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第5章 鳥籠の少女
47、宮村永遠(ハッピーエンド)
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あの男が!……あの男に気があった自分に死にたくなる。
全部、自分が浅はかだったんだ……。
引っ越して不安だった私に初めて声を掛けてくれた人を実はちょっと運命の人だとか考えて……。
気を許して。
気を惹きたくなって会話をしてみたり。
不安だったことを全て吐き出して。
すべて受け入れてくれるタケルさんではなくて、ゴミクズと憎悪していた男に初恋を抱いていたなんて……。
あの男、私にギフトで記憶を書き換えてる最中……。
『さようなら鳥籠の少女。今回は中々楽しい茶番だったよ』
『いやああああ、やめて!!お願いやめてええええええ!!!』
『大丈夫だよ、嫌なこと全部忘れさせてやるから。【■■】』
『あああああああああああああ』
人の皮を被った獣に胸を触られた……。
「うっ……!?」
あの男は……、たくさん触ってきたんだ……。
「永遠……、おい!永遠!」
「タケルさん、私……、私……」
すべてあなたにするのが二番煎じなんて……。
あなたに対する気持ちも二番煎じなんて知りたくなかった……。
「もう生きていたくない……」
「永遠……」
「殺して……、私を殺してよおおおお」
「ダメだ……。死ぬな!俺が全部受け止めるから!だから、生きてくれ永遠!!」
「タケルさん……」
「何があったのか、お願いだから話してくれ……。俺を見てきちんと永遠の言葉で聞かせて欲しい」
目に涙を浮かべてタケルさんは私を静止させた。
こんな穢れた私だけを真っすぐに見てくれていた。
「お、思い出したんです……。明智さんが……、私の記憶を弄って……」
「は?」
両親殺害の真相を全部伝えた。
いまの今までギフトを使われていて記憶が改ざんされていたことなどを教えた。
「そうか、中学時代に俺とも会話をしていたのに永遠の記憶がなかったのもそれが原因なのか!」
でも……。
―――――
「あん?何?」
明智さんを2人の秘密基地だという廃墟に呼びつけていた。
急な呼び出しのせいなのか、明智さんは不機嫌さを隠してすらいなかった。
「こっちはベッドに女寝かせて来てるんだよ、さっさと要件を言えっての!」
「永遠の家族殺害の件、お前と佐々木でやったんだな」
「あ?なんでそれを……」
明智さんが驚愕の表情でタケルさんと私の顔を見ている。
どうしてそんなことが起きているのかわかっていない様子であった。
しかし、息を吐いた後に彼はすぐに冷静になる。
「まさか……、タケルお前のギフトの仕業か」
「ギフト?お前は俺のギフトの正体を知っているのか!?」
「ッ……、てめえのその無自覚さがむかつくんだよ!俺がイライラしているその能力に気付かずにノウノウと生きていることそのものが俺にお前の殺意を暴走させるんだ」
「秀頼、そこまで言うなら拳で語り合おうぜ」
「おお、雑魚のタケルが言うじゃねーか」
明智さんが立ち上がり、拳を鳴らす。
それにタケルさんが応戦しようとした時であった。
「タケル!!」
その開戦を遮る声がして全員がその声の方向へ振り返る。
「ヨルちゃん!」
「よお、お待たせ!待たせたな永遠にタケル!まあ待ってねえクズも居るみたいだが」
わざと明智さんを煽る声を出したヨルちゃん。
それに舌打ちをする明智さん。
「全部こいつが吐いたぞ」
「佐々木!?」
「っ!?」
明智さんともう1人の実行犯、佐々木絵美がヨルちゃんの手により血まみれになっていた。
絵美には私も凄く信頼を寄せていた記憶が今も残っている。
その彼女が悪事をしていたとしても、こうも無残な姿になっていると同情しかない。
「ねえ?絵美を殺したの?」
「安心しなって絵美はまだ生きてる。ちょっと拷問に掛けただけ」
「拷問……」
「気にすんな、あたしは育ちが特殊でちょっとこういう手荒な真似に慣れているだけさ」
ブイサインをして笑うヨルにほっと一安心する。
ヨルちゃんはとても秘密の多い子だから、何をするのかわからない不安さが強すぎる。
「じゃあ、いっちょ明智の暴走を止めるぞタケル」
「おう!」
ちょっと彼女なの私なんだけど……、そう思ってはいるけどヨルちゃんとタケルさんはどうやら相棒同士のような仲なのでこれでいいかと納得する。
それに私もあのゴミクズを殴ってやりたいしね。
明智さんは3対1という状況。
この状況であれば、明智さんをどうにかできるはず。
「絵美……、この役立たずが……。【吐血して死ね】」
「ゲハッ……!?」
「は?」
それは一瞬の出来事であった。
絵美は突然、口から吐血をする。
なにそれ……?
