ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

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第一章 毒娘、冒険者になる

閑話4:とある道具屋の息子は夢を見る

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■ポロリン 【セクシーギャル】 10歳


 ボクの家は冒険者さんたち相手の道具屋です。
 冒険者ギルドにも近くて、よくお客さんが来てくれます。

 死んだお父さんが元々冒険者だったらしくて、【商人】のお母さんと結婚してからお店を始めたそうです。
 お父さんは冒険者を引退してお店のお手伝いをしていました。
 でも病気で、ボクが小さい頃に死んでしまいました。


「ポロリン……お母さんを支えてやってくれよ……?」

「お父さん……グスッ」

「泣くんじゃない……お前は男の子なんだ……健康でたくましく……大きくなってくれ……」


 それが最期の言葉でした。
 それからボクはお店でお母さんのお手伝いをする事にしました。


 道具屋のお仕事って言うのはお客さんの接客だけじゃなくって、商品を仕入れたり、運んだりと、結構重労働です。
 お母さんは慣れた手付きで運んだりしていますが、ボクが見よう見まねでやってみても同じようには出来ませんでした。

 でも重いものを運んだりしていれば、筋肉がつくだろうし、背だって大きくなるはずです。
 お父さんにも「たくましく、大きくなれ」って言われたし、ボクは頑張ってお手伝いを続けました。


 ……今のところ、筋肉はついてないっぽいですし、背も思ったより大きくならないんですが。

 ……だ、大丈夫! 続けていればきっと筋肉だってつくから! ムキムキマッソーになるから!


 お店でお手伝いをしているうちに常連のお客さんにも声を掛けてもらえるようになりました。
 なぜか男性のお客さんばかりですが、皆さん魔物と戦う戦闘職だけあって、筋肉ムキムキでカッコイイです。


「うわぁ~、ちょっと腕触らせて下さい! すごい筋肉だな~、いいな~!」

「お、おい、待てポロリン、なんかちょっとヤバイから、ここ道具屋だから、ここだとほら、アレだから」


 決まって照れるような事を言いますが、身体に触れるのはやっぱ恥ずかしいですもんね。
 ボクも自重したい所ですけど、どうもムキムキの筋肉を見ると憧れが出てしまいます。

 女性の冒険者さんも来るには来るんですが、決まって「かわいい子ね~」と言ってきます。
 ボクはもう子供じゃないですし、かわいいなんて言われる年齢じゃありません。
 ちゃんとした″男″として見て欲しいです。お客さんですから言えませんけど。


 そんな日々を過ごし、十歳を迎えました。
 神殿で『職決め』を受ける日です。

 ボクとしてはやっぱり【剣士】や【拳士】など、身体を張って戦えるようなジョブが理想です。
 それで素材を自分で集めて、お母さんの道具屋に卸す。
 そうすればお店も助かるでしょうし、強盗とか入って来てもボクがやっつけられます。ムキムキパワーで。


―――――
名前:ポロリン
職業:セクシーギャルLv1
―――――


「おお! 固有職ユニークジョブ! 君、どうぞこちらへ!」


 …………え? セセセ、セクシーギャル?


 その日の事はよく覚えていません。頭が真っ白になって、気が付けばボクは自分の部屋のベッドに居ました。

 ボクは今まで、お母さんとお店を守る為に筋肉ムキムキの″男″になろうと頑張ってきたのに……セクシーギャル?

