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第1章 【side 敦貴】
46.言えなかった想い
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つい、皇祐から身体を離してしまった。触れていては、いけないような気がして。
「なにが違うの?」
皇祐は黙っている。漂う重苦しい空気が、ますます敦貴を不安にさせた。
「ねえ、コウちゃん、何か言ってよ」
心臓が早鐘を打ち、息ができないほど苦しくなった。この先を聞いていいのか、だけど、聞かないと前には進めない。
皇祐がぼそりと呟くように声を出した。
「敦貴のこと……友だちだと思えなかった」
胸に苦しい波が打ち寄せた。
自分のことをあまり話さない皇祐の本音が聞けるのは貴重だ。
だけど、刺されているような鋭い痛みが身体中に走って呼吸ができない。
「……やっぱり、オレに合わせてただけ? 本当は一緒に……いたくなかったの?」
皇祐の話を最後まで聞いてから話をしよう。そう思っていたのに、気が焦って先に口から言葉が出ていた。
敦貴の話す声は震えていてどうしようもならないし、皇祐の方は口を閉ざして顔を俯かせている。
「コウちゃん……」
迫りくる不安に押しつぶされそうで、身体が震えてくる。
「ねえ、こっち見て……」
皇祐の両腕を掴んで顔を覗き込もうとすれば、彼は小さな声で言った。
「好きだった、敦貴のことがずっと……」
敦貴から顔を背けていたからわからなかったが、皇祐が泣いているようにも見える。
学生の頃からきちんとしている皇祐は、正反対の敦貴と仲良くしてくれていた。
嫌われてはいないとは思っていたが、好意を向けてくれているなんて想像がつかなかった。
「言ってくれたら良かったのに」
好かれるのは嬉しい。しかも相手は皇祐だ。重く受け止めていなかった敦貴は、軽い調子で言った。
だけど、皇祐は深刻そうな顔をして訴えてくる。
「言えるわけない! ずっと友だちでいてくれる敦貴を、男を好きだなんて気持ち悪いだろ? 嫌われたくなかった。だから留学する時に、この想いは全て忘れて敦貴には二度と会わないって決めたんだ。それなのに――」
皇祐がずっと敦貴を拒絶するような態度をしていたのは、それが理由なのだろう。
自分の気持ちを必死に抑えて我慢していた。だけど、その皇祐を今の自分は救えることができる。そう確信していた。
「なにが違うの?」
皇祐は黙っている。漂う重苦しい空気が、ますます敦貴を不安にさせた。
「ねえ、コウちゃん、何か言ってよ」
心臓が早鐘を打ち、息ができないほど苦しくなった。この先を聞いていいのか、だけど、聞かないと前には進めない。
皇祐がぼそりと呟くように声を出した。
「敦貴のこと……友だちだと思えなかった」
胸に苦しい波が打ち寄せた。
自分のことをあまり話さない皇祐の本音が聞けるのは貴重だ。
だけど、刺されているような鋭い痛みが身体中に走って呼吸ができない。
「……やっぱり、オレに合わせてただけ? 本当は一緒に……いたくなかったの?」
皇祐の話を最後まで聞いてから話をしよう。そう思っていたのに、気が焦って先に口から言葉が出ていた。
敦貴の話す声は震えていてどうしようもならないし、皇祐の方は口を閉ざして顔を俯かせている。
「コウちゃん……」
迫りくる不安に押しつぶされそうで、身体が震えてくる。
「ねえ、こっち見て……」
皇祐の両腕を掴んで顔を覗き込もうとすれば、彼は小さな声で言った。
「好きだった、敦貴のことがずっと……」
敦貴から顔を背けていたからわからなかったが、皇祐が泣いているようにも見える。
学生の頃からきちんとしている皇祐は、正反対の敦貴と仲良くしてくれていた。
嫌われてはいないとは思っていたが、好意を向けてくれているなんて想像がつかなかった。
「言ってくれたら良かったのに」
好かれるのは嬉しい。しかも相手は皇祐だ。重く受け止めていなかった敦貴は、軽い調子で言った。
だけど、皇祐は深刻そうな顔をして訴えてくる。
「言えるわけない! ずっと友だちでいてくれる敦貴を、男を好きだなんて気持ち悪いだろ? 嫌われたくなかった。だから留学する時に、この想いは全て忘れて敦貴には二度と会わないって決めたんだ。それなのに――」
皇祐がずっと敦貴を拒絶するような態度をしていたのは、それが理由なのだろう。
自分の気持ちを必死に抑えて我慢していた。だけど、その皇祐を今の自分は救えることができる。そう確信していた。
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