明智さんのギフトは記憶を操るだけじゃないの……?
「秀頼……、お前……」
「俺にはそういうことだってできる。次はヨル・ヒル。【お前は心臓を止めて死ね】」
「ぐっ……」
「ヨルちゃん!?」
どんなギフトかもわからない攻撃がヨルちゃんを襲い、そのまま地面に膝を付く。
勝ちを確信した明智さんが、次に私を向く。
あ……、殺される……。
頭に死が浮かぶ……。
でも良いか……。
結局、このゴミクズに身体のことはタケルさんに言えなかった。
もう死のう。
タケルさんに受け入れられた時点で、私はもう満足だから……。
「バァカ」
「グッ……、てめっ」
一気に加速したヨルちゃんが明智さんの頭に蹴りを入れる。
その不意打ちに彼はそのままダメージがいく。
「ヨル!?」
「へへ、あいにくとあたしはこのクズ野郎のギフトは効かねえ」
そのまま明智さんを地面で拘束させるヨルちゃん。
その動きはまるで喧嘩や戦いに慣れているとしか言えない者の動きをしている。
「んだそりゃあ!?まさかてめえ?」
「『アンチギフト』、だろ」
「……待て!?なんでお前がその名前を……?」
「ははは。『アンチギフト』、お前がタケルのギフトに勝手に名前を付けたものなんだろ?なんで知っているかは教えてやんねえ!
ーー死ねっ!クズっ!命を償えっ!!ギフトによる悲しみの連鎖を断ち切る時間だっ!」
そのまま一直線に明智さんの喉をどこからか取り出したコンバットナイフで突き刺し――そして、切り裂いた。
「があっ……!?」
口をパクパクと開き痙攣をする。
立ち上がろうとしているものの、結局力が入らなかったのか力尽きて絶命した。
「秀頼!……秀頼!?」
タケルさんが泣きながらその亡骸に近付いていく。
動かない躯にタケルさんはヨルちゃんを睨みつける。
「秀頼を……、殺す必要あったのかよ……!ヨルッ!?」
「あったよ、こんなゴミ男を生かす価値がどこにある?あたしと明智のどっちに死んで欲しかったんだよ?」
「その二択ならお前だよヨル……」
「……そっか。お前はやっぱりずっとそういう奴だよな……」
悲しそうな顔でヨルちゃんはタケルさんに近付く。
タケルさんは親友の亡骸に寄り添っていた。
「こいつの仕出かしたことは悪人だ。犯罪者だ。目の前で佐々木まで殺して救いようがないクズだよ!…………でも親友だったんだよ……。分かり合える筈なんだよ……。どうして誰も秀頼の苦しみに気付いてくれないんだよ……」
「ごめん……、タケル……」
「きちんと罪を償って死ぬべきだろ……、俺はただ自首して欲しかったからここに呼んだだけだった……」
タケルさん視点から見る明智さん。
私視点から見る明智さん。
随所を見れば大体は同じ印象にはなるはずだ。
でも圧倒的な大きな違いがそこにはあるのがハッキリと見てわかった。
幼馴染で子供の頃からずっと一緒だったタケルさん。
中学時代に少し関わって事件を引き起こした黒幕。
それは、もはや見える印象も、抱く印象も何もかもが違う筈だ。
「タケルさん……」
「永遠……、行こう……。俺はもうヨルとは関わり合いたくない」
「タケル……!あたしはお前が……!」
「さようなら」
明らかな拒絶。
これ以降、タケルさんは仲の良かったヨルちゃんと話すことは2度となかった。
タケルさんはクラス内で特別仲の良かった明智さんとヨルちゃんを失った。
あんなことがあってもタケルさんは無償の愛をくれた。
私もタケルさんの愛にたくさん答えた。
でも、それは傷の舐め合いの関係だった。
そんな空虚で惰性のような恋愛をしていて何度別れようかという話になったかわからない。
でも、不思議と何かの力が働いているかのように、別れることはなかった。
私とタケルさんとの間に息子ができた。
