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第1部 目指せゲームオーバー!
第21話 ファンタジーウサギ
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えーと……何これ。
困惑しているのはオレだけではない。
天の声やリフレも唖然としている。
一見いつも通りなドルーオも、少しだけ瞠目しているように見える。
そのとき、ナッシュが魔剣の柄を握り直しつつ訊ねた。
「なんだお前はァ?」
柄の悪い訊き方だが、ウサギは気にした風もなく明るく答えた。
「おれ? おれは疾駆兎のクト!」
「……」
ナッシュが無言で顔をしかめる。
だが、ぶっちゃけオレも同じ気持ちだ。
身長140センチ強で服着た二足歩行のウサギが人語を介して名乗ってる……何これ。
人間で言えば11歳の少年くらいの身長。ウサギにしては有り得ないサイズだ。
しかし見た目は──黒ジャケット着用を除けば──しっかりウサギという。
「天の声、ウサギってなんだっけ?」
「生物学は専門外だから訊かれても困る」
「生物学の次元じゃねぇだろ」
いや、仮に生物学の教授や学者がこの場にいたら、逆に卒倒するだろ。
これまでの常識が音を立てて崩れていくショックに耐えられないはずだ。
そのとき、ウサギ改めクトが声を上げた。
「お前のデカい剣! それだろ、さっきおれを追っかけてきたの!」
そう言って、クトはナッシュの右手に握られた大剣を、持っていた枝で指した。
……枝?
オレが首を傾げると、今度はリフレが「あっ」と声を出した。
「焼き魚の串に使った枝……」
「こいつが魚パクってったのか……」
よく見れば、クト口許が少しテカテカしている。恐らく魚の脂だろう。
ウサギは悪びれる様子もなく、美味そうに口許の脂を舐め取ると、ナッシュに向けて言った。
「なぁ、その剣もっかいビューンってやってくれよ! 追いかけっこしようぜ! よーいドーン!」
そう言うや、クトはもう既に駆け出していた。
よーいドンと言いつつ、用意させる気ゼロすぎる。
ナッシュのこめかみがピキッとなったのを、オレは見逃さなかった。
癇に障ったらしい。
「そうかよォ、ならお望み通りィ……躾けてやんよォ!!」
額に青筋を浮かべ、ナッシュが叫んだ。
走るクトを追うように、魔剣が発射される。
だが──
「うっひゃー! やっぱ速い! すっげぇすげぇ!!」
狙われているクトは、楽しそうに歓声を上げて走り回っている。
「疾駆兎って、あんな速いの……?」
「ううん、あんな速いの見たことない……」
クトは、よーいドンと言ってから魔剣が放たれるまでの5秒ほどで、400メートル近くは走っていた。
しかも「ひゃっほーう!」と歓声を上げて飛び跳ねている。絶対本気じゃない。
身長140センチ強で服着て人語を介する時速300キロの二足歩行ウサギ……何これ。
自分で言っていて理解が追い付かん。
「体から風魔力感じるし、普通の疾駆兎が残存魔力吸って魔獣化したんじゃない?」
「なら足速いだけでいいじゃん、人語と服と二足歩行どっから来たんだよ」
つーかどんな魔法の残りカス吸ったらあんなになるんだよ。
ため息を吐いて、オレは隣を見た。
あんな意味分からんもの見て、いつも涼しい顔のドルーオのリアクションが気になった。
──厳しい表情で、何かを呟いていた。
「まさか……そんなはずは……」
「ドルーオ? どうした?」
「少し気になることがあってな……」
そこでドルーオはまた黙る。
視線を戻すと、クトのフワフワの毛が、いつの間にかブワーっとなっていた。
あー、ストリークの雷を浴びて、静電気で毛が引っ張り上げられたのか。
