100日後に〇〇する〇〇

Zazilia

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3 出張

8日目 夢の中の戦い

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 ーーぼくは、身体を蜃気楼にして、排気口から倉庫内へ侵入した。
 アナちゃんの声が脳内に響く。
 1人が倉庫内に戻った。
 ぼくは、蜃気楼になったまま頷いた。
 天井から、倉庫内を見下ろす。
 25mプールほどの広さの倉庫内。
 高さは4mほど。
 棚やコンテナなどはなく、空っぽの屋内に、8人の男がいた。
 ぼくは、会話に聞き耳を立てた。
 売り手と買い手が4人ずつ。
 気さくに会話をしているようだったが、それは上っ面だけの、相手の機嫌を伺い、相手を騙すための立ち振る舞いだった。
 男たちはみんな人間だった。
 ぼくは、ダミアンさんから預かった閃光手榴弾のピンを抜き、男たちのど真ん中に落とした。
 反射神経の良い1人が、手榴弾を蹴ったが、すでに手遅れだ。
 手榴弾は目が眩む様な閃光を放った。
 ぼくは、倉庫内を照らしていた唯一の照明に向けて、糸の先にぶら下がる球をぶつけた。
 倉庫内は暗闇に包まれる。
 人間である彼らには、なにも見えないはずだ。
 ぼくは、蜃気楼の魔法を解き、タンパク質の肉体に戻った。
 ぼくは、倉庫の真ん中に、音もなく舞い降りた。身を伏せながら左足を軸に回転し、右足で男たちの足を払う。
 倒れ込んだ男たちの背中を足場に、ぼくは飛び上がり、銃を手に持ち、今まさに引き金をひこうとしていた男の手を左足で蹴り、男の顎を右足で軽く蹴り上げた。
 ぼくがコンクリートの床に、つま先をつけると同時に、男の体もまた、床の上に倒れ込んだ。
 暗闇の中で混乱に包まれ、騒ぎ出す男たち。
 残りは4人。
 ぼくは、一番近くに立っていた男の懐に飛び込み、その腹を、靴の裏で押した。
 男の身体は宙を舞い、背中から倉庫の壁に突っ込んでいった。
 人間である彼らの身体は、異常なほどに軽く感じられた。
 ぼくは、先端に球がぶら下がった糸を振り回して、男たちを見た。
 男たちは、暗視スコープを手に持っていた。
 念の為に持ってきていたのかも知れない。
 ぼくは、糸を振り回し、先端にぶら下がる球で、男たちの手にある暗視スコープを狙った。
 1つ目の暗視スコープは、男の手の骨とともに砕けた。
 2つ目の暗視スコープは、男の鼻の骨とともに砕けた。
 3つ目は、間に合わなかった。
 暗視スコープを着けた男は、サブマシンガンの銃口をこちらに向けていた。
 引き絞られる引き金。
 ぼくは、身体に銃弾を受けながら、久々の、身体を貫くような痛みを感じながら、3年前の戦争を思い出していた。
 ぼくは、身体に、首に、頭に、足に、顔に銃弾を受けながら、男の下へと歩みを進めた。
 ぼくは、男の前で立ち止まり、銃弾が空になるのを待った。
 男は、拳銃を持ち、ぼくの顔に向けて、引き金を引いた。
 1発、2発、3発、4、5、6、7、8。
 男は、空になった銃の引き金を追加で3回引くと、拳銃で殴りかかってきた。
 ぼくは、男の腕を払い除け、男の鼻に頭突きをした。
 男の身体は力を失い、床の上に崩れ落ちた。
 ぼくは、鉄の匂いを嗅ぎながら、深呼吸をした。
 唇を伝う、鉄臭い液体を舐め取り、ぼくは、もう一度深呼吸をして、男たちの身体を、糸で拘束した。ーー
 ぼくは、リクライニングチェアの上で目を覚ました。
 アナちゃんが、ぼくを見下ろしていた。
「おはよ」
「大丈夫?」アナちゃんは、何気なくという感じでそう言った。
「うん」ぼくは、身体を起こした。「ちょっと夢見てた」
「良い夢?」
「どうして?」
「にやにやしてたから」
 ぼくは、小さく笑った。「内緒」
「秘密が多いね」
 ぼくは、腕時計を見た。9時3分。空はまだ薄暗い。毎朝4時にアラームをかけているはずだったのだけれど、無意識に止めてしまっていたのかもしれない。「今日はどうしよっか」
「ベネチアに行こ」
 ぼくは、あくびをした。「良いね。シャワー浴びるからちょっと待ってて」


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