タケルさんが息子には、『陽寄』と名前を付けた。
明言はしなかったけど、2人のモデルが居たのは言うまでもない。
幸せな家庭を作っても結局は歪んだものであり、傷の舐め合いの延長線上でしかなかった。
なにが足りないのかがわからなかった。
家族もある、愛もある、気持ちもある。
思いやりもある、優しさもある、幸福もある。
幸せの家庭と表現するにはたくさんのものが存在した。
でも明らかに1つだけ何かが無かった。
何年経ってもそれだけがわからなかった。
その答えはある日のとある出来事でようやく気付いた。
明智さんの命日。
決まってタケルさんは必ず仕事に有給を使ってまで明智さんのお墓に向かう。
誰もお参りに来ないのか、毎年凄い有様になっているのを彼は文句を言わずに淡々と片付ける。
こいつはこれが好きなんだと笑いながらお墓にコーヒーをぶっかける。
本当はこいつの大好物であるキノコも添えてやりたいくらいだと真面目に言ってんのかふざけてるのかわからない声でタケルさんは語る。
陽寄が7歳になった頃、タケルさんに1つの質問をした。
「お父さん、この人って誰のお墓なの?」
「俺の唯一の親友の墓なんだ。いつもバカやってさ、くだらない喧嘩ばっかりする悪い奴。でもすっげー楽しかったクズ男の墓だよ」
「そうなんだ!お父さんの顔、とても楽しそうだね」
「ああ、楽しかったよ」
寂しそうに、照れくさそうにタケルさんは笑った。
ああ、そっか……。
タケルさんの笑顔だけがないから、傷の舐め合いになるのか……。
タケルさんの笑顔は明智さんだけが独占しているんだ……。
じゃあ、……。
もうどうしようもないよね。
タケルさんがあげた線香の煙が天にまで届くのをずっと、ずっと見送っていた……。
―――――
また、今日も変な夢を見た。
とても幸せな夢。
淡くて、とてもビターな苦い恋。
誰も憧れない様なアブノーマルな恋。
でも、それでも確かにそこには幸せが広がっていた。
だけど、それはあまりにも代償が大きすぎた残酷な夢。
私が、今抱く感情を逆さまにしてしまった様な、白を黒と認識してしまう濁ったガラスのような恋愛物語。
決して、彼を許せるものではないのだけれど……。
何回も別れそうになった私と彼を繋げていたのはあなただったのですね、……ゴミクズさん。
ここではない、違う世界の、彼女の物語。
あなたは幸せだったと思います。
二番煎じであったとしても、確かに彼女は幸せでした。
私は永遠を否定しません。
でも、それをわかった上で1つだけ言わせてください。
「今の私の方が幸せです」
幸せの家庭もない。
好きな人とは、なんの繋がりもありません。
ただの幼い小学生みたいな恋。
でも、確かにそこには私がいつかに求めたたくさんの人の輪が存在しています。
もう、鳥籠の人生なんて言わせません。
鳥籠は壊れました。
ようやく鳥は自由に空を飛ぶことが出来そうです。
ーー永遠に。
†
秀頼による永遠の被害がどれくらい逢ったのかは、ゲームで公開されていないので不明。
『悲しみの連鎖を断ち切り』はCERO Dのゲームです。
全部、自分が浅はかだったんだ……。
引っ越して不安だった私に初めて声を掛けてくれた人を実はちょっと運命の人だとか考えて……。
気を許して。
気を惹きたくなって会話をしてみたり。
不安だったことを全て吐き出して。
すべて受け入れてくれるタケルさんではなくて、ゴミクズと憎悪していた男に初恋を抱いていたなんて……。
あの男、私にギフトで記憶を書き換えてる最中……。
『さようなら鳥籠の少女。今回は中々楽しい茶番だったよ』
『いやああああ、やめて!!お願いやめてええええええ!!!』
『大丈夫だよ、嫌なこと全部忘れさせてやるから。【■■】』
『あああああああああああああ』
