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第二章 毒娘、王都デビューする
34:新米魔剣保持者ですが鞘が欲しいです
しおりを挟むギルドを後にした私たちは、その後出歩く元気もなく、近場の宿で一夜を過ごす。
ガイドブックに載っていた新人と中級者の間くらいのランクの宿。
十歳の新人が泊まる宿ではないが、何か無性に安全性を求めてしまった。後悔はない。
むろん二人部屋である。男女ではあるが十歳の新人冒険者に個室という概念はない。
私としてもポロリンが少年であるという事実は未だに若干疑っている次第だ。
だって部屋に着くなりベッドメイクし出すし、背嚢から荷物を出せばきちんと折りたたんだ着替えが出て来る。
どんだけ女子力高いんだって話だよ。お姉さんびっくり。
夕食後には改めてガイドブックを広げ王都の地理をお勉強。
翌日からは本格的に冒険者活動をする前に王都を色々と見て回ろうと計画していた。
やらなければならない事は以下の通り。(優先度高い順)
・山賊の宝、宝石と装飾品の換金+コボルトキングらの魔石売却→現金調達。
・魔剣の鞘の購入。
・魔法の鞄の価格調査。あわよくば購入。
・トンファーの新調。
・防具の新調。優先度はポロリン>私。
・錬金術ギルドでスタミナ回復剤の入手。道具屋で売ってるならそれでも可。
・五年間住む場所の物件探し。
「多過ぎません、これ? 明日一日で回れるんですか?」
「無理そうなら明後日もだね。無理はしない。って言うか王都広すぎだし」
なるべくギルドのある中央区付近で回るつもりだけど、実際に歩くとかなり時間が掛かるはず。
慣れない土地だし、人も多いからね。
我ら十歳の田舎者。おのぼりさん上等で行きます。
そんなわけで翌日、朝食を終えるとすぐに行動開始。
まずは色々と売却して資金調達したいところ。
しかしこれも一つ問題があって、山賊のお宝にあった装飾品の指輪とかなんだけど、これが果たして装備品かただのアクセサリーか、と。
アクセサリーなら売るだけなんだが、有用な装備品だったら使いたい。
ちなみに山賊のお金の三分の一はネルトに渡しています。同じ被害者だし取り分としてね。
宝石とかはいらないらしいから私たちが貰っている。
じゃあそれ装備してみればいいじゃん、そんでステータス画面で装備品の内容確認すればいいじゃん、って思ってたんだけどポロリン曰くそれは危険らしい。
いわゆる″呪いの指輪″的なものもあるらしく、装備したら外れないとか何かしらデメリットがある場合があると。
だからちゃんと鑑定してもらった方が良いと言う。
そんなわけで冒険者ギルドの近くにある直営の道具屋に来た。
直営店は品揃えも超普通。買い取り額も販売額も超普通。
たぶん宝石とか店によって多少買い取り額違うんだろうけど、そういうのを無視して安全確実に鑑定・買い取りしてもらう事にした。
「うーん、装備品はないね。全部普通の宝石とアクセサリーだ。ただ量が量だから売ってくれるなら色つけるよ」
「魔石はどうです? ここで買い取れます?」
「買い取れるよ。コボルトは銀貨一枚、ゴブリンは銅貨五〇枚、コボルトキングが金貨三枚かね」
おおっコボルトキング高い! 三〇万円か!
