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第二章 毒娘、王都デビューする
35:美少女のトンファーを新調したいです
しおりを挟むハゲ親父は布をさっさと剥ぎ取り、武器鑑定を行う。
武器鑑定ってのは【武具商人】や【鍛冶屋】に出るスキルで、他にも防具鑑定とかアイテム鑑定みたいなスキルもあるらしい。
さっきの道具屋でお宝を見て貰ったのもアイテム鑑定だね。
「ほぉ~【魔鉈ミュルグレス】か。大剣系の魔剣はいくつか見たが、大鉈は初めて見たな。こりゃ面白ぇ」
「そんなに魔剣見てるんですか? って言うかそんなに魔剣あるんです?」
「今王都にあんのは四~五〇本ってとこか。まぁ貴族の好事家も含めて国内の魔剣が集まってるってだけだが」
あー、装備しないでコレクションされてるパターンもあるのか。
持ち主が死んだとかで。
持つだけで所有者登録されて剣の形が変わっちゃうと思うんだけど……私の時みたいに。
直剣の状態のまま保管する術があるのかな?
で、このハゲ親父はとにかく魔剣マニアらしく、王都の冒険者が持ってる魔剣はほとんど把握しているらしい。
メンテナンス依頼とかも多いとか。
しかしそれだけで食っていけるわけもなく日用品も売っていると。
「うちは魔剣屋だ! 魔剣を扱うのが本業だよ!」
あくまでそう言い張る。どう見ても副業収入の方が大きいだろう。
「攻撃力50ってやっぱ低いですか?」
「思いっきり低いな。ミスリル以上、アダマンタイト未満ってとこか」
「あ、でもミスリルより強いんだ」
変質者のおっさんの見立ては正しいらしい。
「それだってモノによるぜ? それに攻撃力より【状態異常特攻】ってほうが重要だ」
「そうなの?」
「こういう特殊効果のついてる魔剣ってのは場合によっちゃ段違いの威力を発揮する。おそらく敵が状態異常にかかってる状態だと攻撃力が跳ね上がるんだろう。まぁ、それがどんなもんかは分からねえがな」
ほぉ、そう考えるとやっぱ私専用の魔剣ってことなんだろうね。
私は毒しか能のないデバフ担当要員だし……悲しい。
私専用でなぜ鉈の形状になったのかは遺憾に思うところなのだが。
「しかし片刃の大剣ってのは初だな。どう使う?」
「あーそれも相談したかったんですけど、普通に背中に背負うと魔剣ってバレちゃって危険かなぁと」
「そりゃ柄巻でもすりゃ黒くは見えないだろうさ。背負ってる限り鑑定でもされなきゃバレねーぜ」
「おお、その手があったか」
柄巻ってあれだよね、刀の柄に巻く糸とか帯みたいなやつ。
滑り止め的な意味でも巻いてもらったほうがいいな。それ採用。
ちなみに魔法の鞄から出すのは止めた方がいいらしい。
出しづらいし、咄嗟の時に柄を握ってすぐに構えるってのが難しいとか。
鞄から出す時に柄を持てるとは限らないってことだね。
「んじゃやっぱ背中かな。普通の鞘みたいに引き抜くのは無理だから、上にスライドさせて出すみたいな」
「だよな。嬢ちゃんの身長と同じくらいデカイもんなぁ。やっぱそうなるか」
それから実際に背負った状態からの素振りをして見せると「おお、振れるのか」と驚かれ、ポロリンからも感嘆の声が上がる。
いや、ポロリンは山賊のアジトで模擬戦したでしょ。
で、寸法とか測ったり、細かい箇所の注文をつける。
「あとは……材質とか色とか注文あるか?」
「とりあえず軽くて、色は白とかピンクとか……」
「いやピンクとか無理だわ。白っぽいので我慢してくれ」
やはりこの世界にメルヘンとか可愛らしさを求めてはいけないのか……まぁ白っぽいのでも十分か。
例のファンシー防具屋に期待しましょう。
出来上がりは四日後らしく、代金は先払いでお願いした。
やはり暇なんじゃないだろうか。経営が心配です。
ちなみにお値段は金貨二枚ほど。
オーダーメイドにしては安いと思う。魔剣って人によって形状変わるらしいし。
剣を預ける事になるかと思ったけど、サイズだけ測ってそれで大丈夫らしい。
というわけでまた布でぐるぐる巻きにしてたすき掛けにする。
前後のニョーンが気になるが四日間の辛抱だ。
さあ、次はポロリンのトンファーか。
場所は南東区。ここが南西区だから中央の大通りを突っ切る感じだね。
少し歩くから途中の道具屋で魔法の鞄もチラ見していきましょう。
ちょうどいい感じの道具屋さんを大通り沿いにいくつか見つけ、ウィンドウショッピング感覚で値段調査。
「やっぱ魔法の鞄は高いね」
「中古でもほとんど差がないしね」
目抜き通りを歩きながらポロリンと話す。
