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第二章 毒娘、王都デビューする
33:王都に来たばかりの田舎者ですがテンプレくらいました
しおりを挟む王都セントリオの大通りを眺めながらゆっくりと北へ、中心部へと向かう。
大通りは馬車が楽に並んで走れるほどの広さがあり、その脇には歩道もある。
辻馬車の停留所もあった。やはり広い王都の移動には馬車も使われるらしい。
歩道には露店も所々にあるし、宿屋や道具屋などの店々も並ぶ。
やはり中世モダンな雰囲気だが活気があり、どの店にも目を引かれる。お上りさん状態だ。
大通りも歩道も綺麗な石畳。
街灯も魔道具で統一されて、オーフェンよりも断然都会な雰囲気だ。
ファストン村がいかに寂れていたのかよく分かる。
私たちは事前情報をもとに、まずは冒険者ギルドを目指した。
拠点変更の手続きの為だ。
ついでに宿屋とか武具屋、道具屋の情報なども知りたい。
冒険者ギルドは王都の中心部、大十字路にほど近い所にある。
やはりギルドみたいな人が多く利用する施設は中心部になるのだろう。
近づけばそれはすぐに分かった。
デカイ。
オーフェンの冒険者ギルドは宿屋の少し大きいバージョンだったけど、王都のギルドは市役所って感じ。三階建てかな?
入口は広く開放されていて、見るからに冒険者な人たちがひっきりなしに出入りしていた。
「うわぁ~すっごいですね~!」
だからその感動するポーズヤメロ。胸前でグーを合わせるヤツ。
あからさまな新人臭を出すんじゃない、なめられたら絡まれるパターンなんだよ。そういうお約束なんだよ。
そんなわけで私は堂々と入り、ポロリンを先導する。
どうでもいいが、私の前後にニョーンと生えた魔剣が本当に邪魔臭い。
気を付けないと人に当たりそうで怖い。やっぱ鞘買って背中に下げよう。
いや、魔法の鞄に収納すればいいのか? 魔法の鞄ってこんなデカイ剣入るのか?
……とりあえず手で縦に抱えて持っておきます。
ギルドに入れば、やはりオーフェンとは全然違う。入口のスペースが広い。
左には依頼ボードが並んでいるが、ランク毎のボードが区分けされるようにいくつも並ぶ。
依頼票もずいぶん貼られていた。
右を見れば受付カウンター。
受付嬢が十人くらい並んでおり、それに並ぶ冒険者たちも列を成す。
どんだけいるんだ冒険者。
奥側半分はやはり酒場スペースとなっており、いくつもの座席が並ぶ。
もう半分は解体場兼倉庫らしい。
看板を見るに、地下が訓練場で、二階は会議室など個室があるようだ。
依頼を見たい気持ちもあるが、今は手続きだね。
私たちはとりあえず空いてそうな新規登録窓口に向かった。
「いらっしゃいませ、新規登録ですか?」
「いえ、拠点変更の手続きに」
そう言って私たちはギルドカードを提示した。
受付嬢のお姉さんは「ど……っ!?」とか「セ……っ!?」とか言いかけてたけど、そこはプロなのだろう、取り直したように淡々と手続きをする。
「これでピーゾンさん、ポロリンさんの変更手続きが終わりました。パーティー【輝く礁域】として活動して頂けます。登録時にお話があったと思いますが、本日より五年間、王都からの拠点変更は出来ませんのでご了承下さい」
「「はい」」
「ほかに何かございますか?」
「宿屋とか武器屋とかオススメの場所を知りたいんですけど」
「でしたら、こちらの冊子をどうぞ。希望者に配布していますので」
おお、ガイドマップ! ただで貰えるのか、本なんて高いのに。
さすが王都のギルドは格が違った。有り難く頂戴します。
酒場スペースで座席を押さえ、ポロリンと並んで座り、ガイドマップを広げる。
うわ、かなり詳細。王都の形もよく分かるし、通り道も結構細かい。
こうして見ると王都が区分けされているのがよく分かる。
北の中央に王城があって、その近くが貴族区。十字に走る大通り沿いを中心に商業施設が並び、各ギルドも中央区に集まっている。
中央区から離れるほど住宅区が広がる感じかな。北東・北西・南東・南西にある。
学校は北東区。神殿は北西部。
あ、ダンジョンが王都内に四つもあるのか。
「あ、見て。武術用武器専門店ですって!」
「おお、それはチェックだね。あ、共同風呂あるじゃん」
「宿屋もいっぱいありますねぇ。低ランクで近いとこだと、ここかここ……」
「うわっ、ファンシー防具って何!? なにここ絶対行く!」
「えぇぇ……ボク惹かれないんですけど……」
そんな感じでガイドマップを読み漁っていたら、突然、向かいの席にドカッと座ったヤツがいた。
何だ、と見れば高校生くらいのギャル男……っぽい冒険者。ニヤニヤしながら見てやがる。
ああん? と思わず睨みつける。
「何よ」
「おめーらよぉ、固有職だろ?」
「は? 違いますけど」
「とぼけんなって。この時期に拠点変更に来るガキが他にいるか。おまけに得物もバカデカイ剣と鉄の棒か? 見るからに普通じゃねーよ」
なんなんだこいつ。人前で固有職とかバラすんじゃないよ。頭湧いてんのか?
