13 / 171
第一章 毒娘、冒険者になる
11:新人冒険者なので安全性を求めるのは当然です
しおりを挟むゴブリンとの死闘(笑)を制してから、私はゴブリンの右耳をはぎとり、死体には適当に土をかけ、すぐにオーフェンの街へと戻った。
冒険者ギルドに行って依頼ボードを見れば、ゴブリン討伐は常設依頼として貼り出されていた。
つまり、いちいち受注手続きをせずとも報告だけすればいいって事だよね。
と、いうことで『報告窓口』でゴブリン討伐の報告をする。
依頼内容としてはゴブリン五体分の右耳で銀貨三枚。約三千円と非常に安い。
新人冒険者が命をかけて戦い、なんとか五体倒しても一日の宿分くらいにしかならない。
こりゃランクが上げられない固有職が強制連行されると言うのも頷ける話だ。
まぁだから街内のお手伝い系の依頼とか、薬草採取系がFランク依頼に多いんだろうけどね。
今回、私は六体倒したんだけど、五体単位で精算されて持ち越しとかできないらしい。
一体分の耳を持ち続けるのも腐りそうなんで、六体分提出の五体分のみ精算という形にした。処分してくださいと。
ついでとばかりに「講習も受けずに討伐するなんて」と図書委員さんに怒られた。
やっぱポットさんの言う通り、新人が討伐依頼というのは本来しちゃいけないらしい。
すでに討伐しちゃった後だから仕方ないという感じだったけどね。
不可抗力なんですよ? 予定外なんです。
そんなこんなで一度宿に戻り固いベッドにダイブする。
戻って来た時にシェラちゃんに「もう!?」って顔されたけどしょうがないよね。
出て行ってから帰ってくるまでが早すぎるもんね。
何はともあれ、身体を休め、今一度冷静に先ほどの戦闘・スキル考察を振り返る。
♦スキル面
<毒感知>は半径10m以内の『毒』を感知できる。
決まった『毒』のみ? 感知できない『毒』もある?
以後戦闘中に<毒弾>を当てた相手にも使う予定。
<毒弾>は野球ボール大の毒液を剛速球で放つ魔法?
相手は『状態:衰弱毒』になり十秒毎に10固定ダメージ(被験者・私)。
時間経過で解けるのか不明。当てた敵が『毒』になる確率も不明。
また、帰り道での検証結果、木や水は『毒』が効かないらしい。
<毒弾>を当てて<毒感知>を使ったが検出されなかった。
おそらく生物限定。瓶などに毒液の保存も不可。生物に接触しないと消える。
<毒精製>は帰り道で使っても何も起こらなかった。
おそらく<毒精製>で作られた衰弱毒を<毒弾>で撃っているという扱いなのでは。
つまり<毒精製>のレベルが上がり、別の『毒』が精製可能となった場合、<毒弾>の効果も変わるのかもしれない。
♦戦闘面
まずポーションホルダーの入手が急務。
背嚢に入れっぱなしだと全く使えない。腰に下げるタイプのものを探す。
『クリハン』での疑似戦闘経験はかなり活かせる。少なくとも頭では分かるし目でも追える。
身体はぎこちないながらも身に着けた回避技術は使えた。
しかし少女の身体と片手に鉈というスタイルによりバランスがだいぶ違う。要修正。
当然だがゲームと現実世界では細かいところで相違点が多すぎる。
体力の問題もあるし汗が目に入る場面もあった。地面の小石が邪魔に感じる場面もあった。
服の衣擦れやブーツの履き心地、ステータスによる動き方の違いなど、気を付ける所・アジャストが必要な所が多い。
そして最後にやはり戦闘で鉈は使えない。
相手の攻撃を捌くくらいしか使えない、と言うか捌いた所で破損する可能性が高い。″武器″じゃないし。
現状は回避行動時のバランサー的な意味合いが強い。
とりあえずこんな所だろうか。
まずは<衰弱毒>についてより詳しく知る事と、身体の動きを慣れさせる所からかな。
ま、今日はもう戦いたくないけどね。
ポーションホルダーだけ買いに行こう。そんで寝よう。
♦
道具屋に行くついでにオーフェンの街をぶらついてみる。
時間もあるし、王都に行く前の仮拠点となるのだから見ておいて損はないでしょう。
もちろん気晴らしも兼ねている。大いに。
大陸の中央部に位置するジオボルト王国は、山や森などの緑が多く、面積だけなら隣の帝国をも上回ると言う。
どちらかと言えば縦長の国土。
その南方に位置するオーフェンは南部の中心とも言える大都市なのだ。
南部の街村へと続く交通の要所であると同時に、流通の要でもある。
山や森から各街、各村が集めた素材や食材、様々なものがオーフェンへと集まる。
逆に北にある王都方面から送られてくるものもある。
そうした都市だからこそオーフェンはこれほど活気があり、様々なものが売られ、人々が集まるのだ。
今まで村社会で生きてきた私としては、色々と衝撃的な所もある。
もちろん転生前の日本を知っているので文化レベルの低さや不自由さはあるが、それでもファストン村と比べると天地の差。