人の皮を被った獣に胸を触られた……。
「うっ……!?」
あの男は……、たくさん触ってきたんだ……。
「永遠……、おい!永遠!」
「タケルさん、私……、私……」
すべてあなたにするのが二番煎じなんて……。
あなたに対する気持ちも二番煎じなんて知りたくなかった……。
「もう生きていたくない……」
「永遠……」
「殺して……、私を殺してよおおおお」
「ダメだ……。死ぬな!俺が全部受け止めるから!だから、生きてくれ永遠!!」
「タケルさん……」
「何があったのか、お願いだから話してくれ……。俺を見てきちんと永遠の言葉で聞かせて欲しい」
目に涙を浮かべてタケルさんは私を静止させた。
こんな穢れた私だけを真っすぐに見てくれていた。
「お、思い出したんです……。明智さんが……、私の記憶を弄って……」
「は?」
両親殺害の真相を全部伝えた。
いまの今までギフトを使われていて記憶が改ざんされていたことなどを教えた。
「そうか、中学時代に俺とも会話をしていたのに永遠の記憶がなかったのもそれが原因なのか!」
でも……。
―――――
「あん?何?」
明智さんを2人の秘密基地だという廃墟に呼びつけていた。
急な呼び出しのせいなのか、明智さんは不機嫌さを隠してすらいなかった。
「こっちはベッドに女寝かせて来てるんだよ、さっさと要件を言えっての!」
「永遠の家族殺害の件、お前と佐々木でやったんだな」
「あ?なんでそれを……」
明智さんが驚愕の表情でタケルさんと私の顔を見ている。
どうしてそんなことが起きているのかわかっていない様子であった。
しかし、息を吐いた後に彼はすぐに冷静になる。
「まさか……、タケルお前のギフトの仕業か」
「ギフト?お前は俺のギフトの正体を知っているのか!?」
「ッ……、てめえのその無自覚さがむかつくんだよ!俺がイライラしているその能力に気付かずにノウノウと生きていることそのものが俺にお前の殺意を暴走させるんだ」
「秀頼、そこまで言うなら拳で語り合おうぜ」
「おお、雑魚のタケルが言うじゃねーか」
明智さんが立ち上がり、拳を鳴らす。
それにタケルさんが応戦しようとした時であった。
「タケル!!」
その開戦を遮る声がして全員がその声の方向へ振り返る。
「ヨルちゃん!」
「よお、お待たせ!待たせたな永遠にタケル!まあ待ってねえクズも居るみたいだが」
わざと明智さんを煽る声を出したヨルちゃん。
それに舌打ちをする明智さん。
「全部こいつが吐いたぞ」
「佐々木!?」
「っ!?」
明智さんともう1人の実行犯、佐々木絵美がヨルちゃんの手により血まみれになっていた。
絵美には私も凄く信頼を寄せていた記憶が今も残っている。
その彼女が悪事をしていたとしても、こうも無残な姿になっていると同情しかない。
「ねえ?絵美を殺したの?」
「安心しなって絵美はまだ生きてる。ちょっと拷問に掛けただけ」
「拷問……」
「気にすんな、あたしは育ちが特殊でちょっとこういう手荒な真似に慣れているだけさ」
ブイサインをして笑うヨルにほっと一安心する。
ヨルちゃんはとても秘密の多い子だから、何をするのかわからない不安さが強すぎる。
「じゃあ、いっちょ明智の暴走を止めるぞタケル」
「おう!」
ちょっと彼女なの私なんだけど……、そう思ってはいるけどヨルちゃんとタケルさんはどうやら相棒同士のような仲なのでこれでいいかと納得する。
それに私もあのゴミクズを殴ってやりたいしね。
明智さんは3対1という状況。
この状況であれば、明智さんをどうにかできるはず。
「絵美……、この役立たずが……。【吐血して死ね】」
「ゲハッ……!?」
「は?」
それは一瞬の出来事であった。
絵美は突然、口から吐血をする。
なにそれ……?