ポロリンと相談して全部売っちゃうことにした。しめて約金貨一四枚。
やっぱ宝石とかは盗品じゃなくていざというときの予備費だったのかも。
王国に潜入してるから万が一のね。
貨幣じゃなくて宝石で持っておこう的な。
これにワイバーン資金と山賊の持ってたお金を合計して金貨五四枚が今回の軍資金となる。
ポロリンはおばちゃんに結構もらってて、私は私でワイバーン資金からお小遣いを別にしているので、それらには手をつけず、パーティー資金として金貨五四枚という事。これで装備とかも考えようとしてます。
山賊さん、拉致ってくれてありがとう。
結果的に金銭面で助かりました。
山賊じゃなかったけど。
ちなみにここの道具屋に魔法の鞄は置いてあったんだけど、背嚢タイプで容量は1.5m四方くらい。
時間経過あり。これが標準らしくお値段金貨二十枚だそうです。
私の魔剣もギリ入りそうだけど、急な戦闘時に背嚢に手をつっこんで武器出すってのもなぁと。
ただ魔剣を見せびらかせて歩くのも不安だから収納する事も考え中。
いずれにせよ鞘は買うつもりなので武器屋へ。
いや、これがね、魔剣専門鍛冶屋ってのがガイドブックにあったのよ。
需要あるのかって感じなんだけど、とりあえず行ってみようと。
場所は南西区、中央区からは少し離れるが王都にここ一軒しかないから仕方ない。
そりゃ魔剣を扱う店が何軒もあるわけがないよね。
むしろある事の方が驚きなわけで。
大通りから少し奥まった路地にある小さめの工房。
その名も『魔剣屋』。まんまだ。
でも魔剣売ってるわけじゃないよね? これで売ってたら驚きなんだけど。
ポロリンと場所を確認しつつギィと扉を開けると、カウンターにはスキンヘッドの親父が座っていた。
その手前には客らしき女性が一人。
青い修道服と白銀の鎧を合わせたような独特で豪奢な装備。
背は高く、金髪をお団子にして後ろでまとめた髪、キリッとした目は鋭い。
修道服っぽいせいで神聖にも思えるが、どちらかと言うと剣士的なカッコよさがある。
神殿組織の神殿騎士とかかな? そんなものがあるのか知らないけど。
しかし『魔剣屋』に客って……この人も魔剣持ちって事?
「らっしゃい! ちょっと待っててくんな!」
親父がこちらを向いてそう声を掛ける。
接客中だからね。店内で待っていましょう。
『魔剣屋』の店内は色々とごちゃごちゃしている。見る分には飽きない。
魔剣が置いてあるわけないのは当然だけど、普通の剣とかが少し。
あとは鍋とか包丁とか日用品が多い。
なんとなく村の武具店を思い出すなー。ベルダさんとこ。
「ふむ、相変わらず良いメンテナンスだな。助かる」
「ったりめえだろ? また持って来いよ、ミルローゼ」
ミルローゼと呼ばれた女性は剣を受け取ると、店を出る前にこちらを見た。
その剣が魔剣なのか見たかったんだけど……ちょっと分からなかったな。
魔剣だったら真っ黒だろうし、見れば分かると思うんだけど。
「すまないな、待たせたようだ」
「いえいえ」
「この店で他の客に会うのは珍しい。鍋でも買いに来る客は居るんだろうがな」
「るっせいよ! 余計なお世話だ!」
カウンターの親父が口を挟む。
やっぱ『魔剣屋』は需要がないんだろーなー。だから日用品も売ってるんだろうけど。
「ははっ、君たちは冒険者かい?」
「はい、Eランクのピーゾンです。こっちはポロリン」
「そうか。私はAランクのミルローゼ。これも何かの縁だ。ギルドで会ったら気軽に声を掛けてくれ」
Aランク!? 昨日のイケメン貴公子と言い、やっぱ王都は強い人がゴロゴロ居るもんなんだね!
しかも魔剣持ち? なのかな?
腰に下げているのは大剣……かな? 直剣というよりは大きそう。
本当は「それ魔剣ですか?」って聞きたいけどあんまり詮索するのもなー。
逆に私の事とかあんまり話したくないし。
ミルローゼさんはそれ以上は特に言う事もなく、挨拶だけで店を出て行った。
「はぁ~Aランクかー。カッコイイ人だったね」
「すっごく綺麗な人でしたね!」
……それはそうなんだけどさ。
なんかポロリンが言うと皮肉にしか聞こえないんだよなー。
あと数年すればポロリンはミルローゼさん以上に綺麗になると思うよ。今は超絶美少女だけど。
「んで嬢ちゃん、それ魔剣だよな! 早く見せてくれ!」
待ってましたとばかりにハゲ親父が食いついてくる。
よく布でグルグル巻きのコレを魔剣と思ったもんだ。
まぁこんな変なのぶらさげてこの店に来れば分かるもんかね。
「えっと鞘作って欲しいんで、見積もりを……」
「んなこたぁ後だ! まずは見せてもらうぜ!」
そう言ってカウンターから身を乗り出し、私の魔剣を奪い取る。
この親父ヤバイんじゃないか……? 一抹の不安を覚えた。
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