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浜松勝
17話 作戦会議
しおりを挟む朝起きて、すぐにモニターを見るとメールが入っていた。学校からの一斉配信だ。
[登校・下校時刻のお知らせ
これから10月31日までの登下校時刻は規定しないものとする]
つまり、いつでも学校にいて良いという連絡だ。学校がブラック企業になっている気がしてならない。学校の準備をして外へ出ると、暑さが少し和らいだという事が実感できる。そんな事を考えながら学校へ行く。廊下を歩いていると大会議室の看板が取替えられていた。[作戦科本部]というプレートに変わっていた。中を覗くと、作戦科長いか数名がパソコンと睨めっこをしている。覗き見をしていたら二条に手招きをされた。
「君は確かⅠ-Ⅳで会計長をやっているね?予算についてアドバイスをもらいたいのだが」
「予算の合計はどれくらいなんだ?」
「上限はないんだが…。採点基準が試合結果と使用金額で計算するため出来るだけ予算を削りたいんだ」
「それなら、無駄な生産を抑える必要がある」
「わかった。出来るだけ計算してから作らせるように指導する。君も頑張ってくれ」
本部を見ると、作戦科員はつらそうだ。今も寝袋で寝ている人間がいる。ちなみに俺と朱里は今から図書室へ行く予定だ。なぜ図書室かと言うと、今情報科はとても暇なので、作っておけるソフトを作ろうという訳だ。この学校の図書室はとても大きい。1階分で大会議室ほどの大きさがあり、3階分ある。中央部分は吹き抜けとなっており、その周りを螺旋階段が回っている。3階部分は成績優秀者のみが使えるスペースとなっている。俺と朱里はもちろん使える。というか情報科生は大半が成績優秀者だ。3階へ上がると、すでに朱里が座って本を読んでいた。何の本を読んでいるのか確認すると、[マウス・キーボード商品カタログ]という明らかに女子高生が読む本ではないものを読んでいた。
「島田、なによんでんだ?…」
「見ての通り商品カタログよ。さっき確認してたじゃないの」
「いや、そういうことじゃなくて。もっと読む本あるだろ」
「新しい物が欲しくなっただけ。さあ、始めましょう」
朱里は話を早々に切り上げて、作業へと促す。今俺はレーダーの計算ソフトを作成しているところだ。敵の艦の情報を処理して、画面上に映し出すことで、試合を有利に運ぶ。一方朱里は、魚雷の発射ソフトを作っていた。朱里はプログラムを組むのは俺よりも上なのだが、3DCGの技術が致命的だ。俺はプログラムは上の中、3DCGは学年トップの成績を維持している。なので、朱里のプログラムに3DCGを導入してあげた。
「ありがとう。この方が見やすい。だから、そっちのやる」
朱里が3DCGと引き換えにこっちの処理プログラムを作るというので頼んだ。そのあいだに、CGについての雑誌を読む。最近の技術を勉強するためだ。下の階を見てみると、他クラスの電気科と思われるグループが、大きな回路図を開いてノートにメモ書きをしている。大変そうだ。そんな事をしているうちに、俺のプログラムが完成したらしい。二人の得意分野を合わせると素晴らしいものが作れるなと実感した。これからも朱里とは協力関係でいたい。そんな時、二人の携帯にメールが届く。
[会議のお知らせ
作戦科本部へと来てください。
二条作戦科長]
会議が行われるようなので大会議室へと向かうことにした。
大会議室ではもうほとんどの生徒が□に並べられた机の周りに着席している。もう席の規定はないようだが、同じ科ごとに集まっているようだ。俺もそれに習って情報科の生徒がいる近くに座った。全員が大会議室へと集まるとカーテンが閉められ、スクリーンとプロジェクターの電源が入れられる。スクリーンは3台用意され、中央に10月31日までの予定が、左に艦艇の図面が、右に作戦概要が映し出されている。二条がマイクを握る。
「これから、作戦会議を始めます。まず、建築科。説明をお願いします」
二条に指示された建築科長は身長が185cmはある巨漢だった。説明も大雑把なのかと思いきや、とても丁寧な説明をしてくる。
