ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

文字の大きさ
45 / 171
第二章 毒娘、王都デビューする

38:ようやく王都デビューしたい新人冒険者なんですが

しおりを挟む


「まだ回れそうかな」

「あとは錬金術ギルドと不動産ギルドですよね。どっちも中央区だから遠くないと思いますよ」

「んじゃそこだけ回って帰ろうか」

「ピーゾンさん、耳ピコピコやるのやめたほうが……」

「結構クセになる」


 ファンシーショップ・マリリンは中央区だから各ギルドも近い。
 冒険者ギルドもそうだけど、やっぱそういう施設は中央区のしかも大通り沿いに固まっているのだ。利用者が多いからね。

 そう考えると閑古鳥らしいマリリンさんのお店が中央区にあるのが謎なんだが。
 ともかくそんなわけでまずは錬金術ギルドへと向かう。


 中央区大通沿いは一番人通りが多いという事もあり、ポロリンの話ではないが、どうも注目を集めるようだ。
 まぁ私がもしウサミミの人を見かけたらギョッとするだろうし、気持ちは分からないでもない。

 だからと言って話しかけてくるわけでもなく、見てはいけないものを見てしまったように、遠目にして避けていく感覚。

 うーん、ウサミミ装備恐るべし。

 ま、私は気にしないけどね。可愛いの買えて満足ですし。
 耳をピコらせるのも、これ<気配察知>使ってるだけですから。
 付与スキルの使用感試してるだけですから。


 と言うか、ポロリンは私が目立っているみたいに言ってるけど、ポロリンだって大概目立ってるからね?
 ミニスカチャイナの超絶美少女なんだから街行く人は二度見するレベルだ。
 男だけではない、女でさえポロリンを見てびっくりしている。

 今もほら、学生かな? お揃いのレモン色の制服と藍色の外套を纏った集団から見られた。見られたまま通り過ぎて行った。

 ポロリンはそれを『私のウサミミのせいで注目されている』と思っているようだが――まぁそれもあるが――本人の魅力に気付いていないのだ。困った美少女だ。


 そんな事を思いながら錬金術ギルドへ。
 同じ大通り沿いでも冒険者ギルドより小さい。開放的でもない。
 なんというか古い洋館といった感じで非常に雰囲気がある。

 扉を開けて中に入ると、オーフェンの錬金術ギルドと同じように暗めの大きな薬屋さんといった装い。
 もちろんオーフェンより全然広いんだけど。

 ちゃんとカウンターも分かれているが冒険者ギルドのように列が出来ているわけでもない。
 私は販売窓口で職員のお姉さんに聞いた。


「すいません、スタミナ回復剤ってありますか?」

「ポーションでなくスタミナ回復剤でよろしいですか? ございますよ」

「じゃあ十個下さい。あ、あと下級MPポーションを一つ」


 コボルトキング戦でMPポーション使っちゃったからね、補充しときましょ。
 まぁ普通の道具屋でも売ってるけど、ここで買っても同じでしょうし。
 お値段はオーフェンと変わらず、スタミナ回復剤が一個銅貨十枚と激安。
 下級MPポーションが一本銀貨十枚と普通。これ一本で一万円だからね。乱用厳禁。

 王都であってもスタミナ回復剤の人気は全くないらしく、探して持ってくる有様だった。
 それでも在庫にあるあたりが王都と言えるのかもしれないけど。
 あ、私常用すると思うんで仕入れておいて下さい。


