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第一章 毒娘、冒険者になる
25:毒殺屋ですが剣技の方が得意なんです
しおりを挟む「よーし、ここまでにしておくか。いや、素晴らしいな!」
「は、はい、ありがとうございましたっ」
「攻めはともかく守りだけなら今すぐにでもDランク、いやCランクパーティーからお誘いが来るかもしれん」
五分も掛かっていないだろうが、ある程度打ち合って職員さんとポロリンの模擬戦は終わった。
単純に時間が掛かり過ぎたのか、職員さんの方がボロが出ると思ったのかは分からない。
ポロリンは終始守っていただけだが危な気なく見えた。良きかな良きかな。
周りのガキからは歓声。ホールから覗き見している冒険者からも歓声を受ける。
照れてこちらに逃げて来る様はどう見てもカワイイ。
うつむきながら内股走りしてくるのヤメロ。赤ら顔ヤメロ。
「あとは君だけか……どうする? やるかい?」
職員さんが私に木剣を差し出してきた。あー、私しか残ってないのか。
その様子を見るに、私が付き添いで来ている事も知っているっぽい。
ワイバーンの事とかも当然知っているだろう。
それでも模擬戦に誘ってきたって事は……実力を知りたいって事かな?
でもギルドが知ってるのは私が【毒殺屋】だって事でしょうに。
鉈は下げてても、剣で戦えるとは思ってないはず。じゃあ何で誘うのか……?
うーん分からん。
でも、これはチャンスかもしれん。
衆目の中、私が剣で戦える所を見せれば、私が【毒殺屋】だとバレる可能性が減るんじゃない?
「じゃあやります」
「やるの!? ピーゾンさん!?」
「ちょいと行ってくるよ」
「が、頑張ってね!」
美少女(男)の声援を受け、職員さんと向かい立つ。
「ははっ、もう構えを見ただけでも別格だと分かるな。悪いな、興味本位だったんだが」
「こっちも興味本位ですよ。職員さんの本気が見たいなーって」
「そりゃ光栄だ。手加減なしで大丈夫か?」
「もちろん。木剣なら死なないですしね」
小声でそんな事を言い合いつつ、模擬戦という名の真剣勝負が始まった。
明らかに職員さんの動きが違う。
今まではゴブリンの動きを意識してやってたのが、ちゃんと【剣士】になってる。
職は何なのか分からない。
でも左手の動きを見るに、普段は盾を持っているんだろう。
つまり片手武器の扱いには長けている。木剣は使いやすいって事だね。
「しっ――!!!」
鋭い踏み込みからの袈裟斬り、体勢を崩さないまま逆胴。スムーズだね。
でも出所と剣筋が分かりやすすぎる。避けるのは容易い。
体格が良いのに速さがあるってのが難点だね。
全くこの世界のステータスっつーのは厄介なもんだ。
「くっ……! はあっ!!」
避けられたのが予想外だったのか、連続して鋭い剣を振るうようになってきた。
片手剣ならではの速度と、体格を活かしたパワー……この人ランク結構上じゃないの?
