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その頃、隣国でもてんやわんやの事態が訪れていた。もともと自分の護衛騎士と恋仲であった姫。政略結婚に対抗するため妊娠した挙げ句二人で城を飛び出して逃げてしまったのだ。
書き置きを見た国王夫妻は大慌てで二人を探した。二人は、辺境の騎士の実家に向かっており、途中で確保されると道ならぬ恋を認められなければ死ぬ覚悟であると追手に言った。
二人の覚悟に折れた国王夫妻は、結婚を認め、フィッツロイ王国に婚約解消を願い出ることにした。そして今後、他国に攻め入られるなどの有事の際に援軍を送る同盟の締結や婚約解消の補償をすることにした。
隣国からの婚約解消に関する謝罪と補償、同盟締結についての書状が届いたのは、ザッカリーとマテオの婚約が解消したあとの事であった。
「旦那様、王子殿下からご訪問のお知らせが参りました」
「ザッカリー殿下から?」
「いえ、ヒューゴ殿下からでございます」
「何と?」
「ヒューゴ殿下から、マテオ様に謝罪のご挨拶をされたいとのご連絡にございます」
「そうか。わかった。マテオが良ければ受けよう」
「マテオ、ヒューゴ殿下が当家に見えられ、マテオに謝罪したいそうだ。どうしたい?」
「ヒューゴ殿下ですか。是非お会いしたいです」
「わかった。ではお会いする支度をして待つように」
「はい」
久しぶりのヒューゴ殿下とのお話はこの婚約解消で沈んだマテオの心に暖かい火を灯すようであった。
発情期明けで痩せた体に、久しぶりによそ行きの衣装を纏う。
「殿下のお着きです」
応接室で、父と並んでソファーに座るマテオ。現れたヒューゴは、卒業式のパーティーで見かけて以来。さらに男ぶりを増して格好良く、しかしやややつれた表情をしていた。
「この度は、弟のザッカリーが大変なご無礼を働き、申し訳ございません。両親からも代わりに深く謝罪するようにと言われて参りました」
「殿下、わざわざお越し頂いてありがとうございます。私共も最初から婚約を了承するべきでは無かったと反省しております」
「ヒューゴ殿下のなさったことではございません。殿下には学院でも大変お世話になり、親切にして頂いておりました。どうぞお気になさらないで下さい」
「ありがとう、マテオ。そう言って貰ってありがたいよ」
「実はもう一つ、お願いもあって参りました。まだ公にされていませんが…」
そこでヒューゴ自身の婚約も解消されたことが明かされた。隣国の責により、同盟関係に問題は無いことも。
「今回の我が国と隣国の事から国王陛下から、私の婚姻について政略結婚ではなく希望を聞いてくれるとの事になりました」
「左様でございますか」
「はい。ですので、今回は謝罪の他お願いに来ました。私は幼少よりマテオが好きです。弟の為に心を傷つけてしまった貴方にすぐにこんな事をお願いするのは申し訳ないのですが、私と結婚を考えて貰えませんか?…いかがでしょうか伯爵」
「マテオはどう思う?」
「私も小さい頃からヒューゴ殿下が好きです。でも直ぐに婚約をするのも...」
「完全に断られなくて良かった。では是非私と出掛けたりお話したり、手紙のやり取りをしてみてください。私と結婚出来ると思ったら婚約してください」
「二人がそう思うなら私も了解しました。お付き合いして考えて、納得したら良いと思います。私もマテオの気持ちを尊重したいのです」
「伯爵、ありがとうございます」
国王陛下からもマテオに手紙が届いた。お付き合いの後に二人が良ければ結婚をして欲しいと。
ザッカリー殿下は相手の女性と出産前に結婚する事になったが、公の発表はせず、子供が産まれたら結婚と出産を知らせるのみで披露をしないことになったと書かれていた。
そしてザッカリー殿下は新たに公爵として領地を賜り王宮を出る事になったそうだ。王宮に入ってもザッカリー殿下やお相手の方とお会いしたりという心配は無くなったのでその点を安心して欲しいとあった。
マテオを案じての事に大変ありがたく思った。
「マテオ様、殿下よりお手紙と贈り物が届きました」
毎日手紙や花、お茶、宝飾品といった贈り物が届けられる。楽しみに開くと、読んだ本の話、以前出掛けた他国の習慣など楽しい文面に笑みが浮かぶ。文末には、いかにマテオを愛しているかが書き添えられ、マテオの性格や字や外見、フェロモンなどあらゆる事を褒めてくれる。
ザッカリーにはそのような扱いは受けていなかった。恋人とはこんなに楽しく幸せなものかと感激した。
「父上、明日お誘いを受けたので音楽会に出掛けて参ります。よろしいですか?」
「ああ。連絡があったよ。王家の馬車が迎えにくるそうだ。気を付けて行っておいで」
二人で観劇、音楽会と出掛けるとその感想を話し合う。王都で流行りのレストランやカフェに行ってみたりもした。
これまでそのような外出の無かったマテオには毎回が新鮮であった。
「このカフェには、美味しいお菓子があるそうだよ」
「殿下、良くご存知ですね」
「城のメイド達に教えて貰った」
「ふふ。そうですか。楽しいですね。このお菓子もどちらも美味しそう」
「両方とも、食べられる分だけ食べれば良いよ。残りは私が頂こう」
「ありがとうございます」
「次は湖畔でのピクニックに行こうね」
「はい。お花も咲く時期ですね。楽しみにしています」
「マテオに喜んで貰えると私も嬉しい」
お行儀も気にせず恋人らしく振る舞う。周囲の目も気にしないことにした。
様々なところで仲睦まじく楽しそうな美しい二人の様子が目撃された。過去の婚約発表と異なる組み合わせであったが、次第に違和感無く受け入れられるようになった。
