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あれからどれくらいの日が経ったのかは知らないけれど、少しだけ分かるようになったことがいくつかある。
まずひとつが、『ゆりうすでんか』のことだ。彼の名前は『ゆりうす、うぃん、おーくりっど』って言うらしい。『でんか』っていう言葉の意味は聞いてもよく分からなかったけれど、僕は呼ばなくてもいいから『ゆりうす』が名前だってことだけ知っていてって。出来れば大きくなって、名前がしっかり呼べるようになったら『ゆーる』って呼んで欲しいとも言っていた。特別な呼び方だから、僕以外は呼ばないんだって! 同じように、彼は僕のことも特別な名前があるんだよって教えてくれて、それからは僕のことを『らんでぃー』って呼ぶようになった。
あと、やっぱり彼は僕の知っている『幸人さん』だって言っていた。それを聞いた僕は嬉しくていっぱい泣いちゃった。
彼は、二人きりの時には『彩霞』って呼んでくれる。僕はランドルフだけど、あの時幸人さんが僕のサイカという名前に新しい漢字を付けてくれたから特別なんだ。幸人さんは、サイカのお母さんが付けてくれた漢字はあまりいいものじゃないからって言ってた。僕には漢字ひとつひとつの意味は難しくて分からなかったけど、幸人さんが書いてくれた文字の方が綺麗で好きだった。だから、お母さんから名前を呼ばれるのも好きだったけど、幸人さんから呼ばれた方がもっと自分の名前が好きになれたんだ。
「彩霞はやっぱりいろんなことを覚えているんだね」
「ん!」
少し大きくなった僕を膝に乗せて、落ちないように片腕でお腹を支えながら反対の手で僕の小さな両手をその手に乗せていた。彼の大きな手はいつも僕を優しく撫でてくれるから、大好き。
「今更だけど、彩霞のこと見つけるのが遅くなってごめんね。ランディーも、産まれてから半年も経ってしまった」
「んむぅ? だー、ぶぅ!」
大丈夫って言いたいけれど、まだちゃんと喋れない。それでも彼は僕の言いたいことを分かってくれたようだ。
「ふふ、ありがとう。彩霞にまた会えて嬉しいよ。今度こそちゃんと番になろうね」
「ちゅ、あーい? なぅ!」
番が何か分からないけれど、彼の言うことは何にも悪いことなんてないって思うから、頷いておく。ずっと一緒にいられるなら何だっていい。
ふと父が前に話していた「死にかけていた」という言葉が思い出されたが、今のところ元気に育っているから大丈夫だと信じたい。彩霞の時みたいに、彼をまた置いていきたくないのだ。どうせなら今度は僕の方が長生き出来たらいいなぁ。
暫く彼の膝の上で話しながら遊んでいると、コンコンと扉を叩く音がした。
「ユリウス殿下、アンヘルです。ランドルフ様のお食事をお持ちしました」
「入れ」
「失礼致します」
僕の侍従のアンヘルが、沢山の食べ物を載せた台を押して部屋へと入ってくる。侍従という言葉の意味はユールに教えてもらった。自分のお世話をしてくれる人だよって。お世話をするのは家族とかユールじゃだめなのかなって思ったけど、聞く方法もなくてそこは分からないままだ。でもアンヘルは大好きだし一緒に居てくれて嬉しいから、分からないままでもいいのだ。
アンヘルは食事の準備をし、それをユールが僕に食べさせてくれる。最近はミルクよりもドロドロとしたものを食べる回数の方が多い。ミルクも美味しいけれど、このドロドロしたものも美味しくていつも食事の時はニコニコしちゃう。
「本当に美味しそうに食べるね」
「むん!」
口をもぐもぐと動かしながら、ほっぺたに両手を添えて美味しいよって表現する。そんな僕の頬を彼は指先でつついて、ふふっと笑った。横で見ていたアンヘルも、顔がにこにこしている。
「さあ、ゆっくりでいいからまだまだ頑張って食べようね。ランディーはいっぱい食べないと魔力が体に貯まらないから」
「ぁいっ」
両手を上にあげて元気よく返事をすると、彼は優しく頭を撫でてくれた。それからゆっくりと時間をかけて食事をすると、体がポカポカとしてきて眠気が訪れる。その上ユールに抱きしめられて、おやすみなんて言われたら眠ってしまうに決まっている。
トントン、とリズム良く背中を叩かれてうとうとしながらも、ユールとアンヘルの会話をぼんやりと聞く。
「公爵は何時来る?」
「もうすぐランドルフ様の誕生日を迎えられますので、その前には一度此方へ起こしになるようです。流石に誕生日は公爵邸で行いたい、と」
「はは、まあそれくらいは仕方がないな」
「ありがとうございます。正直私が此方で一人ランドルフ様に毎日お会い出来ることを羨ましがっている公爵様方にチクチクと刺されているので、出来るだけ早くにお会いさせていただければ……」
「君も大変だな。私は何時でもいいから、日取りに関しては神官長と相談してくれ」
「畏まりました」
アンヘルは部屋を出ていく前に、僕へ「おやすなさいませ」と言った。眠たくて仕方なかったからそれにちゃんと答えられたかは分からないけれど、アンヘルが笑ったのが見えたから大丈夫かな。
