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第二章 毒娘、王都デビューする
38:ようやく王都デビューしたい新人冒険者なんですが
しおりを挟む「まだ回れそうかな」
「あとは錬金術ギルドと不動産ギルドですよね。どっちも中央区だから遠くないと思いますよ」
「んじゃそこだけ回って帰ろうか」
「ピーゾンさん、耳ピコピコやるのやめたほうが……」
「結構クセになる」
ファンシーショップ・マリリンは中央区だから各ギルドも近い。
冒険者ギルドもそうだけど、やっぱそういう施設は中央区のしかも大通り沿いに固まっているのだ。利用者が多いからね。
そう考えると閑古鳥らしいマリリンさんのお店が中央区にあるのが謎なんだが。
ともかくそんなわけでまずは錬金術ギルドへと向かう。
中央区大通沿いは一番人通りが多いという事もあり、ポロリンの話ではないが、どうも注目を集めるようだ。
まぁ私がもしウサミミの人を見かけたらギョッとするだろうし、気持ちは分からないでもない。
だからと言って話しかけてくるわけでもなく、見てはいけないものを見てしまったように、遠目にして避けていく感覚。
うーん、ウサミミ装備恐るべし。
ま、私は気にしないけどね。可愛いの買えて満足ですし。
耳をピコらせるのも、これ<気配察知>使ってるだけですから。
付与スキルの使用感試してるだけですから。
と言うか、ポロリンは私が目立っているみたいに言ってるけど、ポロリンだって大概目立ってるからね?
ミニスカチャイナの超絶美少女なんだから街行く人は二度見するレベルだ。
男だけではない、女でさえポロリンを見てびっくりしている。
今もほら、学生かな? お揃いのレモン色の制服と藍色の外套を纏った集団から見られた。見られたまま通り過ぎて行った。
ポロリンはそれを『私のウサミミのせいで注目されている』と思っているようだが――まぁそれもあるが――本人の魅力に気付いていないのだ。困った美少女だ。
そんな事を思いながら錬金術ギルドへ。
同じ大通り沿いでも冒険者ギルドより小さい。開放的でもない。
なんというか古い洋館といった感じで非常に雰囲気がある。
扉を開けて中に入ると、オーフェンの錬金術ギルドと同じように暗めの大きな薬屋さんといった装い。
もちろんオーフェンより全然広いんだけど。
ちゃんとカウンターも分かれているが冒険者ギルドのように列が出来ているわけでもない。
私は販売窓口で職員のお姉さんに聞いた。
「すいません、スタミナ回復剤ってありますか?」
「ポーションでなくスタミナ回復剤でよろしいですか? ございますよ」
「じゃあ十個下さい。あ、あと下級MPポーションを一つ」
コボルトキング戦でMPポーション使っちゃったからね、補充しときましょ。
まぁ普通の道具屋でも売ってるけど、ここで買っても同じでしょうし。
お値段はオーフェンと変わらず、スタミナ回復剤が一個銅貨十枚と激安。
下級MPポーションが一本銀貨十枚と普通。これ一本で一万円だからね。乱用厳禁。
王都であってもスタミナ回復剤の人気は全くないらしく、探して持ってくる有様だった。
それでも在庫にあるあたりが王都と言えるのかもしれないけど。
あ、私常用すると思うんで仕入れておいて下さい。
そしてその足で不動産ギルドへと向かう。
これまた大通り沿いで、こちらも冒険者ギルド程とはいかないまでも宿屋より大きい。
入れば、冒険者ギルドの依頼ボードのように物件情報がいくつも貼られ、奥のカウンターは個別対応できるようにずらっと並んでいる。まるで前世の携帯ショップだ。
客入りもそこそこ。やはり王都の物件は需要があるのだろう。
とりあえずポロリンと物件を見てみる。
「五年間住むところかぁ……パーティー用のホームってことですよね?」
「そうそう、だから六人で暮らせそうなやつ」
「六人……ボクたち組めるんですかね……【唯一絶対】みたいなクランに入ったほうが……」
「あそこは絶対嫌だよ。それにクランはあんま考えてない。パーティー組んでこじんまりやるのがベストなんだけどね」
パーティーは最大で六人。
これは範囲系の魔法……エリアヒールみたいなものの限界値らしく、ギルド的にパーティー人数の最大値として決められている。
多分だけど経験値分配の寄生可能人数の限界もこれなんだと思う。
でないと大人数で無限に経験値稼げるだろうし。まぁ予想だけど。
そうなると私たちの場合あと四人猶予があるわけで、クランに頼らずに地道に増やしていければなぁと考えているわけです。
極力目立たない方向で。
「ウサギの姿で大鉈持って、目立たないつもりなんですか?」
「…………で、そのメンバーなんだけど」
「聞かなかったことにしましたよね?」
で、そのメンバーなんだけど、絶対に欲しいのが【魔法アタッカー】と【回復役】。次点で【斥候職】も欲しい。
ホントは【物理アタッカー】も欲しかったけど私が魔剣を手に入れたからね。最優先ではないね。
ということで残り四枠の中に出来ればこの三役は入れたい。
それは別に固有職に限らず、私たちが秘密を共有できる人であればそれでいいと思っている。
「そんなわけで仲良くなった人がいれば誘ってみるのも手かな、と」
「王都で暮らすうちに友達増えるといいですね」
「うん、それでその友達がその三役であれば言う事なし」
こればかりはギルドで大っぴらに勧誘するわけにもいかないし、縁を探すというか、機会を見つけるしかない。
やっぱり固有職で冒険者をやるっていうのは難しいんだなーと改めて思う。
だから【唯一絶対】とかに集まって勢力が広がっちゃったんだろうけど。
ポロリンとそんな明るい未来設計を話しつつ物件を眺める。
パーティー用のホームという見出しがされているものもいくつかある。
やはり王都は冒険者も多いだろうし、私たちみたいに地方から来る人も多いからだろう。
ぎっしり詰まった王都なのに意外と広い間取りが多い。
「こう見ると、買うより借りるほうが良いのかねぇ」
「五年間って限定するとそうでしょうね」
「五年から先の事は分からないからなぁ」
「宿よりはホームを借りたほうが安上がりだと思いますけど、どれくらい利用するかにもよりますし」
宿もランクによって違うんだろうけど、昨日泊まったランクくらいの宿にしても五年ってスパンで考えれば借家の方が安い。
まぁ宿だと朝・夕飯がつくんだけどさ。
でも依頼で王都の外に出たりする事が多くなれば、宿の方が安くなる。
私はせめて一年に一回はファストン村に帰りたいし、ポロリンもオーフェンに帰りたいだろう。
王都から村までは一三日。往復で二六日……まじか、一年に一回は諦めるか?