 そしてその足で不動産ギルドへと向かう。
 これまた大通り沿いで、こちらも冒険者ギルド程とはいかないまでも宿屋より大きい。

 入れば、冒険者ギルドの依頼ボードのように物件情報がいくつも貼られ、奥のカウンターは個別対応できるようにずらっと並んでいる。まるで前世の携帯ショップだ。

 客入りもそこそこ。やはり王都の物件は需要があるのだろう。
 とりあえずポロリンと物件を見てみる。


「五年間住むところかぁ……パーティー用のホームってことですよね?」

「そうそう、だから六人で暮らせそうなやつ」

「六人……ボクたち組めるんですかね……【唯一絶対ザ・ワン】みたいなクランに入ったほうが……」

「あそこは絶対嫌だよ。それにクランはあんま考えてない。パーティー組んでこじんまりやるのがベストなんだけどね」


 パーティーは最大で六人。
 これは範囲系の魔法……エリアヒールみたいなものの限界値らしく、ギルド的にパーティー人数の最大値として決められている。

 多分だけど経験値分配の寄生可能人数の限界もこれなんだと思う。
 でないと大人数で無限に経験値稼げるだろうし。まぁ予想だけど。

 そうなると私たちの場合あと四人猶予があるわけで、クランに頼らずに地道に増やしていければなぁと考えているわけです。
 極力目立たない方向で。


「ウサギの姿で大鉈持って、目立たないつもりなんですか?」

「…………で、そのメンバーなんだけど」

「聞かなかったことにしましたよね?」


 で、そのメンバーなんだけど、絶対に欲しいのが【魔法アタッカー】と【回復役ヒーラー】。次点で【斥候職】も欲しい。

 ホントは【物理アタッカー】も欲しかったけど私が魔剣を手に入れたからね。最優先ではないね。
 ということで残り四枠の中に出来ればこの三役は入れたい。

 それは別に固有職ユニークジョブに限らず、私たちが秘密を共有できる人であればそれでいいと思っている。


「そんなわけで仲良くなった人がいれば誘ってみるのも手かな、と」

「王都で暮らすうちに友達増えるといいですね」

「うん、それでその友達がその三役であれば言う事なし」


 こればかりはギルドで大っぴらに勧誘するわけにもいかないし、縁を探すというか、機会を見つけるしかない。
 やっぱり固有職ユニークジョブで冒険者をやるっていうのは難しいんだなーと改めて思う。
 だから【唯一絶対ザ・ワン】とかに集まって勢力が広がっちゃったんだろうけど。

 ポロリンとそんな明るい未来設計を話しつつ物件を眺める。
 パーティー用のホームという見出しがされているものもいくつかある。
 やはり王都は冒険者も多いだろうし、私たちみたいに地方から来る人も多いからだろう。
 ぎっしり詰まった王都なのに意外と広い間取りが多い。


「こう見ると、買うより借りるほうが良いのかねぇ」

「五年間って限定するとそうでしょうね」

「五年から先の事は分からないからなぁ」

「宿よりはホームを借りたほうが安上がりだと思いますけど、どれくらい利用するかにもよりますし」


 宿もランクによって違うんだろうけど、昨日泊まったランクくらいの宿にしても五年ってスパンで考えれば借家の方が安い。
 まぁ宿だと朝・夕飯がつくんだけどさ。
 でも依頼で王都の外に出たりする事が多くなれば、宿の方が安くなる。

 私はせめて一年に一回はファストン村に帰りたいし、ポロリンもオーフェンに帰りたいだろう。
 王都から村までは一三日。往復で二六日……まじか、一年に一回は諦めるか?
 と、そんな計算も必要になるわけだね。


「とりあえずパーティーのホーム用の借家を探すつもりでいよう」

「うん、そうですね」

「私、お風呂が欲しい」

「ボクは広めのキッチンかなぁ」


 あー、ポロリン料理好きらしいからなー。オーフェンで食べたの確かに美味しかったし。
 その女子力、やめてくれませんかねぇ。照れる仕草がまた可愛いからヤメロ。

 わ、私だって実家が食堂だったんだからね! 前世の料理知識だってあるし!
 マヨネーズ無双するから今に見てろ! これで勝ったと思うなよ!