お上りさんの如く、何となく色々と目で追ってしまうのだ。
(しっかし色味がなぁ……)
これだけ人と物に溢れているのに、圧倒的茶色感。茶色でなくても、どれも渋い。
パステルカラーとかビビッドカラーとか、そういった染色は無理なのだろうか。
いくら私に前世知識があっても染色技術など分からない。
知識チートしてでもカワイイ色使いのものが欲しいんだけど……染色は無理だ。
藍染めが『藍』って植物を使うのは知っているが、その姿形も知らないし、そもそもこの世界に『藍』があるのか分からない。
あっても『〇〇草』みたいなこの世界特有の独特な名前になってそう。
これほどの大都市で、これだけの人数が居て、それでもお目に掛かれないって事はパステルカラーとか自体が存在しないのかもしれない。
うーん、いざとなれば白一色でオーダーメイドするしか……。
いや、ゲームじゃあるまいし白とか汚れが目立ちすぎるでしょう……。
いや、魔法技術による防汚加工でワンチャン……。
そんな悩みを抱えながら大通りを歩き、冒険者ギルド近くの道具屋へとやって来た。
ここは最初に初級ポーションを買ったとこだね。
初級解毒ポーションもここで買ったんだけど、どうやらFランクの初心者で解毒ポーションを買う冒険者とか居ないらしく、だいぶ驚かれたんだよね。
店の中には数人の冒険者、受付には恰幅の良いおばちゃんが居るので突撃する。
「おや、またポーションかい?」
「覚えてたんですか?」
そりゃ昨日来たばかりだけど、結構冒険者が入っている店なのに、よくこんな小娘一人を覚えているもんだ。
店員の鑑だね……と思ってたらどうも違うらしい。
「ははは、そりゃ最初からあんだけポーション買うんだ。忘れるわけないだろう?」
「はは、えっと、今日は腰に付けるタイプのポーションホルダーと、初級ポーション三本、初級解毒ポーションを五本下さい」
「五本!? あんた昨日も五本買ってただろう? そんなに買っても使いやしないよ?」
「念の為ですよ、念の為。採取も安全にしたいんでね。はははっ」
昨日も同じような言い訳をしたんだけどね。
薬草採取で間違えて毒草を切っちゃうと毒るらしいし。
まぁ<毒感知>で毒草の選り分けは大体出来るんですけど。
「はぁ……まあ初心者が安全にってのは悪い事じゃないからいいんだけどね。初心者らしからぬ用心の仕方って言うか、とても十歳には見えないよ、あたしには」
ははっ、やだなぁ、十歳の少女ですよ、私ピーゾンよろしく、ははっ。
……愛想笑いのまま店を出た。
7
あなたにおすすめの小説
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─
石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」
貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。
「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」
かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。
ときどき舞い込んでくるトラブル。
慌ててミーナを探しているルカ。
果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。
甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。
*サイトより転載になります。
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)
わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。
対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。
剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。
よろしくお願いします!
(7/15追記
一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!
(9/9追記
三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン
(11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。
追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる