第二王子に浮気されたオメガ令息は、第一王子から求愛されました

こたま

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 その日は王妃殿下からお茶に誘われ、婚約していた時以来、久しぶりに王宮に赴いていた。

「マテオ、いらっしゃい。来てくれてありがとう。とても会いたかったわ」

 妃殿下がマテオを抱き締めた。

「妃殿下、こちらこそお招き頂いてありがとうございます」
「ザッカリーが本当にごめんなさいね。私はずっと貴方がお嫁さんに来てくれたら嬉しいと思って色々お伝えして来たの。ヒューゴの方が貴方と合うと思っていたけど隣国とのお話をどうにも出来なかったの。今は二人が仲良くしているようで安心しました。良ければヒューゴと結婚して頂けますか?」
「はい。ありがとうございます。今はそのように考えております。私に妃殿下が務まるのか心配もありますが、ヒューゴ殿下と過ごす時間はとても幸せです。殿下をお支え出来れば嬉しいです。これからまた私に色々教えて頂けますか?」
「もちろんです。私の知っていることなら全てお伝えして、お助けします。それに貴方にはもうお妃教育は必要無いみたいですよ。以前に教師達から聞いていますよ」
「そうですか?まだ途中だったように記憶しておりました。ヒューゴ殿下とザッカリー殿下のお妃では内容に違いもございませんか?」
「教師達は、マテオが気に入っていたそうです。相手がもしかしたらヒューゴに代わる事も何処か意識しながら当たったそうです。それに貴方はもともと大変優秀で以前から知識が深くお教えすることが少なかったそうですね」
「そう言って頂けるとありがたいです」

 妃殿下とのお茶会の終わりには、ヒューゴ殿下が迎えに来て殿下の私室に案内された。

「ここが私の部屋です。そして、こちらに来てください」

 連れて行かれたのは、浴室や応接室を挟んで連なる妃の部屋だった。その中心で膝を着いて、マテオの手を取ると

「マテオ、愛しています。私と結婚して、ここに住んでください」
「はい。お受け致します。殿下の支えになれるよう努力致します」
「そのまま、貴方のままでここに居てくれれば十分。ありがとう」

 立ち上がったヒューゴは、ゆっくりと顔を近づけてマテオと唇を合わせた。
 そっと顔を離すと二人とも初めての口付けに、顔を赤らめて微笑み合った。

 室内は、マテオの好きなグリーンを基調として、スッキリと整い、暮らしやすそうな家具が揃っていた。装飾は控えめだが質が良く使いやすそうなデザインが多い。

「足りないものや好みの物があれば揃えるから、言って欲しい」
「今置いて頂いてある家具が好みです。このまま使わせて頂きます」
「良かった。マテオの好みを考えて作った部屋なんだ。でも足りない物が出てきたら直ぐに言ってね」
「はい。ありがとうございます」

 ヒューゴに連れられたマテオは、その後両陛下に挨拶し、実家に送られながら結婚の挨拶もすることになった。

「直ぐにでも結婚したいので、ご両親には申し訳無いけれどこのままご挨拶させて貰おうと思う。良いかな?」
「もう我が家でもそのつもりのようですから、どうぞお気遣い無く。父は私に新たな縁を見つける必要が無くなったのでほっとしていると思います」

「父上、戻りました」
「お帰り、マテオ」
「本日、殿下と国王陛下、妃殿下にも結婚をするとご挨拶申し上げました。ヒューゴ殿下が父上にご挨拶されたいとのことです」
「伯爵、私とマテオの結婚を許して頂けますか?」
「はい。承知しております。どうかマテオを末長くよろしくお願いいたします」
「大切にするとお約束します」
「マテオ、良かった。幸せにね」
「母上、ありがとうございます」

 こうして、初恋の二人は紆余曲折の後に恋を実らせることが出来た。

 婚約は、国民にまた広く知らされたが、皆既にそうなるのだろうと理解していた。やっぱりねと納得の噂話があちらこちらで聞かれた。

 婚姻の日は、家族の他隣国や他の国からの来賓もあり、盛大な式典と披露宴が催された。

 白い正装のヒューゴは大変凛々しく、オメガらしい華奢な身体を白いドレスに包んだマテオは神々しいほどに美しい。二人が並ぶと華やかな色合いで絵になる姿だった。誓いの口付けは、参列者がため息を漏らすほど清楚な美しさがあり、神殿で語り継がれる程であった。

 式典後には馬車でのパレードが行われ、多数の国民が祝福に訪れた。紙吹雪が青い空に舞って、鳥の群れまでが二人を祝った。


 披露宴では多くの祝福を受け、隣国の使者からはお祝いと重ねての謝罪を受けた。また披露宴に参列したザッカリーから

「兄上。これまで兄上への反抗心からマテオとの仲を邪魔してしまい申し訳ありませんでした。私も妻と子供のために真面目に領地を治めて参ります。どうぞお二人でお幸せにお過ごしください」
「ありがとう、ザッカリー。どうか元気で家族仲良く暮らして欲しい」


「マテオ、お疲れ様。1日大変だったね」
「殿下もお疲れ様でした」
「君の美しい姿を見られて疲れは感じなかったよ」
「ふふふ。ありがとうございます」
「お腹は空いていない?あまり食べられなかったね」
「そうですね。何か軽食を用意して貰いましょうか?」
「私の部屋の方に少し用意して貰ってあるよ」
「ありがとうございます」

 二人で軽く食事をしながら、お茶や果実水、果実酒などを頂く。

「ザッカリーがすっかり父親として落ち着いたようで良かった」
「そうですね。本当に」
「私達も、一緒になれて、色々な事が良い結果になったね」
「はい」
「さあ、食べたら浴室に運んであげる」
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