 ムキムキと正反対だし、″男″じゃなくて″ギャル″とか……。

 何かが頭の中でドンガラガッシャーンと崩れるような音を立てた気がしました。


 それからボクは自分の部屋に閉じこもりました。
 お母さんが心配して来てくれたので、誰にも言わないでと頼んだ上で相談もしました。


「なんて事……そうだったのかい……かわいそうに」

「ぅぅぅっ……グスッ……」

「でもね、ポロリン。ジョブって言うのは神様が決めるもんだ。自分で選べるもんじゃない。ポロリンが固有職ユニークジョブになったのだって、きっと理由があるんだよ。神様はポロリンを選んで授けて下さったんだ」

「理由って……どんな?」

「それは私にだって分からない。多分これから先、生きていく上で知る事だからね。だからね、ポロリン。今は閉じこもって泣いてたっていいさ。でもいつかは自分の足で踏みださなきゃいけないんだよ。歩いて行った先に答えがあるに違いない。大丈夫。お父さんだって天国から見守ってくれてるさ」


 お父さん……。
 ボクはちゃんと歩いていけるのかなぁ……。

 でも――


「だからって何で【セクシーギャル】なの?」

「それは、その……な、なんかそれも理由があるのさ、うん、きっと……あ、そうそう今日の夕飯だがね――」


 それからも数日、部屋に閉じこもりました。
 途中で幼馴染のシェラちゃんとかも会いに来てくれたけど、ジョブの名前までは言えませんでした。
 シェラちゃんに隠し事とかしたくないけど、それでも言いたくなかったから。

 でも、またすぐに訪ねて来てくれました。
 さすがにちゃんと伝えないといけない、そう思い始めていました。やっぱシェラちゃんは友達ですし。

 そして扉を開けると、そこにはシェラちゃんともう一人、知らない女の子が居たんです。
 薄い紫の髪をした、同い年くらいの女の子。
 かわいらしいけど、どこか達観しているような鋭い目付きで、雰囲気は外見以上に大人っぽいと感じました。


 聞けばその子――ピーゾンさんというらしいです――は、ボクと同じように今年の『職決め』で固有職ユニークジョブになったらしいです。
 シェラちゃん曰く、すでに冒険者として活躍しているとか。

 すごい……! ボクが部屋でうじうじしている間に、こんなに進んでいる人が居るなんて……!

 しかも相当物騒なジョブになったらしく、早くも国の役人さんに目を付けられているらしい。
 ボクも神殿で真っ白な頭のまま聞き流していましたが、国に管理されるとか、王都に行かなきゃいけないとかは聞いています。
 でもさすがに強制連行されるとか、すでに役人さんが接触しているとか、そんな事になってるなんて知りませんでした。


 ボクが思っていた以上に固有職ユニークジョブに就くという事は大変だったようです。
 このままだとボクも捕まって強制的に研究されたりするんでしょうか。

 怖い……なんだか急に不安になってきました。


 ちなみにピーゾンさんのジョブは……え? 【毒殺屋】? えーと屋号?

 と、とんでもないジョブがあるんですね……物騒すぎると言うか……。
 な、なんかよく分からないけど、少し安心したと言うか、【セクシーギャル】がマシに思えるって言うか、ボクも前を向けそうな気がしてきました。


「だったら私と組めばいいんじゃないの?」


 ピーゾンさんがそう言ってボクを冒険者のパーティーに誘ってくれました。
 本当に嬉しかったです。

 冒険者になりたいとは思ってましたけど固有職ユニークジョブのせいでパーティーが組めそうもありませんでしたし、同じ固有職ユニークジョブのピーゾンさんなら内緒にせずに相談出来そうですし。

 しかも冒険者登録したばかりだって言うのに、ワイバーンを倒すほど自分のジョブを理解し使いこなしているらしいです。

 ワイバーンを倒すとか……ベテランの冒険者さんでも難しいはずなんですけど。
 それだけ【毒殺屋】っていうジョブがすごくて、ピーゾンさんがそれをものにしているという証拠なんでしょう。
 同い年ですけど、すごく頼りになる先輩。しかも同じ固有職ユニークジョブ

 シェラちゃん、ピーゾンさんを連れて来てくれて本当にありがとう!
 これでボクも前を向いて歩けそうです!


 もう自分の部屋に閉じこもるのはやめます。
 自分の足で、ここから一歩踏み出します。

 見ててね、お母さん、お父さん、シェラちゃん。

 ボクも冒険者になって筋肉ムキムキになるから!


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