ものすごく不快そうな顔をしている。
対するナッシュは、満足げに笑っている。
途中から、わざと雷だけをカス当てして弄んでいるらしい。
あいつ性格悪いな。
「んにゃろー、ギリギリ狙いやがって! カイヌにもらった服破けるじゃん! ……ああぁぁーっ!!」
何かを思い出したのか、クトが大声を上げた。
ビクッとしたオレ達に、叫んだ勢いそのままに訊ねてきた。
「なぁ、お前らカイヌ知らない!?」
「知らねぇよォ、誰だそいつゥ?」
「おれの飼い主! あのオッサンみたく髪と肌が白いの! どこ行ったか探してんだよ!」
あのオッサンなるドルーオが目を丸くした。
そのまま目を伏したが、何を考えているか、オレには見当もつかない。
「じゃあクトは、飼い主を探して1人……じゃない、1羽で旅してるの?」
沈黙するドルーオに代わって、天の声がつっかえながらまとめた。
そうか、ウサギだからコイツの単位は1羽か。
「ナッシュ、少しいいか?」
そんな声が聞こえた。
ドルーオがナッシュに何かを言ってる。
なんだろ、気になるな。
「クトをこのパーティーに入れてほしい」
「あァ?」
ナッシュが声を上げると同時に、オレも思わず息を呑んだ。
あまりに予想外な上に、何より意図が解らない。
だが、ドルーオの表情は真剣だ。有無を言わさない気迫がある。
そのまま見守るオレの視線の先で、2人は睨み合うように視線をぶつけ合った。
数秒後、ナッシュがため息を吐いた。
「パーティーにメス3人とかァ、あんま聞かねぇぞォ」
面倒そうな表情で吐き捨てているが、了承したようだ。
聞き耳を立ててたのはオレだけじゃなかったらしい。
リフレと天の声が、クトに「よろしくね」と言っている。
新しい仲間が加わっ……ん?
「お前の髪についてる銀色の葉っぱキラキラだな、おれにくれよ!」
「葉っぱじゃなくて髪留めだよ。大切な物だから、あげれないな」
クトとリフレと談笑している。
うん、今おれって言ったな。
一人称おれだし、喋り方も男っぽいし、うん、えーっと。
「あいつメスなの!?」
衝撃を受けるオレに、ドルーオとナッシュがダブルで解説してくれた。
「疾駆兎のオスは耳が長い。走り回って耳を美しくなびかせて、メスに求愛するんだ」
「オスの耳と体長は大体同じ長さだがァ、あいつは体と耳とで長さ違うだろォ」
マジか……。
軽くショックを受けるオレ。
だが、オレ以上にショックを受けているやつがいた。
「え!? おれメスなのか!?」
……いや、えぇ……
(つづく)
困惑しているのはオレだけではない。
天の声やリフレも唖然としている。
一見いつも通りなドルーオも、少しだけ瞠目しているように見える。
そのとき、ナッシュが魔剣の柄を握り直しつつ訊ねた。
「なんだお前はァ?」
柄の悪い訊き方だが、ウサギは気にした風もなく明るく答えた。
「おれ? おれは疾駆兎のクト!」
「……」
ナッシュが無言で顔をしかめる。
だが、ぶっちゃけオレも同じ気持ちだ。
身長140センチ強で服着た二足歩行のウサギが人語を介して名乗ってる……何これ。
人間で言えば11歳の少年くらいの身長。ウサギにしては有り得ないサイズだ。
しかし見た目は──黒ジャケット着用を除けば──しっかりウサギという。
「天の声、ウサギってなんだっけ?」
「生物学は専門外だから訊かれても困る」
「生物学の次元じゃねぇだろ」
いや、仮に生物学の教授や学者がこの場にいたら、逆に卒倒するだろ。
これまでの常識が音を立てて崩れていくショックに耐えられないはずだ。
そのとき、ウサギ改めクトが声を上げた。
「お前のデカい剣! それだろ、さっきおれを追っかけてきたの!」
そう言って、クトはナッシュの右手に握られた大剣を、持っていた枝で指した。
……枝?