そしてザッカリーが公爵となり、結婚をして子供が産まれた事が知られるとその時期からして、国民は皆事情を察したのだった。
書き置きを見た国王夫妻は大慌てで二人を探した。二人は、辺境の騎士の実家に向かっており、途中で確保されると道ならぬ恋を認められなければ死ぬ覚悟であると追手に言った。
二人の覚悟に折れた国王夫妻は、結婚を認め、フィッツロイ王国に婚約解消を願い出ることにした。そして今後、他国に攻め入られるなどの有事の際に援軍を送る同盟の締結や婚約解消の補償をすることにした。
隣国からの婚約解消に関する謝罪と補償、同盟締結についての書状が届いたのは、ザッカリーとマテオの婚約が解消したあとの事であった。
「旦那様、王子殿下からご訪問のお知らせが参りました」
「ザッカリー殿下から?」
「いえ、ヒューゴ殿下からでございます」
「何と?」
「ヒューゴ殿下から、マテオ様に謝罪のご挨拶をされたいとのご連絡にございます」
「そうか。わかった。マテオが良ければ受けよう」
「マテオ、ヒューゴ殿下が当家に見えられ、マテオに謝罪したいそうだ。どうしたい?」
「ヒューゴ殿下ですか。是非お会いしたいです」
「わかった。ではお会いする支度をして待つように」
「はい」
久しぶりのヒューゴ殿下とのお話はこの婚約解消で沈んだマテオの心に暖かい火を灯すようであった。
発情期明けで痩せた体に、久しぶりによそ行きの衣装を纏う。
「殿下のお着きです」
応接室で、父と並んでソファーに座るマテオ。現れたヒューゴは、卒業式のパーティーで見かけて以来。さらに男ぶりを増して格好良く、しかしやややつれた表情をしていた。
「この度は、弟のザッカリーが大変なご無礼を働き、申し訳ございません。両親からも代わりに深く謝罪するようにと言われて参りました」
「殿下、わざわざお越し頂いてありがとうございます。私共も最初から婚約を了承するべきでは無かったと反省しております」
「ヒューゴ殿下のなさったことではございません。殿下には学院でも大変お世話になり、親切にして頂いておりました。どうぞお気になさらないで下さい」
「ありがとう、マテオ。そう言って貰ってありがたいよ」
「実はもう一つ、お願いもあって参りました。まだ公にされていませんが…」
そこでヒューゴ自身の婚約も解消されたことが明かされた。隣国の責により、同盟関係に問題は無いことも。
「今回の我が国と隣国の事から国王陛下から、私の婚姻について政略結婚ではなく希望を聞いてくれるとの事になりました」
「左様でございますか」
「はい。ですので、今回は謝罪の他お願いに来ました。私は幼少よりマテオが好きです。弟の為に心を傷つけてしまった貴方にすぐにこんな事をお願いするのは申し訳ないのですが、私と結婚を考えて貰えませんか?…いかがでしょうか伯爵」
「マテオはどう思う?」
「私も小さい頃からヒューゴ殿下が好きです。でも直ぐに婚約をするのも...」
「完全に断られなくて良かった。では是非私と出掛けたりお話したり、手紙のやり取りをしてみてください。私と結婚出来ると思ったら婚約してください」
「二人がそう思うなら私も了解しました。お付き合いして考えて、納得したら良いと思います。私もマテオの気持ちを尊重したいのです」
「伯爵、ありがとうございます」
国王陛下からもマテオに手紙が届いた。お付き合いの後に二人が良ければ結婚をして欲しいと。
ザッカリー殿下は相手の女性と出産前に結婚する事になったが、公の発表はせず、子供が産まれたら結婚と出産を知らせるのみで披露をしないことになったと書かれていた。
そしてザッカリー殿下は新たに公爵として領地を賜り王宮を出る事になったそうだ。王宮に入ってもザッカリー殿下やお相手の方とお会いしたりという心配は無くなったのでその点を安心して欲しいとあった。
マテオを案じての事に大変ありがたく思った。
「マテオ様、殿下よりお手紙と贈り物が届きました」
毎日手紙や花、お茶、宝飾品といった贈り物が届けられる。楽しみに開くと、読んだ本の話、以前出掛けた他国の習慣など楽しい文面に笑みが浮かぶ。文末には、いかにマテオを愛しているかが書き添えられ、マテオの性格や字や外見、フェロモンなどあらゆる事を褒めてくれる。
ザッカリーにはそのような扱いは受けていなかった。恋人とはこんなに楽しく幸せなものかと感激した。
「父上、明日お誘いを受けたので音楽会に出掛けて参ります。よろしいですか?」
「ああ。連絡があったよ。王家の馬車が迎えにくるそうだ。気を付けて行っておいで」
二人で観劇、音楽会と出掛けるとその感想を話し合う。王都で流行りのレストランやカフェに行ってみたりもした。
これまでそのような外出の無かったマテオには毎回が新鮮であった。
「このカフェには、美味しいお菓子があるそうだよ」
「殿下、良くご存知ですね」
「城のメイド達に教えて貰った」
「ふふ。そうですか。楽しいですね。このお菓子もどちらも美味しそう」
「両方とも、食べられる分だけ食べれば良いよ。残りは私が頂こう」
「ありがとうございます」
「次は湖畔でのピクニックに行こうね」
「はい。お花も咲く時期ですね。楽しみにしています」
「マテオに喜んで貰えると私も嬉しい」
お行儀も気にせず恋人らしく振る舞う。周囲の目も気にしないことにした。
様々なところで仲睦まじく楽しそうな美しい二人の様子が目撃された。過去の婚約発表と異なる組み合わせであったが、次第に違和感無く受け入れられるようになった。
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