何店か道具屋を見てまわったが、魔法の鞄はギルド直営店と大差ない。
むしろちょっとしたデザインで高くなってたり、付与士の差で高かったりしていた。
基本的に背嚢が多く、入口と同じサイズのものしか入れられない為、小さい袋状のものは少ない。
商人用に″魔法の箱″みたいなものの方があったりする。
私としてはウェストポーチみたいなものが欲しいのだが、そうなると口が狭いので入れるものも限られる。
おまけに容量も少ない。時間停止とか以ての外で存在しないんじゃないかと思う。
理想はワイバーンを瞬時に収納し、そのまま持ち帰るってヤツなんだけど、そんな都合の良いものはなさそうだ。
とりあえず魔法の鞄は保留という事で、私たちは南東区の大通りから一本入った通り沿いにある武術用武器専門店という所へやって来た。
その名も『燃竜屋』。
武術……燃竜……何となく嫌な予感しかしない。
炎を吐く竜の絵が描かれた扉をギィと開ける。
「こんちわー」
「ファオッ! ぃらっしゃいッ!」
カウンターの向こうで斜に構え、腕を組んでいたのは、黄色いカンフースーツを身に纏い、しゃくれ顎の目立つ……西洋顔の店主だった。
なんか違う。金髪だし。
親指で鼻をビッとやってるけど、なんか違う。
無視して店内を見回すと、普通の武器屋ではお見掛けしない武器が並んでいる。
どれも<武術>スキル用の武器なのだろうか。
パッと見、中国武術で使うような棍や棒、それっぽい投げナイフ、珍しいところだと三節棍とか釵なんかもある。
でも中国武術だったら剣とか刀、槍とかも使うと思うんだけど、そういうのはない。
代わりに篭手というかグローブのようなものがある。
これが全部<武術>スキルで使える武器だとすると……羨ましいねぇ。武器適性なしの私からすれば。
「あ、あったよピーゾンさん!」
「おお、どれどれ」
「ファオッ! お嬢ちゃんッ! トンファーをお探しかいッ!?」
奇声を発するんじゃないよ、ブルースさん(推定)。心臓に悪い。
「あ、いや、ボクはお嬢ちゃんじゃ……」
「ファオッ! 確かに腰の得物はトンファーだねッ! 数ある武器の中でトンファーを選ぶとはなかなか見どころがあるッ!」
「え、あ、はい……」
諦めたかポロリンよ。もう諦めていいと思うよ。
私もいちいち訂正するの面倒なんだよ。
置かれていたトンファーも色々と種類がある。さすが専門店。
材質や長さも違うし、形状も円柱状のものや角柱状のもの、先端に鉄球のついたものもある。
これ、選ぶの難しそうだな。
「お嬢ちゃんは攻撃派かなッ? 防御派かなッ? 手数は多いッ?」
どうやら使い方でオススメが変わるらしい。
オーフェンの時は【タンク兼アタッカー】のような役割だったけど、魔剣を手に入れた今は少し違う。
私が【物理アタッカー兼デバッファー】になったからね。
ポロリンは基本的に防御主体。もちろん適度に攻撃もさせる。
けど、攻撃の時には連撃もさせたいし、一撃の重さも欲しいんだよね。贅沢かな。
そんな風に話していたら、長めの円柱状になった。バランス型らしい。
グリップも握りやすく加工されてて持ちやすそう。
握ると長い方は肘から少し出る感じ。
あとは材質か。鉄は卒業したいから、もっと良いやつだね。
「ならば鋼、黒鋼、白銀、白金、ミスリル……くらいがいい所かなッ! それ以上だとオーダーメイドだよッ!」
「ミスリルだとお値段は?」
金貨十枚超えらしい。それでも剣とかに比べると安いらしいんだけど、さすがにポロリンが躊躇した。
結局、白銀のものにして、お値段金貨二枚です。
ポロリンはそれでも高いって騒いでたけど、パーティー資金からだからね。
私が魔剣である以上、ポロリンの戦力強化は必須なんですよ。ある程度の強さは欲しい。
「ホルダーはどうするッ? 腰に下げるか、ももにつけるタイプも――」
「ももで」
「ピーゾンさん!?」
腰だとガンベルトみたいなやつでしょ?
今もトンファー専用じゃないけどそれっぽいの使ってるし、新しく買うならももバージョンでしょう。そっちのが可愛い。
ホルダーはおまけで付いてくるらしく、ありがたく頂戴する。
まぁホルダーはともかく、新しいトンファーにホクホク顔のポロリン。
うふふってトンファー握るのやめなさい。はしたないですよ。
そんな美少女を引き連れ、次の店に向かう。
目指すは中央区。ガイドブックで見つけたファンシー防具店だッ! ファオッ!
「ホントに行くの、そこ……」
「私が行かないわけがないね」
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