Smile

アオ

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1章

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 久しぶりのあの夢を見た。
 そう、私を何度も何度もよぶ。
 その声に聞き覚えがあるような・・・・・。
 と考えたら目が覚めた。まるで考えることをやめさせるかのように。


 朝から雲ひとつ無い快晴だった。
 昨日の出来事が嘘のようだ。
 私の中ではまだ引きずってるけど
 それを人に気づかれないように今日を乗り越えなきゃ。
 暗い顔をみんなに披露するわけにはいかない。
 いつもよりも早くに起きた私は洗面を済ませるとジャージに着替え
 武道場に向かった。
 悩むことがあるときは竹刀を振ってたほうが良い。
 体を動かしたほうがやらなきゃいけないことに集中できる。
 ということでこんな日だけど稽古場に来ていた。
 道場と違って靴を履いたままだし、
 神棚とかないから礼をするときに変な感じだけど
 毎日のように練習させてもらってるからだいぶ馴染んできたし、
 ここの騎士団の人たちも私と手合わせしてくれる人も増えた。
 まだ誰もきてないこの場所を掃除して一人で素振りをしてるとロンが来た。
 ロンがここに来るのは珍しい。
 「どうしたの?」
 「それはオレのセリフ。こんな朝早くから稽古してるなんて。
 足のほうは大丈夫?」

  あ。忘れてた。

  思い出したらズキズキ・・・・・と痛み出す。
 「ちょっと見せて・・・・。あ~。やっぱり腫れてる。
 まったく、何やってんだよ。こんなに腫れてるのに練習するヤツがいるか」
 コツンとおでこを軽く指で叩かれた。
 「今日、大丈夫か?」
 「大丈夫、大丈夫、このくらい。別に骨折してるわけでもないんだから。
 それに試合とか出るわけじゃないし・・・・・。
 今日は少しだけ歩いたり座ったりお辞儀したり手を振ったりの繰り返しでしょ?
 そのくらい大丈夫よ。」

  

 と言ったものの正直痛みがひどい。
 きっと重い衣装を着てるからかな。重力をなめてた。
 ドレスはそれはそれは綺麗なものだった。
 色は薄い白藍色で首元は広く開けてあるけど腕にパフが入ってるからとても可愛らしい作りで
 全体にレースをふんだんに使ってところどころに小さな宝石が散りばめられ裾が広がっていた。
 腰には可愛らしい大きなリボンが後ろに流れててウエストが細く見えるデザインになってる。
 あまりにも豪華でいや、こんなの着るの無理でしょ、と拒否しそうになったら
 ニコが笑顔で怒った。これは私のためにデザインされたもので私が似合わないわけがないと。
 ドレスを着るってことに抵抗があるのがなかなか伝わらなかった。
 きっとこっちの世界ではドレスを着ることが当たり前だから。
 この国の人たちならきても似合うと思うのよ。だけど、日本人の私には到底似合うと思えないし、
 着こなすなんて無理無理。
 ううん。染まりたくないね。
 髪もいつもは下ろしてるか一つに結んでるかなのに
 綺麗に編みこみしアップにされた。普段、ポニーテールかお団子頭しかしてないから
 これまた恥ずかしい。生花で飾りもつけられ自分の髪が自分のじゃないみたい。
 化粧も嫌がったけど拒否権はなし。女子高生だけど、化粧嫌いなんだよ、私。
 なのにもうニコの睨みを見たら何も言えなかった・・・・・。
 今日ぐらいいうことをきくか。はぁ。
 数時間かけて完成した私をニコは目をキラキラさせながら
 「今までで一番の出来よ!!!」
 と興奮してたけど私にはさっぱりわからず。
 鏡を借りようとしても時間がなくってバタバタで儀式に入ってしまった。

  
 大きな扉の向こうに赤いじゅうたんがひいてありその上をゆっくりと歩く。
 大きな祭壇の前にはロンがいた。
 知ってる人の顔を見るとほっとする。
 ちょっと表情を緩めロンを見つめた。
 ロンもしばらく私を見つめた。
 お互い見つめ合って固まってしまう。
 ロンてやっぱり王子様だなって。(王様です。)
 いつもは騎士みたいな服装してるのに今日は白い下まで広がるマントを羽織ってて
 中には全てが黒で装飾がされてるけど豪華なのが遠目でも見てわかる。
 どんな格好してもいい男はいい男だけど、
 やっぱり正装が一番似合う。似合いすぎる。
 これが彼の世界なんだな・・・・・・。

 最初に会ったきり挨拶程度でしか会ったことがないロールが神父さんみたいな服を着て立って居た。
 二人揃ったらお互い向き合うように立ち、
 彼に誓いの言葉をささげ彼も私に対し誓いの言葉をささげる。
 ようはお互い助け合って良い国にしましょうってこと。
 誓いの言葉が終わると国のお偉いさんが列をつくりその中を歩く。
 ひとりひとりに挨拶をし握手していく。
 これがなかなか終わらない。
 みんな何かしら話が長くなるから。
 あんまり長くなるとロンが助けてくれるから助かったけど。
 やっと最後の一人と話を終え、ロンとともに廊下にでる。
 扉が閉まった瞬間、ため息が出てしまった。
 「疲れたか、大丈夫か?」
 ロンはいつもと変わらない涼しい表情。やっぱ、日ごろから国王やってると
 慣れっこなんだよな。
 恨めしい表情してたらしく、
 「オレを恨んでもしょうがないぞ。テラスまで歩けるか?」
 「歩かないとお姫様抱っこされるから歩く。」
 とヤツより早足で歩いていった。
 「よくわかってるな。」
 と後ろから聞こえてきたので睨んでやった。


 ロンのエスコートのもとテラスに出る。
 大歓声が上がる。
 下には一般開放されてたため、国民で埋めつくされていた。
 あまりの人の多さに緊張が走る。
 わからないように小さく深呼吸する。
 ロンは私の腰を支えてくれ、暖かい手の感触が少しずつ緊張をほぐしてくれた。
 ふと兵隊に抑えられてる子供が目に入った。
 町に出たときのチビちゃんだ。
 あわててテラスから下に繋がってる階段を降りて兵隊を止める。
 「こんな子供に何が出来るというの。離してあげて」
 彼らは私がまさか下まで降りてくると思わなかったらしくびっくりしていた。
 国民も急な私の出現にびっくりしあんなに大きな歓声が上がってたのにもかかわらず
 しんっと静かになった。
 子供の前にしゃがみ込み目線を合わせて話しかけた。
 「ボク、大丈夫?」
 「うん、大丈夫。予言のショウジョはおねいちゃんだったんだね。あとでおかあさんに聞いて
 びっくりしたよ。
 ボク、うれしくってうれしくっておねいちゃんにお花の冠作ってきたんだ」
 キラキラの笑顔で私に花冠を差し出した。
 「ありがとう、すごいね。ボク一人でつくったの?」
 「ううん、ママに教えてもらったの。でも、難しいところ意外はボクがつくったんだよ」
 「そっかー。ありがとう。大事にするね」
 「うん、ボク、頭にのせてあげる」
 男の子が一生懸命に背伸びして頭にのせてくれた。
 子供を抱っこしてテラスに戻った。
 「子供達がいつまでも笑顔が耐えないように私も努力します。
 皆さんもどうか私に力をかしてください」
 あんなに何を言うのか考えてたのに結局これだけになった。
 だけどみんな大歓声で答えてくれた。
 横を見るとロンも珍しく笑顔になっている。
 この笑顔をずっとずっと守りたいと心から思った。

  
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