転生したけど戻りたい ~アニメ観たいから魔王に殺されに行きます~

マイナス人間

文字の大きさ
15 / 33
第1部 目指せゲームオーバー!

第15話 新キャラとの出会い

しおりを挟む
 オレが異世界に転生して、4日目の朝を迎えたこの日。

「うぼぁぁああ……!!」

 オレは、そんなうめごえを上げることしかできていなかった。
 理由は簡単、元魔王ドルーオ直々のトレーニングの成果だ。
 いわく、今のオレでは、たとえ《超駆エクシード》で強化したところで話にならないのだという。
 近接の心得以前に、そもそもオレの素の身体能力が低すぎるのが問題だとか。
 そこでドルーオは、2日間に渡ってオレにトレーニングをつけた。
 移動を徒歩から、荷物を背負ってのうさぎ跳びやバーピージャンプや匍匐ほふく前進ぜんしんに変えるという、至ってシンプルなトレーニングだったが、陰キャオタクにとっては十分すぎるスパルタだった。
 そして、オレの全身はしっかり筋肉痛になった。

「えっと……とりあえず朝ご飯です」

 いつくばりながら、オレはリフレが苦笑混じりに差し出したスープを受け取ろうとした。
 しかし、オレの腕は軽く痙攣けいれんしただけで動かない。
 器を持っても即落下だ。

「すまないリフレ、器を貸してくれ」

 器を受け取ると、ドルーオは中から草蜥蜴グラスリザードの肉を取り出し、スープが残った器をオレに近付けた。
 途端、昨日までの光景がよみがる。

「やだ! その新手の拷問ごうもんやだ!」
「拷問ではない。そもそも今日トレーニングをやるやらないとは別に、そのままでは満足に動けないだろう」
「そんなレベルの筋トレやらしたのどこの誰だよ!?」
「お前の目の前にいる俺だ」

 できる範囲のフルパワーで駄々をこねるが、ドルーオはまったく意に介さず、カイトの頭をガシッとつかんだ。
 1ヶ月前まで魔王だった男のアイアンクローに、頭をがっちり固定される。

「イダダダダダ!!」

 悲鳴を上げるオレの口の中に、ドルーオはリフレ特製のスープを流し込んだ。
 口いっぱいに草の風味が広がり、同時に全身から痛みが消えた。
 草の魔力のいやし効果だ。

「よし、これで動けるな」

 この2日間、ドルーオは限界を迎えたオレの体を草蜥蜴グラスリザードのスープで回復させ、そこから移動を始めていた。
 めちゃくちゃ強引なトレーニングだ。
 ちなみにオレはこのスープを、心の中で超青汁と呼んでいる。
 オレの恨めし気な視線を、しかしドルーオは特に意に介したふうもなく、

「少々駆け足になってしまったが、この2日でそれなりに鍛えることができた。今日からは移動のペースを上げてもいいだろう」

 そう言って、美味そうに超青汁を食べている。
 見れば、天の声ナレーターも超青汁を食べて満足げだ。
 草の味しかしない肉とスープのどの辺が美味しいのか疑問でならない。
 だが──味の是非ぜひは別として──料理ができる者がリフレしかいないため、受け入れるもとい諦める他ない。
 ため息を吐いて、スープからサルベージされた肉を口に運ぶ。
 そのとき、ドルーオと天の声ナレーターがピタリと動きを止めた。
 何かに反応したようにサッと顔を上げ、遠くに視線を向ける。

「……? 2人共、どうし……あ」

 少し遅れて、オレもそれに気付いた。

「雷の魔力……ちょっと遠いか?」

 魔力にかなり慣れた今、オレはドルーオ達ほどの高感度では無理だが、一般人と同程度には魔力を感知できる。
 一般人のリフレもオレと同時に気付いたらしく、同じ方向に視線を向ける。

「一瞬でしたけど、かなり強かったですね……魔獣でしょうか?」

 そう呟くが、ドルーオは首を横に振った。

「いや、魔獣なら魔力を常に放出しっぱなしのはずだ。一瞬だけということは人族だろうが……」
「それにしては魔力の出力がすごかったね……」

 そこで口を閉じると、ドルーオと天の声ナレーターは一気にスープの残りを平らげた。
 オレとリフレも、あわてて朝食を片付ける。
 手早く支度したくを終えると、オレ達はドルーオを先頭に、離れた空間に薄く残る魔力を追った。

 ◇

 移動を始めて数分後、それを見つけた。
 長い茶髪をポニーテールのようにまとめた人物が1人、こちらに背を向けて歩いていた。
 金糸で刺繍ししゅうが施された黒いロングコートと、赤紫色に輝く大剣が目をく。
 この距離まで来ればオレにも感じれる。
 さっきのと同じ魔力を、あの剣が薄くまとっている。
 魔獣かと疑うほどの魔力を放つ剣──恐らくあれは魔剣だ。
 そのとき、ドルーオが「やはりか」と呟いた。
 納得したような表情で、離れた場所の人影を見つめる。

「魔剣の使い手なのはいいが、問題は先ほどの魔力の出力だ。一瞬だけとは言え、あれほどの出力の魔力に、普通の人族は耐えられない。言い換えれば、ヤツは普通の人族ではないということだ」
「普通の人族じゃない……」

 物々しいフレーズを思わず復唱すると、ドルーオは小さくうなずいて続けた。

「ヤツが普通の人族じゃないと仮定して、考えられる可能性は2つだが……魔力の純度からして、片方は除外していいだろう」
「除外した方すげぇ気になるけど……もう1つの方はなんだよ?」

 天の声ナレーターだけはドルーオと同じ考えらしく、何やら頷いている。
 分かっていないオレとリフレに向けて、

「こちらの可能性もまれではあるのだが……」

 そう前置きしてから、ドルーオは予想を口にした。

「あの男が、勇者であるという可能性だ」


(つづく)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...