しているのか、何とも言えない表情で固まっている。
200年近い年月を生きても、さすがにこんな特殊すぎる職人を見るのは初めてなのだろう。
「安心しろ、元々は金細工の一級工匠だったんじゃ。刀身の出来なら、鍛冶一筋の職人にも負けんわ」
「ごめん、論点そこじゃねぇんだわ」
「確かに、刀身にはわずかな歪みも欠けも見られない。研ぎの具合いを見るに、切れ味も申し分ないだろう」
「だからドルーオも、論点そこじゃないんだって」
短時間にツッコミ連発して疲れたわ。
現状ツッコミどころがないのはリフレくらいか。
「……じゃあドルーオ、オレの武器を選んでもらっていいか?」
「む、そうだったな」
「忘れてたんかい……」
チラリと視線を向けると、少し退いた場所からリフレが微笑みを向けていた。
どちらかと言うと、ドタバタを見守って楽しむタイプのようだ。
隣では天の声が我関せず状態で武器を見ている。
助け船出してくれよ。
「ふむ……カイトはあまり運動能力が高くなさそうだから、近接武器ではなく魔道具の方がいいか……どんなものが好みだ?」
「え?」
不意にドルーオに訊ねられ、答えに詰まる。
まず魔道具が何かを知らないし、どんなものが好みかと訊かれても、少し悩んでしまう。
自分の設定とかマル秘ノートにまとめてる中二病なら、即決できるのかねぇ。
とりあえず天の声に質問する。
「魔道具って多分、魔法の使用をサポートする道具のことだよな?」
「なんで知ってるの……? そうだよ。広い意味では、普通の刀剣も魔道具に入るね」
「そうなの?」
「刀身に魔法を纏わせる《魔纏》って技があってね」
「へー。まぁ近接とかできる気しないからナシとして、魔道具には種類とかあるの?」
「杖の形した杖型と、手に直接装備する手袋型と、弓矢とかスリングショットの形した弓矢型の3つ。まぁこの3種類で性能に違いとかないけど」
「ないのかよ」
「どれも魔法の射程距離と狙いやすさを補助してくれるけど、そこに差とかないよ」
「あれよ」
あれこれ考えた末に、オレは答えを出した。
「……無くしたり盗まれたりするの怖いから、そういうのがないといいなー」
やれ変身に必要なアイテムを奪われた魔法少女だの、杖を強奪された魔法使いだの、そういった類をオレは何度か見てきた。
フィクションなら大抵その後も何やかんやあって上手いこと展開が進むことが多いが……悲しいかな、いざ自分が魔道具を紛失しても上手く立ち回れるという自信はない。
「ふむ、であれば……これだな」
そんな言葉と共に、オレの前に白銀の籠手がずいっと差し出された。
さっき天の声が言っていた手袋型の魔道具の1つか。
手の甲の部分に、魔法の発射口と思しき穴が空いている。
「これなら紛失や盗難の心配はない。手に持って狙う必要もないから、魔道具なしで魔法を使っている今の感覚そのままで使えるだろう」
流れるような説明に思わず聞き入っていると、ケアレ氏の声が耳に入ってきた。
「ほう、お主は見る目があるな。それはワシがこれまでに造った武器の中でも、2番目の出来のものじゃ」
「2番目?」
「1番はどんな武器なんだ?」
オレとドルーオがそう訊ねた瞬間、ケアレ氏の目が輝いた。
いや、目と言うか顔がキラキラしてる。
「ワシの職人人生で最高の出来を誇るのは、1月ほど前に造った《魔剣ストリーク》じゃ。雷の魔力を宿した、尋常でない硬さの狼の爪を……」
「ド、ドルーオさん、天の声さん! お2人も何か、予備の武器とか買った方がいいんじゃないですか!? これからの旅で何があるか分かりませんし! その方がいいですよ!」
いきなりリフレが大声で申し出た。
突然の奇行に困惑しつつも、2人はすぐに応じた。
「あ、あぁ……確かに、不測の事態に備えておいて損はないな……」
「そ、そうだね……」
「そうですよ!」
驚いているオレ達に、リフレはうんざりしたような表情で耳打ちした。
「ケアレさん、魔剣ストリークの話になると長いんです……」
「じゃあ、あそこで止めて正解だったか……」
「ありがとなリフレ……」
しかしオレは、内心ではストリークなる魔剣が気になっていた。
魔剣などロマンの塊だ、当然気になる。
だが、すぐにオレは知ることになる。
それがどんな魔剣か、その身をもって、嫌というほど。
その持ち主とオレは、同じ場所を目指しているのだから。
(つづく)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!
克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。
アルファポリスオンリー
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる