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第二章 毒娘、王都デビューする
36:ファンシー好き女子ですが衝撃的装備に出会いました
しおりを挟むやってきました中央区の裏通り。お目当てのファンシー防具店。
私はガイドブックで見つけた時からここに期待していたのだよ。
もうね、外観からしてヤバイ。
窓から見えるカーテンはクリーム色と白、扉も同じようなクリーム色、入口の庇は水色と白のストライプ。
あるんじゃん! 会いたかったぜパステルカラー!
この世界に存在しないかと思ってたよ!
看板には『ファンシーショップ・マリリン』と書いてある。
防具要素は微塵もない。これ、情報がなかったら分からないでしょう。
よし、と意を決してカランカランと扉を開けた。
「うわぁ~~~!」
「す、すごいですね……」
そこはメルヘンの国だった。
置いてあるのはローブや服類なのだがどれもフワフワやフリフリ、モコモコ。
色は白やパステルカラーばかり。私の前世のマイルームを思い出す。
はしゃぐ私の声に気付いたのか、カウンターの奥から店主と思われる人がヌッと現れた。
「あ~ら、いらっしゃい」
「!?」
色黒で筋肉質なおっさん。
笑うと白い歯がまぶしいが、それ以上に真っ白アフロがまぶしい。
髪飾りだろうか丸まった羊の角が生えている。
口元は真っ赤な口紅、着ているのはフリフリのチュニック。
……ずいぶんとインパクトのあるオネエだ。この人がマリリンだろうか。
「!?」とビックリしたポロリンはその衝撃に動けないらしい。
しかし私はそれどころではない。この感動を抑えられない。
「オネエさん! この店すごいね! ナイスファンシー!」
「あら~、そうでしょう~? うふふ、お嬢ちゃんは見る目あるわね~」
オネエさんは頬に手を当てて嬉し気に笑う。
だがすぐに表情を曇らせた。
「でもそう言ってくれる娘がいないのよね~。女の子にオシャレは必須なのに全然お客さんが来ないのよ~」
「みんなファンシーの良さを分かってないよね」
「(防具にオシャレを求めてないんだと思うんですけど……)」
「そうなのよ~。五年間やっててお嬢ちゃんが初だわ~、そう言ってくれるの。たま~に入って来る娘もあたしが声かけるとなぜか逃げちゃうし……」
「(五年も閑古鳥状態だったのか……)」
「(おじさんが怖いんだと思いますよ……)」
まさかこの世界の『素材の色味を大事に』文化に疑問を持つ同志がいたとは……。
確かにファンシーなデザインとか色とか今まで全く見てないし、ましてや装備品なんて以ての外。
王都でさえそんなにも需要がないとは思わなかったよ。
「まともなお客さんが来てくれて嬉しいわ~。サービスしちゃうわよ。お嬢ちゃんと坊やは軽装なのかしら~」
「!?」
「!? わ、分かるんですか、ボクが男だって!」
「ん~? 当然じゃない、あたしのセンサーが言ってるわ~。あたしと同じ匂いがするって」
さすがにオネエは格が違った。まさか一見でポロリンが男だと見抜くとは……。
隣のポロリンが「おじさんと同じ……」となぜか項垂れているけど無視しよう。
おじさんとか言うんじゃありません。
それから私がローブや服系しか装備できない事を話し、どんなものがあるか見せてもらう。ワクワクが止まらない。
ポロリンはここで買うつもりがないらしく、私を見守るだけだ。
すまんが時間をかけて選ばせてもらうよ。
見るからに軽装ばかりが並ぶ店内。
私の【毒殺屋】は重い防具は装備出来ないようだけど、ここなら何を選んでも良さそうだ。
まずはハンガーに掛かった薄いピンクのローブを広げてみる。キャワユイ。
「うふふ、それは『耐火』のローブよ~」
「えっ魔装具なんですか!?」
「ここのは全部魔装具よ~。あたしが付与したものだからね~」
「オネエさん【付与士】なの!?」
魔装具は武器や防具に【付与】したものだ。所謂エンチャント武具。
それは【付与士】にしか出来ず、付けられる【付与】はスキルであったりステータスアップであったりと色々あるらしい。
当然、普通の装備よりも値段は高くなる。
同じ素材で造ったとしても、少なからず性能が上がり、技術料が入るのだから当たり前。
結局は【付与士】の腕次第で性能が変わるそうだが、仮にオネエさんの腕が悪かったとしても、書かれてる値段が……。
「いや、それにしたら安すぎますよ! 付与された防具なんてもっと高いはずです!」
「全然売れないからしょうがないのよ~。ちなみにあたしは【上級魔装技師】よ~」
思わず私もポロリンも唖然としてしまった。
【付与士】より全然格上の上級派生職だ。
そんな人が作ったものなら、そこらで売ってる魔装具よりメチャクチャ高価になるのが普通。
なのに、そういった魔装具より安い!