オレが首を傾げると、今度はリフレが「あっ」と声を出した。
「焼き魚の串に使った枝……」
「こいつが魚パクってったのか……」
よく見れば、クト口許が少しテカテカしている。恐らく魚の脂だろう。
ウサギは悪びれる様子もなく、美味そうに口許の脂を舐め取ると、ナッシュに向けて言った。
「なぁ、その剣もっかいビューンってやってくれよ! 追いかけっこしようぜ! よーいドーン!」
そう言うや、クトはもう既に駆け出していた。
よーいドンと言いつつ、用意させる気ゼロすぎる。
ナッシュのこめかみがピキッとなったのを、オレは見逃さなかった。
癇に障ったらしい。
「そうかよォ、ならお望み通りィ……躾けてやんよォ!!」
額に青筋を浮かべ、ナッシュが叫んだ。
走るクトを追うように、魔剣が発射される。
だが──
「うっひゃー! やっぱ速い! すっげぇすげぇ!!」
狙われているクトは、楽しそうに歓声を上げて走り回っている。
「疾駆兎って、あんな速いの……?」
「ううん、あんな速いの見たことない……」
クトは、よーいドンと言ってから魔剣が放たれるまでの5秒ほどで、400メートル近くは走っていた。
しかも「ひゃっほーう!」と歓声を上げて飛び跳ねている。絶対本気じゃない。
身長140センチ強で服着て人語を介する時速300キロの二足歩行ウサギ……何これ。
自分で言っていて理解が追い付かん。
「体から風魔力感じるし、普通の疾駆兎が残存魔力吸って魔獣化したんじゃない?」
「なら足速いだけでいいじゃん、人語と服と二足歩行どっから来たんだよ」
つーかどんな魔法の残りカス吸ったらあんなになるんだよ。
ため息を吐いて、オレは隣を見た。
あんな意味分からんもの見て、いつも涼しい顔のドルーオのリアクションが気になった。
──厳しい表情で、何かを呟いていた。
「まさか……そんなはずは……」
「ドルーオ? どうした?」
「少し気になることがあってな……」
そこでドルーオはまた黙る。
視線を戻すと、クトのフワフワの毛が、いつの間にかブワーっとなっていた。
あー、ストリークの雷を浴びて、静電気で毛が引っ張り上げられたのか。
ものすごく不快そうな顔をしている。
対するナッシュは、満足げに笑っている。
途中から、わざと雷だけをカス当てして弄んでいるらしい。
あいつ性格悪いな。
「んにゃろー、ギリギリ狙いやがって! カイヌにもらった服破けるじゃん! ……ああぁぁーっ!!」
何かを思い出したのか、クトが大声を上げた。
ビクッとしたオレ達に、叫んだ勢いそのままに訊ねてきた。
「なぁ、お前らカイヌ知らない!?」
「知らねぇよォ、誰だそいつゥ?」
「おれの飼い主! あのオッサンみたく髪と肌が白いの! どこ行ったか探してんだよ!」
あのオッサンなるドルーオが目を丸くした。
そのまま目を伏したが、何を考えているか、オレには見当もつかない。
「じゃあクトは、飼い主を探して1人……じゃない、1羽で旅してるの?」
沈黙するドルーオに代わって、天の声がつっかえながらまとめた。
そうか、ウサギだからコイツの単位は1羽か。
「ナッシュ、少しいいか?」
そんな声が聞こえた。
ドルーオがナッシュに何かを言ってる。
なんだろ、気になるな。
「クトをこのパーティーに入れてほしい」
「あァ?」
ナッシュが声を上げると同時に、オレも思わず息を呑んだ。
あまりに予想外な上に、何より意図が解らない。
だが、ドルーオの表情は真剣だ。有無を言わさない気迫がある。
そのまま見守るオレの視線の先で、2人は睨み合うように視線をぶつけ合った。
数秒後、ナッシュがため息を吐いた。
「パーティーにメス3人とかァ、あんま聞かねぇぞォ」
面倒そうな表情で吐き捨てているが、了承したようだ。
聞き耳を立ててたのはオレだけじゃなかったらしい。
リフレと天の声が、クトに「よろしくね」と言っている。
新しい仲間が加わっ……ん?
「お前の髪についてる銀色の葉っぱキラキラだな、おれにくれよ!」
「葉っぱじゃなくて髪留めだよ。大切な物だから、あげれないな」
クトとリフレと談笑している。
うん、今おれって言ったな。
一人称おれだし、喋り方も男っぽいし、うん、えーっと。
「あいつメスなの!?」
衝撃を受けるオレに、ドルーオとナッシュがダブルで解説してくれた。
「疾駆兎のオスは耳が長い。走り回って耳を美しくなびかせて、メスに求愛するんだ」
「オスの耳と体長は大体同じ長さだがァ、あいつは体と耳とで長さ違うだろォ」
マジか……。
軽くショックを受けるオレ。
だが、オレ以上にショックを受けているやつがいた。
「え!? おれメスなのか!?」
……いや、えぇ……
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