まずひとつが、『ゆりうすでんか』のことだ。彼の名前は『ゆりうす、うぃん、おーくりっど』って言うらしい。『でんか』っていう言葉の意味は聞いてもよく分からなかったけれど、僕は呼ばなくてもいいから『ゆりうす』が名前だってことだけ知っていてって。出来れば大きくなって、名前がしっかり呼べるようになったら『ゆーる』って呼んで欲しいとも言っていた。特別な呼び方だから、僕以外は呼ばないんだって! 同じように、彼は僕のことも特別な名前があるんだよって教えてくれて、それからは僕のことを『らんでぃー』って呼ぶようになった。
あと、やっぱり彼は僕の知っている『幸人さん』だって言っていた。それを聞いた僕は嬉しくていっぱい泣いちゃった。
彼は、二人きりの時には『彩霞』って呼んでくれる。僕はランドルフだけど、あの時幸人さんが僕のサイカという名前に新しい漢字を付けてくれたから特別なんだ。幸人さんは、サイカのお母さんが付けてくれた漢字はあまりいいものじゃないからって言ってた。僕には漢字ひとつひとつの意味は難しくて分からなかったけど、幸人さんが書いてくれた文字の方が綺麗で好きだった。だから、お母さんから名前を呼ばれるのも好きだったけど、幸人さんから呼ばれた方がもっと自分の名前が好きになれたんだ。
「彩霞はやっぱりいろんなことを覚えているんだね」
「ん!」
少し大きくなった僕を膝に乗せて、落ちないように片腕でお腹を支えながら反対の手で僕の小さな両手をその手に乗せていた。彼の大きな手はいつも僕を優しく撫でてくれるから、大好き。
「今更だけど、彩霞のこと見つけるのが遅くなってごめんね。ランディーも、産まれてから半年も経ってしまった」
「んむぅ? だー、ぶぅ!」
大丈夫って言いたいけれど、まだちゃんと喋れない。それでも彼は僕の言いたいことを分かってくれたようだ。
「ふふ、ありがとう。彩霞にまた会えて嬉しいよ。今度こそちゃんと番になろうね」
「ちゅ、あーい? なぅ!」
番が何か分からないけれど、彼の言うことは何にも悪いことなんてないって思うから、頷いておく。ずっと一緒にいられるなら何だっていい。
ふと父が前に話していた「死にかけていた」という言葉が思い出されたが、今のところ元気に育っているから大丈夫だと信じたい。彩霞の時みたいに、彼をまた置いていきたくないのだ。どうせなら今度は僕の方が長生き出来たらいいなぁ。
暫く彼の膝の上で話しながら遊んでいると、コンコンと扉を叩く音がした。
「ユリウス殿下、アンヘルです。ランドルフ様のお食事をお持ちしました」
「入れ」
「失礼致します」
僕の侍従のアンヘルが、沢山の食べ物を載せた台を押して部屋へと入ってくる。侍従という言葉の意味はユールに教えてもらった。自分のお世話をしてくれる人だよって。お世話をするのは家族とかユールじゃだめなのかなって思ったけど、聞く方法もなくてそこは分からないままだ。でもアンヘルは大好きだし一緒に居てくれて嬉しいから、分からないままでもいいのだ。
アンヘルは食事の準備をし、それをユールが僕に食べさせてくれる。最近はミルクよりもドロドロとしたものを食べる回数の方が多い。ミルクも美味しいけれど、このドロドロしたものも美味しくていつも食事の時はニコニコしちゃう。
「本当に美味しそうに食べるね」
「むん!」
口をもぐもぐと動かしながら、ほっぺたに両手を添えて美味しいよって表現する。そんな僕の頬を彼は指先でつついて、ふふっと笑った。横で見ていたアンヘルも、顔がにこにこしている。
「さあ、ゆっくりでいいからまだまだ頑張って食べようね。ランディーはいっぱい食べないと魔力が体に貯まらないから」
「ぁいっ」
両手を上にあげて元気よく返事をすると、彼は優しく頭を撫でてくれた。それからゆっくりと時間をかけて食事をすると、体がポカポカとしてきて眠気が訪れる。その上ユールに抱きしめられて、おやすみなんて言われたら眠ってしまうに決まっている。
トントン、とリズム良く背中を叩かれてうとうとしながらも、ユールとアンヘルの会話をぼんやりと聞く。
「公爵は何時来る?」
「もうすぐランドルフ様の誕生日を迎えられますので、その前には一度此方へ起こしになるようです。流石に誕生日は公爵邸で行いたい、と」
「はは、まあそれくらいは仕方がないな」
「ありがとうございます。正直私が此方で一人ランドルフ様に毎日お会い出来ることを羨ましがっている公爵様方にチクチクと刺されているので、出来るだけ早くにお会いさせていただければ……」
「君も大変だな。私は何時でもいいから、日取りに関しては神官長と相談してくれ」
「畏まりました」
アンヘルは部屋を出ていく前に、僕へ「おやすなさいませ」と言った。眠たくて仕方なかったからそれにちゃんと答えられたかは分からないけれど、アンヘルが笑ったのが見えたから大丈夫かな。
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