オネエさんは「本業はあくまでデザイナーなんだけどね~」と言っているが、そのデザインのせいで売れないのだろう。
時代の先端を一歩も二歩も進んでしまってるから。
つまりもうここで買うのが正解という事だ。
一式全部そろえるくらいで考えたほうが良い。
私だけじゃなくポロリンも買うべきだろう。
そう改めて店内を物色していると、一角のモコモコゾーンに目が留まった。
「な、なにこれ!」
それは衝撃の出会いだった。
思わず手に取り広げ、その意匠に目を奪われる。
まるで着ぐるみのような、白くモコモコのウサミミフード付きのケープ。
そして同じような白いモコモコの手足も別売りで並んでいる。それこそ着ぐるみの手足だ。
触り心地はモコモコと言うよりモフモフか。
兎にしては毛が長いがこれはこれで悪くない。むしろ良い。
「おおおお」と声が出てしまう。なんというメルヘン且つファンシー。
そんな私の元へオネエさんはニコニコ顔(厳つい恐面スマイル)で近づく。
「それはケープが<気配察知>、グローブが<状態異常耐性>、ブーツが<跳躍強化>よ~」
「買います」
「ちょっ! ピーゾンさん! いや確かにすごい付与ですけど!」
なんだねポロリン。こんな可愛いの見逃せないでしょ。
即買い待ったなし。仮に【付与】が付いてなくても即買いだよ。
しかも<状態異常耐性>とか私が一番欲しかったヤツだよ。自爆防止の為にね。
おまけに<気配察知>と<跳躍強化>ってウサギイメージなんだろうけど、どっちも有り難い。
そんでもって可愛い。文句なし。
試着させてもらう。
ケープは肘くらいまでの長さだ。
ウサミミフードをかぶり、オネエさんの言う通りにウサミミに集中すると、中折れだった耳がピコピコと伸びたりする。おお、可愛い。
グローブとブーツも試着。あ、ウサギの手なのに全然掴める。何これ。
試しにカウンターにあった羽ペンを取り、ペン回ししてみた。全然出来る。どういう事?
ブーツもモコモコだけど滑ったりしない。靴底が肉球みたいになってるせいか。
姿見で全身ウサギ装備の自分を見てみる。うむ、可愛い。
「買います」
「ちょっ! えっと、あれですよ、そんなに白いと汚れとか魔物の血とか……」
「もちろん防汚加工よ~。なんなら丸洗いも可能だわ~」
「買います」
良かった。真っ白だから私も気になってたけど、やはり【上級魔装技師】に抜かりなし。
防汚加工も可能とはさすがファンタジーだよ。
まぁその分高価になるらしいしファストン村じゃ見ないわけだ。
「ウサウサセットは三つで金貨二十枚よ~」
「高っ……いや安い! 安すぎますよっ!」
「買います」
金貨二〇枚は二百万円相当。
ポロリンも驚いてたけど【上級魔装技師】の付与防具で、尚且つこの性能、この値段は破格だと思う。
値段に詳しいポロリンが安いって言うくらいだからね。
付与効果だけじゃなくて普通に防御力上昇の数値的にもヤバイ。
今までの布の外套とか何だったのか。ゴミじゃないか。
ただの布きれでしょあれ。地味~な色した。
ともかく兎セットは購入です。買わないわけがないからね。
さて、それで終わり……とするのはもったいない。
「じゃあ次はポロリンの防具を」
「えっ、ボクもここで買うんですか!?」
さあポロリンよ。君もファンシーになるのだ。
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