明智さんのギフトは記憶を操るだけじゃないの……?
「秀頼……、お前……」
「俺にはそういうことだってできる。次はヨル・ヒル。【お前は心臓を止めて死ね】」
「ぐっ……」
「ヨルちゃん!?」
どんなギフトかもわからない攻撃がヨルちゃんを襲い、そのまま地面に膝を付く。
勝ちを確信した明智さんが、次に私を向く。
あ……、殺される……。
頭に死が浮かぶ……。
でも良いか……。
結局、このゴミクズに身体のことはタケルさんに言えなかった。
もう死のう。
タケルさんに受け入れられた時点で、私はもう満足だから……。
「バァカ」
「グッ……、てめっ」
一気に加速したヨルちゃんが明智さんの頭に蹴りを入れる。
その不意打ちに彼はそのままダメージがいく。
「ヨル!?」
「へへ、あいにくとあたしはこのクズ野郎のギフトは効かねえ」
そのまま明智さんを地面で拘束させるヨルちゃん。
その動きはまるで喧嘩や戦いに慣れているとしか言えない者の動きをしている。
「んだそりゃあ!?まさかてめえ?」
「『アンチギフト』、だろ」
「……待て!?なんでお前がその名前を……?」
「ははは。『アンチギフト』、お前がタケルのギフトに勝手に名前を付けたものなんだろ?なんで知っているかは教えてやんねえ!
ーー死ねっ!クズっ!命を償えっ!!ギフトによる悲しみの連鎖を断ち切る時間だっ!」
そのまま一直線に明智さんの喉をどこからか取り出したコンバットナイフで突き刺し――そして、切り裂いた。
「があっ……!?」
口をパクパクと開き痙攣をする。
立ち上がろうとしているものの、結局力が入らなかったのか力尽きて絶命した。
「秀頼!……秀頼!?」
タケルさんが泣きながらその亡骸に近付いていく。
動かない躯にタケルさんはヨルちゃんを睨みつける。
「秀頼を……、殺す必要あったのかよ……!ヨルッ!?」
「あったよ、こんなゴミ男を生かす価値がどこにある?あたしと明智のどっちに死んで欲しかったんだよ?」
「その二択ならお前だよヨル……」
「……そっか。お前はやっぱりずっとそういう奴だよな……」
悲しそうな顔でヨルちゃんはタケルさんに近付く。
タケルさんは親友の亡骸に寄り添っていた。
「こいつの仕出かしたことは悪人だ。犯罪者だ。目の前で佐々木まで殺して救いようがないクズだよ!…………でも親友だったんだよ……。分かり合える筈なんだよ……。どうして誰も秀頼の苦しみに気付いてくれないんだよ……」
「ごめん……、タケル……」
「きちんと罪を償って死ぬべきだろ……、俺はただ自首して欲しかったからここに呼んだだけだった……」
タケルさん視点から見る明智さん。
私視点から見る明智さん。
随所を見れば大体は同じ印象にはなるはずだ。
でも圧倒的な大きな違いがそこにはあるのがハッキリと見てわかった。
幼馴染で子供の頃からずっと一緒だったタケルさん。
中学時代に少し関わって事件を引き起こした黒幕。
それは、もはや見える印象も、抱く印象も何もかもが違う筈だ。
「タケルさん……」
「永遠……、行こう……。俺はもうヨルとは関わり合いたくない」
「タケル……!あたしはお前が……!」
「さようなら」
明らかな拒絶。
これ以降、タケルさんは仲の良かったヨルちゃんと話すことは2度となかった。
タケルさんはクラス内で特別仲の良かった明智さんとヨルちゃんを失った。
あんなことがあってもタケルさんは無償の愛をくれた。
私もタケルさんの愛にたくさん答えた。