と、そんな計算も必要になるわけだね。
「とりあえずパーティーのホーム用の借家を探すつもりでいよう」
「うん、そうですね」
「私、お風呂が欲しい」
「ボクは広めのキッチンかなぁ」
あー、ポロリン料理好きらしいからなー。オーフェンで食べたの確かに美味しかったし。
その女子力、やめてくれませんかねぇ。照れる仕草がまた可愛いからヤメロ。
わ、私だって実家が食堂だったんだからね! 前世の料理知識だってあるし!
マヨネーズ無双するから今に見てろ! これで勝ったと思うなよ!
……とまぁそんな感じで調べた。
結果、お眼鏡に適うような物件は最低でも月に金貨一枚前後。上は天井知らず。
全体的に北側の方が高く南側が安い。王城や貴族区が北側にあるからね。
それと大通りに近づくほどに高い。これも当然。
南東・南西の端のほうだと銀貨七〇枚ってのもあった。さすがに不便すぎるけど。
この日は下調べだけの予定だったので、とりあえず宿に帰る。
また後日に検討しましょ。
♦
翌日、私とポロリンは朝から冒険者ギルドへと来た。かなりの人混みだ。
今日から本格的に冒険者として活動を開始するつもり。
オーフェンはあくまで慣れとか、スキル検証がメインだったからね。依頼とか二の次で。
なにやら周りが騒がしい。漏れ聞こえる声で「ウサギ」とか「美少女」とか聞こえる。
……うん無視しよう。
「どうしよっか。まずダンジョンメインか、依頼メインかで変わるんだけど」
「ピ、ピーゾンさん、なんかすごく注目されてませんか……?」
……無視して話を進めよう。無視して耳はピコらせよう。
ダンジョンメインか依頼メインか。
冒険者の活動は大きくその二つに分かれると言っても過言ではない。
ダンジョンメインの活動だと、王都内にある四つのダンジョン、もしくは王都近郊にあるダンジョンでの探索が中心となる。
採取は出来ないし、魔物の死体もダンジョンに吸収される為剥ぎ取りも出来ない。
ただ地表の魔物に比べ魔石のドロップ率が高い。
例えば地表のゴブリンを殺して胸を裂いても魔石がある確率は低い。強い魔物ほど魔石を宿すと言われている。
ところがダンジョンのゴブリンだと死体が消えた後に魔石が残る(=ドロップする)事が結構ある。
魔物によっては魔石じゃなくて他のアイテムが残る場合もあるらしい。非常にゲームっぽい仕様だ。
というわけでダンジョンメインの冒険者はひたすら魔石狙いで金稼ぎをするのだ。
まぁ私は見たことないけど宝箱もあるらしいし一攫千金狙いだね。
一方で依頼メインの活動だと、それは多岐にわたる。
王都内で雑用的なものもあれば、王都外で討伐や採取依頼もあるし、護衛でどこかの街に行くこともある。
いわゆる″冒険者″と言ったらこっちだ。
依頼を受けてそれを達成し報酬を受け取る。達成できなければ違約金を払う。
ギルドの貢献ポイントを稼いでランクアップを目指すのもこっちの方が良い。
ダンジョン系の依頼って『〇ランクの魔石を〇個納めろ』みたいのばっかだしね。
だからどうしよっかって話なんだけど。
「まぁダンジョンは後回しかな」
「せめて斥候職の人がいればいいんですけどね」
となる。そりゃそうか。罠が怖いし。
そんなわけで依頼ボードを眺める。私たちはEランクだからDランクまで受けられるわけだね。
採取か討伐で選びたいところだけど……メチャクチャあるな。なんだこの量は。
魔物の種類も多い。ホントに王都近郊で出る魔物なのだろうか。
これ受けたところで探せるか微妙だなぁ。
「どうしよっか、適当に選んで魔物が出る場所を聞く?」
「うーん、空振りとか余計な魔物と遭遇とかありそうですよねぇ」
「……あ、二階に資料室あるって。看板に書いてある」
「おおっ、じゃあ今日はそこで下調べにします?」
「それがいいかも」
下調べ、それは安全第一精神にて重要。
オーフェンでも資料室の存在を知らなくて後悔したからね。さっそく行きましょう。
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