「建築科の案を詳しく発表します。手元の資料をご覧ください」
その声で、大会議室内に資料をめくるカサカサとした音が響く。全員が資料に目を通す中で建築科長は説明を再開する。
「まず、3隻の構成についてですが、1隻をアタッカーとして攻撃特化とします。2隻目をディフェンダー、つまり防御特化とします。最後の1隻はバランス型とします。次に………」
その後も建築科長による説明は続いた。300mm砲だの対艦ミサイルだの議論されていたが俺には詳しいことは分からない。化学科は建築科の案には反発している。なんでも、兵器使用の際の反動が大きくて材質が耐えられないらしい。そのほかにも様々な問題が議論されているが情報科は蚊帳の外だ。菓子を食っている奴までいる。誰かと思ったが朱里だった。とりあえず置いておいて会議に集中を戻す。
「魚雷は搭載するのか?あとドローン」
「ドローン、その他の兵器も一隻のうちに入るため使用できない。魚雷・ミサイルは可能だ」
「じゃあ魚雷はどうするんだ?」
その時、左のスクリーンの画面が変わり、魚雷の計画書へと変わった。他の科のCGは酷く、気の毒だ。まず、3Dでさえない。さらに、お絵かきのようなものばかりで…。今度協力しようと思った。魚雷だが、直進するものと追尾するものの両方を搭載するようだ。直進型はけん制に、追尾型は攻撃に使用される。スクリーンはミサイルの画面へと変わった。様々な企画案が出されており、化学科の顔は青ざめている。大半は化学科の仕事になるからだろう。案としては、通常の攻撃用や、カメラを搭載したもの。スモークを吐き出すものなど。フレアを打ち出しながら飛ぶなどというものまである。合計15個ほど案が出ていて、今後作戦科で決定するらしい。そして、情報科の発表の番になった。朱里が立つ。起立した姿も凛として美しいので、男子生徒は凝視し、女子生徒は嫉妬の目で見ているが、一切気にせずに報告する。
「現段階では、機体の決定がなされていないため、発表事項はありません。以上」
そう一言だけ言うと、座った。確かに、情報科に発表事項はないのだが、レーダーの件があるため俺は手を挙げる。
「はい。浜松君どうぞ」
発表の機会を得たので、席を立ちUSBメモリをもってスクリーンの前まで歩く。パソコンに挿すと画面がレーダー処理ソフトの画像へと切り替わる。
「これは、自分で作ったレーダー処理ソフトです。敵艦の情報を処理し、リアルタイムで画面に映し出すことが出来ます。砲の弾道計算も出来るため、役に立つと考えます」
あちらこちらから拍手が聞こえる。成功だったようだ。その日のうちにこの案は可決され、取り入れられることになった。開発は俺が行うことになった。当たり前だ。その後も会議は続き、夕方5時にやっと解散になった。電気科、情報科以外の大半の生徒は学校へとまる準備をしている。急ピッチで建造するためである。変える際に窓を見ると、校舎の明かりはほとんどが点灯していた。まあ、情報科は最後に仕事が山ほど来るのだが。寮の自室へと戻ると、軽く掃除をして食事をする。食事を済ませ、パソコンで遊んでいると、机上の電話が鳴り響く。受話器をとり、電話に出ると朱里からだった。
『今から暇?新しいお菓子があるから今から行くわね。コーヒー用意しておいて』
それだけ言うと電話を切ってしまった。仕方がないのでコーヒーの用意をする。インターホンがなったので、朱里を部屋に招き入れると、大きな箱を差し出した。中には色とりどりのチョコレートが並べられ、人目で高級品だと分かる。俺はコーヒーを差し出し、チョコレートと一緒に楽しむ。
「なあ島田。何か用があるのか?」
「別に用なんてない。お願いがあるだけ」
へ~~。ものは言いようだね。
「一応聞いておく。出来るとは限らんぞ」
「そ、その、インテリアとパソコンの周辺機器を一緒に買いに行って欲しいのっ」
そんなことだったらいくらでも出来るが。
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