 ……とまぁそんな感じで調べた。

 結果、お眼鏡に適うような物件は最低でも月に金貨一枚前後。上は天井知らず。
 全体的に北側の方が高く南側が安い。王城や貴族区が北側にあるからね。
 それと大通りに近づくほどに高い。これも当然。
 南東・南西の端のほうだと銀貨七〇枚ってのもあった。さすがに不便すぎるけど。

 この日は下調べだけの予定だったので、とりあえず宿に帰る。
 また後日に検討しましょ。





 翌日、私とポロリンは朝から冒険者ギルドへと来た。かなりの人混みだ。
 今日から本格的に冒険者として活動を開始するつもり。
 オーフェンはあくまで慣れとか、スキル検証がメインだったからね。依頼とか二の次で。

 なにやら周りが騒がしい。漏れ聞こえる声で「ウサギ」とか「美少女」とか聞こえる。

 ……うん無視しよう。


「どうしよっか。まずダンジョンメインか、依頼メインかで変わるんだけど」

「ピ、ピーゾンさん、なんかすごく注目されてませんか……?」


 ……無視して話を進めよう。無視して耳はピコらせよう。

 ダンジョンメインか依頼メインか。
 冒険者の活動は大きくその二つに分かれると言っても過言ではない。

 ダンジョンメインの活動だと、王都内にある四つのダンジョン、もしくは王都近郊にあるダンジョンでの探索が中心となる。
 採取は出来ないし、魔物の死体もダンジョンに吸収される為剥ぎ取りも出来ない。

 ただ地表の魔物に比べ魔石のドロップ率が高い。
 例えば地表のゴブリンを殺して胸を裂いても魔石がある確率は低い。強い魔物ほど魔石を宿すと言われている。

 ところがダンジョンのゴブリンだと死体が消えた後に魔石が残る(=ドロップする)事が結構ある。
 魔物によっては魔石じゃなくて他のアイテムが残る場合もあるらしい。非常にゲームっぽい仕様だ。

 というわけでダンジョンメインの冒険者はひたすら魔石狙いで金稼ぎをするのだ。
 まぁ私は見たことないけど宝箱もあるらしいし一攫千金狙いだね。


 一方で依頼メインの活動だと、それは多岐にわたる。
 王都内で雑用的なものもあれば、王都外で討伐や採取依頼もあるし、護衛でどこかの街に行くこともある。
 いわゆる″冒険者″と言ったらこっちだ。

 依頼を受けてそれを達成し報酬を受け取る。達成できなければ違約金を払う。
 ギルドの貢献ポイントを稼いでランクアップを目指すのもこっちの方が良い。
 ダンジョン系の依頼って『〇ランクの魔石を〇個納めろ』みたいのばっかだしね。

 だからどうしよっかって話なんだけど。


「まぁダンジョンは後回しかな」

「せめて斥候職の人がいればいいんですけどね」


 となる。そりゃそうか。罠が怖いし。

 そんなわけで依頼ボードを眺める。私たちはEランクだからDランクまで受けられるわけだね。
 採取か討伐で選びたいところだけど……メチャクチャあるな。なんだこの量は。

 魔物の種類も多い。ホントに王都近郊で出る魔物なのだろうか。
 これ受けたところで探せるか微妙だなぁ。


「どうしよっか、適当に選んで魔物が出る場所を聞く?」

「うーん、空振りとか余計な魔物と遭遇とかありそうですよねぇ」

「……あ、二階に資料室あるって。看板に書いてある」

「おおっ、じゃあ今日はそこで下調べにします?」

「それがいいかも」


 下調べ、それは安全第一精神にて重要。
 オーフェンでも資料室の存在を知らなくて後悔したからね。さっそく行きましょう。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

生きるために逃げだした。幸せになりたい。

白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。 2020/9/19 第一章終了 続きが書け次第また連載再開します。 2021/2/14 第二章開幕 2021/2/28 完結

追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─

石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」 貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。 「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」 かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。 ときどき舞い込んでくるトラブル。 慌ててミーナを探しているルカ。 果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。 甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。 *サイトより転載になります。

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

処理中です...