「まぁ聞けよ、話しかけたのはオサソイだ。俺は固有職だけのクラン【唯一絶対】のギャレオだ。お前らもどうせ固有職だって隠してパーティーもろくに組めないんだろ? だから【唯一絶対】に入れてやろうって話だ」
うっぜえ……。
オーフェンで固有職だけのクランがあるって聞いたけど……こいつがソレか。
こんなのが七人以上居るっての?
うわぁ……王都に集まっている固有職に少し期待してた部分もあるんだけど、これはないわー。最悪すぎる。
固有職同士で集まりたいって気持ちは分かるけど、集まった結果増長しちゃってんじゃん。
別にクランとして新人に声を掛ける、スカウトするってのは良いと思うよ?
でも誘うにしても、何で公の場でこっちが固有職だとバラすような真似をするのか。
何で上から目線なのか。意味が分からない。
「お前らもアレだろ? 管理局に言われて固有職だって隠してるクチだろ? んなもんほっとけよ。いいか? 固有職ってのは″選ばれし存在″なんだ」
は?
「能力は世界でただ一人。どんな職だって一般職とは価値がちげえ。国は俺たちを守るのが当然。俺らを守ろうと国も必死ってこった。だから何をやったって許される。そういう選ばれた存在なんだよ、俺らは」
気持ちわるっ。
つまりアレか? 固有職はレアで国の保護対象だから何をしたって守ってもらえると?
だから″選ばれし存在″だと?
これは酷いな。一周回って呆れるわ。
「クランに入れば固有職同士で組めるし、レベル上げもスキル調べるのだって可能だ。なんせみんな固有職の厄介さを知ってるからな。だからお前らも入れてやろうって話さ」
「いや、行きませんけど」
「はぁ? あのなぁせっかく誘ってやってんだぞ? 大手クランの【唯一絶対】によぉ! てめーらも固有職なら有り難く思えっつーの!」
「勧誘どころかただの迷惑行為でしょ?」
「んだと!? てめえッ!!」
さすがに大声出し過ぎだし、めんどうなのでポロリンを引っ張ってギルドを出ようかと思った……その時だ。
近づきながら声を掛けて来る男がいた。
「やれやれ、まるで新人いじめだね。少しは静かにしないか」
「ああん!? ……っ! て、てめえ……ストレイオっ」
大げさな手振りでヤレヤレポーズをしながら私たちの後ろに立つ、二〇歳過ぎの貴公子風イケメン。
ストレイオというらしい。
彼は少しの笑みを浮かべながら、笑っていない目でギャル男を見る。
「固有職は選ばれし存在だから何をしても許されるって? それは【唯一絶対】としての考えなのかな?」
「るっせい! お前にゃ関係ないだろうが!」
「大ありだよ。冒険者のマナーを守らせるのは大手クランの役目でもあり、Aランクの役目でもあるだろう? なのに君はそれに反している。それは彼女を含めた【唯一絶対】の総意なのかと聞いているんだ」
ストレイオさんの笑みが消え、明らかにギャル男を睨んでいる。
つーか、このストレイオさんって人はAランクなのか。
すげー、初めて見た。さすが王都。
「くっ……! いいか、おめーら! 今さら入れて下さいっつっても遅ぇからな!」
「いや、だから入らないって言ってるでしょ」
「だそうだよ。君もさっさとおうちに帰りたまえ」
「チッ!」
舌打ちを残してギャル男はズカズカと去って行った。
あんなのが居るクランとか問題外なんだけど、まじで。
何が選ばれし存在だよ、頭湧いてるわー。
「いやはや災難だったね、君たち」
「いえ、ありがとうございます」
「あ、ありがとうございますっ」
「【唯一絶対】も確かに有力なクランなんだけど、最近は少し目に余るね。君らも何かあったらギルドに相談する事だ。僕も出来る限り力になろう」
「「ありがとうございます」っ!」
そう言い残して爽やかイケメンも去って行った。
やれやれ、オーフェンのギルド登録でテンプレ回避したと思ったら、まさか王都で絡まれるとは……前途多難だね、こりゃ。
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