それでも当たらないので、今度はフェイントも使ってくる。
でも小技は苦手っぽいね。フェイントだって丸分かり。バレバレだお。
本当は【剣士】系のスキルを見たかったんだけど、使う気がないっぽい。
まぁ公衆の面前で見せるものでもないか。
しょうがない。こっちも攻撃しよう。さくっと終わらせよう。
「はあっ!! ――がはっ!!」
大振りになった所を見計らってのカウンター。
体格差もステ差もあるから本当なら私の攻撃なんて効かないんだろうけど、カウンターなら多少は効くでしょ。
向こうの速度が乗ってる所に、無防備な箇所を目がけて入れてるんだから。
とりあえず脇腹に入れたけど、その一撃でどうやら職員さんは諦めたらしい。剣を下ろした。
「はぁ……すごいな、聞いちゃいたが」
「ありがとうございました」
「ああ、こっちこそな」
周りで歓声を上げてるのはポロリンだけだね。他はポカーンと。
まぁ放っておきましょう。
講習が終わったらさっさとずらかるぜ、ポロリンよ。資料室に行かねば。
♦
どうやら講習をしていた職員さんは現役を退いたばかりのBランクだったらしい。
後から群がって来た冒険者の人たちがそう言ってた。
でもスキルとか使ってないしねぇ。結局あの人の本気も見てないわけだし。
群がって来た人たちは私とポロリンを自分たちのパーティーにって五月蠅かったんだけど、当然全部お断り。
私たち王都行かなきゃいけないし。
固有職だって言えないけど。
ポロリンはあわあわしてたけど、そんなポロリンを性的な目で見て来るヤツらも居る。むしろそっちのが多い。
こう見えて男の子ですよーと言いたいが、それすらめんどくさいので無視。
仮に女だったとして十歳児に欲情するんじゃないよ。このロリコンどもが。
……まぁこの世界ではアリなのかもしれんが。
貴族とか王族とか、子供なのに婚約とかありそうだし。
そんなわけで逃げるように資料室で勉強したり、街外で特訓したりした。
特訓場所も少し変えてみる。
南門付近での訓練を三日でやめて、北門側でやり始めてみた。
こっちだとゴブリン・角ウサギではなく、ワイルドコッコ・牙ネズミ・青トンボなどが出るらしい。資料室有能。
依頼も一応受けて来た。
ネズミとトンボはFランク、コッコがEランクだ。
危険を冒すつもりはない。まずは私の麻痺が効くか調べてから訓練相手にしようと思う。
「やっぱり効きますね」
「効いちゃうね」
「どうしましょうか。ボクも戦っておきたいんですけど」
「私も回避練習したい。毒らせるだけにしとこうか」
北門側の魔物は南門側のゴブリン・角ウサギに比べてちょこまか動くのが多い気がする。小柄ですばしっこい。
ポロリンの練習にはちょうどいいかもしれない。
何体も同時に戦うし、多方面からの素早い攻撃に両手のトンファーで防ぎ切れるか。そこからの攻撃で倒せるか。
<呼び込み>と<挑発>を織り交ぜながら戦ってもらおう。
私は私で小柄な敵に対する回避と、<衰弱毒>にするとどれくらいで死ぬのか検証。だいたいのHPが分かる。
まぁ私と同じように十秒10ダメージだったら、だけど。
人と魔物で違うのか、魔物によっても違うのか、そこら辺は分かりません。
あ、コッコはシェラちゃんにお土産します。鳥肉旨し。
♦
「これでポロリンさんもEランクですね」
「うわぁ! やったよピーゾンさん!」
「うむうむ」
北門側で訓練を始めて四日目、登録から七日でポロリンがEランクに上がった。
FランクからEランクへの昇格条件は『討伐依頼五件を含む、Fランク依頼の二〇件達成』というもので、戦闘職となった冒険者であれば入門編のような扱いだ。
非戦闘職や形だけの冒険者であっても上げやすいようになっている。
これがDランクへの昇格となると『Eランク依頼の一〇〇件達成』となり若干難しくなる。
おまけに昇格試験のようなものもあるので、一般的にはEランクまでが初心者扱いされる。
Dランクが一人前、Cランクがやや強い、Bランクがベテラン、Aランクがヤバイ、Sランクが英雄……って感じかな。
ホントはもっと早くに昇格できたんだろうけど、訓練第一でやってたからね。
急いでランク上げる事もないし問題ないでしょう。
「どうする? もう王都行く?」
ポロリンがそう聞いてくる。
元々オーフェンに滞在していたのは、スキルを検証する為、冒険者というものに慣れる為、そして王都までの旅費を含めた金策の為だ。
そこにポロリンの加入があり、ポロリンのスキル検証と冒険者として戦う準備も加わった。
ポロリンにはそういった事を説明して「とりあえずEランクになったら王都に向かおうか」と言ってある。
ワイバーン資金も含めて目的は達したと言っていいでしょう。
でも、一つやっておきたい事があるんだよね。
「行く前にオーフェンのダンジョンに行ってみたい」
「ダンジョン?」
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