でも、それは傷の舐め合いの関係だった。
そんな空虚で惰性のような恋愛をしていて何度別れようかという話になったかわからない。
でも、不思議と何かの力が働いているかのように、別れることはなかった。
私とタケルさんとの間に息子ができた。
タケルさんが息子には、『陽寄』と名前を付けた。
明言はしなかったけど、2人のモデルが居たのは言うまでもない。
幸せな家庭を作っても結局は歪んだものであり、傷の舐め合いの延長線上でしかなかった。
なにが足りないのかがわからなかった。
家族もある、愛もある、気持ちもある。
思いやりもある、優しさもある、幸福もある。
幸せの家庭と表現するにはたくさんのものが存在した。
でも明らかに1つだけ何かが無かった。
何年経ってもそれだけがわからなかった。
その答えはある日のとある出来事でようやく気付いた。
明智さんの命日。
決まってタケルさんは必ず仕事に有給を使ってまで明智さんのお墓に向かう。
誰もお参りに来ないのか、毎年凄い有様になっているのを彼は文句を言わずに淡々と片付ける。
こいつはこれが好きなんだと笑いながらお墓にコーヒーをぶっかける。
本当はこいつの大好物であるキノコも添えてやりたいくらいだと真面目に言ってんのかふざけてるのかわからない声でタケルさんは語る。
陽寄が7歳になった頃、タケルさんに1つの質問をした。
「お父さん、この人って誰のお墓なの?」
「俺の唯一の親友の墓なんだ。いつもバカやってさ、くだらない喧嘩ばっかりする悪い奴。でもすっげー楽しかったクズ男の墓だよ」
「そうなんだ!お父さんの顔、とても楽しそうだね」
「ああ、楽しかったよ」
寂しそうに、照れくさそうにタケルさんは笑った。
ああ、そっか……。
タケルさんの笑顔だけがないから、傷の舐め合いになるのか……。
タケルさんの笑顔は明智さんだけが独占しているんだ……。
じゃあ、……。
もうどうしようもないよね。
タケルさんがあげた線香の煙が天にまで届くのをずっと、ずっと見送っていた……。
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また、今日も変な夢を見た。
とても幸せな夢。
淡くて、とてもビターな苦い恋。
誰も憧れない様なアブノーマルな恋。
でも、それでも確かにそこには幸せが広がっていた。
だけど、それはあまりにも代償が大きすぎた残酷な夢。
私が、今抱く感情を逆さまにしてしまった様な、白を黒と認識してしまう濁ったガラスのような恋愛物語。
決して、彼を許せるものではないのだけれど……。
何回も別れそうになった私と彼を繋げていたのはあなただったのですね、……ゴミクズさん。
ここではない、違う世界の、彼女の物語。
あなたは幸せだったと思います。
二番煎じであったとしても、確かに彼女は幸せでした。
私は永遠を否定しません。
でも、それをわかった上で1つだけ言わせてください。
「今の私の方が幸せです」
幸せの家庭もない。
好きな人とは、なんの繋がりもありません。
ただの幼い小学生みたいな恋。
でも、確かにそこには私がいつかに求めたたくさんの人の輪が存在しています。
もう、鳥籠の人生なんて言わせません。
鳥籠は壊れました。
ようやく鳥は自由に空を飛ぶことが出来そうです。
ーー永遠に。
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