ギャルゲーのヘイトを溜めるクズでゲスな親友役として転生してしまいました。そして主人公が無能すぎて役にたたない……。

桜祭

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第5章 鳥籠の少女

24、明智秀頼は日常を望む

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咲夜の看病、マスターへ秘密の告白。
とにかく色々あった今日であった。
もう寝たい。
ゴロゴロしたい。
そう思って俺は自宅にたどり着いた。

「ただいまー」
「あっ、お帰りなさい!秀頼君」
「…………え?」

俺が帰ると、バタバタと絵美が廊下を走り、玄関までやって来た。
これまだゴロゴロできないパターンじゃん、絵美の顔を見て察した。
すぐに「おかえり、秀頼」と言いながらおばさんも顔を覗かせた。

「え、絵美?どうしたんだ?」
「秀頼君と勉強したかったのに、出掛けたっていうから待ってました」
「可愛い子だねぇ」

おばさんは元々、絵美がお気に入りで色々良くしている。
絵美も、俺の不在の間におばさんと仲良く喋ったり、一緒に料理を作ったりなど良好な仲を築いている。
最近おばさんは、お隣さんの絵美ママとも仲良く一緒に買い物をしていたりもあるらしい。

「ほらほら、玄関じゃなく居間で話しましょう」

おばさんが俺と絵美を誘導しながら廊下を歩く。
絵美と談笑していたからか、機嫌も良さそうであった。

絵美と俺を座らせておばさんは台所でお湯を沸かしている。
お茶やコーヒーなどを淹れてくれるみたいであった。

「いや、悪かったな。絵美の1日無駄にしちゃったみたいで……」
「大丈夫ですよ!おばさんと秀頼君のお話するのとかも楽しいですし。それに、今こうして秀頼君と会えて嬉しいです」
「本当に良い子だな、お前は」

嬉しくなって絵美の頭を撫でる。
本当に成長した子だよね。
年々、絵美は可愛くなってくるし、心なしか原作の絵美よりも色気も出てきた。
結構、モテるんじゃないかな。

「えへへへっ。わたし、秀頼君の愛情表現好きです」
「ははっ」

照れくさくなり、絵美から顔を反らす。
なんでこの子ばかりが報われない最期ばかりを迎えるのか。
……本当に運命は残酷だ。
明智秀頼は最低だ。
俺なんかいない方が、絵美の幸せになるのかもしれない。

「はい、お茶沸いたよ。秀頼はコーヒーで良いか?」
「おばさん、ありがとうございます」
「うん、コーヒーで良いよ」

マスターからコーヒーをもらったばかりだったが、おばさんからもコーヒーをもらう。
マスターの本格的なコーヒーも好きだし、おばさんの淹れるインスタントコーヒーも好きである。
少しコーヒーを冷ましながら、口に含む。

「そういえば弟から呼ばれたみたいだったけど、なにを頼まれたんだい?」

おばさんがお茶を飲みながら、今日のマスターの用事について振ってきた。
そういえば事情を知らなかったっけか。

「咲夜が風邪で寝込んでな。マスターも日曜日で店を休業したくないからとその看病を1日させられてた」
「え?咲夜が風邪引いたの?」
「あぁ。だいぶ良くなって明日は学校行くとか言ってたから体調は良くなった」
「ずるいよー!わたしが2年くらい前に風邪引いた時看病してくれなかったじゃん!」
「え?」

それを聞いた絵美が、看病についての意義を唱え始めた。

「た、……頼まれなかったし?」
「むぅ……。じゃあわたしも看病されたいです!その変わり、秀頼君が風邪引いたらわたしが看病します」
「メイドのコスプレ着てないと追い出すからな」 
「メイドのコスプレってどこで調達できるの……?」
「むらしま、クロユニ、UGとか?」
「絶対置いてないと思います」

絵美が突っ込みながら「ネットで買えるか」とか思い付いたことを口にしている。
すぐに選択肢にネットが出るのが若いなぁとジェネレーションギャップを感じる。

「私もメイドのコスプレしなきゃいけないのかい?」
「いえ、あの……冗談っすよおばさん。すいません……」

おばさんに普段軽口を叩かないから、素で驚かれた。
マスターの姉だけど、マスターとの掛け合いのノリをおばさんには見せられない。
絵美と2人っきりではないから、少し言葉に気を付けようと思う。

