ギャルゲーのヘイトを溜めるクズでゲスな親友役として転生してしまいました。そして主人公が無能すぎて役にたたない……。

桜祭

文字の大きさ
66 / 136
第5章 鳥籠の少女

22、明智秀頼は両親を知る

しおりを挟む
俺、明智秀頼の両親について知っていること。
・多分人間。
以上。

「俺に親とか居たんだな……」
「そりゃあいるでしょ!まぁ、君が物心を付いた時には姉貴夫婦に引き取られた後だったか。」

マスターが考えている口調で語っている。
多分両親2人と認識のある人なんだろうと思う。

「君が父親の親戚、妹が母親の親戚に引き取られたんだったね」
「え?俺に妹いるの?」
「まったく知らないんだね、君」
「俺の妹とか、世界一可愛いんじゃないか?」
「うわー、妹いるって知ったとたんシスコンに覚醒してるよ」

とは言っても、実際は明智秀頼の妹なんてやべー奴なんでしょ?
という気持ちが抜けない。

『悲しみの連鎖を断ち切り』シリーズには、秀頼の妹とかいう面白そうな設定なかったしな……。
普通に一人っ子だとばかり思っていた。
ゲームしかり、今の生活しかり。
ビジュアルファンブックも隅々まで読み明かした俺は、ゲームのヒロインや登場人物の家族構成まで頭に入っている。

絵美と永遠ちゃんは一人っ子。
津軽には妹(ゲーム未登場)。
聞かなくても、原作キャラの兄妹事情は頭に入れている。
だからこそ、明智秀頼に妹の存在が示唆されなかったことが違和感に残る。

おかしい、絶対におかしい。
ゲームの設定が反映される世界において、なぜ明智秀頼の妹の存在なんてものが後付けされている?

わからないけど、別にどうでも良いか。
妹と会うことなんかないだろうし。

「話を戻すけど、君の本物の父さんは、姉貴の旦那以上のクズだ」
「ひでぇ評価だ……」

原作の明智秀頼があんなんだからな。
遺伝なことが嫌でも伝わる。

「そして、悪魔みたいなギフトを所有していたよ」
「悪魔みたいな?」

中二手前の年齢である現在。
厨二表現大好き年齢が反応するなというのが無理だ。

「『相手を自殺させる』ギフト。日常生活ではなんの役にも立たないし、常識を持っているならばまず使うことのないゴミギフト。でも、君のお父さんは、自分の妻や『ギフト管理局』の者ら含めて3人を殺害に使う悪魔みたいな奴だったよ。彼にとっては妻、僕にとっては友人、君にとっては母親だった彼女を殺害したギフトを僕は許すことができないね」

ギフト管理局といえば、ギフトの研究や、ギフト所用者専用の警察機関みたいな存在、ギフト犯罪者の裁判などギフト関連のものは大体この組織に行く。
普通に原作の俺がやっている行為は、ほぼ全部犯罪だ。
ギフト管理局に捕まる案件ばかりだ(まぁ、秀頼が捕まるルートなんて優しいものはなく、毎回なんやかんや死ぬ)。
原作でもルートによって関わったりする時もある。




それはひとまず置いておいて、自分の両親についてのバックボーンが色々見えた。
その上で言うなれば…………。

……原作の明智秀頼の方が10倍以上やばい。

「だからさ、僕の心境として秀頼君の存在は複雑なんだよね」
「そうなん?」
「『友人』と、『軽蔑するほどに嫌いな人殺し』の間にできた子供だよ?大事にするべきか、冷たくあしらうべきかと色々な感情が混ざり合うよね」
「大事にしろ、大事にしろ」
「そして、喫茶店にはじめて君が訪れた時、あまりにも、人殺しをした男そっくりの目したガキがやって来てすぐに察したね。僕は『こいつに冷たくしたろ』って思った」
「なんでそうなるんだよ!」
「『姉貴め、余計なことしやがって』って思いながら秀頼君を接客してた」
「腹黒いなあんた……」
「秀頼君は目元が父親似だけど、全体的なパーツは母親似だね」

実際、『姉の紹介だから売上協力はしないけど店のものもらうよ!』みたいな子供、俺もごめんである。
マスター目線なら至極当然な話だ。
そこに関して、マスターを軽蔑はしない。

「実際、あんた子供の俺に対して接客態度悪かったよなー。…………よく考えると今も変わらねーな」
「そんな態度取る子に優しくなんかするかい。……ただ、咲夜があんなに楽しそうに君とじゃれ合うのを見て、君を信頼しはじめた。まさか、あんなに成長した娘が見られるなんて思わなかったよ。親が悪人だからと子供を色眼鏡で見るのはダメだなって、君を見て思い直した」

マスターは照れくさそうに微笑む。

「実際、僕は君のことを息子みたいな目で見ているんだ。ギフトを持っていようが関係ない。善人は善人だと君を見て思った。まだまだ店に通って僕と咲夜に顔を見せに来て欲しいな」
「店に来て良いなら、別に何回でもコーヒーを飲みにくるぞ」

とりあえず良かった……。
『ギフト持ちなら店に入れない』とか言われたら俺の憩いの場が消えるところだった。

「因みに俺は、マスターのことは父親として見てねーから」
「今はそうでも20歳くらいになったら『お義父さん』って呼んで欲しいな」
「なぜ……?てか、俺はマスターは親じゃなくて、兄貴って感じで接してる。なんでも言い合えるしな」
「へー、良いねぇ。かなり年下で娘と同い年の弟とか面白いね。咲夜の次に僕の大事な人として君をランクインさせておくよ」

満更でもなさそうにマスターは言ってのけた。
本当にこの人は、この世界において1番頼りになる大人って感じがする。

「ところで、秀頼君のギフトを考察すると、姉貴の旦那のメンタルを治したり、咲夜の風邪を治したりなど『人の病気を完治させる』ギフトとかになるのかい?」
「そんな平和的なギフトではない。さらに言うなら『相手を自殺させる』ギフトより危険なギフト能力だよ」
「は……?」

正直、俺のギフトではどっちも出来てしまうからな……。
霞んでしまい、脅威に感じなくなっている。

「『人の病気を完治させる』ギフト、『相手を自殺させる』ギフト。この2つは俺のギフトの前では完全下位互換といったら、やばい?」
「…………やばいで済む話じゃないんだけど」
「だよなぁ……。でもマスターがここまで踏み込んだ話をしてくれたんだから俺も踏み込んだ話をしようか」
「え……?」

こんな話、頭おかしいと思われたらそれまで。
でも、俺はこの人になら話せると思った。

「ギフトにも関わる話なんだ。……あんたがマスターだから、俺はこの話をする」
「な、なんだい急に?びびるなぁ……」
「……マスターはさ、前世って信じる?」

……それに津軽以外のこの世界における協力者が欲しかったところだ。
原作に登場せず、ゲームの影響をウケることがないであろう人物。
まさに、マスターに相談するにはピッタリな話題であった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...