「絵美ちゃん、普段の秀頼ってこんなノリなのかい」
「これでジャブですよ」
「聞こえてるんですけど!?」

コソコソ話している風だが、部屋が狭くて丸聞こえである。
わざと聞こえている風に話しているんだろうけど。

「おばさんと2人だと秀頼君はどんな態度なんですか?」
「よそよそしいねぇ……。思春期かしら」
「いたたまれなくなるからそういう話やめて欲しいっす」
「秀頼君、普段と全然ノリが違うじゃないですかー」

絵美が俺の頬に手を伸ばし、指でツンツンと当ててくる。
おばさんの目の前というのがやり辛い。

「咲夜ちゃんのお父さんとはどんな感じなんですか?どんな会話するんですか?」
「マスターとは兄弟みたいな会話してるけど……」
「私より弟と仲良さそうだもんねぇ……」

おばさんが少し寂しい感じに声を出す。
おばさんの周りは男連中ばかりだから余計に女の子である絵美が可愛く思うのかもしれない。

「マスターとどんな会話するか……?うーん……」

沢村ヤマの裸体の話をしてますとは言えないよなぁ……。
マスターと他にどんな会話をしているか考えてみる。
そういえば……。

「今日、マスターから俺の両親について聞いたよ」
「え……?」
「両親……?」

おばさんと絵美の視線を一斉に集めた。
なんか一瞬空気が悪くなったのを感じる。

「弟から両親の話を聞いたのかい?」
「今日はじめて聞いたけどね。全然面白くもないし、どうでも良い話だったけどね」
「秀頼は……、親に興味あるのかい?」

叔父さんとおばさんは、俺の前で両親について語ったことは1度もない。
といっても、俺の前世ーー豊臣光秀の両親が俺にとっての親であり、明智秀頼の両親については親という感じもしないので本当に興味がなかった。

「全然興味ないですけどね。親がやらかしたこととか、妹がいるとか、どんな人だったとか。……そんな内容です」
「……あんまり私たちとそういう会話なかったからねぇ」
「普段秀頼君もおばさんもそういう話題を出さないのでタブーだと思ってました」
「別に両親が恋しいとか無いっすから。おばさんを母親だと思ってますし、マスターも兄ちゃんと思ってます。絵美とか咲夜とかタケルとか、友人にも恵まれて幸せです。俺にとって、それで満足な人生っすから」

叔父さんは、……ちょっと身内とはあまり思ってないけど。
でも、前よりかは嫌いではない。

「秀頼君に妹さん?」
「あぁ。俺も知らなくて驚いたよ。多分可愛いか美人で、かなりの巨乳だと思う」
「願望じゃん……」

絵美から呆れられた突っ込みをされる。
なんか妹にベタベタなタケルの気持ちがわかった気がする。

「秀頼の妹ね、『星子』って名前なのよ。私も彼女については何をしているのかとかわからないし、会うこともないわよ」
「名字も違うだろうしね」
「ふーん。秀頼君の妹さんとかちょっと見てみたいな」

会ったこともない人が妹ってちょっと違和感が凄いな……。
『星子』なんてキャラクターは『悲しみの連鎖を断ち切り』シリーズにも、世界観を共有しているゲームにも存在しない人物。
本当にイレギュラーな存在。
俺から言わせるとーーバグだ。
それだけに、秀頼のキャラクター設定が本編から変わってしまっているのかとても不安になる。

でも、俺の日常は変わらない。

俺は俺の日常を気に入っている。
両親も妹も関係ない。

俺は、この世界を生き抜く。
生き抜くのが最優先事項だ。

この日常が少しでも長く。
それが、俺のささいな望みだ。









叔父とおばさんの間に子供はいません。
おばさんと秀頼には血の繋がりは一切ありませんが、本当の息子のように育てました。
しかし、叔父の虐待を庇えなかった負い目もあり、お互いギクシャクしています。

おばさんは絵美を気に入っており、秀頼には彼女と一緒になって欲しいと考えています。

マスターの娘である咲夜について、当然おばさんは面識がありますが、『愛想がなく言葉使いが悪い子』と認識しているためにあまり良く思っていません(嫌いなわけではない)。

なので、地味に弟のマスターと対立しています。

というか絵美さん、外堀を埋めすぎである。
外堀を埋められて大坂の陣で敗北した一因にもなった豊臣秀頼のパロディかもしれない……。
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